『それで、本当の目的は』
「クックック……おや、忘れ物を届けた……ではいけませんか?」
『電話で私に伝えれば良かったのを忘れていたとは言わせんぞ』
「フフ……お見通しですか、そうですね、貴方がこの世界に来るキッカケとなった物を見られればと思いまして、非常に参考になりましたが……アレはもうお使いになられない方が良い」
『……貴様の事だ、明確な理由があっての助言だろう。もう燃やした事だしアルが召喚する様な事は無いだろうさ』
「それは良かった――ところでエミヤさん、私は計算が得意でしてね」
『また得意不得意の話か?それで、今度は何が聞きたい』
「目的は明かせませんが、このキヴォトスでも最大の神秘である生徒がおりまして、その少女を用いて研究や解析をする予定がある……といった場合、貴方は私の敵に成り得ますか?」
空白。
『成り得ないな』
「ほう、それはどうして?」
『キヴォトスで最大の神秘を有する生徒がその者なのだろう?生徒以外ならば……誰になる?』
「成程……ですが、それは敵として立ち塞がるという意思表示に他ならないのでは?」
『もう一つ聞こう。そのキヴォトスで最大の神秘を有する存在の出現をお前は計算出来たか?』
再びの空白。
「……成程、仰りたい事は分かりました」
『そういう事だ、計算が得意だというのなら先ずは全ての可能性を探し出せ、恐らくだが、おおよそ神秘という物を扱った時、答えは計算の内に無いぞ』
「今回はその計算式を導くための研究でもあったのですが、確かに旧世代の計算式を導くに過ぎない……ともなれば最古か最新を用いてまだ存在しない計算式を求めるのが最適解……?」
『一先ずは止められたか?』
「クク……クックック……仰る通り、元より私の計算の内に収まっては、私の想像の域を出ない物、計算の先に計算外を見つける……成程、確かに『彼等』と相対するのであれば、そもそも地上の計算では意味が無いのも道理、エミヤさん、まさか私の敵をご存知で?」
『え』
なんとも言い難い空白。
『あぁ、承知の上だ』
「ど、どうして……そんな、見え透いた嘘……ククッ、クハハッ」
『ふん、深い理由は無いさ、だが思い詰めて求めた計算を強引に進めるよりは、誰かと笑い合って相談して生み出した結果の方が道も解も求めやすいとは思わんか?』
「……えぇ、それは間違いない事なのでしょう、ですが」
空白の中、皮手袋が握り込まれ擦れる音が聞こえる。
「それを望むには、私の手は既に汚れてしまっているのですよ」
『……貴様、本当に相対する事が目的か?』
「……エミヤさん、貴方は理解者として優れ過ぎている。暴かれたくない、誤魔化し続けた真実まで理解されては、私は動けなくなってしまいます」
『つまり、相対する事は目的であるが、その過程に本来の目的があるという事か?』
ソレは、ハズれ。
目的はあくまでも相対する事。
過程は踏まなければいけない必須事項であり、黒服は頑なにソレを本来の目的としては認めないだろう。
「クックック……今度から文通にしませんか?言葉ではあまりにも暴かれる範囲が広すぎて衣服を身に纏っている気がしないのですが」
『それは聞こえる音からして外にいる状況での心境として変態にも程がないか……?』
切電。
黒服は己の頭部に手を添えて、ヒビをなぞる。
「なんとか誤魔化せましたか……クックック、エミヤさんは少しばかり思い込みが強いのが救いですね」
それでも危なかったと息を吐く。
「誰も、『神秘を保有する』とは言っていないのですがね……」
小鳥遊ホシノは神秘の保有量が最大なのでは無い、神秘として最大なのだ。
「さて、とはいえ彼の言う通り、研究すべき対象を間違えていた可能性は大いにありますね」
一度だけ、黒服はとある少女と会話をした。
『貴方の目的を叶える為に必要なのは、土地と符号と計算式、そして『概念』ですよ』
その少女は既にキヴォトスから姿を消し、もし機会があれば未来で会いましょうなどと言っていた。
その少女と黒服の目的の過程は別。
合致しているのは至る地点、未来へという事。
「壊せるならば治せる……ベアトリーチェは壊し方にしか興味を示しませんでしたが」
過程は違う。
少女はキヴォトス全域を考え、黒服は個人を考えている。
「かの研究もまた……そこまでの意味を成し得ないでしょうね」
その目的が己の内に宿る神秘から来ている物なのか、はたまた関わったが故の情なのか、黒服は敢えて理解しない様に努めていた。
「カイザー、彼等の目的が地下である以上、協調姿勢はむしろ敵を増やすだけ……」
携帯を両手で持ち、ぽちぽちとゆっくり操作をする。
「約定を交わした以上、彼女に対してせめてもの支援はしますが」
カイザー理事を呼び出しながら、思考は別に向いている。
「受け入れている彼女と私では、見ている未来が違うのが残念ですね」
「やはり、
「成程な、エミヤから得た情報と照らし合わせれば分かりやすい、カイザーコーポレーションはアビドス砂漠の権利を保有する事で、何かをしようとしているのだろう」
手元の資料から資金の流れとこれまで得た情報を基に、葛木は推論を立てる。
「おおよそ、ヘルメット団なる奇怪な連中の目的はアビドスの疲弊、彼らにとって最高の結果は閉鎖だろうが……」
「そんな事はさせないよ」
いつもの口調とは違う明確な宣言で以て葛木に答えたホシノに、葛木は視線を向ける。
「……だからさぁ、先生は皆と色々と考えてみてよぉ」
ほんの一瞬、確かに雰囲気が違っていたホシノを危険だと感じた。
その眼は勉強に行き詰まり、自暴自棄になる生徒の眼に似ていた。
そう言い残して部屋を出て行ったホシノを見送り、シロコは葛木の下へと走り寄った。
「先生、これ」
そう呟いたシロコから手渡されたのは退学届、話を聞くにホシノの物だという。
「……情報が足りんな」
何故退学という選択を採るのか、それが分からない葛木は躊躇った。
不正の気配がした事から銀行への侵入は敢行し、結果としてカイザーコーポレーションが犯罪行為の幇助をしている証拠は手に入れた。
状況は好転している筈だが、何故ホシノが退学届を用意していたのかが理解できなかった。
「心当たりは?」
「ない」
首を振るシロコに「だろうな」と返し、心当たりがあれば葛木の下に来る前に声を掛けているだろうと予想。
分からない、分からないがこのままではよくないと心が訴えていた。
声を掛けた所で何かを言える訳では無い、だが、それでも動くべきだと葛木は感じた。
「そうか、かのゲマトリアは離脱を表明した……と」
『ハッ、かの物体を得る為にもアビドスの生徒達は邪魔なので、協調路線を取っていたのですが』
「……まぁ、仕方あるまい、我々の目的と彼の目的は明確に違うのだ」
とある建物の暗い部屋の中、電話越しに何者かが会話を繰り広げている。
『海洋の計画も芳しくない結果と聞いております……出来る事ならば確実に舟は手に入れたい所ですが』
「焦る必要は無い、いざとなれば時を待てば良いだけだ」
『全ては偉大なる御方の為に――』
「あぁ、引き続き頼む」
その会話の真意を知る者は居ない。
「何か不備を行ったわけでも無く切り捨てられた……という事は、察するに炉の紛い物かネフティスが動いたか」
思考を働かせ、冷酷なまでの決断を即座に降す。
「資金源たるバンクはスペアがある……今更奴の所が一つ潰れた程度、痛手では無いが、読めていないようだな、優秀ではあるが業務に集中しすぎるのが欠点だな、一度見つめ直させるか」
片手で何かを操作し、誰かの権限が剥奪される。
「アビドスなど所詮はプランの一端、宙も碌に動かせんようでは意味が無い……やはり、代用なれども星を揃えるのが先か」
眼前にキヴォトス全域のマップを表示し、そこに映し出された文字を指でなぞる。
「その為には道化が必要だったが……炉の紛い物はこちらに気付いていないだろうに、よくよく邪魔をしてくれる」
「やはり、最も注力すべきは調月リオ……彼女なのだろうが、如何せん目的が見えてこないのが不気味だ……我々の同士なのか、はたまた色彩側なのか、それとも探究者なのか……」
「第一、『契約』を使うのならば金銭に固執する必要は無かっただろうに……いや、キヴォトスに適応した結果なのか?」
推論。
「いや、武力と政治の両方があれば金銭で縛る必要は無い、金で整えた足場など強く打てば崩れるのは道理だ」
結果。
「下らん……」
杖を突き、柔らかな椅子へと腰掛ける。
「司祭も、ゲマトリアも、先生も」
デスクに置いた手を握り締め、己の目的を明確に見据えたその男は吐き捨てる。
「全て、利用するまでだ」
カイザーコーポレーション、プレジデント。
多分大筋合ってると思うんだけどミレニアムの第3章書いてもいい?
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いいよ
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だめだよ
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やってみろ
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エロ書け