いずれ返還される大地を荒らす者を許さない。
古代の預言書をなぞられる事で、預言を与えし神の証明とする為に。
その為ならば元より宿りし『役割』を以て、何度でも蘇り、何度でも討ち果たそう。
『GYGAAAAAAAAAAA!!!!!!!』
権利も無くその地に居座る愚物へと、神の代行者として神罰を降す為。
蛇が、牙を剥いた。
「……以上が、PMCの展開している場所で起きている現在の光景です」
アヤネが大型のスクリーンに表示させた映像を見て、対策委員会の面々は押し黙る事しか出来なかった。
その存在は噂程度に知っていた。
ソレが現れてから砂嵐が増えたという。
ソレが現れてからオアシスが消えたという。
例え破壊したとしても蘇り、再びその牙を剥くという存在。
「誰の残した物か分かりませんが、資料によると個体名称は『ビナー』、機械でありながらヘイローを持ち、数多の銃弾を以てしても退けるのは容易では無いとの記録です」
絶望的なまでの『暴』を見せつけられ、報告の為に淡々と話す様に努めているアヤネのの声にも震えが生じる。
「エミヤ」
「あぁ」
二人はそれだけの会話をして、エミヤは一人教室を出て行った。
「え、エミヤさんでも勝てるかどうか」
慌てて立ち上がったセリカに、葛木は告げる。
「エミヤは――戦いに行ったのでは無い」
その言葉に少しのざわめきが生まれるが、葛木が動じない姿を見てホシノとセリカは真っ先に言葉を止めた。
「先に伝えておくが、例え戦いに赴くことになろうとも、明朝話し合ったが、私とエミヤはそこまで攻撃に参加しないつもりだ……つもりだったのだが、はぁ」
何故か溜息を吐いた葛木に皆が首を傾げる中、
「えーと、それはどうして……?」
ノノミの質問に、葛木は答えるか悩み、目を伏せた。
「何の為の戦いなのかを考えると、な」
とはいえ無論指揮はするつもりだから安心しろと付け足し、葛木は対策委員会の面々を見渡した。
「過去の記録を見たのだが、あの大蛇、ビナーは過去に何度も撃退されている」
アビドス高等学校の過去の生徒達が遺した記録。
「場合によっては二人で、多い時は十数人で、その時、その場所に居合わせた者達が成し遂げて来た道だ」
ホシノの手に、力が篭る。
「あの存在が去るのを待ち、その後にPMCの連中を追い出す――」
葛木はそこまで言って、眼を閉じ、覚悟を決めた。
「――それで、いいのか?」
始まりは問い掛けから。
「破壊しても蘇る――ならば、破壊できるという事だ」
靴音を立てながら歩き、出入口たる扉へと向かう。
「お前らが決めろ」
その扉を開き、振り向きもせず葛木は背を向けたまま問い掛ける。
「待ち侘びた時を、先へ延ばすか?」
その問い掛けに、シロコが銃を抱き、マフラーを巻き直して立ち上がった。
「あの場所は、誰の物だ?」
セリカが震えながらも拳を握り、心の中で己を奮い立たせ後へと続く。
「今こそ証明する時では無いのか?」
広げていたPCを閉じ、ドローンの入ったバッグを担ぎアヤネが決意を固める。
「取り戻せるのだと、アビドスは此処に再興の道を歩み出すのだと」
ノノミがガトリングを担ぎ、ホシノの背に触れて彼女の先を往く。
「さぁ、準備は出来ているか」
ホシノが盾の表面を大事そうにさすり、それを掴んで誰よりも先頭へと駆ける。
「アビドス対策委員会」
左の掌を眼前に懐から取り出したマリアライトの指輪を薬指に嵌め、指の間からでも確かに見える明日へ続く道を見据え、告げる。
「出撃だ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「クソッ……これまで地中からの出現パターンなど無かった筈だろ!」
対戦車、対空、地帯、様々なミサイルを喰らわせてもビクともしないビナーの胴に残るのは煙だけ。
「良いかッ!ここで我々が奴を撃退できなければ計画は大きく遅れる事になる!」
それはカイザーPMC理事にとっての計画である事は伝えず、ただ隊員達のやる気を引き出す。
「大いなる目的の為、なんとしてもここで――ッ!?」
左右に向けて檄を飛ばし正面に向き直った視界に映ったのは、ビナーの口元に集まり始めた謎のエネルギー。
「クソッ……熱線かぁっ!!!」
大地を裂き長い身体を振り回しながら放たれた熱線は兵士もヘリもドローンも、無差別に薙ぎ払い周囲に爆炎を生み出す。
その身を伏せて衝撃波から身を守った理事は身を起こし、砕け散った己の夢への手足を見て愕然とした。
「なん……なのだ、貴様は……!」
答えは返ってこない、代わりに訪れたのは。
『GYGAAAAAAAAAAAAAA!!!!!』
再度の、熱線の予備動作。
間違いなく終わる。
このまま熱線を放たれれば防ぐ術など無い、更にはビナーの頭部は理事へと向いており、間違いなく狙った上で放たれる攻撃だ。
「この、クソがァッ……!」
それでも、この男は頭を垂れない。
その身に宿す大きなプライドは死の間際にあっても折れる事は無く。
己よりも圧倒的に強き者に対しても反抗の意思を緩めない。
「私はッ……上りつめたのだ……!」
手練手管を尽くし、武力を権力へと変え理事という立場まで上り詰めた自負。
「貴様の様な砂漠のゴミに……私が倒せるものかァッ!!!」
しかし、その咆哮はビナーの放つ熱線に掻き消される。
下から上へ、ビナーが顔を段々と上げる事で熱線が近付いて来る。
それでも、理事は手に持ったライフルを撃ち続ける。
諦めきれないその想いに、
「手を伸ばせポンコツ!!!」
英雄が応えた。
反射的に差し出した手を掴んだ理事は、その重たい身体を引きずられながらビナーの熱線を回避。
バイクに乗っている事もあり、理事の体は地面で削られ、
「あががががががが、がっ!?わ、私のレッグが!?」
当然の結果、下半身が分離し上半身のみとなってしまった。
だが、まだ終わらない。
「なっ、貴様っ、ががががががががが!?グボァッ!?」
理事を助けた男、エミヤはなおも理事の上半身を地面で削り、結果的に理事は頭部のみとなってしまった。
「ドローンとの戦闘で頭部にコアがある事は把握済みだ!助けてやっただけありがたく思え!」
「ぐっ、ぬぅぅぅ」
後部座席に座るアヤネに理事の頭部を渡し、アヤネは自分の脚の間に理事の頭部を置き片手に持ったノートPCで何かを確認している。
「エミヤさん!先生達も戦闘区域に突入しました!」
「了解した!」
エミヤは耳元に手をやり、イヤホンらしき装置のつまみを調整し喋り掛ける。
「ナナ、昨日連絡した者達はどうだ?」
『はい!エミヤさんのモモトークを使用して現在の動向を窺った所、~でしょうかの口調が身の毛もよだつと返信が来ております!』
「よーし後で説教だ!」
バイクの速度を上げ、頭部の向きをそのまま変えてこちらを補足してくるビナーを視界に収め、小高い丘でカーブを描き、ビナーの胴体スレスレを通りながら反対方向へと抜ける。
「陽動か――十六夜、弾幕でビナーの頭部を集中的に狙え、砂狼は全体像を観察し傷を負った箇所が無いか確認を、黒見は少し後方に下がり各自に攻撃が及びそうであればその者に通達、小鳥遊は各員との距離を離れすぎず動き黒見の言葉に間に合わない際にカバーに入れるよう動き、ショットガンで以て威嚇を続けろ」
即座に指示を出した葛木は次にシッテムの箱へと語り掛ける。
「アロナ、砂狼の視界とリンクを繋げるか?」
『はい、可能です!』
「であれば、砂狼の視界から情報をスキャンし装甲の破損や脆くなった箇所の割り出しを頼む」
『かしこまりました!』
「ここからなら!」
丘の上に移動したノノミはビナーに向けて弾幕を張り、小賢しいと言わんばかりに尾を振ったビナーの攻撃の届かない位置から嫌がらせを続ける。
「近いけど――怖くない」
走りながらビナーの全体を確認するシロコは警戒を忘れずに装甲のチェックを続け、
「シロコ先輩!後ろから尻尾!――伏せ!」
「ん!」
頭上スレスレを風切り音と共に過ぎ去った巨大な尻尾に、背中に滲む汗を実感しながらもセリカの咄嗟の短い指示に感謝する。
「砂埃が凄いけどッ……!」
至近距離から神秘を込めた弾丸を喰らわせたホシノは、ビナーの体が少しだけズレたのを見逃さなかった。
「効くみたいだねぇ!」
磨いて来た戦闘技術は無駄では無かったと喜び勇み、ショットガンをリロードしながらこちらに向いた頭部を睨み返す。
「にらめっこならお断りだよ」
「おいポンコツ!助けてやった礼に知っている情報を吐け!」
「誰がポンコツだ誰が!何故貴様らなどに!」
そう反論した理事の頭部に、ミシッという音が走る。
「足を開いているの疲れて来たので、閉じても良いですかエミヤさん?」
「待て待て話す!最後が女子高生の太股など洒落にならん!」
「そうか、アヤネ、通信回線で全体に共有、加えてドローンを眼前に飛ばして奴の注意を引けるか?」
「かしこまりました!」
尚も攻撃を続ける対策委員会の面々の耳に、聞きなれない男の声が聞こえ始める。
『奴の個体名称はビナー、機械の体を持ちヘイローも持つクソッタレだ』
「シロコ先輩、また後ろから来てる!」
暴れる様に体を揺らすビナーは周囲に居るシロコとホシノに対して激しく攻撃を開始した。
『今までの戦闘で我々が確認できているのはその巨大な胴体を使った攻撃と頭部から発せられる熱線、そして咆哮による衝撃波と地中に潜り行われる奇襲だ』
「ん、不味いかも」
薙ぎ払われた尾は今度は地面を削りながら向かってきて、シロコの跳躍力では跳んで交わす事は難しい。
「や、ら、せ、るかぁあああ!」
胴を挟んで反対側から胴体を超えてやって来たホシノが、その尾の一撃を盾で受け、
『最も効果があるのは頭部の眼への攻撃』
「シロコちゃん、尾に乗って!」
「了解」
シロコがビナーの尾に乗ったことを確認し、
「あっ……が、れぇぇえええええ!!!」
勢いよく地面を蹴り、盾で殴りつける様にして尾をかち上げ、そこに乗ったシロコが空中に投げ出される。
「ここからなら、狙える――!」
『しかし、奴もソレをずっと受けてきている』
「ドローンでシロコ先輩の方へ頭部を誘導します!」
アヤネの操作でドローンがビナーをかく乱し、頭部をシロコの方へと向けさせ。
『動いているウチに狙うのは困難、一度何かで動きを止めるのを勧める』
向けられたビナーの頭部が、熱線の放射準備段階へと入っていた。
「これは、不味いかも」
咄嗟に周囲を確認するが、手を伸ばせそうな相手も蹴って移動できそうな岩の破片も無く。
段々とその顔に熱が伝わってくる。
無機質な高音が段々と辺り一面に響き渡り、熱線がもうすぐで放たれるのを予見させる。
「こっ……の!」
ホシノがショットガンを叩き込むが、動じず。
「やめろぉぉお!」
セリカが慌てて弾丸を頭部に当てるが放射は止めず。
「アロナッ!!!」
『間に合わせ、ますっ!』
障壁の展開を指示したのも束の間。
「どーーーーーん!!!!!」
気の抜けた声と共に、一条の流星がビナーの頭部にドロップキックを喰らわせた。
『……エミヤさん、えっと』
「あぁ、見えているが……間に合ったのは良かったが、何故彼女が?」
『ヒフミさんからは、『エミヤさんから来てほしいって言われてると伝えたらついてきちゃったと』返信が』
「型は分からんが戦車四台と……なんでヒフミはカタパルトなんて持って来たんだ?」
『……えっと、アビドスは砂漠で岩とかあれば使えると思ったそうです』
「結果的には、非常に助かったが……」
体勢を大きく崩したビナーがそれでも倒れずに再び暴れ出す中で、気の抜けた声の主は「むむっ、やりますね」とあまり効いていない事をそこまで重く受け止めていない様子。
「えーみーやーさーん!助けに来ましたよー!うぅぅぅう!シュタッ!」
砂地に見事に着地したドロップキックの少女は、信じられん程の爆音でエミヤの名前を呼びながら華麗にポーズを決める。
「宇沢レイサ!参上です!」
数か月前の話
「あっははははは!彼女面白いねぇ!王の素質があるのにソレを趣味に傾けるなんて初めて見たよ」
何処かでキヴォトスを鑑賞するハッピーエンド至上主義の男が、膝を叩いて笑う。
「いやぁ、僕が何もしなくとも彼女なら至れるかもしれないけれど、そうだな、箔だけでも付けてあげたいな」
そして、余計な事をし始める。
「そうだなぁ、あまり干渉し過ぎても面白みに欠けるし、彼女が築いた縁を使って夢に語り掛けるとしよう!」
※対象はレイサではありません。
多分大筋合ってると思うんだけどミレニアムの第3章書いてもいい?
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いいよ
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だめだよ
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やってみろ
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エロ書け