「えぇ!?ペロロ様を知らないんですか!?」
ハルカも自己紹介を終えて、探している商品の概要を聞いたエミヤは「こういった物があるのか」と漏らしてしまい、それはもう驚いた様子のヒフミに詰められていた。
「その、ペロロという」
「ペロロ様です」
圧。
「ッ!? ぺ、ペロロ様というのは、キヴォトスではメジャーなキャラクターなのか?」
「はいっ!ね!ハルカちゃん!」
一瞬感じた殺意でも敵意でも害意でも無い、ただ単純な圧に気圧されながらもエミヤは問い掛けた。
その圧の後に同意を求められたものだから、ハルカは必死に頷くことで肯定を示した。
「ほら!えへへ、これ見てください!ペロロ様の限定シャワーヘッドなんですけど、なんでもブラックマーケットで売られているという情報がネットの掲示板に出回ってまして、それなら手に入れない選択は無いと思い此処に来たんです!」
スマホの画面を近づけられて熱弁され、エミヤはこの世界に来て初めて『女子高生って元気だなぁ』という感想を抱いた。
キヴォトスにおける人気キャラクターは凄いコラボをする物だと感心しながら、少し頭を屈めてハルカに製品を覚えてもらう。
「えっと、そうしましたら目的地に向かいながら、このペロロさんの」
「ペロロ様です」
「ヒェッ ぺ、ペロロ様の商品を見掛けたらお教えしますね」
笑顔の筈なのにこの圧は何なのだろうか、ペロロ様とやらはキャラクターでは無く特定の宗派が崇める神なのか……?と的外れな考察をしているエミヤは置いておくとして、ハルカはもしかして……とヒフミの服装を見ていた。
「ひ、ヒフミさんってトリニティの生徒さんですか?」
「はい!……や、やっぱり服装で分かっちゃいますよね」
「そ、そうですね、服装で分かりました。でも、トリニティの方ってゲヘナを嫌悪しているイメージがあったので私に対して普通に話しかけてくれるのが意外で」
思わず眉がピクリと動くが、エミヤの微細な変化に気が付くほどの関係性に無いヒフミは「あはは」と気まずそうに笑みを浮かべる。
「一部そういった生徒もいるんですが、私はあんまり気にならないというか……トリニティ生でもゲヘナ生でもペロロ様が好きな人に悪い人はいないと思っているので」
「基準はソレなんだな……」
やはり宗教なのだろうか、とペロロ様に対する見方が変わっていくエミヤ。
トリニティとゲヘナ、どちらも古くから在る学園ながらも対立の歴史は長く。ヒフミの様に我関せずの姿勢の者も居れば、俗に過激派と呼ばれる者もおり良好な関係が築けているとは言い難い。
便利屋68としては『嫌ってきている学園』程度の浅い知識から来る認識であり、こちらから嫌っている訳でも無いのが現状だ。
「ヒフミの熱意の程は伝わってきたが、だからといって危険だと分かっている場所に踏み込むのは感心出来ないな」
「あぅぅ……そう言われると、その、何も言い返せないのですが」
それでも行動しない理由にはならないのがヒフミの抱くペロロ様への愛だ。
「我々は便利屋として働いている。これからも出向くことがあるのなら声を掛けてくれ」
「い、いいんですか?止めないんですか?」
「止まるのか?」
「お世話になります!」
胆の据わり方が常人のソレでは無いなと嘆息し歩みを進めていると、ブラックマーケットと呼ばれている地域にしては似つかわしくない並木道が見えてきた。
「こんな所もあるのか」
「は、はい、ブラックマーケットにも企業が出店していたりするので、その辺りは警備も手厚くて治安も良い方です」
それはブラックマーケットなのか?と疑問に思うが、ブラックマーケットという地方なのだと理解する事にした。
「それと、見えてきました。あの大きな倉庫が目的の商人さんが居る所です」
「えぇ!ペロロ様のグッズを取り扱っているのも大型の倉庫みたいな場所って書いてあったので、もしかするかもしれません、早く行きましょう!」
「分かった分かった、そう引っ張るな、いや力強いな!?」
少女の姿でもキヴォトス人、舐めてかかってはいけない相手だ。
倉庫の中はだだっ広くて、一見すれば本当に色々な物が押し込まれた倉庫にしか見えなかったが、よくよく見れば箱が置かれた棚の上にはレールが通してあり、そのレールを使って移動するロボットがアームで箱を掴み何処かに運んでいく様子が見えた。
しっかりと商品が管理されている辺り、かなり真っ当なビジネスにも思えるがここはブラックマーケット、扱われている商品は違法な物や横流し品、盗品もありまともな人間なら足を運ばない場所だ。
「えっと、入口の辺りに……あ、ありました!はい、ハルカちゃん、このPDAで欲しい商品を検索して注文出来るよ」
非常に慣れた手付きでPDAを探し、背伸びして手渡してくるヒフミにエミヤは常習犯だな……と確信を持った。
「ふんふん、見た所ここはカイザーと契約しているので郵送もお願いできそうですね、大量に購入する予定だったら郵送を頼んじゃった方がカイザーの保証も効いてくるからオススメだよ」
「わ、え、あ、は、はい!わかりました!」
それもかなり理解している。
もしかして案内されるのは彼女では無く我々の方だったのか?
「ハルカはこうしたところで取引はしないのか?」
「そう、ですね……私はどちらかというと露天商の人から購入する方が多かったので、ここまで大規模な倉庫は初めて来ました」
最早アウトローを名乗る者以上にアウトローに馴染んでいるヒフミに、適応能力の高さがこれまで見て来た誰よりも高いかもしれない事に驚いていた。
「人物一覧から……あ、居ました!探していた商人さん!え、エミヤさん、見つけましたよ!」
嬉しそうなハルカの声音に思わず頬が緩む。
「お目当ての物も手に入れられそうか?」
「はい!えっと……コレかな?個数を指定して……?」
初めての事に試行錯誤する様子が可愛らしくて、エミヤも思わず気が抜ける。
「注文をしたら、注文したPDAを持って……あ、あそこです!今入って来たのとは反対側にある窓口、あそこで料金を支払えば取引完了です。当日に持って帰る際はあそこまでロボットが荷物を運んでくれているので受け取るだけで終わりです」
ハルカは初めて使うPDAに悪戦苦闘しているが、ヒフミは既に目当ての商品を注文したらしくPDAを抱き締めて満面の笑みを浮かべている。
その様子だけ見ると本当に可愛らしいのだが、外見と行動のギャップでエミヤは明日の風邪を覚悟した。
「ひ、ヒフミさんって凄いですね、何をするにも遅くて、ダメダメな私よりもずっと……」
「いやハルカ、これは慣れているヒフミが異常なだけだぞ」
ハルカも注文を終えて、ヒフミからモモフレンズなる異形の集団の紹介を受けながら窓口に向かう途中。
連続した銃声と、金属が、空薬莢が地面に散らばり甲高い音を立てた。
「動くんじゃねぇ!動くんじゃねぇぞ!全員荷物をその場に下ろして壁まで行って両手を頭に乗せろ!」
サングラスをしたライダージャケットで身を包んだ大量のコーギーが入口から入ってきて、そこら中の人に対して銃を向けて制圧に乗り出した。
「いいか、マーケットガードの情報局には金を握らせてある。此処に来るのは三十分後だ!それまでに仲間の車に出来るだけ載せろ!」
「え!?え!?」「あわわわわわわ、私がモタモタしてるせいで……」
頭が混乱している二人を他所に、エミヤは視線を走らせる。
いくらエミヤの身体能力であっても、この場に入って来たコーギーを全員同時に倒す事は不可能。
元々倉庫の中にも入り込んでいたのだろうコーギーは目視で九人、結構な数が居た。
ここから更に逃走、見張り、バックアップが居ると考えれば周辺の敵の数は十五人、車での逃走を考えると逃走経路に控えているのも含めて総勢二十五人は居ると予想して良いだろう。
見積もりが過大な分には良いが、過小であれば問題が生じる。
「はっはっは!じっとしていれば手は出さねぇよ!俺達モフモフ尻尾団は優しいんだ!」
その可愛らしいネーミングに思わず奥歯を噛み締めて和む事を拒否するエミヤ、傍から見れば「非道な奴らめ」と憤っている様に映った。
周囲の被害を度外視すればエミヤ一人で容易に制圧できるが、この場には他にも一般の買い物客が何人かおり、強引に物事を解決しようとして怪我人が出ては寝覚めが悪い。
確実に注意を引くことが出来て、継続的に目で追ってしまう様な囮が必要。
そして、この中で最も隠密性に優れた動きが出来るのは間違いなく――。
「出番だぞハルカ、君だから出来る事をお願いしたい」
普段から何か事件が起きた際にこっそりとその場を離脱して爆弾を仕掛けたりしているハルカだからこそ、この場において真価を発揮することが出来る。
「小声で話すぞ……いいか?」
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ヒフミにとってエミヤはヘイローの無い親切なお兄さんとして映っていた。
それが一転して、ハルカに冷静に作戦を伝えたのを見ていた今では頭の良いお兄さん。
そして、
「君を巻き込まずにこの場を治めたいのだが、もし良ければ協力して欲しい」
「も、勿論です!このままだとペロロ様も持っていかれちゃうし……」
「そうか、それならば聞きたいのだが……投げられた先の壁に着地した事はあるかね?」
凄い事を言ってくるお兄さんへと昇格された。
壁に手を置いて、固さを確認。
「今回の作戦はどちらでも注意を引く事が重要になる」
一先ずは奴らの手筈に従う形で壁沿いに移動、シンプルな話、敵の手順通りに物事を運ばせることで人員の配置を固定化させてこちらも動きやすくする為だ。
事件発生から即時解決では取りこぼしが生まれる危険性も大いにある。
「本来であればインカムでもあればハルカともやり取りが出来たのだが、それが無い以上、合図を送ると伝えてある」
今は隠密行動を取ってもらっているハルカとは土壇場での合わせになる。
「その合図が君だ――ヒフミ」
「ひえぇ……!!!」
「こんな事を言うのは慰めにならんかもしれんが、安心してくれ、君には素質がある」
「そ、素質ですか?」
「あぁ、類稀なるアウトローの素質がな」
言い切るや否や、背後を振り返りエミヤはヒフミの肩を抱き、着地しても壁を壊さない力加減で投擲。
「せめて投げるとか言ってからああぁああぁあぁああぁああぁ!」
遠くへ流れていく声を聴きながら、あからさまに目立ってくれたヒフミに感謝しながらエミヤも動き出す。
ズダンッ!!!と大きく音を立てて着地した壁面は出口側の窓口上、丁度真下には受け付け係に銃を向けるコーギーが一匹。
「もう、駄目じゃないですか」
自然と壁から足は離れ、緊張していた体の力を抜いた結果ゆらりと自然に手足が揺れる。
着地点を見なくてはと勢いよく首を下に向けた時、驚きに口を開けたコーギーとグラサン越しに目が遭った。
「私の買い物、邪魔しちゃあ」
落ちていく恐怖から開かれていた双眸にハイライトは無く。ただ真っ黒な丸がコーギーの視界に焼き付く。
握りしめた拳を落下のまま、コーギーへと叩き込み一人制圧。建物内残り八人。
コーギー達の視点では高速で跳躍して壁に着地後、自由落下しながら口上をのたまって仲間を一人倒したと見えており、その存在が少し立てられた砂煙の向こう側でゆっくりと立ち上がるのがシルエットで見えた。
「ねぇ、皆さん?」
聞こえた声に緊張が走る。建物内残り七人。
「私のお買い物、邪魔するんですか?」
残ったコーギー達が銃を構える中で、機械も動かずに静かな倉庫内であまりにも目立つクレーンが稼働する音が聞こえて来た。
「邪魔しないのでしたら、ソレは差し上げます」
そしてクレーンが運び始めたのは、小さなリュックサック。
だが、そのリュックサックの中からは山ほどのお札がバラバラと零れ落ちる。建物内残り六人。
「どうしますか?」
笑顔、この状況下で笑顔。
あまりにも異質であり、誰も動き出せなかった。
本人は単純に緊張して顔の表情筋が引きつり、笑顔から表情を戻せないだけなのだが、
「もう、このままじゃずっと笑顔のままですよ、私?」
エミヤに対して皮肉交じりに言った言葉をコーギー達は別の意味で捉えた。
『一人、無力化したお陰で笑顔になれました』
『人を地面にたたきつける時、私って笑顔になれるんです』
『このままじゃずっと笑顔のままですよ、私?』
『だって、まだまだこんなに、叩きつける相手がいるんですから』
動けるわけが無かった。
言葉を発せる訳が無かった。建物内残り五人。
ゆっくりと、出口のシャッターから差し込む光を背にして一歩一歩近づいてくるのだ。
光の中から、天使の様な笑みを浮かべた少女が、その姿を光に晒して影を産んで。建物内残り四人。
そもそも、あのクレーンはどうやって動かした?
あの資金はどこから用意した?
少女の姿を再度確認しても、何処にもPDAは持っていない。
仲間が居る?
それとも、そういう次元の話じゃ無いのか……?
最早、全てが理解できなかった。
一度は完全に制圧した筈、気が緩んでいなかったといえば嘘になる。
全てが順調で、邪魔する物は何もなかった筈なのに――今はどうだ。
「あはは」
見ろよ、居やがるぜ絶対の強者が。
ここでようやくリーダー格のコーギーが尻尾を脚の間に挟みながら前に出た。
「わ、分かった……アンタの買い物は邪魔しない、好きな物を持って行ってくれ」
ここは譲歩するしかないと判断した。
そうしなければ、地面の味を知る事になると相手の眼が伝えて来ていた。建物内残り三人。
「ん~、そうですね、それなら別に私も問題は無いんですけれど」
わざとらしく何かを悩むような素振りをする少女に、コーギーは後悔していた。
「(何が銃だ、何が集団だ、本当の化物にはそんな物、なんの意味もねぇじゃねぇか!)」
その少女が出す答えを待って、喉を鳴らす。建物内、残り二人。
「分かりました!それなら私もここは引き下がります!」
「ほっ、本当か、助かった……」
建物内、残り一人。
振り返り、仲間達へと指示を出すために声を張る。
「よぉし!それじゃあお前ら作業を再開しろ!この方の邪魔は……」
響く声、あまりにも一方に意識を集中しすぎたが為に、一瞬は考えた選択肢が頭から抜け落ちていた。
「お前ら……?」
もしも、そういう次元の話じゃなければ。
「あはは、どうでしたか?」
振り向いた先で、笑っていた。
目を細めて、少し困った様子で、先ほどとは変わらない笑顔で笑っていた。
それを最後に、コーギーのリーダーは意識を失った。
そのコーギーのリーダーの体を優しく地面に横たわらせ、少女の問いに対する答えが送られる。
「満点超えだ二人とも、最高だ」
エミヤが立てた作戦はシンプルな物だった。
まず一つが、ハルカが隠れながらクレーンにリュックを引っ掛けて、合図と共に作動させることでお札の雨を降らせる。
もう一つが、出口に向かって投げられたヒフミが軽く演説をして、一分ほど時間を稼ぐ。
その間にエミヤが敵を静かにバレない様に気絶させて回るという物だった。
伝えたのは本当にそれだけ、だからこそエミヤは驚いていた。
最高のタイミングでハルカがクレーンを動かした事、コレは注文して運ぶ性質を利用しただけだが、ヒフミが注意を惹く前にその地点まで移動するのは至難だった筈、それをハルカはやり遂げた。
そしてヒフミもまた、意味ありげな発言と動作で以て敵を混乱に陥れた。ハルカのクレーン操作のタイミングもあって敵の思考を奪う事に成功した。
完璧を超えた完璧をなんと表現すれば良いのだろうかとエミヤは頭を悩ませるほど、それほどまでに期待以上の働きを二人はしてくれた。
「さて、倉庫のシャッターを閉めて、無理やり開けられるまでは閉じておいてくれ」
それならばあとは、
「あとは私が掃除してこよう」
私の仕事だ。
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「すすすすす凄かったですヒフミさん!自然体で凄い圧で、見ている私まで怖かったです!」
「そんなぁ!?でもハルカちゃんもすごいよ!いつの間に目標ポイントまで移動してたの!?」
互いに褒め合う二人を微笑ましく想いながら、エミヤは車を走らせていた。
全ては解決し、今回のお礼という事でハルカは大量の爆弾を、ヒフミは目的の物以外にもペロロ様グッズを、エミヤはブラックマーケット内で使用出来るセーフハウスを貰った。
事件はあの後、一早く事態を聞きつけた連邦生徒会長によって派遣されたSRTによって捜査が行われ、事件に直接的に関わり解決まで導いたエミヤは、後日連邦生徒会へと出動を命じられた。
「そんな、私なんて隠れてコソコソと……私なんて褒められる価値……」
「いいや、ハルカは凄いぞ、なぁヒフミ」
「はいっ!ハルカちゃんは凄いです!」
遠慮しようとするハルカに対して、頑なに譲らない二人。
「正直隠密という部分ではハルカは私以上に優れている。気付いていなかったか?」
「で、でも今回も私は特に……」
「いや、これまでの事も考えてみたのだが……ハルカには人の虚を突く才がある」
エミヤは振り返りながら口にする。
どんな時でもそうだ。
便利屋の面々が予想だにしないタイミング、それはつまり周りの人間も同じで誰も予想していないタイミングで爆弾を爆発させていた。それは今回も同じ、ここぞというタイミングで降り注いだクレジット、ヒフミが紡ぐ言葉と言葉の間の効果的な場面で狙いすましたかの様に行われた。
「それは誰もが持ち得る訳じゃ無い、ハルカだけが持っている武器だ」
それは無理やり褒めたりしている訳では無く。
エミヤは護身術を教えている時にも思っていた。
ふとした時に少しでも隙を見せるとハルカは『そのタイミングしか無いだろ!』という技を掛けてくる。
機を読む能力、こればかりは天性の部分も大いにあり、かつて全く逆の『うっかり』の方面で天性の物を持つ存在と懇意にしていた事からも、機を逃さない重要性は身に沁みて理解していた。
「強く意識する必要は無い、ただハルカが『今』と思う事があれば間違いは無いはずだ」
ハルカからの返答は途中から無くなっていた。
代わりに嗚咽だけが聞こえていた。
自分にあるのは想いだけだと、そう感じていた。
その他の部分に価値は無いと、役に立ちたいという気持ちが全てなのだと思っていた。
だけど違った。
言われてみて、自分でも納得できる言葉で伝えられれば、自信が無くとも認めざるを得ない。
自分にはその才があるのだと、自分にも価値があるのだと。
「『私程度』じゃないさ」
自分では見つけられなかった自分の強みを、見つけてくれた。
「『私だから』をハルカは持っている」
真っ暗だったのに、光が差した。
「きっと他者に注目してきたハルカだから、アルや便利屋の皆を守ろうと周囲を見て来たハルカだから」
他者を優先する事は間違いなのか、
「これまでのハルカが今のハルカを作ったんだ」
そんな筈が無い。
間違いなんかじゃない。
「エミヤさん」
そうして生きて来た少女が居た。
他者に見下され、気が付けば他者を優先するようになり、他者の眼ばかりを気にするようになっていた。
心の中は雨が降っていた。
そうして、いつの間にか自分よりも優先したい存在に出会う事が出来て、己の価値は無い物であっても、その人だけは、その人達だけは守りたいと懸命に頑張って来た。
より多くの敵を倒せるように最前線で戦い、より危険な相手から守れるように爆発物を覚え、より色々な状況に対応できるように護身術を学んだ。
それでも、自分に自信は持てなかった。
雨は降り続けていた。
差した筈の傘はボロボロで、自分が持つ者はどれも価値の無い物だと思っていた。
だけど、傘を差してくれる人が現れた。
土砂降りの筈の雨の中で、傘を差してくれた。
気が付けば雨すらも止み、空からは晴れ間が覗いていた。
これまで歩いてきた泥だらけの道ですら、何故か一歩一歩に意味があると、光輝いて見えた。
他者を優先する事は間違いじゃない、
「ありがとうございますっ!」
だってこんなにも、その少女は笑顔なんだから。
ハルカについてずっと思っていた事です。
毎度あれだけ誰も予想しないタイミングで事を起こせるのは、好意的に解釈したら凄い才能じゃないかなぁと、それを輝かせてあげたかったお話です。
最後までお読みいただきありがとうございます!
多分大筋合ってると思うんだけどミレニアムの第3章書いてもいい?
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いいよ
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だめだよ
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やってみろ
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エロ書け