シリーズ通して語られるだけの人   作:I'mあいむ

10 / 19
お久しぶりです。少し私用の方が忙しいので更新遅れるかもしれないです。


異世界で無双出来るのは最低限の顔を持つ者に限る

 

「そういえばダイゴさんは何をしてたんですか?」

 

「ああ、それは────」

 

そこはあるレストランの個室。有名人が使うような機密性の保たれた部屋には、シンプルでありながら高級感のある装飾が施されている。見渡す限りではそれに勝るとも劣らない人間が席に着いている。ただ一人を除いては。

 

そう、俺である。

 

今、この部屋の平均顔面偏差値はバチクソに高い。前世の価値観からすれば少なくとも70以上。全員東大レベルである。そこに高卒が混ざったような物だ。

 

「私ガラルなんて初めてで───」

 

「そうね、私も────」

 

これがただの偏差値だったらその人の良さなんてのは計れない。あくまでも学力だけだ。しかし今この場においてそれは通用しない。この世界において顔が良いってのは大体メインキャラクターなんだ。そうなると積んできた実績が違うことも表せる。

実際ここにいるのはシンオウチャンピオン、元ホウエンチャンピオンで大企業の御曹司、現ホウエンチャンピオンの英雄、シンオウで世界の破壊を食い止めた英雄。錚々たるメンバーだ。

 

その中に俺。何もしてない一般人。これは話にならない。

本来こんな顔面お化け達と話す時は緊張しているものだが、生憎と今は違う。

 

「成る程ね。それで……」

 

「「…………」」

 

会話が止まったと思ったら視線がいつの間にか俺へと向いていた。半開きで少し勘ぐるような目。これは……そろそろ本題に入れと、そういうことなんだろうな。

 

「改めまして。自己紹介が遅れて申し訳ありません。私はユエヅキと申します。今回はダイゴにあるポケモンの説明を求められまして、その説明の為に皆様のお力をお貸し頂きたいのです」

 

随分すらすらと出てくる言葉の数々に自分でも驚くが、まあ伊達に社会人として10年以上働いていた訳ではない。

 

そう、今の俺は社会人モードだ。社会人というのはある程度感情を殺して淡々と業務をこなす必要がある。それを行う際に非常に便利なのがこれ。切り替えれば自動的に敬語が出るし、感情は殺せる。まあ目も死んでしまうんだがそれはニコニコしてれば気付かれない。

 

全く知らない初対面の方には取り敢えずこれだ。今回はダイゴからの依頼ということもあり実質仕事では?となった為使っている。相手が相手だから余計にそうだ。ここまでの方々に失礼があったら俺の首が飛ぶ。文字通り飛ぶだろう。

 

「それではそろそろ本題の方に入ってもよろしいでしょうか?」

 

「………ええ、お願いします」

 

「まず確認します。この巨人を見付けたのは恐らく、ハルカさんではないですか?」

 

「……どうしてそう思うんだい?」

 

まずはそう、前提条件から始める。ここを明確にしておかねば後々説明に支障をきたすからな。そしてそれを咎めるような目をするダイゴ。まあ理由は分かる。

 

「ダイゴさん、あんたがどう考えているのかは今はどうでも良いんです。勿論そこにはそれなりに思惑があるのでしょう。しかし彼女らがそれを悪用するようなことも無いでしょう?ここが盗聴されるようなことも無いですから」

 

「それはそうだが……」

 

そりゃ渋るよなあ。ハルカはまだ年端もいかない少女だ。それが伝説級のポケモンを持ってるなんてバレたら襲われかねない。例えチャンピオンだとしてもやり方は幾らでもある。出来るだけ存在は隠しておきたいだろうがなあ。

 

「そ、そうよ。私が見付けたわ」

 

「ハルカちゃん……ああ、そうだね。見付けたのはハルカちゃんだ」

 

ああ、そっちが答えてくれるのね。そっちの方がスムーズに進むから有難い。

 

「なら良かったです。では話を続けます。ハルカさん、見付けたそのポケモン達は三体でよろしいですか?」

 

「う、うん」

 

「捕獲しましたか?」

 

「……したわ」

 

「流石です。普通のトレーナーなら恐らく生き残れないですから。そのポケモン達の名前を知っている人はいますか?」

 

「「「………」」」

 

まあそりゃそうだろうな。これらの名前は基本的に神話ですら語られない。ホウエンの伝承に暗号が少し出てくる程度だ。だからこそ俺がやるんだが。

 

「ではここでは仮の呼称として、レジロック、レジアイス、レジスチルと呼んでいきます。さて、ホウエンのこの三体は所謂神話にも記述があります。これらの話はシンオウ神話について少し話す必要があります」

 

「だから私達が呼ばれたのね。確かに私は神話について調べているし、ヒカリちゃんも少し関係があるわね」

 

「ええ、この部分はシロナさんが詳しいと思いますので私は大まかな経緯を話します。これはあくまでも考察のような物だと思って下さい。私はこれらの証拠を提示出来ませんし、するわけにもいかないですから」

 

「考察?じゃあそれが合ってるかは分からないんですね」

 

少し疑問を持つようなヒカリはまだ純粋な視線をこちらに向けてくる。大分優しい人間なのか、それとも幼いだけなのか。柔和な雰囲気からはどちらもだと感じ取れた。

 

「はい、ここでそれを事実と断定することは出来ません。それは皆さんで解き明かして下さい。私がやるのはあくまでも真偽の分からない説明。それがダイゴさんからの頼みでもありますので」

 

俺が巻き込まれない為にはこのぐらいが丁度良い。それにハルカやシロナから向けられている視線は明らかに疑いがある。信用されてない人間が更に荒唐無稽な話をするんだ。前置きはしておかないとな。

 

「そうだね。僕が知りたいのは真実じゃなくて安全性と正体だ。手掛かりがあれば良い」

 

「ええ、それでは話していきます。まずはこの世界の始まりについてです。まだ世界が生まれて居なかった頃、そこは混沌で溢れていた、と言われています。そしてそこから誕生した一番最初の存在、それがアルセウスです」

 

ゆったりと話をしていく。分かりにくい世界観の話だ。とてもじゃないが想像出来ないし、それはアルセウスが人間では理解の及ばない高次元生命体であると表している。

 

「私達人間やポケモンさえ居なかった頃の話ね。何も無いところからアルセウスはものを生み出すことが出来る」

 

「ええ、それからアルセウスは色々な概念を生み出しました。時間、空間、反物質、感情、生物。この世界を形作る要素はアルセウスによって誕生した。それがシンオウ神話の大元として語られます。ヒカリさん、シロナさん、あなた方は恐らくこれらを司るポケモンに心当たりがありますね?」

 

「えっと……?」

 

「パルキア、ディアルガ、ギラティナ、あとは三湖のポケモン達のことね。ユクシー、アグノム、エムリット。それらは全てシンオウの神様として言われているの」

 

「ああ!あの!確かに見たことあります!」

 

だろうなあ。そこら辺調べさせて貰ったよ。十数年前の旅の途中でシンオウとホウエンについては詳しく調べた。世界崩壊レベルの伝説ポケモンの宝庫だからな。何が存在しているのか、ゲームとの相違点は。ヒスイ地方やシント遺跡なんかも調べる為に一時期奔走していた。

 

「でもやっぱり、何故そこまで知っているのかしら……?」

 

それには答えられないよなあ。俺の知識はこの世界では異常だ。というかギラティナに関しては文献が残っていないと言っても良い。つまりまともに対応したら危険になる。こういう質問は聞こえないふりだ。

 

「つまりアルセウスというのは神話上、この世全ての創造神として扱われています。そんなアルセウスはこの世界を作る前にある巨人達との戦争というものがあったと言います」

 

これは恐らくレジギガスとの戦争だろう。正直ここまでの存在を示唆しておいてゲーム内に登場してないとは思えない。明言はされていなくても答えのようなものだ。

 

「えっと……じゃあそれが………」

 

まあそりゃ勘違いするよな。だがその戦争の巨人達とレジロックらは別だ。

 

「うちゅううまれしとき そのかけらプレートとする」

 

「……………?」

 

これはプレートというアイテムに書いてあるこの世界の始まりについてだ。この世界の人間では絶対に分からないだろうな。なんせ何時から存在するのかすら分からないほど昔のものだからな。そんな文字なんて読める訳がない。

 

「プレートにあたえたちから それはたおしたきょじんたちのちから。うまれてくるポケモン プレートのちからわけあたえられる」

 

「………っ!?それって………!」

 

おおー、鋭いな。今ので分かるか。いやシロナだしそりゃそうか。少し情報を与えすぎたかもしれないが……まあ流石にこの程度なら大丈夫だろう。

 

「何々?いきなりどうしたの?」

 

「これはこの世界に存在するプレートと言うものの裏側に書かれた文字だと言われています。かいつまんで言うと、今この世に存在するポケモン達のタイプはプレートから分け与えられたもの。そのプレートの元はアルセウスが倒した巨人達の力だと思われます」

 

「巨人………つまりそれが今回の三体?」

 

「そこなんですが、恐らく少々違う物であると考えられます。というのもですね、実はプレートにはノーマルタイプのプレートが存在しないんですよ」

 

これレジギガスを倒すか捕獲すると手に入るんだよね。つまり逆説的に各タイプに対応する巨人が居て、そいつらは全員が倒されてるからノーマルタイプ以外のプレートが有るわけだ。倒した巨人の力ってそういうこと。

 

「???」

 

「文書によれば、プレートはポケモン達のタイプの源のような物なんだそうです。そしてノーマルプレート以外は存在している。つまりはノーマルタイプの巨人が存在しているんです」

 

「何だって?」

 

「それは……どういうこと?」

 

素早く反応したのはダイゴとシロナ。やはり年齢が高いからこそ大人組は危機察知が出来ている。修羅場を踏んだ場数が彼らをチャンピオンへと導いたのは言わずもがな。経験がものを言うのは確かだ。

 

しかし、やっぱりここまでは知らないかあ。いや、というかレジギガスに関してはプレートの神話でしか語られていないからか?

しかもレジロック達はまだ捕獲したばかり。レジギガスが解放されている筈がない、か。

 

「そしてこれが答えに繋がります。ノーマルタイプの巨人は自身に似たポケモンを特殊なマグマや氷山、岩石から作ったと言われています。大方、それがその三体の正体でしょう」

 

そう、ゲームの説明にもあるがレジギガスが作ったらしいんだよねあいつら。でも他の巨人は倒されてるからその後に作ったんだろうな。どうにもアルセウスに挑むにはあいつらは格が足りない気がするし、作った時期が人間が存在するようになってからだ。

もしかしたら居なくなった仲間を思ってたのかもしれないな。そうだったとしたら……切ないよなあ。

 

「あー……少し待ってくれるかい?」

 

「私も。頭痛いかも」

 

「何だか壮大過ぎて……」

 

「………」

 

ダイゴでさえ目頭を押さえている。まだ若い主人公二人には難しい話だろう。一方シロナは何か考えるような表情をしている。まあ基本的なことは知ってたんだから彼女にとっては楽な内容だったたんだろう。

 

「胡散臭い話ですから。信憑性なんて無いですし、話半分に思って下さい」

 

「けど、それは事実かもしれない」

 

「………そうですね」

 

鋭い。鋭すぎる。彼女の優秀さがそうさせるのか、はたまた修羅場を越え続けた者の本能か。でもこれが事実かどうかは俺にだって分からない。あくまでゲームの時にはそう見えただけだ。こっちじゃ色々と違うだろう。

 

「貴方はあくまでそう言われている、と確実な答えは提示しなかった。けどまだ何かありますね?」

 

あるね。全然ある。まだまだ大事なことを隠してるが、別にそれで良いじゃないか。

 

「それを答える義務もありませんから。ここまでが私の仕事です。ノーマルタイプの巨人の居所も、アルセウスの正体も、またそれ以外に作り出された巨人の詳細も。全ては貴方達が解決することです。私は関わりません」

 

「はっきり言うんですね。噂の通りなら、貴方はそういうことに進んでいくものだと……」

 

噂通りって、俺はどんな風に思われてんだよ。確かに端から見たら怖いもの知らずに見えたかもしれないが、それは違う。悪の組織には関わらなかったし、有名になるようなことはある程度避けた。俺からすれば主人公や悪の組織、四天王やチャンピオンの方が危険だ。

 

「考えてもみてください。貴方達と私では住む世界が違います。貴方達が突き進む道に私では耐えられない。万が一にでも死にたくない。恥ずかしい話ですが、私は生きるのに意地汚いんです」

 

「………それは、そうですね。失礼しました」

 

「ああ!いえいえ!大丈夫ですから!あくまでも臆病な私が悪いんです」

 

「いえ、そんなことは……そうだ、一つ質問してもよろしいですか?」

 

質問?質問かあ。嫌な予感がする。具体的には前世の記憶が蘇りそうな……………発表……レポート………質問?ハッ!?これはまさか素人質………ぐあああああ!!?!

 

「あの……大丈夫ですか?」

 

「はっ!?あっいえ、大丈夫です。それで質問というのは……?」

 

「ユエヅキさんのアルセウスについての見解を聞かせてほしいんです」

 

「け、見解?」

 

「ええ。今までアルセウスについての文献や伝承はあまり正確ではなかった。しかしこうなると、貴方の見解は非常に貴重です。数少ないアルセウスの、及びそれら何かの謎を知り得ている人物。私は貴方からの情報が欲しいんです!」

 

謎?見解?伝承?はーん。何ぞ難しいことをおっしゃいますな。それで、何だって?見解?…………感想でも良いかな。

 

「……な、なら私のアルセウスへの感想でもよろしいですか?」

 

「ええ、お願いします」

 

まあ感想なら簡単だな。というかこの人もよく俺の話になんか耳を傾ける気になるよな。あんな登場の仕方したのにある程度敬意を払って貰えてるし。やっぱりシロナは最高だよ。

 

「俺から見たあれは、全てを監視してるクソ野郎、ですね」

 

「ク、かん、え?」

 

「深く考え過ぎないで下さい。所詮妄言です」

 

実際全ての世界を監視してるし、異世界もパラレルワールドも管理してるよあいつ。んでもって本来のあいつは一体しかいない。

俺らがゲームの時に使ってたのはただの分身。本体は実際に世界を生み出した可能性のある高次元生命体。人間の理解なんて及ぶ筈がない。本当に創造神かもな、あのクソ神。

関係無い少女を知らない世界に送り込む程度には倫理観バグってるけどな。神は人間の文化も価値観も分かりゃしない。人間がアリの気持ちを理解出来ないのと同じだ。

 

「さて、そろそろ私は退出させていただきます。何かありましたらダイゴさんに言って戴ければ向かいますので」

 

「え、もう行くんですか?」

 

「ええ、私が居ては話しづらいことも有ると思いますので。皆様で親睦を深めて戴ければと思います。私はあくまでガイドのようなものですので」

 

「そうなんだ。私もダイゴさんから話を聞いてたから、いつか話したいと思ってたの。また今度よろしくね」

 

ダイゴ貴様ぁ………。後でハイクを詠ませてやる……!

 

「ありがとうございます。チャンピオンにそう言って貰えるなんて光栄です」

 

「私もです。これからよろしくお願いします」

 

「はい。お願い致します」

 

うーん、恐怖。この少女達、一見美少女に見えるが実際は大きく異なる。どちらも数多くのトレーナーの夢と希望を打ち砕いて廃人を量産してきた人間だ。そう思えば足も震える。何とか誤魔化してるがこのままでは限界を迎えてしまう。さっさと離れたい。

 

「それではガラルでの生活をお楽しみ下さい!」

 

「ああ、ありがとう。ユエヅキ」

 

 

 

 

扉を閉めて入れ替わる空気に触れる。緊張と高揚でやけに鋭くなった体に冷えた外気が心地良い。気付けばもう夜。夜空の星は昨日と変わらず、しかし感慨深く綺麗に思えた。

 

「はぁ………疲れたよ、ほんと」

 

張り詰めていた意識を解き、強張った身体から力を抜く。ニコニコとした表情を消して、楽で地味な仏頂面を浮かべる。

 

今日はもう休みたい。久しぶりに酒でも飲もうか。アニメでも見ながらなんて……いや、きっと疲れて寝てしまうな。せめて風呂に入って、洗濯して、スキンケアぐらいは、な。

 

「まずはコインランドリーか………よし、笑っていこう!」

 

気分を上げながら歩くガラルは、ほんの少しだけ楽しかった

 

 

 




感想誤字報告などありがとうございます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。