シリーズ通して語られるだけの人   作:I'mあいむ

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日間ランキング4位に一瞬なったのは流石に驚きました。10万UA等々皆さまありがとうございます!一話一話の緊張が重くなるんですね、こういうの。


披露宴のバトル

 

「それでは次の余興に移らせていただきます。どうぞ!」

 

当初は新郎新婦の入場が終わって帰ろうなんて思っていたが、どうやらそうもいかないらしい。本当にふざけているというか何というか。シロナと同席ということもあって完全に退路を断たれた俺は、今最悪のパフォーマンスをする羽目になっている。

 

「今回何と特設ステージにて、シンオウ地方のチャンピオンとして名高いシロナ様がバトルを披露して下さいます!」

 

「シンオウでチャンピオンを務めています、シロナです!今日はよろしく!」

 

うわっ、凄い声援。俺この後に出るの?ガチで……?

 

どうやら元々サプライズでバトルをする構想があったらしい。シロナにとって新婦さんはそれ程迄に親しい友人なのだろう。だが俺がいなかったらどうするつもりだったのか。新婦さんも相当強いというのはシュンヤさんから聞いたが、本当にそれで押し通すのは無理がある。

 

あの人もしかしてポンコツなのか?

 

「そして今回のそのお相手はこの方です!」

 

んな訳でスポットライトが当てられた訳だが。いやあ~~、場が白ける白ける。全員誰だこいつって感じで見てくるんだから、こっちとしてはキツ過ぎる。ただでさえ緊張してるのにさ、これで知られてるかも分からんような名前を出すのは気が引けるわあ。

 

「………はい、会場が白けたところで自己紹介させていただきます。私、約10年程前にバトルジャンキーと呼ばれていた者です。知らない方が多いと思いますが、宜しくお願い致します」

 

「「「……………」」」

 

これたぶん誰も俺のこと知らないんだろうなあ。やっぱり若い子が多いし分からないよね。おっさん世代なら知ってるのかもしれないけどこんな年齢層じゃなあ。俺の上司ならもしかしたら覚えてるのかもな。

 

バトルジャンキーってあの?

 

え、あれ本物?

 

でも失踪したって……

 

もう良いや。さっさと始めてしまおう。どうせ一戦だけなんだ。所詮シロナの噛ませ役。目立つようなバトルをしてやれば良いだろ。

 

「……やりましょうか」

 

「ええ、行くわよガブリアス!」

 

いやバキバキやんけ。え………何この人?披露宴で?600族?舐めてんの?

 

いやいやいや、会場壊れるて。流星群撃ってみ?一発で死ぬで?ドラゴンクロー使ってみ?ステージ真っ二つやん。

 

ええ?なんなんこいつ。俺こんな頭おかしい人と戦うの?………全力で誤魔化さないと披露宴処じゃ無くなるな。ウダウダ言ってる場合じゃない。覚悟はある筈だ。

 

「くそっ、遊んでくれサザンドラ!」

 

「ガブリアス、手始めにドラゴンクロー!」

 

いやふざけんな!だから壊れるだろうが!

緑色の光を纏って近づいてくるガブリアスに視線を合わせる。一瞬シロナの一挙一投足を見る。何を考えているのか分からないが、バトルをする気なのは分かった。興奮で後先考えていないのかもしれない。

 

「ラスターカノンで迎え撃って!」

 

直前まで引き寄せたガブリアスの腕に白い光が放たれる。

 

何度も苦楽を共にしたからこそ、サザンドラへ無駄な指示は不要だ。自然と俺の考えを理解してくれているからこそ、事前にラスターカノンを構えてくれていたのだろう。

 

着弾点から吹きすさぶ衝撃波が肌に伝わる。煙が立ち込め辺りが見えなくなる。食器類なんかは無事だろうか?設備の方に心配が残る。

晴れた煙の先には無傷のガブリアスが立っていた。

 

「やっぱり通じないのね」

 

「そんなことより加減して貰えます?会場が壊れますよ?」

 

「そんなに柔に作られる筈がないわ!ガブリアス───」

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

化石だと語られた人間が目の前にいる。前時代の遺物、今のバトルには付いてこれないと、そう言われる男。

 

しかし、確かにトップだった。一時代を築いたと言える程の強さを誇った男。誰にも分からない神秘を多く持つ。未来予知かのように指示を出す。全てを嘲笑うかのように技が突破される。

 

曰く、英雄の出現を知っていたと。曰く、伝説のポケモンを退けたと。曰く、"この世界の者でない"と。

様々な噂や憶測が流れた。

 

白煙の先に映った瞳は、凍えるかのように無機質。たった一人、この世界にただ一人異彩を放ち続ける男。

 

……分からない。謎だけが彼の情報。圧も、優しさも、苦しさも、何も彼からは伝わってこない。

どうしてバトルを止めてしまったのか。どうして突然姿を消したのか。問いたいことは幾つもあるのに、それは拒まれる予感がした。

 

楽しい。空を切るような、何も掴めない、本来なら苦しいだろうバトル。けどそれが凄く新鮮で、私は必死にその深奥に迫ろうとする。まだ何か、彼が見せていない何かがある。ヒカリやダイゴとは違う。とっておきのようにピンチになったら使うものじゃない。本当に見せる気は無いのだろう。それでも私は───!

 

「力の限りを尽くして貴方に勝つ!ガブリアス、メガシンカ!」

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

目の前では神秘が轟きその全てを変えていく。阻む障害を排除し、その威容と暴虐を示さんとしている。ポケモンとしての一つの到達点。代償を伴う代わりに、圧倒的な力を授ける。それがメガシンカ。

 

「……………久し振りかもな。本気で行こう、サザンドラ」

 

世の中は本当に儘ならない。こんな所でも無ければもう少し頑張ろうと思っていた。しかしこれは大衆に見せる為の娯楽。魅せるバトルを求められる。泥仕合なんかは認められない。出来るだけド派手に、それでいて白熱してるように見せたかった。シロナの強さが際立つようにやる予定だった。

 

だが視線の先の女が全てを引っくり返した。

もうこれは必死で追い縋る必要がある。そうでもしないと耐えられない。圧倒的な差で勝負が決まってしまう。それはよろしくないだろう。

これはあくまで仕事だ。義務は果たさねばならない。大人としての責任を負うことが出来なければ、俺の価値など、最早無に等しい。だからこそ、いつも以上に気合いが入る。

 

「ガブ「サザンドラ、わるだくみ!」ッ!ドラゴンテール!」

 

相手のガブリアスは恐らくまだ体力が残ってる。ステロを撒かない分今回は攻撃重視だな。交代が無いからステロの効果が半減するしな。

んでもってこのドラゴンテール。空中に飛んでから叩き付けたい所だろうが、サザンドラが避け難いのは横なぎ。

相手はシロナのポケモン。反射で避けて間に合うものじゃない。

……十中八九横なぎだな。空中で横なぎは難易度がクソ高いが、あのガブリアスならどんな無理難題も可能にしてくる筈だ。

 

引き付けないと手痛い追撃が来る。ギリギリだ。わるだくみを選択した時点で隙が出来るのは仕方ない。ただ、サザンドラはあと一撃で落ちる。体力にはもう余裕が無い。

 

まあそれでもこの子は揺らがない。

 

「今だ!上に避けて!」

 

「くっ!まだよ、畳み掛けて!」

 

俺の指示に直ぐ様従って動いてくれる。鈍い光を纏った攻撃を翼をはためかせて避けていく。

 

尚もガブリアスは仕掛けてくるがそれじゃ一歩足りない。

 

「あくのはどう!」

 

「ドラゴンクロー!」

 

こんなのはただの時間稼ぎだ。どちらの突破口にもなりえない。あくのはどうはドラゴンクローによって破られるが、サザンドラは避ける為の余裕を稼げる。

 

こういうのはデカイ一発で状況を変えるんだ。勿論戦法を練ってどうにかすることも出来るだろうが、どちらも動けない場合はこれしかない。

 

さて、サザンドラがもし高火力を出したい場合、どんな技が存在するのか。答えは簡単だ。本気と言うのならばこれを出すに限る。

第四世代から登場したドラゴンタイプの代名詞。その迫力は他の技と一戦を画す。俺は今でも覚えてる。失われつつある前世の記憶の中で輝いていた言葉。彼の言う通りとはいかないものの、そこに一切の陰りは無い。

 

「ド派手に行けよサザンドラ!」

 

「ここからよガブリアス!」

 

「「流星群!」」

 

思えば、誰かの魂を込めた言葉が俺を前世の記憶と繋ぎ止めたのかもしれない。ことこの場面においてその知識は俺を助けてくれる。バトルの時はいつもあの廃人達の言葉が蘇る。

 

「マンダの流星群は強い。ま、ボーマンダじゃないけどな」

 

彼らが本当に憧れたであろう光景が目の前に広がっている。

巨大な岩が空から降り注ぐ。輝く星々のように見えるこの技は周囲の全てをなぎ払う。星がぶつかり合い、砕かれ、それでも対象を落とそうと進んでいく。轟音と破壊で埋め尽くされた空間は小さな戦争のようだった。

 

特攻2段階上昇、いのちのたまによる威力上昇、そしてレベル差。例えメガガブリアスであろうとも無傷では済ませない。俺のサザンドラは例えチャンピオンが相手であろうと凌駕している。

彼女の相棒に傷が付いた姿が見える。

 

「チャンピオンシロナ、貴方に挑ませて戴きます」

 

「ええ、全力で受けて立つわ!」

 

土煙の先の瞳はただひたすらに輝いていた。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

声援が聞こえる。拍手が鳴り止まない。大歓声の中、バトルは遂に終わりを告げた。

 

「ありがとうございま─────」

 

目の前でサザンドラが崩れるのを見ながら、俺はその場を後にする。目指すは何処か休まる場所。

 

「はぁ………」

 

舞台袖のような場所にはけた後、シロナとの一戦による疲弊で俺は座って動けなくなった。

 

「それが勝者の姿?」

 

「…………そこはまあ、許して下さい。ほら、約束は果たしたんですから」

 

近づいてきた美女に一瞬ビクついたが、それすら面倒だと思ってしまう。俺ももう若くはない。ここまでのバトルともなると体力を持っていかれる。

 

「というか、勝者はそちらでしょう。流石ですチャンピオン」

 

「……負ける気だった癖に。あんなの譲られたようなものよ」

 

「ははっ、そりゃ仕方ないじゃないですか。ここは披露宴、場が白けてはいけない」

 

結局のところ勝ったのはシロナ。いのちのたまによる反動でサザンドラが倒れて敗北。しかし、ガブリアスをボロボロになるまで追い込めたのでギリギリの白熱した試合だった。会場は大満足、余興としては大成功だろう。

 

「結局本気で相手をしてくれてないし、私はまだ不満よ?」

 

「いや、ただのおっさんがここまでやったんです。そこは健闘を讃えて下さいよ」

 

「無理ね。手は抜かれてるんだから」

 

「手厳しいっすねえ……」

 

手を抜いていた訳じゃない。本気のベクトルが違っただけだ。魅せるバトルではあった。負ける気でいた。全力でやり始めたのは途中からでもあった。それを本気ではないと捉えるのなら、確かに俺は本気じゃなかった。けどそれを間違えているとは思わない。それだけが全てではないから。

 

「…………」

 

「……何で、バトルを止めたの?」

 

それは、答えて良いものだろうか?

別に俺自身は何とも思っていないが、出会って間もない人に話すべきでも無い話題だ。………気にしなくて良いか、そんなの。聞かれたら答える。それで良いよな、今ぐらい。

 

「この目です。汚いでしょ?野生のバトルでやられちゃって。流石にもう止めた方が良いかなと」

 

「野生?そこまで強いポケモンと?」

 

「ええ、伝説のポケモンですよ。やっぱり強かった」

 

「そう………なら姿を消したのは?」

 

「それはバトルに出なくなっただけです。バトルジャンキーなんて持て囃されてましたが、あれもよく分からなかったですしね。あまり有名になるのは性に合わないですから」

 

「本当にそれだけなの?」

 

まあ違うよな。本当はあんたらに会いたく無かったっていう非ッッッ常に重要な理由があったんだがな。ものの見事に上手くいかない。主人公達と戦わなくて良いだけマシか。

 

「例えそれだけでは無くても、良いんじゃないですか?私自身の考えることなど、どうでも良いと思いますよ」

 

「私にとってはどうでも良くないわ」

 

「ええ?………ああ、申し訳ないですけど、期待には応えられませんよ」

 

彼女が言っているのはきっと、神話についての回答だろう。言うことは無いかな。そんなベラベラと喋ってたら本体のアルセウスに狙われる可能性もあるしね。

 

「やっぱり答えてくれないのね。私達で見つけろと?」

 

「そうですね。というか、そんなに心配しなくてもいずれ見つけられます。その先の結論がどうなるかは分かりませんが…………まあ、そこまで行けたなら、答え合わせでもしましょうか」

 

別に、俺に害が無いなら良いんだ。そりゃさ、他人の好奇心の為にリスクは侵したくなんてない。クズと言われようが、死にたくはないからな。

 

「約束よ?」

 

「あくまで、シロナさんが結論に辿り着いたらです」

 

「ええ、それでも構わないわ」

 

「………」

 

外が騒がしいけど、ここはとても静かだ。本来なら気まずい筈の空間にも疲れで何も感じない。妙な静寂がここにはあった。

 

「………ねえ」

 

「はい?」

 

「また、貴方はバトルをするの?」

 

「…………」

 

何となく、それは重要な問いに思えた。どういう意味で言われたのだろうか?もし、それがバトルジャンキーとしての復帰、公式戦の活動という意味なら否だ。

 

だが、ただのポケモントレーナーとしてバトルを受け付けるという話なら、俺はもう一度バトルをするだろう。

現状の俺なら大丈夫だろうが、この目を失ったバトル時の俺は、明らかに強かった。それもシロナと同レベルと言える程に。今の俺がどのくらいかは、正直分からない。恐らく、チャンピオンよりは弱い。だがあの時のまま戦い続ければ、主人公達に嗅ぎ付けられただろう。

 

もしかしたら、俺はまだ迷いがあるのかもしれない。このままジムトレーナーとして復帰して良いのか。バトルは止めておくべきじゃないのか。しかし迷いなんてのは最初から答えが出てる物だ。

 

「ええ、やりますよ」

 

「じゃあ次は公式戦ね」

 

「いや、それは遠慮しておきますね」

 

「………え?」

 

「公式戦に出るつもりは無いですよ。シロナさんみたいな強い方と戦うのは疲れますので」

 

マジで公式戦とか二度とやりたくねえ。今はジムチャレンジだから良いが、終わったら絶対やらんわ。こんな緊張するようなこと面倒で仕方ない。

 

「いいえ、もう一度やるわよ」

 

やめてくれよマジで……。そうポンポンとあんたレベルと戦うのはキツイよ。

 

「……取り敢えず、そろそろ戻りましょう」

 

少しは回復した体に力を入れる。あまり時間をかけていると良くないだろう。同僚の晴れ舞台をしっかりと見なければ。

 

「改めて、チャンピオンシロナ。今回は貴重な機会を戴きありがとうございました」

 

「ええ、どういたしまして。私もあなたと戦えて嬉しかったわ」

 

「憧れの人にそう言ってもらえると言うのは、お世辞でも恥ずかしいですね……」

 

「憧れ?」

 

「ま、まあ。やっぱりカッコいいですからねシロナさん。良くテレビとかで見ますし………さ、先に行きますね!」

 

美人でカッコよくてバトルも出来て頭も良い。憧れない方がおかしい。ただ本人に言うのは恥ずかしいものがある。

 

ある程度盛り上がっからな。冷ややかな視線とかは流石に無いよな。

 

 

「あ………行っちゃったわ。憧れか……ふーん。なら尚更……」

 

 

早く帰って寝たいなあ。ジム戦は……また明日で良いや。

 

「最近忙しいなあ……」

 

何故か寒気がした気がする。疲れてるんだろうか?

 

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