シリーズ通して語られるだけの人   作:I'mあいむ

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お久しぶりです!最近忙しいので頻度落ちますがまだ生きてますのでよろしく!


若いままではいられないけど年老いたくも無いのが本音

 

「あらら……」

 

「くっ、もう一度です!」

 

「うん、幾らでも付き合いますよ」

 

吹き飛ばされてしまったブリムオンを見つつ、正面の少年に視線をやる。

狂気とも取れるような情熱を瞳に宿す少年の姿は、何処かの物語を飾るに相応しい。端整な顔つきに真っ白でくるくるとした癖っ毛、男は密かに嫉妬した。

 

この顔が自分にもあればなあ、と。

 

「ニャオニクス、交代してくれるかい?」

 

「え」

 

「流石にニャオニクスだけ相手にしていては意味がありませんから。ビートさんもつまらないでしょうし、ウルガモス、お願い」

 

大人としての対応を余儀無くされている為の敬語。男の内心は何とも複雑であった。自身の欲しいものを既に持ち、今まさに開かんとしている才気は自分とは比べ物にならない。

何故このイケメンを自分よりも強くせねばならないのか、勝てる部分がただの一つも無くなるのを加速させて何がしたいのか。

どちらも時間の問題であり、男が関わらずともそうなる運命ではある。それを理解しつつも笑顔で硬く固定した表情筋の裏側で溜め息が出る。

依頼を受けたこと、それは報奨が発生する仕事であるからと分かりきった答えを頭で反芻する。自身がそうであるべきと至った大人という像に準じるのは、年齢を考えれば当然ではある。しかしその内心と乖離を見せるのは仕方ないことだった。

 

「ギガドレインで動きを止めて、その後ちょうのまい」

 

「やらせないで下さいクチート!アイアンヘッド!」

 

それでも本気でやらねばならない。仕事とは個人の心情の介入を許して良いものではない。極端に言えば、一度受け入れてしまえば例えどんなに倫理やモラルに反したとしてもやりきる必要がある。

薄汚く、純粋なままでいられない社会が要求するのはそういうことなのだ。

男は正義の味方や悪のカリスマになれる程の信念や信条を持ち合わせていない。それ故に口に出すことも無かった。

 

「かみくだく!」「避けて、もう一度」

 

年端もいかぬ少年への嫉妬。それはあまりにも醜いことだ。男は見た目以上に生きているのだから尚更である。しかしそれが自身を自身足らしめている要因だというのも理解していた。

 

「ウルガモス、だいもんじ」

 

「あぁ……!」

 

炎の中で力尽きるクチート、プライドが打ち砕かれたような顔をするキャラクター。それでもまだバトルは終わらない。物語の舞台裏にすら映らない、影で満たされた何処かでの話だった。

 

「さあまだまだいきましょうか、ビートさん」

 

「ッ……はいっ!」

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「おっ、シャッター無いじゃん」

 

ガラガラのシャッター街、陰鬱で寂れた雰囲気が醸し出すパンクな迷路。スパイクタウン。ガラルの寒さを防ぐ為にアーケードで構成されたここは、他の街と違い暗く、廃れている。

 

「すいません、ジム挑戦お願い出来ますか?」

 

そんな廃れている場所でもジム挑戦は行われる。その理由はここのジムリーダー、ネズによるものだ。

この地方のジム挑戦、並びにバトルの発展にはダイマックスが深く関わっている。そんな中この街ではダイマックスが出来ない。そもそもダイマックスとはパワースポットでなければ行えないのだから、普通の街では不可能なのだ。

そんな中ネズは地元愛でこの街を盛り上げようと頑張っているってことだ。彼自身人気のミュージシャンだからな。不可能ではないのだろうが、いかんせん人が集まらないのが現状らしい。

 

彼がスパイクタウンを街ごとジムに出来たのはその高いバトルセンスによるものだ。トレーナーとしての実力を測るという意味ではダイマックスは邪魔な場合もある。だからこそそれを試すというコンセプトで何とかしているようだ。

 

「くっ、お強いですね……」

 

「そりゃどうも。引き続きお仕事頑張って下さい」

 

未来の同士達を倒しながら進んでいく。奥に行けば行くほどこの街はネオンの光が輝いている。日本の商店街のような、しかし外国の感じがするここは独特だ。

 

シナリオではこの街の入り口はシャッターで塞がれていたのだが、それももう数日程前の話なのだろう。今では普通に通ることが出来る。

最近はちらほらと野生のポケモンがダイマックスする事件が起きている。それがこの街の近くで起きたことでシャッターを開けたらしい。シナリオも終盤だしな。ブラックナイトも近いのだろう。あれは正しく災害だからな。ガラル中のポケモン達がダイマックスする可能性がある。俺も少しは構えておかねば。

 

「俺もこういうのやらないといけないのか……?」

 

この街はエール団の本拠地であるし、スパイクジムでもある。そうなるとどうなるのか、ジムトレーナー達がエール団に変装してバトルするのである。

何でこう、ジムトレーナーってのはこういう服装なんだ。流石にカミツレさんのところでこんな服をする可能性はないと思うが、あの人のファッションセンスってそういえば………やめとくか。これ以上は嫌な予感がする。

 

正直、ジム挑戦をして本当に良かった。このように異郷の地で先達の仕事を間近で学べたのは貴重な体験だろう。同時に挑戦者側の気持ちを再認識出来た。これで少しは新人として失礼の無い行動が可能だろう。まあ、こんなのはあくまで素人に毛が生えた程度だが。

 

「そういえばここにはカメラも無いのか?」

 

ここまで廃れているのなら中継なども行われない筈だしな。それはそれでやりやすいよな。

 

特に障害も無く奥へと進んでいく。途中ズルズキンによって道が塞がれていたが普通に迂回出来たのでモーマンタイ。そうして辿り着いたのは最後の間。少し開けた場所に出る。

 

誰かの声と誰かの歓声。騒がしいと形容できる程に音が鳴り止まない。ワンマンライブは好調なようだ。

 

「……あー、確かに凄いな」

 

聞こえてくるのはアカペラの癖に確かに人を惹き付ける歌声。まあ、結構シャウトが効いてることもあって好みに関しては人を選ぶだろう。本来はバンドメンバーが居るのかもしれないが、どうやら今は不在らしい。

 

「………新しい挑戦者ですか……最近は良く来ますね」

 

ジム挑戦者を迎えるためにステージを下りてくるジムリーダー。バトルの為にフェンスで覆われた会場から出ていくファン達。これがこのジムのバトル形式。ライブ会場でそのままジムリーダー戦が行われるのだ。

 

「………よろしくお願いします」

 

「ええ、よろしくお願いします」

 

どうやら気づいて無いらしい。なんか自分から明かすのも面倒だしなあ、良いか別に。マリィにはよろしくとか言っちゃったけど気づかないならそのままやろう。

 

「まずは自己紹介だ!おれはスパイクタウンのジムリーダー、哀愁の─────!」

 

七つ目のジム、俺が知る中でも上位の実力者ネズ。他の地方でなら四天王クラスだろう。何も油断は出来ない。それは今までとはレベルの違うバトルだ。

 

「気合い入れていこう、ギルガルド」

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「せいなるつるぎ!」

 

「じごくづき!」

 

交錯する一撃、赤黒い光と蒼白い光が互いに弾き会う。しかし先に消えたのは赤黒い炎ような光だった。

 

「はあ、まさか一体に負けるとは……」

 

「ギルガルド大丈夫か?ああ、本当にありがとう」

 

危ね~~~!!!ヤバかったぞ本当に!

タチフサグマ怖すぎ!最後とかほぼ運ゲーだって!!うわあ~~良かったあ~~!!

てかこいつこんな強かったっけ!?前やった時はあんなチンチクリンだったのに……成長怖っ!

 

「それじゃあこれがスパイクジムのあくバッジです……どうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

ほーう、これがね。確かに悪魔っぽいデザインだな。あくタイプのジムリーダーは比較的珍しいから新鮮だわ。

ま、あくタイプのポケモンって扱いが難しかったりするから仕方ないけど。ドラゴンタイプもそうだけどトレーナーの才覚と適性が人次第すぎるんだよなあ。それを全部無視してるから主人公がチートなんて話な訳で。俺はサザンドラを御するのに数年かけたしなあ。

 

「……どうしたんです?」

 

「え、ああ、すいません。それじゃあ、ありがとうござっ!?」

 

いきなりなんだあ!?

 

鳴り響く轟音。揺れる足元。いきなり起きた異常事態。地震か?この世界で?日本ならいざ知らず、この世界じゃ滅多に起こらないぞ。

 

遅れて聞こえてくる音は何かの鳴き声のよう。いやこれポケモンの鳴き声か?

 

「これは……またですか……」

 

また?ああ、もしかして例のダイマックスのあれか。ムゲンダイナのエネルギーが地脈だかなんだかに流れ出してるっていうやつね。

でもこれ結構近くね?大丈夫?あいつのエネルギーってポケモン単体に作用するんじゃなくて、土地をパワースポットにしてる可能性もあるよな?

………まずいかもなあ。このまま何体かダイマックスされたら対処できるか怪しいぞ?

 

………一応行くかあ

 

「すいません私この辺で!」

 

「待ってくださいそっちは!………あー、仕方ないですね。俺も行くしかないか」

 

 

 

 

詰んだーーwww

 

ええ?なにこれ?いや三体はやりすぎでしょ。ムゲンダイナ君さあ………。

 

目の前に広がるのは視界を埋め尽くす程巨大なポケモン達。上空の赤い雲が特徴的。逃げ遅れている民衆はゴミのようだ!(王家の大佐並感)

 

いやほんとどうすんのこれ。ギルガルドだけじゃ無理よ?チャンピオンは?………来る気配無し!無能すぎるんだよなあ。

下手すればというか放置すれば全然死ぬでこれ。

ダイゴとか間に合ってくれたり……しないよなあ。いや一応電話だけでも……

 

「えっと、これか?これだな」

 

慣れない手つきでスマホを操作してダイゴに電話をかける。よくもまあこんな悠長にやってられるよな俺も。

 

prrrrrrrrガチャッ

 

「もしもしダイゴ!?」

 

「え、あ、うん、そうだけどどうしたんだい?」

 

聞こえてくるのは慣れ親しみたくないスカした男の声。イケメンが舐めやがって、殺○ぞ。今そんなことやってる暇なかったわ。

 

「ごめん今スパイクタウンまで数分で来れる?」

 

「す、数分?」

 

「目の前でダイマックスしたポケモンが暴れてるんだよ!うおっ!ちょっと待ってイヤアアア!!」

 

目の前で技を撃つな!!当たるでしょうが!やべ死ぬッ!

 

「なんだかまだ余裕がありそうだね」

 

「ふざけんなテメエ!おいちょっ待ッちょッ!電気がっ、死ぬってマジで!!」

 

「ははっ、頑張ってくれ」

 

「仮にも元チャンピオンだろうが!!」

 

必死に足を振って逃げ惑う。たった三体の戦闘の余波で辺りはボロボロ。何でまだ生きてるのか不思議でしょうがない。

 

「そんなに言うなら自分でやれば良いじゃないか。君なら出来るよきっと」

 

「命あっての物種か………くそっ、サザンドラ!力を貸してくれ!」

 

だから主人公に関わりたく無かったのに!変に首突っ込まなきゃ良かった!

 

「流星群!」

 

久しぶりだなぁこんなに命を賭けるのは!!

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「あーあ……」

 

ホコリや泥で汚れてしまった服を見ると気分も下がる。洗い流すのは大変だ。せっかくだし新しいのを買ってしまいたいところだが、金銭面が怖い。最近散財しすぎな気がするのだ。バトルを受けてるからそれなりに収入はあるのだがそれでは流石に足りない。

ゲームとは違ってここは現実なのだから税金やらなんやらもしっかりと存在している。そこら辺は大人の事情だからとやかく言わないが、さっさと他の収入源を作りたいところだ。

 

「これは………何してるんですか、ユエヅキさん」

 

「あれ?気づいた?」

 

振り返れば呆れ気味のネズが見える。どうやら気付かれてしまったらしい。

 

「どうしてあなたがここに?それにジムチャレンジなんて……てっきり俺はもう引退したと思ってましたよ」

 

「したよ、引退」

 

「やっぱりそういうことですか……」

 

「ああ、結局こうなったんだけどね~」

 

結果的に俺はこうしてバトルに戻ってきてしまった。まあ、以前みたいにやってはいないから少し違う点もある。

 

「今回はどうしてガラルに?」

 

「あー、会社をクビにされたっていう……」

 

「……すいません」

 

「謝るなよ!?」

 

そこで謝られたら俺がただの可哀想な奴みたいだ。……そうなのかもしれないが、まあ自分で思い始めたら終わりだからな。そうじゃないと信じたい。

 

「マリィが言ってたのはあなたでしたか」

 

「そうそう、初めて会ったけど聞いていた通り良い子だね」

 

「ええ、そうでしょう。あの子は自慢の妹だ。可愛くて格好良くて……あげませんよ」

 

「いらんわ!」

 

何だろうなあこれ。こう、ノロケを聞いてるようなそんな感じなんだよな。こいつシスコンにも程があるというか、まあ大切に思ってるのは良いことか。

 

「そういえばその眼帯はどうしたんです?」

 

「ポケモンにやられた。それで引退。良くある話だ」

 

「そういうことですか。というか、こっちに来るなら連絡してくれれば良かったのに」

 

「お前も忙しいんだから、そんなこと言わないよ。それよりもちゃんと食べてるか?顔色が悪いぞ」

 

線も細いし、生来の色白い肌が更に増している。クマも酷いし、少しメイクで隠してるような感じだ。

 

「あー、最近はジムチャレンジで休む暇が少ないですからね」

 

「そういうことね……ま、あんまり心配してちゃ良くないな。ただ、死ぬなよ?」

 

「……あなたが言うと違いますね」

 

「体が資本だからな。ジムリーダーは妹に譲るからって今無理して良い訳じゃないよ」

 

「そうですね。俺も少し休みます。また今度会いましょう」

 

久しぶりに会ったあいつの姿は以前とは全く違っていた。俺の最初の記憶とは一致しているのに、俺の知っているネズではない。髪も、背丈も、あんなに変わってしまった。少し力無く笑う姿は成長と挫折を感じるものになった。

 

「うん、じゃあな」

 

だが安心もした。瞳にある意思はあの頃よりももっと強い。自信の無さを表したようなあいつの目じゃない。ならそれで良いのだろう。

 

「………変わっちまうなあ」

 

少しの勇気を貰った。そう遠くない地獄への覚悟が固まった気がする。

 

「最後の壁、行きますか」

 




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