シリーズ通して語られるだけの人   作:I'mあいむ

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毎回本当に不定期更新ですみません。あと2話程で一区切りつけようと思います。


どんなに取り柄の無いクズにだってやらなきゃならない時ぐらいある

 

「1枚欠けたタペストリー、ねえ」

 

ガラルの地方にかつてあった王国、その建国のあらすじを描いた四つのタペストリー。二人の青年が剣と盾を持ち黒く空を覆った厄災を打ち払った、まあそういう内容が描かれている。その活躍により人々を纏め国を二人で作ったってのが大まかな経緯なんだろう。

だが実際のところは少し違うと思われる。実はこのタペストリーはもう1つ存在する。しかも人間が何とかしたように描かれているが、実際は二匹のポケモンと二人の人間だ。二人の人間が持っていた剣と盾は二匹のポケモンを表している。

 

ザシアンとザマゼンタ、この地方の伝説のポケモンだ。主人公達のシナリオに大きく関係する二体。特に片方、ザシアンの方がヤバい。あのチート具合はちょっとおかしい。ゲームで一時期無双してたろあいつ。

 

まあ、そんな訳で建国時のお話は少々面倒なのが関わっている。俺としてはこのタペストリーを見れただけで十分だから、これ以上はノータッチでいきたい。

 

「ん?ここは……また迷ったか」

 

「…………」

 

おかしいよなあ……、何でタペストリーを見てただけなのにチャンピオンが横に居るんだ?

我々はその謎を解き明かすべくジャングルの奥地へと向かった。

 

「迷子ですか?」

 

「ん?キミは……」

 

「別に俺のことはどうでも良いんだが………あー、それで、迷子ですか?」

 

「ああ、そうだな。絶賛迷子中だ!」

 

「目的地は?」

 

「ローズさんの居るところだ!」

 

何処だよそれ……。まぁ、このチャンピオンが迷子癖があるのはゲーム時代でもそうだったしな。

 

「……ケータイ持ってます?」

 

「ん?ああ」

 

「ソニアさんか……あー、もしくはオリーヴにでも掛けたらどうです?」

 

「ああ、確かに!よし、それなら…………もしもし、すまないソニア。あぁ実は──」

 

案外楽に解決するもんだな。ここまで友好的にやってるのはブラックナイトが関係してる。もうすぐこの地方で引き起こされるブラックナイトはローズとダンデの二人の対立故に起きたことだ。

 

ダンデがローズとの話に遅れたりすると悪化する可能性がある。そうなると面倒だからさっさと向かって欲しいのだ。ソニアが近くに居ればありがたいんだがな。

ま、後は自分で何とかするだろう。ここら辺で俺は行こう。チャンピオンなんて関わって良いことが無い。

 

「ああ、分かった。待っているよ」

 

奥からそんな会話が聞こえたが気にせず離れていく。薄暗い廊下を曲がり階段を下がれば出口なんだが。

 

「………何でついてくるんです?」

 

「え?」

 

「え?」

 

???

 

今待ってろって会話があったんだよな?何でこいつこっち来てんの?

 

「ソニアさんを待たないといけないのでは?」

 

「確かにそうだね!」

 

「………戻りましょうか」

 

何でこうチャンピオンってのは変人ばかりなんだ。おかしいだろ。何がそうだね、だ。だったら戻ってくれよ。思考回路イカれてんのか?

 

そうして来た道を戻る。中世の建築物である外壁を残したこのナックルシティ。俺が居たのはその宝物庫だ。黒く経年劣化のある外壁はその歴史を感じさせるものだ。

なんだか高級感があるというか、独特の雰囲気を放っている。どれだけ年月が経ち価値観が変わっても、これが積み重ねた人の意志は通じるだろう。石畳の床から放たれる足音は静かな廊下に際立っていた。

 

「君はもしかしてユエヅキ選手か?」

 

「え?まぁ、そうですね。知ってたんですか?」

 

「ジムチャレンジャーだろ?どこか見覚えがある気がしたんだ!」

 

「ありがとうございます」

 

そんなに記憶力があるなら道ぐらい覚えて欲しいんだが、まあそういう問題でも無いんだろう。方向音痴ってのは記憶力云々とはベクトルが違うんだろうか?

 

「ソニアさんはどれくらいで着くんです?」

 

「少なくとも30分はかかるらしい!」

 

「それで済むならまだ良いですかね……」

 

電話1つで迎えに来てくれる美人幼なじみとかこいつズルいな。なんだ?チャンピオンってのはモテるのか?それなら俺もチャンピオン目指せば……いや、慣れないことはするもんじゃないだろう。人前に出るのは向いてない。

 

「君は、ギルガルドしか使わないのか?」

 

「え?」

 

「いや、違うなら良いんだ。けど、ギルガルドと君の戦い方は何か、違和感があるような気がするんだ」

 

キッショ、なんで分かるんだよ。

鋭すぎだろ。なんだこいつ超能力者か?たぶん俺に関して知ってることなんてほぼ無いだろ。チャンピオンってのはここまでのものか?だとしたら少し異次元だな。ワタル達とは何かが違うのかもしれない。

 

「今回の挑戦はギルガルドだけでいこうかと」

 

「それはどうして?」

 

「仕事をクビになりまして、職探しの為の実績代わりにと」

 

「そういうことか!へぇ、じゃあ今までのはまだ本気じゃないのか?」

 

そう言われると少し違う気もする。けど縛りプレイでの全力は本気かどうか言われれば、それは本気じゃないのかもしれない。

 

「尽くせる手は全てやりましたよ。ギルガルドとも全力でした。確かに他にもポケモンは居ますが、俺の中では本気ですよ」

 

「それもそうだな!うん、君の言う通りかもしれない!」

 

何というか底抜けにポジティブだな。ホップに似てるというか、これは血筋か?あまり見ないタイプというか、ここまでの奴はこの年齢になると居ないよな。良い意味でも悪い意味でも大人になるってことなんだろうな。

ただこいつは違う。あまり人を否定しない。大人になりつつも純真な熱を残したような存在。チャンピオンのカリスマ性ってのは色々な形があるがこういうのはこいつだけだろう。

 

「勝てますか?」

 

「誰にだい?」

 

「ほら、あの子ですよ。居るでしょう、あなたの推薦した」

 

「ユウリかい?」

 

ああ、成る程。ここで即答する辺り、こいつも感じているのだろう。こいつにとっては弟もその親友も、平等にチャレンジャーなんだ。ホップだと答えてもいいだろうに、それ程までに二人の実力は離れているのか?

 

「弟さんの方でも良かったんじゃないですか?」

 

「ホップも確かに強い。ジムリーダーにだって通じるよ。けど、ユウリはもっと強い。バトルはやってみるまで分からない。でも今のままじゃホップは難しい」

 

だよなあ。ホップは確かに強い。このまま続けていけばジムリーダーにはなれるだろう。グリーンと良い勝負も出来るかもな。それでもユウリはキツイと。チャンピオンから見ても見解は変わらないらしい。まあ、そんな奴がいるからこその物語だ。

 

「今年が正念場ですよ。あなたにとっても、この地方にとっても」

 

「この地方?」

 

「あなたはチャンピオンだ。その手にこの地方の全てが乗る時が来ます」

 

「…そうかもしれないな」

 

「1000年後の未来についてなんて、ただ一人の人間には背負えないですから」

 

「ッ!?………それは」

 

1000年後のガラルのエネルギー問題を解決、それがローズのやろうとしていることだ。ムゲンダイナが生み出す膨大なエネルギーを制御することによってそれを実現しようとするんだが勿論失敗に終わる。

ムゲンダイナは言ってしまえばウルトラビーストやデオキシスと同種だ。宇宙から飛来した全く未知の生物。しかも別世界から来た可能性まであると来た。そりゃ無理だろう。確かにこの世界の文明レベルは高いがあと五百年は必要だ。そういうのはAZの最終兵器ぐらい作れるようになってからやるべきだ。

 

「ローズ委員長は手強く、ユウリさんの強さは規格外です。どちらも不可能に近いですよ?」

 

実際シナリオでダンデは敗れた。ムゲンダイナという怪物、そしてユウリという化け物に。わざわざあれに挑むなんて、俺からしたら頭が可笑しいとしか思えない行動だ。

分かってはいる。それでもこの問いは無意味だと。俺はただ聞きたいだけだ。

 

「ああ、それでも勝つさ。なんせ俺はチャンピオンだからね!!」

 

「ええ、その通りだ」

 

いつだったか、ワタルは言っていた。負けるのを最初から考えることは無いと。ダイゴ曰く、僕はどんなバトルでも受けて勝つと。それは偏に、彼らが『チャンピオン』だから。チャンピオンというものに乗っている重み。そこには意味があるのかもしれない。恐らくそれはチャンピオンにしか分からないんだろう。

こいつもまたその重みを背負ってここまで来た。主人公達に最後立ちはだかるのは、人々の夢と希望に応え挑戦者達の決意と渇望を踏み砕いた、そんな裏側があった舞台装置だ。

 

今でも覚えている。この世界に来て、ワタルと出会って、レッドがチャンピオンになった日。どんなドラマも彼らの前には等しく無意味なんだと。

分かってた癖に見て初めて自覚した。自分の目の前にあるのはどうしようもない、本当にどうしようもないカラクリの歯車だったなんて、親友が負けた時に気づいた。上から見れば喜劇だった物語が横からは俺にだけ見える残酷さを放っていた。

それでもあいつの溢れる熱が偽物でないことを分かっていたから、俺以外の誰もが浮かべた笑顔が偽物ではないと、肌に熱を通して伝わってきたもんだから。

この世界に来て良かったなんて一丁前に思ってしまった。

 

「………頑張って下さいね」

 

静けさの中でふと、まるで独り言のように呟く。空気に溶け込むように霧散する言葉。この空間ではそれでも十分だろう。

 

「…ああ」

 

敢えてそう答えたのはきっとこいつなりの優しさで、俺が勝てないことを分かっているからだ。ギルガルドだけのセミファイナルは不可能だ。主人公補正なんて俺にはないしな。

 

「……君はどうしてポケモンバトルを始めたんだ?」

 

「なんですいきなり?」

 

「君が何を目指していたのか気になったんだ」

 

「あー、なんでしたかねぇ……」

 

こんなに無駄なことばっか覚えてるのに肝心なことは思い出せねえんだよなあ。ゲームを知って、ポケモンを知って、なら理由なんて一つかもしれない。

 

「楽しかったんですよ、たぶん」

 

ワクワクした。憧れていた。こんな世界あったら良いのになんて思いながら、麻痺してしまった感覚で現実に触れ続けた。誰だって最初はそんな簡単な理由で始めた筈だ。

 

「ダンデさんもそうでしょう?」

 

「ああ、そうだったに決まってるさ」

 

勝ったら嬉しくて、負けたら悔しい。そんな単純な話だけで世の中は回らないけど。

 

「負けられませんよ?」

 

「それは君もだな!」

 

「……フッ」

 

「はははっ!」

 

取り敢えずやるしかない。物語はとうに始まっているから。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「君の頃は─────」

 

「さあねぇ……ほら、来ましたよ」

 

ダダダッと階段を登る音が微かに聞こえてくる。どこか慌てたような足音は来訪者の性格を如実に表しているのだろう。

 

「ごめんお待たせっ!」

 

「ソニア!」

 

現れたのはオレンジ色の髪、お洒落な服で着飾った姿に負けない顔をした女性。まだ若さの抜けないお転婆具合と崩れていない髪は少し違和感がある。きっとすぐそこで直してから来たんだろう。

ということで主人公とヒロインが感動の再開を果たしましたね。俺はそろそろ行っても良いですか?ジム戦が控えてるんですねこっちは。

 

「それにしてもダンデ君が電話してくるなんて……あれ、あなたは」

 

「ども、お久し振りです」

 

ぺこりと会釈をしておく。正直そんなに話すこともないから気まずいのだ。さっさと立ち去りたいところだがこちらに話の流れが向いている以上仕方ない。

 

「あのヒトツキの人よね!それに前にルリナから渡されたお菓子って……」

 

「ああ、私です。あの時はありがとうございました」

 

懐かし…くも無いな。そんなに前でもない。水ジムの時にルリナに渡した菓子折りの話だろう。ルリナとソニアが知り合いなのはある程度分かってたからな。何気に有名だったりするのだこの二人。

 

「お礼なんていらないって言ったのに……」

 

「いえいえ、そのお陰でギルガルドも助かりましたから」

 

「え、あなたのギルガルドってあのヒトツキなの!?」

 

「あ、ギルガルドのこと知ってましたか」

 

名前も伝えなかったから俺の試合なんて分からないと思ってたが、まあ眼帯してるし分かりやすいわな。

 

「何か知ってたのかいソニア?」

 

「前にヒトツキが結構危ない状態だったのよ。その時に会ったの」

 

「へえ、ヒトツキか」

 

「………」

 

凄い仲睦まじい感じやな。というかソニアの方が乙女過ぎるな。もしかしてダンデが初恋?いや、あまり考えるのも良くないか。

若い頃はこういう雰囲気が全く分からなかったのにな。この世界に来てからある程度読めるようになったのは月日を感じるわ。

 

「──あれほどリザードンを───」

 

「いやあ────」

 

本当に、仲良いなあ。自分にもこんな時って……無かったよなあ。他人から見れば灰色の青春しか送ってないわ。ま、他人の芝生は青く見えるもんだ。おっさんは若者に祝福するべきであって張り合うものじゃない。

 

「それじゃ、私はもう行きますね」

 

「え、もう?」

 

「ええ、今回は本当にお世話になりました」

 

「いや私の方こそありがとね!ダンデ君を任せちゃって」

 

「いえいえ、当然のことですから」

 

あの日、あいつはどんな気持ちだったのだろう。圧倒的な理不尽を前に何を思ったのか。ダンデ、お前は今何を考えているんだ?もう少しで俺にもそれが分かるかもしれない。

 

「…とことん楽しんで下さい、チャンピオン」

 

「ああ!また会おう!」

 

「またね!」

 

「ええ……さようなら」

 

きっともう会わないんじゃないかと思うから、言葉を選んで別れを告げた。

 

俺も楽しもう。きっと楽しい筈だからな。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

さてそんな訳でやってきましたドラゴンジム。この地方で大人気のジムリーダーキバナが担当する最後のジムだ。

 

今回のジムミッションは今までと違い少々面倒だ。基本的にどのジムにも特徴があるが今回はダブルバトル。そうダブルバトルだ。ギルガルド以外のメンバーを出す必要がある。舐めプしてたことが完全にバレる。

 

まあ、ジムミッションに関してはあまりネットに出回らないだろう。バトル会場のモニターに映すことはあってもそんなに注目されない。

宝物庫があまり広くないこともあってカメラも入る余地が無くなっている。あるのはドローンくらいだ。

これが有望な選手なら違うが、残念なのか幸運なのか俺はそうなってはいない。数いるチャレンジャーの一人という扱いだ。この見た目だからな。美人やイケメンでもないからそりゃそうもなる。

 

だがスタジアムでのバトルともなると違う。ばっちり色々映るが、それはもう仕方ない。割り切ってやるしかないだろう。ただ手持ちは出来るだけ絞る。ジムミッションの方は良いがスタジアムでのバトルはギルガルドとあと一体だけで突破してみせる。

ということで戻ってきました宝物庫。数十分ぶりの対面となったな。

 

「待ってたぜ、お前が次の挑戦者だな」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

「知ってるとは思うが俺様はこのジムのジムリーダーキバナ様だ!」

 

「………」

 

うわあ、初めて見たよ。自分で自分のこと俺様って………明らかに近づかない方が良いタイプだよなぁ。

 

「このジムのルールは────」

 

やはり形式はダブルバトル。まあ今回は久し振りの無条件バトルだ。ワタル以来か?折角だし色々試したいところだ。

 

「──話が長くなったな!さあ、まずは一人目だ、リョウタ、カモン!」

 

前に出てきたのはメガネを掛けた何処かインテリさを感じさせる男。

 

「形式的なのは良いので楽にやりましょう」

 

「はは……そう言っていただけるとありがたいですね」

 

目元に疲れが見えるジムトレーナーだ。これまで相当な数の仕事をこなしてきた筈だ。ジムチャレンジのシーズンは毎度大忙し。これから書類作業なんかも残ってる上に事後処理や始末書、スポンサーや他企業への挨拶なんかもあるだろう。この人、今何徹目なんだろうか…………。

 

「あの、そこに差し入れ置いておいたので後でどうぞ」

 

「本当ですか……!あ、ありがとうございます!」

 

あー、相当ブラックだねこれ。ガラルだとジムチャレンジの興行化で大人は仕事に追われてんだろうなあ。

 

「それじゃあやりましょうか」

 

「ええ」

 

 

 

 

 

「ッ……ウソだろおい……」

 

「それでは、次お願いします」

 

結局バトルは数分で終了した。そらそうだろう。レベルの差が酷すぎる。ほぼ全てのポケモンを一撃で落とす結果になったが、そういうこともあるよな。

 

「お前、何者だ?」

 

「………ただのチャレンジャーですよ」

 

「そういうことじゃねえよ。そのサザンドラ、もしかして俺様とのバトルじゃ出さない気か?」

 

当たり前なんだよなあ。あんな人の目があるところで出すとかイカれてんじゃねえのか?こっちは人生かかっとんねん!!

 

「まあ、そうなりますね。色々事情もあるので手加減してくれません?」

 

「俺様に手加減の3文字はねえ!このキバナ様に本気を出さないで勝てると思うな!」

 

「望むところです。私ももう引き返せない所まで来てしまった。何がなんでも勝ちますよ」

 

約束がある。願いがある。叶わなくても良いさ。資格が無いのは百も承知。それでもこの舞台の上に立ってみせる。この挑戦をせねば、俺は一生あいつらの気持ちなど理解できない。

 

「………そんなこと言うタイプには思えねえけど、まあ良いぜ。見事ジムミッションクリアだ!スタジアムに向かうぞ!」

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

晴れやかな舞台。七つのジムを突破し、最後のジムミッションをクリアした者達への最後の壁。ジムリーダーキバナ。稀代の秀才でありドラゴンタイプを扱わせたらピカイチ。ワタルとも良い勝負が出来るだろう圧倒的な実力。

この暗く無機質な通路を抜けてそのジムリーダーに挑戦できる人間は数少ない。自身の足音しかひびかない場所から一転、熱狂と声援に溢れた場へと辿り着く。目の前には狂暴な野生を瞳に映す好青年。

 

「一つだけ聞いて良いか?」

 

「………どうぞ」

 

「挑戦することに意味はあるか?夢は、叶える必要があると思うか?」

 

要領を得ない質問だが、ある程度は分かる。けどそれは然程重要じゃない。

 

「そんなもんいらないでしょ。やりたいからやる、きっとそれだけで良い」

 

「…ハハッ!そりゃそうだ!変なこと聞いて悪かったな。さあ、お前があらゆる状況に対応出来るか、このジムリーダーキバナが見定めてやる!」

 

臆病風に吹かれながらこんな所まで来てしまった。不安と焦燥に決意と笑顔で仮面を被せる。ここからは間違い一つ許されない。だからこの子じゃないといけない。

 

「出てこいギガイアス、フライゴン!」

 

「行こうギルガルド」

 

水色の綺麗な体でこの子は歌う。風と共に、波と共に、その冷気を纏いながら喉を鳴らす。争いを好まない種である筈なのに、この子は一際歌と戦いを求めた。

 

「歌ってくれ、ラプラス!!」

 

久し振りに力を貸してやると、そう目が語っている。不安が消し飛んでいく。その背に懐かしさを感じる。きっと勝てると、そう思えた。

 

「叩きつけろ、ワイドブレイカー!」

 

「迎え撃て!フリーズドライ!」

 

冷たい風が吹きすさぶ中、戦いは始まりを告げた。

 

 




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