シリーズ通して語られるだけの人   作:I'mあいむ

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前話のファ○ックのaの部分は誤字ではないんです。分かりづらいネタですいません。いつも誤字報告ありがとうございます!


けっきょく しゅじんこうが いちばんつよくて すごいんだよね

 

「ダイゴさん接待は任せましたよ」

 

「……ジョウトには死なば諸共という言葉があるらしいね」

 

「あんたにとってはそんなに手間でも無いでしょうが。じゃあそういうことなんで」

 

あれから数日。接待はダイゴに任せて俺はジム対策で戦っていた。期限もあるからさっさと突破したいところだが、こんな意味の分からない予定が入った為に諸々の準備で追われていたのだ。

 

「何でこんなことに……あー、緊張で腹壊しそう」

 

相手は現シンオウチャンピオンとホウエンチャンピオン。俺からしたらテレビの中の人。ダイゴとかワタルみたいに有名になる前に出会ってた奴らとは訳が違う。胃に穴が開きそうだ。

 

「シンオウ神話ねえ」

 

起源を辿ればアルセウスとレジギガスの話だってのがゲーム時代じゃあ有力だった。恐らくそれはこの世界でも同じ。シンオウで博物館を回った時もそんな感じ。レジギガスも遺跡にいたからな。

 

「考えても仕方ないよな」

 

やることは単純だ。しっかりとした対価もある。取り敢えず今は次のジム戦だ。相手は水タイプ。楽勝ではないがタイプ的には悪くない。

 

「よし、行こう」

 

シロナ達が来るまで後一日。それまでに二個目のジムを突破する。ルリナには悪いがこれは、シロナ戦のウォームアップだ。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「くっ、カジリガメ。ダイマックスなさい!!」

 

「ニダンギル、つるぎのまい」

 

そんなこんなでルリナ戦。一応二体までは落としてこのカジリガメがラストだ。

 

「ニダンギルいけるな!ジャイロボール!」

 

「押しきって!ダイアーク!」

 

高速回転をして突撃するニダンギルに赤黒い巨大な触手が纏わりつく。しかしそれでは止まらない。呑み込もうとする闇を打ち払いながら進んでいく。

 

本来なら拮抗することない技。しかしそれを埋めるのが今までの特訓だ。レベル差ってのは現実では表示されなくても存在する。不釣り合いな光景だが、未だニダンギルは無傷のままだ。

 

「嘘っまだ終わって」

 

「逃がすな!上にもう一度ジャイロボール!」

 

くそっ、まだ耐えるか。

 

流石に一撃では落とせない。ダイマックスによる体力の増加はここまでの実力差でも埋められないらしい。恐らく次は……

 

「押し流して!ダイストリーム!!」

 

「ごめんニダンギル受けてくれ」

 

上から叩き込まれる圧倒的な水量。とてもじゃないが受け切れない。特性ノーガードによって攻撃を避けることも出来ない。完全に詰みに見えるところだが、そんなのは流石に予想している。

 

「押し通って、せいなるつるぎ」

 

「何でまだ!?あっ……」

 

腐ってもこちらはジム制覇者。あいつらと渡り合う為に鍛えてきたのは何も判断力だけじゃない。

 

倒れて縮んでいくカジリガメを背にニダンギルを抱き締める。

 

「ごめんな、つらいことさせて。きせきを持たせておいて本当に良かった」

 

「まさかあの状況で耐えるなんて。凄いわねあなたのニダンギル」

 

「あ、光栄です。こ、こちらもダイマックスは流石にひやっとしましたよ」

 

振り返るとそこには褐色、黒髪に水色のメッシュが入った女性。この水ジムのジムリーダー、ルリナだ。

やっぱり美人だねえ。まあ本人モデルもやってるしそりゃそうか。CMとか雑誌で良く見かけるわ。それに若い。ダイゴや俺なんかと比べるとね。

 

「それを言えるのは二体目を出してからでしょう。全く、最近は強い人ばかりで嫌になるわね」

 

ビートにホップにマリィに主人公。御愁傷様としか言えないわ。俺だったら泣いてる。

 

「が、頑張って下さい。ルリナさんなら行けますよ」

 

「あなた……自分がその立場って言ってるのよ」

 

そうは言われてもねえ。あそこまで天才的な物などこちらには無い。積んだ物が違うだけで才能的な観点から言えば俺はそれなりだ。

 

「いやまあ、流石にファイナルまではいきませんので。あと、ソニア博士によろしくお願いします」

 

「え、ソニアと知り合いなの?」

 

「前に少し助けて貰ったので。あ、これ申し訳無いんですけど渡しておいて貰えませんか?」

 

「これって……シュートシティの?」

 

「それじゃあ私はこの辺で!」

 

「え、ちょっ!」

 

もう会うことも無いだろう。ガラルに長く滞在する訳でもない。ここを突破するトレーナーなど幾らでもいるからな。顔もすぐに忘れられる。ま、有名人と会うってのは貴重な体験だ。ワタルとかダイゴは論外だけど。あいつらは最早腐れ縁だ。

 

それにしても、強かった。ヤローの時もそうだが、改めて思う。ジムリーダーという人間達は少なくとも才能を持ち、その上で重ねてきた努力がある。

 

「炎ジム、これでいけるか?」

 

次の不安が募るがやってみれば分かることだ。

 

「ま、そういうのも楽しまないと損かあ」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「はい、はい、分かりました。じゃあ待ってます。ええ」

 

どうやらシロナ達がもうすぐ着くらしい。ダイゴは空港に迎えに行かせた。勝負に負けたあいつが悪い。

 

「ふーん、成る程」

 

というわけで今日も特訓中。今はニダンギルが指示無しの状態で野良相手に戦っている。バトルの時に細かな指示を出してる場合じゃない時もあるからな。ある程度対応出来るようにするのも必要だ。

あと野生のポケモンは度肝を抜くような戦い方をするから、それに慣れる為でもある。対応力ってのはセオリー通りのバトルじゃ身に付かなかったりするからな。

 

まあそんなこんなで暇な訳だ。ちょっとつまらないから最近買った雑誌を見てる。今見てるのは『特集!ジムトレーナーの流儀!』って奴だ。これで俺もジムトレーナーの心得ってのを学ぼうと思う。何事も予備知識は大事。どんな仕事なのかは調べておかないと大変だ。

 

「やっぱりバトルだけじゃないよな。事務仕事もこなせねえとな。あ、カミツレさんだ」

 

トピックにはカミツレさんの姿が映っている。ここからはポケモンに関係のあるモデルのコーナーらしい。あ、ルリナさんもいる。やっぱこういうので活躍出来る人は凄いなあ。俺にはそういうのはからっきしだからね。

 

若い頃は全く買わなかったようなこういう雑誌を、今では何かあったら買うようになった。これも年を取るっていうことなんだろうか。いやスマホロトムが無かったから調べ物出来なかっただけだな。娯楽目的で買うことなんて無いし。

 

「あ、眼帯ずれてる」

 

この眼帯も慣れたものだ。ずれると結構痛々しい傷が見えるから気を付けないといけないんだよな。お見苦しい物を見せる訳にはいかないし。

 

「紐緩んだか?新しいのに変えるかあ……ん?」

 

あれは、うん、やっぱりユウリだ。あのバッグにボブカットの少女はあの子だろう。どうしようか……話し掛けようにも今はちょっとなあ。というかあんな陽キャと進んで話すほどコミュ力高く無いしな。気付かないフリをしておこう。

 

「♪~、あ」

 

最近は何が流行ってるかなんて分からないしなあ。十代の子達とこんなに歳が離れるなんて前は考えられなかったわ。まあ俺が十代の頃も周りの流行りには着いて行けなかったけど。

 

「あれってもしかして……」

 

特にこっちの世界でもSNSが出始めてるからな。どんどん分からなくなってる。

Yo○Tubeみたいなのは見るんだけどね。ほら、あれだよ。ナンジャモってのはもういるわ。パルデアのジムリーダーのね。前世からY○uTube以外やらなかった弊害な気がする。

 

一応おっさんおっさん言ってる俺もまだ30代ではない。私服は少しは気にしなきゃいけないからちょっと大事ではある。ワタルとかダイゴはこういうのやらなくて良さげだからなあ。いっそのことビオラにでも……いや血迷ってはいけない。奴だけは勘弁だ。

 

「久しぶり!ユエヅキさん!」

 

「んえ?え、あ、ああ!ユウリさん!?お、お久しぶりです」

 

うおお……いつの間に近づいてたんだ?全く気付かんかった。流石に怖いわ。顔面偏差値の暴力で俺を叩こうとしないでくれよ。コンプレックスに響く。

 

「うん、久しぶり!あれから会えなくて心配してたの!」

 

「いやあ、ありがとうございます。でもユウリさんのことは心配要らないですね。流石今シーズンの優勝候補です」

 

「ユエヅキさんまで言うの?最近そう言われることが多いんだよ!」

 

「有名ですからね皆さん。以前言っていたマリィさんと言う方も凄いですし。ホップさんも強いですから」

 

「ありがとう!ユエヅキさんは今何処なの?」

 

「私はまだ水ジムを突破したところです。少し急がないとですかね。皆さんもう次はナックルシティですよね」

 

トップ層とは結構差が酷いのだ。ここまで遅いのは少数だろう

俺を含めても数人程度だろうな。まあニダンギル一体での突破なんて土台無理な話なんだ。時間はかかっても仕方ないだろう。

 

「そうだよ。でもユエヅキさんも結構有名だよ!ダイマックスしないでジムを突破していくなんて凄い!」

 

「え、そうなんです?まあ皆さん程の勢いも無いですからそんなに知られて無いんじゃ?」

 

「うーん、確かにユエヅキさんは有名じゃないかも。でもほら!この動画!」

 

「え?ああ、昨日の……」

 

ユウリから見せられた動画に映っていたのは俺の昨日の試合。ダイマックスしたカジリガメに対してせいなるつるぎを打った場面だ。

 

「ほら!こんなに再生されてる。ねえユエヅキさん、私と戦ってよ!」

 

「え?」

 

取り消せよ……!今の言葉!(辞世の句)

終わった。俺の人生終わった!嘘だろ?ユウリと戦うの?いや無理よ無理。うん、嫌だ。

 

嫌だけど、嫌だけどこの笑顔を断るのもなあ。まあまだリーク途中だし、ニダンギルだけでいくのならありかも(錯覚)

それなら俺の成長にも繋がるし。本気でやるのは流石に気が引ける。というかそれで負けたらね。言い訳が無くなるというか、俺のメンタルが死ぬからね。

 

いたいけな少年少女の為なら俺の命なんぞ、安いもんだ!!

 

「ほ、本当にやるんですか?」

 

「うん!あ、嫌だったら良いんだけど」

 

「いえ、やりましょうか」

 

やっぱ嫌!やっぱ嫌!嫌だあああ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何か普通に良い試合だったわ、うん。結構ギリギリ負けた感じ。

 

でもまあやっぱヤバいわ。あれは壊れる。うん、並みのトレーナーなら死んどる。これで同レベルだったら確かに絶望するわ。明らかに天才過ぎる。とてもじゃないが俺なんかは及ばない。世界の中心は伊達じゃないってことだな。

 

レッドの時も感じたがプレッシャーが半端じゃない。どうあったって敵わない。そう心の底から感じる。対峙して分かる異質さ。何が見えているのか分からない視線。こちらの行動を全て読まれていると節々から伝わってくるバトル。

耐えられたものじゃない。俺は奴等の正体を知ってるからこそ戦えていた。

 

絶対強者、バトルに必要な全てを持っている者。

そんな言葉が良く似合う人種だ。

 

「あの、どうしてニャオニクスを出さなかったんですか?」

 

「基本的なバトルはあの子は出さないんだ」

 

「じゃ、じゃあ!あなたと本気で戦うにはどうしたら良いですか!」

 

「え?本気って……」

 

「だって今日のユエヅキさんは手を抜いてたじゃないですか!ニャオニクスを出さなかったのもそうですけど、何だか、何かが違うんです!」

 

そこまで見抜くのか。成る程、これは凄いな。流石に予想外だ。ある程度手は抜いていたが、でもこの子が言ってるのはそうじゃない。俺の本来のスタイルについてだ。

 

「ふふっ、ははっ」

 

「?」

 

何だろうなあ。ああ、少しだけ、少しだけ興味が湧いてきた。うん、やってみたいかもなあ。

 

「もし、もし私と戦いたかったら、そうですね……ジムチャレンジが終わって、あなたがチャンピオンになった後にですかね」

 

「本当ですか!?」

 

「ええ、その時が訪れたなら、本気で相手をしましょう」

 

どうしてだろう。凄く怖かった筈なのに、どうしても嫌だった筈なのに、どうしようもなく期待してしまっている。ワクワクが収まらない。次この子と戦う時は、うん、あの時に戻る気がする。

 

ワタルの時もその感じがあったけど、今はそれ以上だ。完全に戻る確信がある。

 

「それじゃあ、さようなら」

 

「うん!またね!」

 

彼女がもし、ガラルを離れる前に俺を見付けられたのなら、その時は全てを賭して挑むだろう。

 

凍りついた感覚に、熱が通る痛みを感じた。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「お待たせユエヅキ」

 

「絶対にあんたが思ってないワードランキング52位ですね」

 

「何だいそれ……」

 

集合場所に来たのは良く見るスーツ姿の石コレクター、ダイゴ。支度が速く終わったから空港の前まで来てみたが、何故か一人だけの登場である。

 

「それで先方は?」

 

「もう少しで来ると思う。用があるらしくて空港の前で待っててくれって連絡がきたよ。まあ女性というのはそういうものだからね」

 

イラッ

 

「流石っすね!イケメンチャンピオン様は!いやあもうこれからはイケメン様って呼ばせていただきますね!!」

 

これだからイケメンってのは困る。さぞ不自由ない人生を送ってきたのだろう。こっちは幼少期から次の食事にありつくのに精一杯だったってのに、あっちは金も人も娯楽やりたい放題。舐めてんのか?

 

「いや、ごめんって」

 

「……じゃあ俺はスマホ弄ってるんで、来たら教えて下さい」

 

自分よりも格上と付き合うってのは嫉妬が付きまとう。というかこいつに関しては、無自覚マウントを取ってくるクソ野郎なので殺○たい。

 

何故俺には転生特典が無いのか。せめて顔ぐらいこの世界の物にして欲しい。日本由来のブスとかどうしようもないので終わってる。もしかしたらこの世界で一番顔が悪いのは俺なのかもしれない。流石に無いと信じているが、まあ期待は薄い。

モンスターとして扱われないだけマシとかいう覚悟がキマッた転生者のコメントはNGで。

 

「ほら来たよ」

 

「あれが………凄いな」

 

「そう、だね」

 

向けた視線の先に居たのはそれはもうハリウッド女優みたいな三人。右にはブラウン髪の高校生くらいの少女。その隣にはスラッとした背中まである金髪を靡かせた女性。左は藍色の髪を髪飾りでとめている少女。

 

サイド二人の少女もそりゃ凄い美少女だと分かるが真ん中はエグい。もうオーラが半端無い。周りとは違う圧倒的な雰囲気で近づいてくるもんだから怖じ気づくのも仕方ないだろう。他の人達も一回は振り返ってる。これが美人って奴なのか、シロナだからなのかは定かじゃない。

 

 

「これ、帰って良いすか?」

 

「この状況で僕を一人残すのかい?」

 

どうやら流石にあの雰囲気には入りにくいらしい。まあ知ったことじゃないが。ダイゴ、散々振り回してくれた礼だ。貴様には少し痛い目を見て貰うぞ。

 

「ありがとうプレイボーイダイゴ。俺はあんたのことを一生忘れないよ」

 

「あっ、ちょっと、他人のふりをしないでくれ!」

 

そう言っている間にも近づいてくる三人。彼女らはもう間近まで来ている。

 

「お待たせダイゴ」

 

「ダイゴさんお久し振りです!」

 

「初めまして、ヒカリです。よろしくお願いします」

 

「あ、ああ今回はよろしく三人とも。それと、初めましてヒカリちゃん。ダイゴです、よろしくね」 

 

四人とも思い思いの挨拶をしていく。どうやらヒカリとは初対面だったらしい。まああまり他の地方まで出向かないだろうからな。石があったら何処へでも行くんだろうが。

 

「それじゃ行きましょ」

 

「そ、そうだね。行こうか」

 

ダイゴがこちらをチラチラと見てくるが知らない。流石にここまで他人面してる奴を俺だとバラす勇気も無いらしい。帽子も深く被って見た目も分からないからな。

そんなに見たって無駄なもんは無駄だ。諦めてそのまま行ってくれ。俺はバックレて次のジム戦の準備に向かうよ。

 

そのまま向かっていく彼らを背に、俺はその場を立ち去さる───

 

「いやそうはいかないぞ」

 

「………すいません何方ですか?申し訳ないんですがそういうセールスとかは……」

 

とはいかず、俺は肩を掴まれてしまった。まあ当然シラを切るわけで。

 

「この期に及んで君だけ逃がすなんてすると思うかい?」

 

「ダイゴさんどうしたんですか………?」

 

「ダイゴ……あなた何かあったの……?」

 

「嘘……ダイゴさんってもしかして……」

 

まあ誰もこんな地味な男が呼び出した張本人とも思わない訳だ。俺の一人勝ちである。往生際が悪いぞ、ダイゴ。

 

「いや、違っ!彼が」

 

「すいません、そろそろ離してもらっても…………」

 

「ちょっと待ってくれ!?そろそろしっかりしてくれ!ユエヅキ君!」

 

「「「えっ」」」

 

「ちっ………初めまして。私、ユエヅキと申します。顔と名前は覚えずに帰って戴けると幸いです」

 

帽子を取り、丁寧に挨拶を行う。しかしこんなファーストコミュニケーションでは、印象が最悪というものだ。

 

「今回はよろしくお願いいたします」

 

突き刺さるような視線はこの出会いの雲行きを表しているようだった。

 

 

 

 

 




主人公はマジでド変人。ポケモン世界基準だと。
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