「桜が綺麗やなぁ。月も満月で綺麗どすなぁ。これはほんまに酒が美味くなるのぅ」
「ふん、まあ興には乗るやもしれんな」
「つれないのう。もしや宿儺はんは『花より団子』、ちゅうやつかもなぁ。景色よりも飯の方が好きとちゃうん?」
「はっ、ならば俺はそのやつだろう。風情も楽しもうとは思うが、それよりも酒や飯を食う方が好きだな。料理はいい。心が休まるし、酒は酔うのも楽しいからな」
「酒はうちも好きやなぁ。まぁうちは酔いにくいから、酔うのを楽しむ、ちゅうんは難しそうや。そうや宿儺。この前よい酒が入ったんや。呑まへんか?」
「ふむ…、美味いなこれは。すこぶる美味だ。どこから奪ってきたのだ?」
「これはなぁ、都でちっこい姫さんから血ぃ貰う時に、ちぃといただいたもんやわ。姫さんの屋敷の倉ん中にひっそりと入っとたわ。少し断り入れた方がええかったかもしれへんなぁ」
「クハッ、呪霊のお主が言ってもただただ混乱するだけであろうが。変なことを言いよる」
「洒落に決まっとるわぁ。…にしてもあのちっこい姫さんの血ぃ美味やったなぁ。今まで飲んできた血の中で一、ニを争うほどやったわ」
「ああ、あそこの一族の肉は美味い。強さとしてはぼちぼちではあるが…、裏梅に何か料理を作らせようか?」
「あんたはん、うちが人肉そんなに好きじゃないの知ってんやろ?嫌がらせやろか?」
「クハッ、お前がさっき言っていたような洒落だ洒落。好みくらい覚えておるわ」
「ふぅーん。洒落、のぅ。…クフッ、クフフフフッ」
「クハハハハハハッ」
「クフフフフフフフフフフッ!!」
「クハハハハハハハハハハッ!!」
「…ふぅ、笑うたわぁ。あんたはんとの会話はなかなか面白くて飽きへんわ」
「あぁ、俺もだ。…そうだ。これは伝えておいた方がいいかもしれん」
「急にどしたん?宿儺」
「そろそろ身体が老いてきた。後数年もすれば今まで通りに動けんだろう。…俺も一応人間だった、というわけだ」
「…ふうん、それは寂しくなるなぁ。」
「ただで死ぬわけではない。俺の知り合いから提案を受けてな。呪物となることにした」
「ほう!呪物、か!となると…提案したのは羂索、やな」
「む?あやつを知っておるのか」
「そうやなぁ、昔の頃に少し、なぁ。あん奴はあんまし好かんのぅ。あやつはうちをどうにか利用できんか考えておったからなぁ。それにうちが呪霊って内心嘲っておったかんなぁ」
「なるほど、羂索はそういう人間だからな。まぁそういうわけだ。共に裏梅も呪物となる。されど俺の呪力は強大だからな、二十に分けて呪物とする。一度試しに呪物を作ってみたが問題はなさそうだ。次は羂索の助けもいらん」
「なるほどやねぇ。…そんいやぁあの女子はどんなんなるんか知っとるか?あんたに惚れとったさかい、あん女子もついてく思たんやけど。確か…よろ、よろこ?とかいう子や。ほら藤原北家に居った女子や」
「知らんなそんな奴。興味もないし、聞こうとも思わん」
「あん女子が可哀想やわぁ…。
まあええわ、呪物になるんはいつになるん?呪物になる前にもう一度宴でもしようや」
「あと数ヶ月、だな。人はみていて飽きんが、今のところ気に入っている奴がいる。そいつを殺したら、だな」
「ふうん、そか。そんじゃあそん時に向けていい酒でも探しとくさかい、あんたはんも美味い飯探しとってえな」
「あぁそうだな。探しとくとしよう」
「…あんたはんが居なくなったら、暇になるどすなぁ。何しよか」
「お主の部下に茨木童子がいただろう。あやつと飲み交わしてはどうだ部下との会話も大事であろう?」
「茨木童子、のぅ。あやつは若くて血の気が多いからのぅ。しかも女好きやからなぁ。たまに気色悪う眼で見やる。一緒に酒盛りなんてしとぅない」
「クハハッ、お前も苦労しているのだな。それが聞けてなかなかに驚いたぞ」
「裏梅はんウチに来よし。こんな四本腕のオッサンよりうちの方がええで?ーーー即答どすか。ほんま好かれとんなあんたはんは。大事にしとき?」
「クハッ、この俺を『オッサン』呼ばわりする奴などお前ぐらいだ。それに裏梅にはもう既に十分与えている。まあいずれ褒美でも与えるとしよう」
「…そか。うちも料理できる子捕まえっかねぇ。うちの子分どもは皆荒っぽくてやんなるわぁ」
「主君に似たのではないのか?」
「嫌味やなぁ。そちも目つきとかがよう似とるんちゃう?」
「クハハッ…、なんだ試合いたいのか?なんなら朝まで付き合うぞ?」
「あら、野獣におさわれてまう。堪忍な。こんな可愛らしい女子をいたぶるなんて鬼かもしれへん。怖い怖い」
「ふん」
「あぢっ。『解』放つでないわ。冗談やろ冗談」
「まあいい、今宵は酒盛りとしよう。酒の席に戦いは少し無粋だ。できれば今は酒と飯を楽しんでおきたい」
「それもそうやね。うちも安倍の奴が最近五月蝿いからそのこと忘れたわぁ。やけどアレんとこに突っ込むんは疲れるしなぁ。はぁ、なんぎやんなぁー」
「ひとまずはもう一度乾杯するとしよう。そんなことなど忘れとけ。お前は呪霊なのだから面倒くさくなったら殺せばいいだけであろう?」
「…そやね。そんじゃあ乾杯しよか」
「ああそうだな」
「おっ、桜の花びらが盃に入りおった。風情があってええなぁ。ほんまに綺麗やわ」
「…あぁ、そうだな。桜が綺麗だ」
「ん?あんたはん頭でも打ったか?そんな言葉言うなんて。病気かいな。はよ医官のとこ行った方がええで」
「流石にそろそろ切り裂くぞ」
「はいはい、堪忍や堪忍や」
「クハハッ!…そういえば千年後、だったか?酒呑童子、お前は千年後が楽しみだと言っていただろう?」
「あぁそやね。千年後はよう楽しそうや。今とおんなじ位混沌としているかもしれへん」
「なるほど、羂索に復活はその時代にと頼んでおくとするか。…そういえばその未来予知は術式とはまた異なるんだろう?興味深いな。どんな仕組みになっておるのだ」
「んー、これは誰にもいってないんや。あんたらも伝えたらあかんよ?」
「あぁ」
「記憶っちゅえば一番近いかもしれへん。記憶とは少し違うけど記憶でもある、ちゅー曖昧なところやんな。うちも説明がしにくいわ。まあまた説明するかんな。そん時に楽しみにしとき」
「ふっ、なるほどな。ならば俺は千年後を楽しみにしておくとしよう。」
「ほれじゃお開き、ゆうこっちゃで。」
「「乾杯」」
「…むう、やはりこの酒は美味いな。何で作られているのか知りたいところだな」
「うちも盗んだ、ん”ん”っ、貰ったもんやから詳しいことはわからへんわぁ。今度聞いてみよし」
「あぁ、そうだな。それでは酒呑童子。またな」
「そやな、両面宿儺。またいつか」
「はぁーーー、大江山に帰んのつらいどすなぁ。安倍晴明もなんか探ってるさかい、部下どもに対策言わんと飽きまへんし。
ほんま邪魔くさいわぁ」
「まあ、楽しみにしとこか」
「千年後の戦を」
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霜月の二十日あまりの一日の日にて、陰陽部より連絡
昨今の「婦女殺傷事件」に関する犯人が、住民などへの聞き込みから犯人自身が「酒呑童子」を名乗っていたことが判明。
これより犯人を「酒呑童子」と記載する。
また、安倍晴明による術式によって「酒呑童子」の拠点が丹波と丹後の境、大江山に存在していると判明。
また、「酒呑童子」は呪いの王「両面宿儺」との交流も確認されているため、後一条天皇より勅命が降ろされた。
源頼光、以下三名に対し仙人の協力を元に「大江山の酒呑童子」一派討伐を命ず。
副題は枕草子から。
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