艦隊これくしょん―軽快な鏑矢― 作:オーバードライヴ
注意事項です。
・『啓開の鏑矢』の時系列はガン無視。前回に引き続きIFルートです。
・無駄にネタに走る可能性大。今回少しえっちぃネタあり、注意!
・キャラ崩壊あり、注意!
・駄文、駄文、アンド駄文
それでは、抜錨!
「これ……本当に着るんですか……!」
渡された布地……服と言うべきか衣装と言うべきか正直怪しかったから布地と表現したが、それを手に軽く震えているのは名取である。真面目な彼女には正直きつい選択である。
ここは女子更衣室。ロッカーにいつもの制服を吊るして“ソレ”をまじまじと眺める。能代がそれを聞いて“ソレ”と同じデザインの布地を身に着けながら笑った
「まさか裸で出ていくわけにもいかないし? 海上で艤装使えなくなった時の訓練だと思えばいいんじゃない?」
「アイドルはへこたれないっ! こういうイベントはアイドルには絶対必須だからね! 名取ちゃんも一緒にがんばろ?」
那珂もそう言って下着姿の名取に飛びついた。名取はそれに肩を跳ねあげながらもゆっくりと背に手を回し、ブラのホックをはずす。
「名取ちゃんってやっぱり着やせするタイプなのかなぁ……」
「た、龍田さんほどじゃ、ないと思います……っ!」
みんなと一緒に着替えがあるんならもっといい下着にするんだったと少し後悔しながらもショルダーコードから腕を抜き、ロッカーに入れる。下の方も下着から足を抜き、それもしまう。
「……でもこれはやっぱり……恥ずかしいです」
そういいながら“ソレ”……純白のスクール水着に足を通した。
「おおぉ! 軽巡チームの白スク姿ゲットォ!」
青葉の歓喜の声を聞きながら、航暉は笑みをひきつらせた。屋内50メートルプールを見下ろすキャットウォークに立ってその騒動を眺める。
「なぁ、高峰。これは本当に戦意高揚プロジェクトの一環なのか?」
「まぁ訓練の一環も兼ねてるんだけどさ。海上で艤装がトラブル起こしたら大変じゃん? だから泳ぐスキルは必要になる、と言うことで200メートルメドレーリレーが組まれた訳」
「……で、潜水以外の子たちには水着を配布した、と」
航暉は横でニコニコしている高峰を見る。
「ちなみに各チームに別々の水着を配布しているようだが、その選定はだれに頼んだ?」
「統一したのを配布しようとしてたら、渡井がその仕事を奪っていった」
「……あの変態スク水マニアが」
「怒る必要はないんじゃない? ちゃんと似合うの選んでる訳だしさ」
まぁ、性癖丸出しだけどさ。と最後にこき下ろし高峰が肩を竦めた。そのタイミングでスピーカーがキィィンと耳障りな音を立てた。
《マイク音量大丈夫?チェック、ワン・ツー……よし、私、大淀です》
それを聞いた金剛がズッコケた。ハイレグカットの黒のセパレートに包まれた胸が揺れる。
「妹のネタ取らないでほしいデース!」
《使用料は頂いています。それでは第二種目200メートルメドレーリレーを開催します。ルールは通常のリレーと変わりません。背泳ぎ・平泳ぎ・バタフライ・自由系の順でそれぞれ50メートルずつ泳いでいただきます。それぞれのチームのコースとメンバーをご紹介しましょう》
大淀は放送室にいるのか姿は見えない。
《第一コース、戦艦チーム。第一泳者より長門さん、金剛さん、ビスマルクさん、日向さん》
スタートラインにある飛び込み台の隣に立って長門が手を振った。金剛より布面積の多い黒のセパレート、覗いた腹筋が健康美を醸し出している。応援に回っている扶桑と大和が手を振り返した。
《第二コース、正規空母チーム。蒼龍さん、加賀さん、翔鶴さん、大鳳さん》
蒼龍が恥ずかし気に手を振る。一見普通の競泳水着だが背中側が大胆に切れ込んでおりそのうなじを際立てる。
《第三コース、軽空母チーム。龍驤さん、隼鷹さん、飛鷹さん・千代田さん》
龍驤がどこか沈んだ目で投げやりに手を上げる。他の三人はセパレートタイプの水着だが、龍驤だけ発注ミスで紺の一体型水着が支給されていたのだ。胸元の白いネームスペースにマジックで書かれた『うょじうゅり』の表記が光る。
《第四コース、重巡チーム。高雄さん、羽黒さん、最上さん、利根さん》
高雄が隣の龍驤とは対照的に明るく手を振った。その時に揺れた胸元の二つの塊を見て龍驤は小さく舌打ちをした。
《第五コース、軽巡チーム。龍田さん、名取さん、能代さん、那珂さん》
白スクの龍田が手を上げる。その満面の笑みとカメラのファインダー越しに目があった青葉は慌ててカメラを下ろした。撮ったら、危ない。
《第六コース、駆逐艦チーム。秋月さん、綾波さん、朝潮さん、吹雪さん》
濃紺の一体型水着を着て秋月はぶんぶんと手を振った。それを見た龍驤はそれを見てから自分の姿を見て溜息をついた。同じ水着を着ても、あれか。
《第七コース、これが最終コースです。潜水艦チーム。伊19さん、伊8さん、伊58さん、伊168さん》
いつも通りの恰好のイクこと伊19が陽気に手を振った。
《解説席には潜水隊指揮官である渡井慧大佐と南方第一作戦群より笹原ゆう中佐の二人にお越しいただいています》
《よろしくお願いします》
《お願いします》
「……解説に回ってんのかよあの二人。荒れても知らんぞ」
「まぁいいんじゃないの?」
気楽な返答に航暉はもう知らんぞ、と言ってキャットウォークの手すりに体重を預けた。
《それでは第一泳者は位置についてください》
背泳ぎは水中からのスタートだ。皆が一斉に飛び込む。その水しぶきが納まるころにはグリップに皆が手をかける。主審役の明石がスターターを手に様子を見守る。
「よーい……」
緊張が高まる。第一泳者は腕を引きつけそのまま静止。一切の音が消え去った。
銃声にも似た乾いた破裂音。
第二種目・200メートルメドレーリレーが始まった。
《おっと、やはり早いのは潜水艦チーム。水中の感覚の慣れがものを言う種目でしょうか?》
《そうですねぇ。艦娘は艤装の生み出す浮力に頼って水上をスケートの要領で移動しますから、勝手が違う分潜水艦チームに有利かもしれませんね》
解説席で大淀の実況に応えていくのは笹原だ。
《伊19選手速いですねぇ、体一つ分以上もう抜け出してますね。その後ろを追うのは駆逐艦チーム秋月選手と正規空母蒼龍選手……》
《伊19さんがセンターライン通過。おっと、すごい勢いで軽空母チーム龍驤選手が追い上げていきます》
《龍驤選手は水の抵抗が少ないのかもしれませんね》
《あ、でも背泳ぎだから関係なんじゃない?》
「やかましいド阿呆!」
渡井の軽口のようなコメントに笹原は半笑いでそれに乗る。それに対するツッコミは泳いでいる龍驤本人から発せられた。
《まぁ冗談はこれくらいにして真面目に解説しますか》
《ですね、お。もうイクさんは第二泳者のはっちゃんに交代して折り返しに入ります。続いて蒼龍さんが二位で加賀さんにバトンタッチ》
その視界の先では綺麗な放物線を描いて海面に加賀が飛び込んだ。それに一瞬遅れて隼鷹が、ほぼ同時に綾波がしなやかに飛び込んだ。その様子を収めようと青葉がシャッターをガンガン切っていく。その顔は至極嬉しそうだ。
《正規空母チーム、かなり速いですね》
《正規空母は元々速度が出るようになってますからね。その特性をひく彼女たちがそこで強くても違和感ないですね》
加賀が平泳ぎで先頭を曳く伊8を追い上げる。それでもじわりじわりと引き離される。その後ろ、隣のコースでいきなり盛大に波がたった。
「やっべっ……!」
《あれ、隼鷹さんあれは何があったのでしょうか?》
《あー、あれ間違いなく足がつってるわね》
笹原があっけらかんと言う。そう言う間にもレースは進んでいく。隼鷹は片足を庇いながら泳ぎ続ける。溺れるまでは行っていないため競技は続行でよさそうだが、救護担当の古鷹と北上がプールサイドにかけていく。
《隼鷹選手大丈夫でしょうか……》
大淀が心配する中軽空母以外のチームが第三泳者にバトンタッチしていく。最速はやはり潜水艦チーム、その後に正規空母チームの翔鶴が追いかける。その背中をキツイ目線で見送った加賀は涼しい顔で水から上がる。それを尻目に4位の重巡チームの最上が飛び込んで、速度を上げて3位の朝潮に追いつかんと追い上げていく。戦艦と軽巡がほぼ同時に第三泳者にバトンタッチ。ほぼ半周遅れで軽空母チームが飛鷹に繋いだ。隼鷹をサルベージする様子からしてそこまで深刻という感じではなさそうだ。
《トラブルはありましたが、競技を続けていきましょう。今は三位争いがデットヒートの真っ最中、最上さんと朝潮さんが抜きつ抜かれつの大接戦です》
《ほぼ同時に採取泳者に引継ぎましたね》
《吹雪と利根の意地の張り合いかぁ。どちらが勝ってもおかしくないですよ、これは》
渡井がそう示したように双方譲らないままレースの終わりを示す壁が迫ってくる。
《一位で潜水艦チームがゴール。これは潜水艦の意地を見せましたね。続いて二着は正規空母チーム大鳳さんがしっかり順位をキープ! 第三位はほぼ同着! これは画像審査の結果が楽しみですね。続いて五位は戦艦チーム。軽巡チーム一歩及ばず第六位。軽空母チームは途中の事故が悔やまれますね》
《あれがなければかなりいいところまで行けたんじゃないでしょうか》
《ですねー。潜水隊の指揮官としてはこの結果にほっとしている所はあるんですが》
その放送を聞いて高峰が噴き出した。
「本音はそれより先に“たくさんの水着が見れて満足です”だろうけど」
「だよなぁ……」
航暉はそう答えて伸びをした。
「次は……遅めの昼食か?」
「だね。ちゃんと朝飯抜いてきた?」
「もう料理の審査員は懲り懲りなんだけどなぁ」
「前の時の暁ちゃんのヤツでは面白いことなってたけどね」
「言うなよ高峰」
航暉はそう言うと肩を竦めた。カルキの匂いのする空間を後にする。この後はいろいろ大変なのだが、そこは艦娘たちを信じるしかできないのである。
画像判定で三位と順位が確定した駆逐艦チームはほっと溜息をついていた。
「これで何とか流れを掴みたいですね」
秋月がそう言っていつもの服に袖を通す。その横では長い髪をサイドテールにまとめる綾波の姿がある。
「ですねー。もっといいところ見せたいです」
「まだまだ勝負は続きますからね。頑張っていきましょう!」
そう真面目に答えたのは一足先に身支度を終えた朝潮だった。その横では慌てたように荷物をまとめる吹雪の姿も見える。
「そんなに焦らなくてもいいですよ吹雪ちゃん」
綾波がのほほんとそう言うと吹雪はどこか照れたように笑う。
「つ、次の科目が気になって……」
「まぁ、不安になるのもわかりますけどもっと落ち着いていきましょう」
皆が身支度を終えて出ると、水泳種目には人数の都合で参加できなかった、白露と陽炎が待っていた。
「それじゃ、いきましょうか。次の種目こそ一位とるわよ」
陽炎の言葉に皆が頷く。次の種目の時間も差し迫っていた。
「はぁ……大量大量」
青葉はPRESSと大書された腕章を外しながらニマニマと笑みを深めた。いい絵がたくさん取れた。それだけでもこの企画に乗った価値がある。撮った写真のバックアップを取っておかなければと控室に走る。一応もう自分の電脳にバックアップしてあるが。もうひとつぐらい念を入れておいた方がいい。
「それにしても、空母の皆さんのうなじとか名取さんの恥じらい白スクとかは需要高そうですね、にしし」
需要……誰に対しての需要かは聞くまい。そういうものを欲しがる人は大体想像がつくであろう。
「駆逐の子たちの旧式スク水も似合ってましたし、朝潮ちゃんとか上手くやれば……ふふ。これでまた一つ材料が……」
「増えるわけだな?」
「はい!……って、え?」
自分の声に返事が返って来て青葉は青ざめる。
「仕事熱心なのは美徳だね、ジャーナリストに鞍替えするか?」
「た、高峰……さん?」
「その“実弾”。どうする気かな?」
実弾。特調ではそれは相手を引きこむため――――――場合によっては脅迫の材料として使用されるものを指して言う。
「えっと……そのぉ」
「そういう写真は使い勝手がいい。駆逐艦の子たちみたいなローティーンの子どもの水着写真なんて持ってるだけで所有者にマイナスのレッテルを張ることが可能だからな。そしてそう言う性癖を隠し持つ人物も多い。確かにそのカメラに収められてるものは今後俺たち特調の大きな財産になるかもしれないね」
それに艦娘は軍用義体。その外見自体は軍事機密ではないが、それを一般人が知る由はない。対象を軍事機密に触れた可能性があるとして拘束するには“艦娘の隠し撮り写真を持っていた”という容疑だけで十分である。そうして拘束した人物を取調べたり、味方に引きこんだりするというのは一つの手段として十分に価値のあるものだ。
「まぁ、その材料集めを自発的にできるぐらいにはこっちの世界に慣れたのかもしれないけど、詰めが甘いな。それに“本当に違法の写真を使ってどうする”」
青葉は高峰の言葉に汗をひたすらに流し続ける。
「えっと……すいませんでした」
「よろしい。だが、求めてるのは謝罪じゃない。わかるね?」
青葉の背中に一気に悪寒が走る。これは、この目は……。
「青葉、仕事だ。特調六課に下りてきた正式なミッションだ」
諜報員が協力者を得るときに使う目だ。
青葉に選択の余地は残されていなかった。
途中経過
1位:潜水(80)
同1位:正空(80)
3位:駆逐(70)
4位:重巡(50)
同4位:戦艦(50)
6位:軽巡(40)
7位:軽空(30)
まだまだ続くよ、演習編。
感想・意見・要望はお気軽にどうぞ。
次回の種目は……もうおわかりですね?
それでは次回お会いしましょう。