艦隊これくしょん―軽快な鏑矢― 作:オーバードライヴ
今日の月食が見れなかった鬱憤で書き上げました。
注意事項です。
・『啓開の鏑矢』の時系列はガン無視。今回は時事ネタで時系列行方不明
・無駄にネタに走る可能性大
・キャラ崩壊あり、注意
・駄文、駄文、アンド駄文
それでもいい方は、抜錨の用意を。
それでは抜錨!
きっかけは如月の一言だった。
「真っ赤に燃える月が見れるらしいわよ~」
「真っ赤なお月様?」
「そう、皆既月食っていってね、お月様が地球の影に入って暗い赤色に光るんだって」
昼下がり、午後の訓練の前、食事の後の中途半端な時間に如月がそういった。
「なにそれ、かっこいいじゃない!」
「少し見てみたい気がするのです」
結構食いつきがいいのは雷電コンビ、その横の暁は涼しい顔だが聞き耳を立てているらしい。
「確かに見たことないね。赤いお月様かあ……」
睦月がそう言うと響が時計をちらりと見る。
「今日の夜は確か全員第二種待機だったはずだ。ここの屋上でなら見れるんじゃないかな?」
「あ、いいわね。みんなでお月見しない?」
クールさを見せようとしていた暁も耐え切れずに話に乗ってきた。
「なら決定ね。今夜は屋上でお月見! さっそくしれーかんに話を通してきまーす!」
こういう時にちゃきちゃき動く雷がいつものように食堂を飛び出していく。
「お月見……というとススキとか、お団子とかかにゃーん?」
「ススキはウェーク島じゃ用意できそうもないわねぇ。なにか代わりになるもの……ヤシの葉ぐらい?」
如月はあごに指をあてながらそう言うと睦月が噴き出した。
「ヤシの葉っぱってススキの代わりになるの~?」
「じゃぁなにかほかにある!?」
「……ソテツ?」
「やっぱりそんなんになるじゃない!」
言い合いを始めた睦月如月の隣で暁たちも会議を始める。
「お団子は手に入るかな?」
「なければ羊羹でいいと思うのです」
「そうね、羊羹と緑茶があればまぁそれらしくなるし、和菓子で他にあったかしら?」
「こういう時に酒保が充実してればって思うよ。カステラとか欲しかった」
「それお月見にいる?」
わいわいがやがやと話が弾んでいく。皆既月食に合わせてお月見とはどうなのだろうとは思うが、楽しめればそれでいい駆逐艦チームであった。
「で……ススキの代わりにシュロの葉、六波羅医務長に頼んで作ってもらったおはぎと間宮羊羹と緑茶ってラインナップになったわけだ」
「どう、しれーかん。結構それらしくなったでしょ?」
「大変だったのよ~あんこ練るの」
コンクリートの屋上にブルーシートを引いて司令官の私室のローテーブルにお供えのおはぎなどの甘味、屋上の柵にシュロの葉を結んだら潮風にいい具合に靡いている。どこか異国情緒あふれるお月見会場の誕生だ。
「みんななんだか浮ついてると思ったらこんなことを考えてたわけだ」
呆れたような口調でそんなことをいう天龍だが、その表情は柔らかかった。
「いいじゃない。こういうの好きよ~私」
龍田がそんな風に笑えば、天龍も「別に嫌いじゃねぇよ」と笑う。
「ちょっと雲が多いのは残念だけど、まあよしとしないとね」
如月がそう言ってビニールシートの上に靴を脱いで上がる。それに続いて睦月たちの残りの駆逐艦が上がった。司令部の面々も靴を脱いで上がる。
「さすが南国、まだ暖かいな」
「寒かったら私が温めてあげるわよ」
さっそくすり寄ろうとする如月をなだめるように睦月が後ろから抑えにかかる。
「お姉ちゃんも好きなんだからぁ」
その抑えにかかったことで墓穴を掘ったと悟った睦月だがもう遅い。如月が睦月をお姉ちゃん呼びするときはたいてい悪ノリで酷いことになる。それを知っている電がそっと距離を置いて航暉の反対側に陣取った。睦月はちょっと恨みがましくそれを見る。
抱き着いてきた如月は体温が高い。いつも以上に高い。
「如月、まさかとは思うけど。お酒飲んだ?」
「まっさかぁ、飲んでないわよ?」
そう言った顔は僅かに上気しており、かすかにアルコールの香りがする。うそだ、飲んでないなんて絶対ウソだ!
正座した姿勢の睦月の上にまたがるようにして向かい合った姉妹はどこか危うい雰囲気を漂わせている。如月は一瞬ちらりと航暉の方をみてからくすりと微笑んだ。
「南国だとやっぱり熱いわね。すこし脱いじゃおうかしら?」
「にゃあああああああ!?」
脱いじゃおうかしらと言ったときにはもうセーラーの裾に手をかけており、思わせぶりに上に持ち上げていく。へそが見えて、もう少しあげればなだらかな胸を覆う布地が……。それを睦月は慌てて抑え込むと顔を真っ赤にしたままその位置で止める。
「そんなことはお姉ちゃんは許しません!」
「あらぁ、こんなことで真っ赤になるなんて、お姉ちゃんはやっぱり初心ねぇ」
「司令官もいるのです! 女の子だけならまだしも、司令官は男の人だよ!」
「司令官にとっても眼福でしょう?」
話を振られた航暉は目をそらした姿勢のまま口を開く。
「……子供の体見て興奮するような感性は持ち合わせてなくてね」
「あらつれないのね」
如月は笑うとそっと睦月の上から降りる。
「……もう、ちょっと落ち着いてよ」
「あら、如月さんは落ち着いてるわよ?」
睦月の隣に落ち着いた如月はそっと睦月の左手に右手を重ねる。
「こんな風に月が見れるなんて、ちょっとうれしいのはあるけどね」
「如月……?」
「私、空とか月とかあんまり好きじゃなかったのよ」
上気した肌は艶やかに満月の光を返す。
「みんなと一緒に戦うこともできなかったし、装甲が紙な私たちにとって航空機は天敵だし……。だから空はあんまり好きじゃない。いまでもそうかも」
如月のことをまじまじと見つめる睦月。そのさらに横では航暉が黙って緑茶を飲んでいる。
「でも、睦月たちとこんな風に楽しくできるなら、これもいいかなって思ったりするかも」
そんなことを言って微笑んだ如月はどこか寂しげな色をしていた。
「……なーんてね。冗談よ」
如月はそう言ったがどこか悲しげで。
「……そんな風にごまかしちゃ、だめだよ」
睦月はそっと如月を抱きしめた。
「辛いことがあったら、ちゃんと辛いって言わなきゃ。悲しい時はちゃんと悲しいって言わなきゃ。そんな風にごまかしたら駄目だよ」
驚いた表情のまま固まった如月はしばらくそのまま抱きしめられていた。
「ちゃんと話して、如月。お姉ちゃんが聞いてあげるから」
「……そうね、わかったわ睦月」
くすりと笑う気配がした。その直後に暁が明るく声を出す。
「あれ! すこし赤くなってない!?」
「言われてみれば赤くなってる気がするのです」
「赤い月を愛でながらお月見とか本当にやるのか?」
「司令官は不満なのかしら~?」
「不満なんてないからその刃物を下ろせ龍田。どこからそれを取り出した。艤装は地下のハンガーに収めたはずだろ」
一気に周囲が明るくなっていく。暁が司令官の方をちらりと見ると航暉はウィンクで返した。
「さて、満月を楽しみつつ、甘いものでも楽しむか」
「はーい!」
どんどん赤みを増していく月を見ているとどんどんと甘味が減っていく。真っ赤な月を背景に誰が一番かっこいいセリフを言えるか大会(優勝はロシア語で決めた響)や、最後のおはぎ争奪戦(勝者暁)、なぜか始まる怖い話大会と多いに盛り上がった。
なお、翌日にお酒が残って頭痛で倒れた如月が六波羅医務長から大目玉を喰らったのは完全に余談である。
超久々の更新でした。
月型の子たちはお月見すると似合いそうですね。混ぜてほしいなぁ。
感想・意見・要望はお気軽にどうぞ。
それは、次の機会にお会いしましょう。