please kill me 〜第零試験部隊〜   作:カゲさん

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ゴッドイーターとなって2週間が経過した。とりあえずまだ生き残っていて、少しの空き時間で心身を休めることができるくらいの余裕は出来た。

 

とはいえ訓練は毎日あって任務も毎日ある。さすがにまだ1人でアラガミ討伐に行くことはなく、リンドウさんやサクヤさんと任務に行くことになる。

 

2人にとっては簡単な任務ばかりで、ゴッドイーターとしては大丈夫なのかと聞いたことがあったのだけれど、どうやら私が訓練している間に違う任務へ行っているらしい。ゴッドイーターのブラックさが垣間見えた気がした。

 

同じ第一部隊にはもう1人、支部長の息子のソーマ・シックザールという人がいるのだが、まだまともに会ったことはない。明日の任務でようやく一緒に組むらしい。

 

「回復錠の味ってなんとかなんないのかなー…これ、味ヤバくね?明らかに食べちゃダメなやつじゃない?」

 

ラウンジのテーブルを挟んで向かいに座るコウタも無事生き残れているようで、相変わらず呑気そうに馬鹿話を繰り広げている。

 

「普通に飲み込めばいいんじゃないの?毎回味わう必要ないじゃん」

 

「いやそうなんだけどさー….…なんか、あれくらい大きいのをいきなり飲み込むの、怖いじゃん」

 

「じゃん…って言われても」

 

そんなに難しくないでしょと常備している回復錠を1つ徐に差し出す。するとコウタは渋い顔をしつつも受け取って口に放り込み、いつも通り「うぇぇ……」としっかり味わった。

 

「リンドウさんもサクヤさんも、そのうち慣れるって言ってたけど」

 

「慣れるって言われてもなぁ……聞いた話、あの2人って極東支部の中でもかなりの実力者なんだろ?そのレベルになったらようやく味なんか気にならなくなるんだって」

 

「そうかなぁ」

 

確かに回復錠の味は嫌いだけど、毎度気になる程じゃない。というか、美味しかったらそれはそれでちょっと嫌な気もする。

 

「あの2人にはちょっと追いつけそうにないよなぁ。アキはリンドウさんとサクヤさん、どっちが強いと思う?」

 

「え、なにそれ?」

 

「いいからいいから」

 

いきなり言われてもと思いつつも、どちらが強いかはすぐに出る。たぶん、2人も同じことを言うだろう。

 

「それ、ソーマさんは入れないの?」

 

「いや、だってあの人よく知らないし」

 

「確かに…」

 

だったらリンドウさんだろう。第一部隊の隊長な上、大型アラガミの単独討伐も多くこなしているらしい。だから、どちらかと言われたら間違いなくリンドウさんだろう。

その2人のうちどちらか、ならば。

 

「………ヤナギさん、かなぁ?」

 

「ヤナギさん?それって第零部隊の?」

 

「そうそう」

 

誰が強いかを考えると、自然とあの人の顔が思い浮かんだ。

 

「リンドウさんかサクヤさんかで聞いたんだけど……まあいいや。俺ヤナギさんって実際に戦ってるところ見たこと無いんだよね。任務先で会ったりはするんだけど」

 

「私も見たのは初任務の一回だけなんだけど……」

 

あの時の光景は鮮明に思い出せる。ヤナギさんはあの時、作戦地域に入ってきたボルグ・カムランを1人で排除するという突発的な任務を課せられた。

 

そしてその戦いは苛烈で、激烈で、痛烈で、迅速で敏速で簡捷なものだった。

戦闘時間は1分も要せず、たったの一撃すら受けず終始アラガミを翻弄し続けるその姿は脳裏から決して離れない。

 

「たぶんヤナギさんはあの2人より強い……ような気が、するようなしないような…」

 

「どっちだよ…」

 

「だってリンドウさんとサクヤさんが1人で戦ってるところ見たことないし」

 

「そうだけどさー」

 

強さは指揮力や連携力なども含めた累計で測られるものだけど、それらを無視して単純な個としての強さだけを考えるなら強いのはヤナギさんだろう。根拠があくまで感覚的なものでしかないけれど、リンドウさんもヤナギさんを認めているようなことを言っていたし。

 

「そういえばヤナギさんって、変なあだ名で呼ばれてるよね」

 

「変なあだ名?」

 

コウタがそんなことを言うけれど、ヤナギさんがあだ名で呼ばれるところは見たことも聞いたこともない。あだ名……ヤナギンとか久っちとか……?別に変じゃないか。

 

「直接そう呼ばれてるわけじゃないんだけどさ。なんか陰口みたいに…『アンダーテイカー』って」

 

アンダーテイカー。つまり葬儀屋。アラガミを葬るっていう意味なら納得だけれど、陰口みたいに言われてるというのが引っ掛かる。

 

「オイ」

 

「ヒッ!?」

 

直後、背後から突然ドスの効いた声が飛び、その人の顔を見たらしいコウタがあからさまにビビって顔を引き攣らせた。

 

恐る恐る振り返ると、フードを被った褐色肌の男の人がこちらを睨むようにして見下ろしていた。こちらというか、コウタの方を。

 

「その言葉、二度と口にするんじゃねえ」

 

明らかに怒気を孕んで続けた言葉にコウタと私は無言のままコクコクと首を振った。すると彼はそれ以上何も言わず立ち去っていった。

 

姿が完全に見えなくなると「はぁぁぁ…」とコウタが大きなため息をつきながら椅子の上で脱力した。

 

「ビックリしたぁ………誰?あの人」

 

「たぶん…さっき話してたソーマさんだと思う」

 

「うげっ……怒らせたら絶対マズい人じゃん。謝りに行った方がいいかな…」

 

「あの人に謝っても仕方ないんじゃない?」

 

アンダーテイカーがどういう意味を示すのかはわからないけれど、もし謝るのだとしたらソーマさんではなくヤナギさんの方だ。理由やきっかけはどうあれ、あまり触れていい話題ではなかったのだろうから。

 

「……ちょっと待って。私明日あの人と任務なんだけど。すごい気まずくなっちゃったじゃん…」

 

「………ごめん」

 

ごめんで済むか。

 

 

 

 

結果として、私がソーマさんへの気まずさに苛まれることはなかった。何故なら、そんな些細なことなんて気にも留められないほどの出来事が起こってしまったから。

 

任務内容はオウガテイルとコクーンメイデン各数体の討伐といういつもと同じような任務。そう、いつもと同じと思っていた。

 

わかっていたはずだった。ゴッドイーターが常に人材不足に追われているのは、適合率の問題だけではないということを。にも関わらず、ここ2週間で一度も見聞きしなかったせいで忘れていた。

 

そうして緊張感が少し緩み、案外どうとでもなるんだと思ってしまった時、起こってしまった。

 

任務に同行していた、ゴッドイーターが死んだ。

 

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