please kill me 〜第零試験部隊〜   作:カゲさん

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本日の任務はアキとアリサ、3人での作戦。リンドウ、サクヤ、ソーマはボルグ・カムランの原種と堕天種の同時討伐任務についており、今回は俺が引率役を任された。コウタは防衛班の任務に同行しているらしい。

 

今までこういった役割を任されることはなかったのだが、二人と面識があるからだろうか。アキはともかくアリサとは知り合い一歩手前くらいの距離なのだが。

 

「よし、じゃあ改めて今日の任務内容確認ね」

 

現地に到着して一度隊長らしいことをやってみるが、両者の反応は正反対。元気よく「はい!」と返事するアキとは対極にアリサは自分の端末で確認を行なっている。元気も自主性もあって隊長嬉しい。

 

「アリサ、ヤナギさんの話聞こうよ」

 

「…それ必要ありますか?大体任務内容くらい事前に頭に入ってるものでしょう。無駄なことはせずに早く任務を終わらせる方が先決です」

 

「アリサぁ」

 

「それに、旧型は適当なアラガミを狩っていただいていれば結構です。第零試験部隊はそもそもそういう部隊だと聞いています。討伐対象のシユウはこちらで倒しておきますので」

 

言うだけ言ってアリサは作戦地域内に降下する。ここまでくるといっそ清々しく思えるが、さすがに1人で行かせるわけにもいかない。アリサを引き止めようとして空振った手を持て余しているアキに指示を出す。

 

「アキ、悪いけどアリサについて行って。俺は周りのアラガミ討伐しておくから」

 

「え、いいんですか?」

 

「元々2人に実力をつけてもらうための任務だからね。油断しなかったら勝てるよ」

 

「……わかりました。行ってきます!」

 

アリサの方へ急いで駆けていくアキを見送り、俺もさっさと神機片手に走り出す。事前情報で報告されているのはオウガテイル4体とザイゴート6体。

 

廃墟となり瓦解したビル群の間を通り抜けていくと、瓦礫か何かを喰っているオウガテイル2体を見つける。

 

「いたいた」

 

向こうが気づいた時には既に射程内に入っており、一体は捕喰形態となった神機に胴体を食い破られる。

 

近接タイプのゴッドイーターは捕喰という過程を経てバースト状態、つまり一時的な強化状態に変化する。神機を通じてオラクル細胞が全身に行き渡り能力の向上を実感し、同時に強化された五感が周囲の情報を細かく拾い始める。

 

もう一体がすかさず尾を振り回し攻撃を仕掛けるが、跳び上がるように避けたのち刀身を展開し瞬時に頭を斬り落とす。

 

直後、わずかな気配と共にザイゴートが側面から飛来しエネルギー弾を放射線を描きながら放つ。

 

リッカが改良した装甲の展開速度はコンマ数秒程度の違い。だが、その違いを訓練で体感している俺は攻撃を避けることなく防げると確認し、振り向きながらシールドパーツを展開する。

 

ジャストタイミングで攻撃を捉え衝撃がうまく分散する。俺はそのまま体を回転させ、一周した時点で勢いを利用して神機をアラガミに放り投げた。

 

「よーし」

 

計算通りに神機の刃先がザイゴードの巨大な瞳に深々と突き刺さり地面へ落下する。そして即座に飛び込み神機の柄を掴むと口咬展開形態に移行し引っ張りながら前進する。本来これは神機に負荷をかけないために遠心力を利用して展開するものだが、知ったこっちゃない。コイツが耐えればいいだけの話だ。

 

突き刺さったザイゴートの重みを利用して捕喰口を最大まで伸ばすと横薙ぎに振り回した。すると後方から接近していたオウガテイルに直撃に胴体が裂ける。

 

「あ、逃げるなよ」

 

倒れるオウガテイルの奥でこちらに背を向けながら逃げ去るザイゴートの姿が映る。ザイゴート種はその瞳などを用いて広い索敵能力を有する。そして小賢しくも「逃げる」という行動すら見せてくる。

 

目標との距離はそれなりにあるが、まだこちらのバースト状態は切れていない。

 

迷いなく距離を詰めようと試みるが、奴は一度振り向いてこちらとの距離を測ると焦るように上空へと飛び去って行った。

 

「だから」

 

苛立ちながらザイゴートの真下まで走り込み、神機を片手で強く握り込み振りかぶる。そして

 

「逃げるな!」

 

もう一度、今度は気合を入れて投げ飛ばした。くるくると回転しながら上昇する神機はザイゴートのいる高さまで到達し、突き刺すどころか真っ二つに引き裂いた。やがて自由落下してきた神機の柄をガッと掴み取り、そこでバースト状態も途切れる。

 

ふと思ったが、こんなことをしてもし神機を破壊したりしていたら、リッカから殺意を込めて怒られるんじゃないかと思うと背筋がゾクっと冷えた。

 

今度からは回数を控えよう。

 

頭の片隅に決意を抱き、残りのアラガミを探しに再びビル群の中へと潜っていった。

 

 

 

 

シユウと戦うのは初めてじゃない。前戦った時はコンゴウやグボロ・グボロとは全く異なる硬さに驚きはしたけど攻撃は読みやすくそれほど苦戦はしなかった。

 

けれど私は今、これまでで1番の難関にぶつかっています。

 

「アリサそっちに攻撃行くよ!」

 

「わかってます!くっ……それより私の射線上に入らないでください!当たっても知りませんからね!」

 

「えっ、いつのこと!?」

 

もう連携がガッタガタです。私が悪い所もあるんだろうけど、アリサはそもそもこっちの動きに合わせようという考えもなさそうだった。あとぶっちゃけ、アリサも私の射線に入ってきて撃てない時もある。言わないけど。

 

リンドウさんと3人の時はこんなことにはならなかったけど、今思うとあの時はリンドウさんが最大限フォローしてくれていたんだろう。新人の私にはどうにもなりません。

 

あとコイツ!シユウ!ほんとに硬いし腕は組んでるし挑発してくるしほんとウザい!!

 

「どんな調子?」

 

こちらの切迫感を他所に、背後から呑気な声が聞こえてくる。アラガミに注意しながら振り向くと、神機の先だけ赤く染めて他はなんの傷も汚れもない状態のヤナギさんが立っていた。

 

え、もしかしてもう全部やってきたんですか。事前情報だと10体はいたと思うんですけど。いや、というか

 

「助けてください!」

 

「えー、シユウなら2人でも余裕でしょ?だよねアリサ」

 

「っ、当然です!」

 

「ほらぁ」

 

アリサぁ…

 

でもここで弱音を吐いたらヤナギさんからの評価が下がってしまう。それは嫌だ。それにシユウは一度倒したことのあるアラガミ。行動をちゃんと見てアリサのこともちゃんと見て、あとは気合いでなんとかなるはず!

 

それから数分。

 

「やっぱり無理です助けてください!」

 

気合いじゃどうにもなりそうもなかった。ていうか、ヤナギさん何度言っても一切助けてくれない。「がんばれ」としか言わない。

 

 

 

 

一体どれだけ戦っていたのか。どうにかこうにか怪我を負いながらも下半身の結合崩壊を起点にして、ようやく倒し切ることは出来た。

 

回復錠もそれなりに使って所持数は心許なくなっている。まだお金少ないから回復錠のお金もバカにならないのに…

 

アリサも所々に傷を受けて少し離れたところで膝をついている。するとそこに突然光の柱がパッと現れ、アリサの傷が即座に塞がった。回復柱、結構高いやつだ!

 

「よし、それじゃあ帰ろうか。運転誰がする?」

 

何事もなかったかのような様子で話すヤナギさんに私は、そしてアリサすらもキョトンとした表情を浮かべる。

 

今回の任務はお世辞にもうまくいったとは言えないもの。きっと何かしらの指摘があるだろうと身構えていたのに、その様子は一切ない。

 

「あ、あの…何かこう、お叱り的なものは……」

 

「お叱り?」

 

聞くと今度はヤナギさんがキョトン。

そして「うーん……」と暫く首を捻る。

 

「とりあえず、車の方戻ろうか」

 

ヤナギさんはそうして歩き出し、私とアリサは黙ってその後ろをついていく。別に好き好んで叱られたいとかそう言う感じじゃないけど、明らかに問題があったのに何も言われないというのは逆に怖い。アリサも気まずいのか顔を背けて俯いたままだ。

 

するとある時、合点がいったようにこちらに振り向いた。

 

「無事討伐出来たからそれでいいと思ったんだけど、確かに上官として言うだけ言っておこうか」

 

ヤナギさんはそのまま後ろ向きに歩く。散乱している瓦礫に足を取られないかヒヤヒヤしながら見ていると、どうやってるのか器用に避けながら進んでいく。

 

「まあ俺は1人の任務がほとんどだし言えることってそんなにないんだけど、あれだね。目の前のアラガミに集中しすぎてるね2人とも」

 

「えっ…で、でも戦いに集中しないと負けちゃいます」

 

適当に力を抜ってことだろうか。正直まだ新人の私には難しいと思う。今回だって必死に食らいつかないとこっちが喰われていた。

 

「集中するなってわけじゃなくてね。言い換えると夢中になるなっていうか、もっと視野を広く持てってこと」

 

「そんな初歩的なことは出来てます」

 

ヤナギさんが噛み砕いた言葉に噛み付いたのはアリサ。そんなアドバイスはいらないってピシャリと突き放す。

 

「いや、全然見てないよ」

 

対して相も変わらず物腰柔らかい言葉の中に、僅かな真剣味が帯びる。

 

「味方が射線に入るなんて良い例かな」

 

「それはこの人が…!」

 

「被った時点で自分のミスだよ。本当に見えていたなら、被った瞬間に気付くなんてことにはならない。勿論逆の場合でもね」

 

淡々と語る正論にアリサはぐぅの音も出ずに押し黙った。

 

「今すぐ完璧にやれってわけじゃないんだけど、折角ゴッドイーターになったんだ。単純な身体能力だけじゃなくて五感とかも強化されてるわけだから、有効活用しないとね」

 

なるほど、と素直に思う。確かにゴッドイーターとなって体は早く動くし疲れにくいし重い物も持てるし凄いなとなっていたけれど、今思えば実感が少なかっただけで視力も聴力も良くなっている。つまりそれを意識的に使えってことだ。

 

「常人より発達した五感全てを使って得られるものは、所謂第六感と呼ばれるものにも、匹敵する。例えばアキ、2時方向仰角20度に撃ってみて」

 

「はい?」

 

「いいからほら。3、2、1」

 

「わ、わかりました!」

 

唐突な指示でわけもわからず言われたままの方向にブラスト弾を撃ち放つ。直線軌道を描く弾は発射角に従って徐々に高度を上げ、ビル跡の影に隠れようとしたその瞬間。唐突に飛び出してきたザイゴート一体の瞳に直撃し、顔面を抉られそのまま事切れた。

 

「えっ…」

 

思わず声を漏らす。隣にいるアリサも驚愕の表情を貼り付けて固まった。

 

「ちゃんと見るっていうのはこういうこと。死にたくないなら、出来た方がいいよ」

 

ヤナギさんは確実にアラガミがどこからいつ出てくるかわかっていた。遠くの気配を感じ取るなんてオカルト的に聞こえるけど、実演を見た今なら出来そうな気がしてくる。

 

きっと、その力があればエリックさんを死なせずに済んだはずだから。

 

「よしよし、車は無事だね」

 

「私が運転します」

 

車両に戻ってきて無事を確認すると、ハッと我に帰ったアリサが聞かれてもいないのに食い気味に迫る。私もそれがいいと思う。ヤナギさんの運転は、アレだったから…

 

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