財団世界でこの先生きのこるには   作:黒猫と白蛇

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二桁話に突入です。


10話

今日は霧蛙警察署に来ている。翼也君の事情聴取の件で保護者として僕も呼ばれた形になる。畑中さんが車*1を出してくれたのは助かるけど流石に朝7時に来るのは常識が無いと思う。

で、昼頃には終わるから、と説明されたので待機中、だったんだけど。

 

「雀さん、できればあなたにも話を聞きたいのですが、よろしいですか?」

 

と、畑中さんが声を掛けてきた。あれ、翼也君への聞き込みは別の人が担当してるのかな?うーん、少なくとも鉄錆の果実教団関連の話を聞きたいってわけでは無いだろう。恐らくは僕の出身やら魔法に関する話のはず。

出身は、正直に話しても信じて貰えないだろうし黙秘で、魔法に関してまあ最悪全部話しちゃっても構わないだろう。たまたま見つけた、で十分通る話だ。よし、話に乗ろうか。

 

「良いですけど...翼也君は?」

 

「彼は特事課の婦警に対応させてます。

成人男性に詰められるのは辛いでしょうしね。」

 

良い考えが浮かんだ、と言うような顔をしながら畑中さんが続ける。

 

「取り調べ、と言うにはちょっと根拠を出せないので

朝食でも食べながら、どうです?もちろん奢りますよ」

 

食事は今の僕の魔術の根幹に関わるからあんまり本に載ってる以外の食事は摂りたくないんだけど...まあ一食くらいならどうとでも調整できるか。

それに奢りならちょっと贅沢できるかも?ウチは金欠なのとそもそもレシピ本が昭和の物、かつ軍に供与された物なのもあって味気が無いのだ。

 

「良いでしょう!で?どこに行くんですか」

 

「署の食堂では...ああ、はいわかりました外に出ましょうか、ですがこんな時間帯ですしあまり空いている店も多くありません、あまり豪勢な食事を期待されても困りますよ」

 

そうして車で10分ほど走ると...蕎麦屋か。できれば洋食が良かったんだけど、まあ流石に文句を言う訳にも行かない。

 

「個室があってこの時間からやっている店はこの辺では此処しかないのですよ」

 

そのままここの蕎麦屋は天ぷらが美味い、と言うような話を聞きながら店に入り、店員の案内で個室へ。

品書きを眺めつつ天ぷらが美味しいなら天せいろが良いかな?なんて考えていると、畑中さんが真剣な表情になって声を掛けて来る。

 

「単刀直入に聞きますが、あなたは何らかの超常組織に関りがありますか?」

 

なるほど。まあ警察だし、一番気になるのはそこなんだろうか

 

「超常組織って言うと魔法使いの集団とかそんな感じですか?私は自分以外に魔法を使う人を見たこともないですよ」

 

存在自体は知ってるけどね。関りは実際無いし。寿司を回すのは...魔法ではないだろう。まあ回すところを見たわけじゃないから仮に魔法に分類されるんだとしても嘘は言ってない

魔法を学んだ蒐集院は関りがあるとも言えるけど、まあ無いようなもんだろう。

 

「...そうですか。それでは次の質問です。あなたはその魔法を何処で学びました?何歳から学び始めましたか?」

 

何だか尋問じみてきた。あんまり空気が重くなると折角の食事が美味しくなくなるんだけどな。

 

「独学、ですかね。本を読んでそれに書いてあった内容を実践しただけです。魔法を学び始めたのは大体2ヶ月くらい前ですかね。」

 

「何という本で学んだのですか?」

 

「それは言う必要ありますか?流石に手札を全開にするような真似はしたくないんですけど」

 

正直話しても良かったけどね。言った通り自分の取りうる手段を全て他人に知られているってのは個人的に好ましくない大変不快な状態。なのでまあできれば回避したい。

 

「ふむ。まあ神道系と陰陽道か或いは原型の陰陽五行説に

基づいているらしいことは分かっているのでこれはそこまで聞きたい情報ではありませんでした。」

 

...まあ、神棚とかあるし割と室内で魔法を使ってたし本職の、五行結社か蒐集院の人達なら分かっても不思議では無いか。

 

「それにしても随分自分たちの情報を喋るんですね。そんな事私に教える必要あります?」

 

「多少はあなたの事を調べています、と言う意思表示です。

その上でお聞きするのですがあなた、あのマンションに住むまでは何してました?経歴が分からないのですが。」

 

「そこは黙秘します。

ですがあなた方の言う超常組織とは関りがありませんでした、とは言っておきます」

 

「なるほど。思ったよりも収穫がありませんでしたね。

何かしらの超常組織とは関りがあるものと思っていましたがアテが外れましたか。

さて、こうしていつまでもおしゃべりしていては店に悪いですからそろそろ注文しましょう。何にするか決めましたか?」

 

「それじゃ、天せいろ、大盛で。」

 

昨日想定してたよりは割とさっくりと終わらせてくれたかな。少なくとも暴力的手段に訴えられなかったし。

畑中さんが店員を呼んで天せいろと自分の天丼セットを注文し終えると、そういえば、と言うような顔をしながら自分の鞄をまさぐり始めた。

ちなみに天丼セットは小っちゃいざるそばが付いてくる奴だ。白米食べたかったし僕も蕎麦とミニ天丼の方にすれば良かったかな。

 

「これを渡しておきます。

日本超常組織平和友好条約機構という、簡単に言うと...まあ超常組織の管理をしてる団体の冊子です。

奥の方に特定規制対象団体に指定されている団体、あー、暴力団指定のようなものですね、武力自体は暴力団よりかは強力なのでここに載ってる団体には近づかないようにしてください。」

 

と、言いながら薄めの本くらいの冊子を渡してくる。日本超常組織平和友好条約機構、略称JAGPATO。あんまり略せてないよね。

名前の事は良いとして、活動の実態としては財団、GOC、日本政府が主体となって締結した超常組織に関する条約、と言うくらいしか僕には情報が無い。

まあこの組織があるって事はヴェールと法律を破らない限りは超常組織の存続は認められてるって事だ。なら魔法を学ぶくらいは大したことでは無いだろう。

などと考えていると、それと、と繋げながら畑中さんが話し続ける。

 

「もし何らかの魔法や超常技術を扱った団体を設立する場合は最後のページにある、そう。それです。

その書類に書き込みの上JAGPATO本部に郵送をお願いしますね。」

 

「今の所そんな団体を立ち上げる予定はありませんが...分かりました」

 

新規立ち上げもOKな感じなんだ?実の所、法的に合法なら割と設立もありじゃないかとは思ってるけど...

流石にそれを宣言するのは大分頭がおかしく見えるのでやめて置いた。

まあ設立する、と言っても現在のメンバー候補は翼也君だけなのだからもう少し人数が欲しいかな。勧誘方法も一応考えておこうかな?

 

その後は特に何事も無く食事を終えて警察署に戻って来た。ちなみに蕎麦と天ぷらは美味しかった。店の名前と位置を覚えておくことにしよう。

で、そのまま昼頃まで待機。スマホが無いから時間を潰せなくて大分暇だった。まあ初代のiPhoneはすでに出てるらしいけど...

まあスマホを持ててない理由は結局のところ金欠だから時代がいつだろうが関係ないか。

 

そんな感じで署内を暫くブラブラしたり食堂でテレビを見ながら4時間ほど待っていると、畑中さんが話しかけてきた。

 

「黒谷さん、日野君の取り調べが終わりました。ご自宅までお送りしますよ」

 

やっとか。いやまあ事前に聞いてた通りの時間なんだけどさ。

 

「それでどうでした、お目当ての情報はありましたか?」

 

「まあ良くも悪くも期待通り、と言った感じでしたね。

少なくとも拠点が一つ割れたのは良い成果です。

できれば敵の首魁の顔や姿も欲しかったところなのですがね」

 

「そうですか。それじゃあその拠点を襲撃する感じなんですか?」

 

「それは機密事項ですので...こちらです」

 

そうして案内された部屋を開けると婦警さんと翼也君がいた。

ちょっと疲れたような顔をしているのが分かる、まあ5時間以上話詰めだろうしそりゃ疲れるだろう。

 

「雀さん!ようやく終わりました、何回も何回もおんなじこと聞くんですよ?」

そう言いながら部屋からでてくると翼也君は畑中さんを見てもっと嫌そうな顔になる。どうにも翼也君は畑中さんの雰囲気が苦手らしい。なんでも血の匂いがするとか何とか。

翼也君曰く絶対人殺しですよあの人!との事。いやあ。別に敵じゃないんだしもう少し仲よくしてくれると嬉しいんだけどね。

 

 

 

14時ごろ、帰宅して昼食を取り終えた僕に翼也君がちょっと話があるんですけど、と話しかけてきた。

 

「どうしたの?」

 

「そのですね。血を、血を吸わせて欲しいなあって。

さっき婦警さんとお話してた時も血が吸いたくて吸いたくてしょうがなくなっちゃって。」

 

あ...そういえば翼也君は吸血鬼だった。完全に忘れてた。だって日光も平気だし基本僕よりも早起きだし...

 

「えっと、もしかしてずっと我慢してた?」

 

「うーん、どっちかって言うと今日からですかね?昨日神社巡りをした時にパワーを使っちゃったみたいで。」

 

「私はどうすれば良いの?ナイフで指でも切った方が良いかな」

 

「大丈夫です、首からいけるので。痕も一週間くらいで消えるらしいですよ」

 

首からって...めっちゃ痛そうなんだけど。ちなみに血をあげる事については特に抵抗は無い。まあ雇用費の一環と考えてる。

 

「それ、本当に大丈夫なの?滅茶苦茶痛そうなんだけど。」

 

「大丈夫ですよ、唾液に麻酔染みた効果があるみたいなので」

 

「そっか、それならいいよ。首からどうぞ」

 

血を吸いやすいように椅子に座ってそう答えると翼也君はおお、と感嘆のような声を漏らして正面からゆっくりと抱き着くように近づくと首筋を舐め始めた。

...麻酔、ってこれ?てっきり蚊みたいに噛みつくと同時に麻酔を流し込む感じだと思ってたんだけど。

いつまで舐めるんだろうか、これ。少なくとも1分は経ってるんだけど...というかこれ麻酔以外に経皮吸収系の興奮剤みたいのも混じってない?

段々心拍数上がって来たんだけど、これは僕がドキドキしてるだけ?の割には思考する余裕があるし多分興奮剤系かな。

まあ人とハグするのは男女問わず美形なら僕にとってはご褒美だから興奮剤があろうがなかろうが嬉しいのは変わんないし。

 

がぶっ

 

うわっ、急に噛みついてるんだ。ああ、でも痛くはないな。むしろ心地いい。何というか、性的な心地よさ、と言うよりかは痒い所を掻かれているかのような感じだ。

翼也君は10秒ほど僕の血を吸うと、傷口から口を離して、流れ落ちる血を拭うように2,3度舐めると、僕の体から離れた。...ペットボトルキャップ二杯分で良い、とは言ってたけど実際飲んでる時間より舐めてる時間の方が長いのはどうなんだろうか。

 

「ごちそうさまでした。雀さん。」

 

「本当にこんな少しで良かったの?もう少し飲んでも良かったんだけど。」

 

「いや、雀さんの血は魔法使いだからなのか凄く濃くて...喉が焼けるような感じがしてですね。」

 

ふむ。面白い話だ。やっぱり血そのものをエネルギーに変換してるわけじゃないのかな?

中に含まれる魔力だかEVEだかを変換してるんだろうか?それにしても大した量が入ってるわけじゃないと思うんだけど。

喉が焼けるようなってのは単純に濃かったからなんだろうか、お酒みたいな?それとも僕の魔力が火の属性に寄っているからなんだろうか。

 

うーん、翼也君は若干ぽわぽわ状態になってるしやっぱりお酒みたいな物なのだろうか?

椅子に座り始めたら寝ちゃったし。しょうがない、布団まで運んで行ってあげるか。

*1
パトカーではない




日本超常組織平和友好条約機構 ハブ
http://scp-jp.wikidot.com/jagpato-hub

ちなみに雀君はノーマル寄りのバイです。
中性的で美形ならギリ恋愛対象くらいの感じの。
まあ呑気に恋愛できる世界じゃないのであんまり関係は無いですが、一応BL GLタグを追加しといたほうが良いんだろうか。

※会話に分かりずらいとこがあったので地の文をちょっと追加しました
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