献身ハ時ニ世界ヲ滅ボス   作:千切れた靴紐

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オリ主の結末は、幸せですかねぇ、はたまた悲惨なものになるのか。


淡く仄かに、光る赤

「案外、どうにかなるものなのね」

 

 

 お婆ちゃんの死後、ワタシの処遇についてホンモノの家族たちが話し合っていた訳なんだけど。予想よりも処遇が軽くてびっくりしたわ?

 

 

「遺言通りにしよう、って言われるとは思わなかったけれど」

 

 

 今のお家と、遺産の六分の一を、ワタシに相続するだなんて、ねえ?

 いつの間に悪女になったのかしらね、ちょっぴり罪悪感を感じるわ。

 

 

「それ程、お婆ちゃんが愛されていた証拠って事にしましょうか」

 

 

 お婆ちゃんと、ワタシと会う前に死んだらしい、お爺ちゃん。お婆ちゃんの夫、という事になる人も、その前の人も、いわゆるやり手の実業家という奴だ。

 六分の一と言えど遺産がとんでもない事になるのよね、よく許されたものだわ、本当に。

 

 

「……過ぎた事ね、気にしても」

 

 

 とりあえず学校に行きましょうか、良い頃合いの筈。

 彼女、元気かしらね。

 

 

「ワタシと会わなかったら寡黙になるのよね、何でかしら」

 

 

 ワタシが足りないって言われても困るのだけど。ワタシは一人よ。

 週が明ける度にくっ付かれるのは勘弁して欲しいわね。

 

 

「……三日ほど空いたのだけど、大丈夫かしらね」

 

 

 学校ではもはや名物の様に扱われているのだけれど、それで良いのかしらあの子。他の皆も。

 まあ、黙認しているのだし良いのでしょうね、他の子も騒いでいるのだし面白ければ良しとしそう、所詮は他人事だもの。

 

 

「そう、他人事なのよ、例え   

 

 

 あの子が先生と、許されない関係だとしても、ね。

 

 

◆●◆

 

 

「あ、おはよーカレン」

 

「あら、おはよう」

 

「何だか久しぶりに見たなぁ、三日振りだっけ」

 

「そうね、そのくらいになる筈かしら」

 

「大丈夫だったの? お婆ちゃんの……」

 

「ええ、大丈夫よ、無事に終わったから……心配してくれてありがとう」

 

「そうなんだね……じゃあ、早くあの子のところに行ってあげて? すっごい不満気だよ?」

 

「あ、やっぱりそうなのね」

 

「ほんと、熱々ですなー」

 

「そういうのじゃないのだけれど」

 

 

 あの子、行動には出さないけど凄く静かになるから、周りからもよくわかるのよね。

 先生の前でもそんな事、してないと良いんだけれど……流石に大丈夫かしらね。してないと思っておきましょう。

 教室に荷物を置いて、下の教室に向かいましょうか。

 

 

「……おはよう、有栖(ありす)

 

「……!!」

 

 

 あらあら、目を輝かせちゃって。こう見ると可愛いのだけれどね?

 

 

「先輩」

 

「久しぶり、元気にしてた?」

 

「……うん」

 

「なら良かった、後輩が元気ならワタシも元気が出るわ」

 

 

 出会いはとても偶然だったんだけれど、いつの間にか先輩と慕われる様になっていたの。人間関係って不思議ね。

 

 

「先輩は、大丈夫なの?」

 

「?」

 

「……仲の良かった、お婆さんが」

 

「ふふ、大丈夫よ」

 

「……本当に?」

 

「本当よ?」

 

「……なら、良かった……です」

 

「ありがとう、心配かけちゃったわね」

 

 

 級友にも、有栖にも、多分その他にも。

 知り合いには心配させてしまったのかしらね。

 

 

「ふふ」

 

「?」

 

「何度も言ってるけれど、ワタシに敬語は必要ないわよ?」

 

「え、あ、いや……」

 

「責めてるわけじゃないの、けどちょっとだけ距離を感じちゃうから」

 

「う……」

 

 

 困らせちゃったかしら? でも撤回はしない、他人行儀は好きじゃないもの。

 

 

「ワタシが馴れ馴れしくされて怒る様に見える?」

 

「……想像、できない……です」

 

「でしょう?」

 

「……」

 

「……ごめんなさいね、困らせちゃったわ」

 

「……いえ」

 

 

 どうやら厳しかったらしい。

 先輩に敬語以外で話す、というのはハードルが高いのだろうか? ワタシはどちらでもあまり気にしないのだが。

 それでも時折、敬語以外の言葉も聞ける様になってはいるのだ、少しずつ頑張るわ。

 

 

「……」

 

「……気に触っちゃった?」

 

「あ、そうじゃなくて」

 

「?」

 

「……先輩が怒る所、あんまり想像できないので」

 

 

 なるほど?

 確かにワタシもワタシ自身が怒る所は想像できない。基本的にワタシらしく振る舞ってる訳だし。

 

 

「確かに、でもワタシだって怒るわよ?」

 

「……そうなん、ですか?」

 

「ええ、怒るわ」

 

「……どんな時に、ですか」

 

「えーと……そうね、水をかけられた時とか?」

 

「……この前、されても怒ってなかったですよね」

 

「え? そうだったかしら」

 

「気にする事ないって、笑ってました」

 

「……」

 

 

 そんな事あったわね確か……その時は有栖の方が怒ってたのを覚えているわ。

 

 

「……じゃあ、理不尽な態度をとられた時とか?」

 

「その時も、笑って対応してました」

 

「……そうだったかしら……?」

 

 

 えーと……ああ、確かにどうも思わなかった覚えがある。

 

 

「……先輩、怒る事も大切です」

 

「う……でも、そういう有栖こそあんまり怒らないじゃない」

 

「私は、怒る場面がないだけで……」

 

「ワタシもよ?」

 

「むぅ……」

 

 

 そうじゃない、って言いたげね。意地悪だったかしら。

 でも本当よ? 自己中な人間なんだから、ワタシは。

 

 

「水をかけられても、理不尽な態度をとられても、ワタシがなくなった訳じゃないもの、怒る理由がないわ」

 

「……先輩って、自分に自信があり過ぎませんか」

 

 

 水をかけられたとて、ワタシはあまり困らないし、バレて困るのはあちらだもの。怒る理由、あるかしら。

 

 

「自分が良ければ、良いのよ」

 

「……そう、ですか」

 

 

 自分本位なんだもの、ワタシ。

 

 

「……自分が、良ければ……」

 

「……あんまり、悩まなくて良いのよ?」

 

「……ありがとう、ございます」

 

 

 この子がワタシに懐いてくれているのは、ある種の逃げ場であるからだ、ワタシが。

 この子と先生の、許されない関係。それは有栖に幸福をもたらしているけれど、同時に未来を苛ませる枷にもなっている、と考えている。

 

 

「……どうか、幸せになって……幸せの形は人それぞれよ?」

 

「……はい」

 

「そろそろ時間かしら……またね」

 

 

 この子の事だ、自分がどうこう、より先生が……って考えてるのだろう。優しい子だもの。

 ワタシは授業くらいしか関わりがないけれど、確かに良い先生だとは、思う。生徒とも仲良くしているのだし、あの人の授業は人気がある。

 生徒と付き合う時点で……なんてのは、あの子の前で言うつもりはない。

 

 

「……おや、赤井さんか」

 

「……あら、先生、おはようございます」

 

「おはよう、しかし今日から復帰するのか」

 

「ええ、身内の事は一旦落ち着いたので、今日からまた、お世話になりますね、先生」

 

「ああ、勿論だとも……いけない、そろそろ時間だ、教室に戻ると良い」

 

「お気遣いありがとうございます」

 

「いや、引き留めたのは俺の責任だ、すまないな」

 

「とんでもないですよ、先生」

 

 

 この程度だ。他の皆と同程度の世間話しかした事がない。

 まあ、もっと私的になるのならば人目の付かない所を選ぶだろうけど。

 

 

「……変な事に、ならなければ良いのだけど」

 

 

 生徒と先生の許されない恋なんて、無論どちらも傷付くし大変だろうけど、一番大変なのは情緒の安定しない生徒(こども)なんだから。




遺産の話はアレよね、六億円を六分割しても一億円見たいなアレ。
分割しても大きいお金は大きいんよねぇ普通は。
名家の相続問題でよくドラマとかやってるのってそう言う事なんかなぁと。憶測ですけど。
富豪の感覚はわからんとです。
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