少女と羂索は新宿決戦を観戦していた   作:安西

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感想と評価ありがとうございます……!
感想はまだ返しきれてないですが全部見ています。
今回ちょっと短めです。
224話までの内容で区切りが良かったので。


水面下の戦い

【勘違いしてるみたいだから言っとくけど、そっちがチャレンジャーだから】

 

【クソガキが】

 

 五条悟の虚式『茈』の着弾と共に、戦いの火蓋は切られた。

 崩壊したビル、砂煙で何も見えなくなるスクリーン。

 欠損した腕を反転術式で治癒しながら砂煙の中から現れた宿儺と、四キロ程のも距離を蒼で移動してきた五条悟が会合した。

 

【チャレンジャー?不意打ちを当てた事が余程嬉しいようだな。五条悟、貴様は俎板の上の魚だ。多少他より活きが良く、名前のついていないだけの魚。まずはその鱗から剥いでやる】

 

【じゃあなんでその面のままなんだよ、僕に手加減して欲しかったんだろ?残念ながら僕は特殊な訓練を受けててね、恵なら本気で殴れる。悠仁で一回死んだのはまずったな。僕は思ってるよ、恵の事はオマエを殺してから考えればいい】

 

 相変わらず独特な褒め方をする、羂索は流れてくる音声を聴きながらそう思っていた。

 名前のついていない魚→新種→今までに見た事のない程の術師、という最大限の褒め言葉なのだが宿儺を知らない人にとっては単なる舐めにしか聞こえないだろう。

 

「虚式『茈』……流石の破壊規模。昔の御前試合で死んだ六眼無下限の術師が使っていた茈よりも上だろうね」

 

「五条悟、まさしく現代最強の術師と言ったところでしょうか。だけど、それにしても前方四キロを更地にして更に宿儺にダメージを与えるのは……詠唱込みでも少し強すぎるとは思いませんか?」

 

「勿体ぶるなよ、天使を手中に収めたという事は高専陣営の作戦も把握してるんだろう?何かしらの手段を用いて威力を底上げしている事くらい画面越しでもわかる。あぁそれと認識阻害の結界も貼ってあるだろうね、あれだけの威力をわざわざ宿儺が真正面から喰らいにいくとは考えにくい。直前まで察知できなかったと考えるのが自然だ」 

 

 そうは言うが、ただでさえ極大の威力である五条悟の攻撃威力が上乗せされているかどうかなど、一流の術師ですらわかりはしないだろう。

 アレほどの範囲攻撃は交流会以降行っていないと言うのだから比較もできない、それを見抜けたのは単に羂索の多大なる戦闘経験によるものである。

 

「天使はあくまで外様であり更に受肉体、私が彼だか彼女だかを引き込んだタイミングにもよりますが、高専が作戦を天使に開示していないかそもそもまだその時点では立てていない可能性もありますよ?」

 

「済まないね、言い方を間違えた。『天使に接触できたという事は高専陣営が根城にしている場所を知っているという事、君程慎重な術師が決戦直前に壁や地面の記憶を読み取り高専の作戦を把握していない訳がない』と言いたかったんだ」

 

 サイコメトラー、その名前から思い浮かべられるのは無機物等から記憶を読み取るという物、ブラフの可能性もあるがここまでの事情通になるためにはそれくらいの無法な術式を持っていなければ無理があるだろう。

 術式開示の観点に於いても完全な嘘ではないと羂索は推測した、多少故意に間違った説明をしているかも知れないとは考えていたが。

 

「あぁ、そっちですか。言ったでしょう、私はネタバレが嫌いなんです。確かに映画館には何重もの仕掛けを張り巡らせていましたし、貴方相手には最大限の警戒を持って接していますが、それはあくまでこの戦いが終わるまで死にたくないから。命に関わらない類いの事で楽しそうなら知りたくはないんですよ。貴方だってそうでしょう?」

 

「会ったばかりの私に対していったいどこからその同類認定の根拠が湧いてくるか疑問でしかないが、確かに私にもそんな節が無いわけじゃない……念願のゴール(一億総呪霊)まで後少しでなければ、日車寛見に接触したりしていただろう」

 

 どれだけ対戦ゲームで新しい戦法を試すのが好きな人間でも、そのゲームの大会の決勝では慎重に既存の戦法で挑む。

 六眼の術師に二度破れてからの獄門疆を探す日々、各国軍隊との交渉、数多の努力が報われる寸前なのだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()──そこまで考えて羂索は自嘲する。

 今自分は榎本楓との会話を楽しんでいるではないか、と。

 楽しむと言ってもエンジョイというよりはインタレスティングだが、久しく見ない自分と同じ目線で呪術を観測できる術師との会話は、羂索にとって非常に喜ばしい物だった。

 

「……どうされました?」

 

「いや、こんな事なら九十九由基と一対一で話しておくべきだったなと思っただけだ。彼女と私は思想自体対立しているが、彼女の呪術に対する考え方は私に近い……というより呪術師としての凝り固まった思考じゃなく世界全てを見て俯瞰的な思考が出来る人間だ。つくづく死んでしまったのが惜しいよ」

 

 榎本楓との会話でこれほど楽しいのなら、きっと彼女との時間はもっと楽しめただろうに。

 羂索はそう思ったが、特段後悔したわけではなかった。

 

「九十九由基、元星漿体の美女ですか。生憎私も彼女に会った事がないんですよね。なにせ知識自体はあったとはいえ本格的に術師として覚醒したのは渋谷の惨劇後ですし。私も会いたかったですよ、星漿体と因果の関係は私にとっても興味深い物ですから。オガミ婆がいれば降ろす事も……ブラックホールで死骸は丸々吹き飛んでるし無理ですかね……」

 

「オガミ婆?渋谷にも行ったのか?……まぁ私の名前を知っているくらいだから当たり前か。あの場所をサイコメトラーで読み取れば様々な情報が手に入るだろうしね」

 

 術式名がサイコメトリーではなくサイコメトラーなのは何か意味があるだろうかと考えながら、羂索は再びスクリーンに注目していた。

 

「領域展延……その手で来たか」

 

「絶対的不可侵を持つ五条悟、まぁ初手としてはこれ以外有りませんが……流石は呪いの王両面宿儺。渋谷の特級呪霊二体かかりでもまるで削れなかった無下限をゴリゴリ削るとは。あ、ちなみにさっきの答えは『伊地知の結界で出力を隠し庵歌姫の術式と詠唱により威力を200%に底上げしていた』でした〜。かなり話がずれちゃいましたからね、言うタイミングを見失ってしまいました」

 

 画面内では展延を纏い五条悟へと打撃を当てようとしている宿儺が映し出されていた。

 だがそれも一瞬の事、すぐに彼らはビルの中へと入り、その数瞬後には周囲のビルが崩壊し始めていた。

 羂索は榎本の答えに納得していた、確かに庵歌姫の術式ならば底上げする事も可能だと。

 伊地知──常に五条の運転手を務めている窓の能力も歌姫によって底上げされているならば、攻撃の気配を隠す事だけに集中した結界を張ることくらいはできるだろうとも。

 

「何故増大率まで知っているかは今は聞かないことにするよ。どうせ答えちゃくれないだろうしね」

 

「ふふっ、だいぶ私の事もわかってくれたようで嬉しいですよ」

 

 それは友人同士の和やかな談笑のようで有った。

 だが実際には常に榎本楓は羂索の一挙一動を警戒し、羂索は映画館に仕掛けられた仕掛けを呪力探知により看破し始めていた。

 最強決戦の一方で、彼らもまた水面下の戦いを始めていたのだ。

 

 




オリ主も羂索もお喋りだから話題があっちに行ったりこっちに行ったり
本当は224話の格闘シーンを全部この2人に考察と解説させようと思ったんですが、どう考えても尺が足りないので後の領域合戦の時に考察させます。
なんなら領域展延について語るだけで次話が終わるかも。
 
一個だけ話すなら『宿儺が解を後ろのビルに撃ってその後展延を纏いながら接近、対する五条は後ろから迫るビルに気を取られながらも近づいてきた宿儺に無下限を破られる前に自分で無下限を解き、拳を掴んでビルの中に引き込んみ流れ、両者の戦闘IQの高さが出てていいよね。特に一瞬で前後を自分とビルで挟む宿儺と自ら防御を解く五条の流れがスムーズ』
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