「遂にサムを倒して、残るはデクターとディペクトだけだ!」
「この戦いが終われば漸くこの戦いが終わりを迎えるんだろうな。」
「ようやく過去との因縁にケリをつけられる。」
「…その前に、準備しないとな。今日が決戦前夜だな。」
「そうだね。第75話、始まるよ。」
〜三人称視点.
「…」
星穹列車に戻ってきた翡翠達は、それぞれ自身の治療と武器の調整を行っていた。
「姫子。デクターが居る場所は分からない?」
なのかがそれを言うと、姫子はモニターをみんなに見せた。
「デクターが向かった場所は、この宇宙の中心部分…
「じゃあ、さっさと乗り込んで叩き潰してやろうぜ!」
アクセルがそう言うが、姫子は首を横に振った。
「それが、列車のエネルギーが尽きかけてて、今は星の虚数エネルギーを充填しているわ。それまでは一晩かかるかも。」
「ええ!そんな…」
アクセルは落ち込んだが、ゼーレが肩を叩いて宥める。
「仕方ないわよ。今日は色々あったし、休息も大事よ?」
「それもそうか…」
「じゃ、各自解散しよう。今日はゆっくり休め。」
ヴェルトはそう言い、何処かに歩いて行った。
〜翡翠視点.
「……どうすっかなぁ。」
俺は外を眺めながらそう呟く。上を見上げると、星の核からとてつもない悪意を感じた。
あそこに…デクターが…
「とりあえず、みんなに話をするか……」
俺はそう呟くながら、ラウンジを歩き始めた。
俺は心の中で整理をつけようとしていた。
(デクターは確実に俺たちを待っている…でも、それだけじゃない。この悪意の気配…まるで星そのものが敵意を持っているみたいだ)
考えれば考えるほど、不安が募る。しかし、立ち止まっている暇はない。俺は気を引き締め、ラウンジを歩き始める。。
そこでは既に仲間たちが集まり、それぞれのやり方で時間を過ごしていた。姫子はコーヒーを淹れながら端末を確認し、ヴェルトのおっさんは静かに読書をしている。丹恒はサンデーと話し合っていた。
「よ、何話してるんだ?」
「翡翠か。」
「現在、丹恒さんからチェスを教わっていたんです。」
そう言うサンデーの手にはチェスの指導書があった。
「翡翠、明日の決戦だが、翡翠を中心とした陣形で行くのが最適だろう。」
「跳躍で星の核に接近し、後は7人に任せる。悪いな、俺たちじゃ力不足だろうからな。」
そう言う丹恒は少し曇った顔をした。
「任せとけって。俺たちが無事じゃなかった時があったか?」
「………羅浮の時もピノコニーの時もあっただろう。」
「………そうだったな。気をつけるよ。」
「なのかさんは言っていました。「翡翠は無茶しやすい。」ってね…」
なのかの奴…
「ああ、分かった。その忠告を覚えとくよ。」
サムズアップをしてその場から離れた。
………………
「翡翠。体の調子はどう?」
「今は大丈夫だ。」
「ところで、聞きたいんだけどさ。星の核ってどんな場所なんだ?」
姫子が端末を操作し、モニターに星の核のデータを映し出した。
「星の核からは異常なエネルギーを確認されてるわ。その影響で、時間や空間が歪んでいる可能性があるわね。」
「つまり、普通の戦場とは違うってことか。」俺は眉をひそめた。
「ただでさえデクターは強敵だってのに、そんな厄介な場所で戦うことになるのか…」
「翡翠達なら大丈夫とは思うけれど…………無茶はしないで。」
「…うん。」
俺は素直に返事をして、次はヴェルトさんに話しかけた。
ヴェルトさんは静かにソファに座って本を読んでいた。
俺はその隣に座った。
「…ヴェルトさん。アンタも律者なんだよな。」
「……いつ頃気づいた?」
「律者になった頃かな。同じ力を感じたから。」
「そうか…」
ヴェルトさんは静かに頷いた。
「……この戦いが終わったら、どうすんの?」
「…暫くはナナシビト生活だな。開拓者を引退したら、アニメーターになろうと思う。」
「ヴェルトさんのアニメか、きっと面白いんだろうな。」
「ふっ、こう見えても前は面白いアニメをたくさん作ってたがな。」
「そっか。」
俺はソファを立ち上がって、伸びをする。
「じゃ、俺は別んとこ行くよ。」
「ああ、明日に備えて、ゆっくり休めよ。」
「……うん。おやすみ。」
その場を離れて、別のソファに居たゼーレに話しかけた。
「よっ」「翡翠。まだ寝てなかったのね。」
「なんか眠れなくってな。その言い方だと、ゼーレもその口か?」
「ええ、アクセルと御影はトレーニングに行ったし、私も暇なのよね。」
「そっか、ゼーレ。この戦いが終わったらどうするんだ?」
ゼーレにそう聞くと、ゼーレは窓を見上げて、静かに話し始めた。
「ベロブルグに戻るわ。ナタやブローニャ達が心配してるだろうし、それにヤリーロⅥをもっと活気に溢れた所にしたいかな。」
「きっと出来るさ。いざとなったら、俺らも手伝うさ。」
「…ありがと。」
ゼーレはソファから立ち上がって静かに欠伸した。
「じゃ、私は寝るわ。アンタも早く寝なさいよ。」
「ああ、おやすみ。」
ゼーレは自身の寝室に戻って行った。
(御影達はトレーニングルームか…)
俺はトレーニングルームに行く為に歩みを進めた。
………………
「ん?」
パーティ車両に向かうと、凄く疲れた顔をした星とホタルが居るのが見えた。
疲れてそうな星の為にジュースを持って側に近づく。
「よ、お疲れ。疲れてそうだな。」
「うん……」
星にジュースを差し出すと星は食い付くようにジュースを奪って飲み干した。
「………………ぷはっ…ありがと…疲れてたから…」
「列車のエネルギー。どうなった?」
「うん…無事に全回復できたよ…はー…大変だった。」
「悪いな、明日は決戦だってのに。」
「ううん。この戦いが終わるのなら、安いものだよ。」
俺も椅子に座ってジュースを飲む。
「…この戦いが終わったら、どうすんの?」
星にそう聞くと、少し思い悩んだ。
「お兄ちゃん達の墓参りがしたいな。」星はそう静かに答えた。
「私達さ、幼い頃に捨てられたから、親の顔も覚えてないんだ。そこから長い間、お兄ちゃんと御影と3人でずっと一緒だった…」
「でもお兄ちゃんは死んじゃった…そこから列車に来るまでに長い時間が掛かったから、お墓参りが出来なかったからさ。」
「御影と一緒に考えてんだ。穹達の供養の為に、お墓を作ってやろうって。」
御影の奴はそこまで考えてたのか…普段はあんなのなのに…
「…じゃあ、尚更負けるわけにはいかないな。」
「うん!」
「じゃ、俺は他の奴らにも顔を合わせてくるよ。星はどうする?」
「そろそろ寝るよ。おやすみ〜。」
………………
「ホタル。」
「あ、翡翠。どうしたの?眠れない?」
ホタルに声をかけると、紙にメモをしている様子だった。
「何してんだ?」
「これからの事をメモしてるの。」
「これからの…?」
「アタシ…グラモスの時から戦ってばっかりで、星核ハンターの時も…脚本に従って戦ってた。」
ホタルは少し目を閉じて今までの事を考えながら話す。確かに、ホタルの過去には色々あった。
「でも、この列車に来てからは、戦い以外の事をやれるようになって…今がすっごく楽しいんだ。」
「だから、この戦いが終わったら、開拓者の一人として、いろんな星を見てみたいんだ。」
「……いいと思うぜ。ホタルの夢。」
「…夢…か…うん。」
ホタルは立ち上がって星の核を見上げる。
「それじゃ、お互いの夢を叶える為に、"アレ"なんとかしないとね。」
「ああ。」
その後、少しだけ談笑しながらホタルが寝室に行くのを見届け、俺はトレーニングルームに向かった。
………………
「ふっ…!せやっ!」
アクセルが大剣を振ってターゲットを粉砕していた。
「…ふぅ…ん…翡翠か。どうしたんだ?」
「どうしたじゃないさ。明日は決戦だってのに修行か?」
「当たり前さ。敵の力は強大だ。どんな敵にも対処する為に鍛えとかないとな。」
「慎重だな。」「慎重にならざる負えないさ。相手は…デクターだからな。」
そうしてアクセルはその場に座り込んだ。
「この戦い終わったら、ゼーレと一緒にベロブルグに里帰りするよ。」
「この旅で学んだ事は…全部俺の思い出だよ。」
「ヤリーロⅥも、羅浮も、ピノコニーも、他の星も全部救ってやろうぜ。」
「ああ…俺もうすぐ寝ようと思うけど、どうする?」
「もうちょっと特訓してから寝るわ。明日は直接対決だ。頑張ろうぜ。」
アクセルとの話を終えた後、御影に話しかけに行った。
「よ、御影。特訓励んでる?」
「………翡翠か。ああ、丁度終いな所だったんだ。」
剣を地面に刺して、息を整える御影。
「まさかこの俺が、世界の危機を救う為にここまで来るとは思わなかったぜ。」
「俺も思わなかったよ。星の危機は救ってったけど、銀河を救うのは初めてだぜ。」
「…戦いが終われば…また開拓の旅が始まる。でもその前にやりたい事があるんだ。」
「…墓参りか…?」
「ん、星が聞いてたか。ああ、穹や他の奴らの墓を作ってやりたいんだ。」
「いい夢だな。それが終わったら?」
「………考えてなかった。」
ハッとした顔をする御影。いや、それを考えてなかったって顔をするな。
「…ま、ぼちぼち考えるよ。それより、今は目の前の事を終わらせないとな。」
「そうだな。ま、俺たちなら大丈夫じゃないか?」
「じゃ、俺もそろそろ寝るかな…お前も寝るだろ?」
「もうちょいしたらな。」
御影は剣を回収してその場から去った。
…………………
俺も眠くなってきたので、寝室に向かう途中、窓から空を眺めて何か考え事をしていたなのかを見つけた。
「…なの。何してんだ?」
「あ、翡翠。ちょっと星を見ながら考え事してたんだ。」
俺はすぐ側に立ってなのかの話を聞いていた。
「ウチら…ようやくここまで来れたんだね。」
「ああ、アイツとの戦いが終われば、ようやく過去と訣別できる。」
そう言い合いながら、再び空を見上げた。
「……ウチ、嬉しいんだ。」「…嬉しい?」
「こうやって…貴方の隣で、一緒に肩を並べて戦える事が…」
なのかの声は、どこか遠くを見つめるようなものだった。外の宇宙は静かで、星の核が鈍く光を放っている。
「私たちは何度も戦って、乗り越えてきた。だからこそ、これが最後の戦いだって思うと…なんだか、不思議な気持ちになるんだ。」
なのかの言葉に、俺はしばし黙った。確かに、ここまでの戦いは決して簡単なものじゃなかった。でも、それでも俺たちはこうして生きて、戦い続けている。
「…なのか。」
俺はゆっくりと口を開いた。
「もしこの戦いが終わったら、俺たちの旅はどうなるんだろうな。」
「それは……きっと、新しい旅が始まるんじゃない?」
なのかは微笑んで、俺の顔を見た。
「開拓の旅は終わらない。でも、今までとは違う旅になると思うよ。ウチらが今まで守ってきたものを、これからは育てる旅になるかもしれないし。」
「育てる、か。」
俺は少し考えてから、なのかに向かって笑みをこぼした。
「そっか。それも悪くないな。」
「うん。だから、まずはこの戦いを終わらせよう。」
なのかは拳を軽く俺の肩に当てて、前を向いた。
「デクターを倒して、未来へ進も。一緒に。」
俺は頷いた。
「……ああ。やるしかねぇな。」
二人でしばらくの間、静かな宇宙を見つめていた。まるで、明日への決意を固めるように。
「…それじゃ、明日に備えて寝るか。おやすみ、なの。」
「おやすみ…翡翠。」
……そして、夜が明けた。
…………………………………
翌朝、星穹列車は跳躍を開始した。
「エネルギー充填、完了!いつでも出発できるぞ!」パムが元気よく報告する。
「よし、みんな準備はいいな?」ヴェルトがみんなを見回す。
「頑張れよ。」「ご武運を。」丹恒とサンデーが7人を激励した。
「待ちくたびれたぜ。」アクセルが剣を担ぎながら笑う。
「ゼーレ、準備は?」姫子はゼーレ達を見ながら言う。
「ええ、万全よ。」ゼーレは武器を構えて頷く。
「星、頼むな。」御影は星の肩に手を置いて言う。
「…ふう、行くよ。」ホタルは深呼吸しながら答える。
そして、なのかが俺の横に立つ。
「行こう、翡翠。」
「ああ。」
星穹列車は加速し、俺たちを最後の戦いへと運んでいく。
目指すは星の核……決戦の地。
俺たちは運命を背負い、最後の戦いに挑むのだった。
更新、遅らせててすみません。
もうすぐ最終回です。