【本編完結】開拓者のとある物語   作:サツキタロオ

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戦いが終わり……


episode.78:旅路

 

〜翡翠視点〜

 

 

 

あの日から数日が経過し、俺たちはついにデクターたちに勝利を収めた。戦いの傷はまだ完全には癒えていないものの、ようやく訪れた平穏な日々に、少しずつ心が安らいでいくのを感じていた。

 

「ん…まだ体が痛むな…」

 

「そりゃそうでしょ? 翡翠はお腹に、ウチは胸とお腹に大怪我を負ったんだから。」

 

「分かってはいるけどよ…痛いものは痛いんだよな。」

 

俺は軽くため息をつきながら、隣にいるなのかの胸を指でツンとつついた。

 

「いたたたた! ちょっと、やめてよ翡翠!」

 

「ははっ、悪い悪い。」

 

俺は苦笑しつつ、目を空へ向けた。星々が瞬くその様子は、まるで俺たちの旅路を静かに見守ってくれているようだった。

 

「そういえば、みんなは今どうしてる?」

「姫子さんとヴェルトさんは、列車のメンテナンスにかかりっきり。あの戦いでかなりのダメージを受けてたからね。」

「そりゃ当然か。列車なしじゃ、俺たちの旅も続けられないもんな。」

「御影とアクセルは相変わらずトレーニングルームにこもりっきり。ホタルと星は列車内で休憩してるし、ゼーレは護衛の任務についてるみたい。」

「俺らは?」

「…散歩!」

なのかは一瞬考え込んだ後、明るい声でそう答えた。

俺は思わず苦笑しながら、静かに歩みを進める。

しばらくの沈黙の後、なのかがふと口を開いた。

「そういえばね…全部のメガゾード、寄贈されることになったんだって。」

「……そうか。アイツらとも、これでお別れか…」

 

なのかの言葉を聞いて、少しだけ寂しさがこみ上げる。ヤリーロⅥでの戦い以来、ずっと共に戦ってきた機体たち。俺にとっても、もはや仲間同然の存在だった。

 

「まあ…でも、今の俺ならアイツらに乗るよりも、律者として戦った方が強いしな…」

「確かにね。敵が巨大だったときはすごく頼りになったけど…もうそういう戦い方をしなくても、私たちは十分強くなったんだよね。」

 

俺たちはしばらく砂浜を歩きながら、話し合う。

「最初に会ったのは、宇宙ステーション『ヘルタ』だったな。」

「うん。あの時から、ウチらは巡り合う運命だったのかな?」

「偶然だろ偶然。」

 

上目遣いするなのかを横目に無視して話を進める。少し怒ってた気もしたが気にしない気にしない…。

 

「次に行ったのは、ヤリーロⅥだったよね!」

「ああ、ブローニャと会ったのもその時だったな。」

「いきなり逮捕されそうになった時は、びっくりしたよ!」

「カカリアのせいとはいえ、びっくりしたな。」

 

翡翠はベロブルグで結晶を持ってそう話す。

「初めてカイタクオーに乗ったのもその時だよね!」

「ゴウリュウジンもな。」

二人でベロブルグでの出来事を話し合った。なのかから聞くと、この時から俺のことが好きになったらしい。

 

 

………………………………

 

「次に向かったのは、仙舟『羅浮』だったね。」

「あそこは、色んな意味で大変だったな……。」

 

二人は羅浮での出来事を思い返していた。

デクターによる羅浮への襲撃、無数に押し寄せる敵軍、テンクウジン、さらには朱雀……。

「あの時、翡翠が刺されて海に落ちた時は、本当に不安だったんだよ!」

「悪かったって……あれは若気の至りというか……。」

「今も変わらず16歳だけどね!」

なのかの鋭いツッコミが入る。この軽妙な掛け合いも、なんだか久しぶりな気がした。

 

「なのか、あの時、符玄に記憶を見てもらってたんだよな。」

「うん。今思うと、未来のウチだったのかな、あの人。」

「……?」

「ふふふー、秘密ー。」

 

なのかはいたずらっぽく笑った。

「なんだよ、それ、気になるだろ。」

俺は眉をひそめながらも、どこか懐かしさを感じる会話に微笑んだ。羅浮での戦いは過酷だったが、こうして今振り返ると、それもまた俺らの成長の証だった。

 

 

………………………………

 

 

「次はピノコニーに行ったよね。」

「楽しかったけど、大変なことも多かったな。」

「ホタルも仲間になって、開拓の旅がより一層楽しくなったよね!」

「ホタルが仲間になった経緯は、結構複雑だったけどな。」

「あ、そういえばサムがレギオロイドになったんだよね…」

ホタルは、デクターの手によってサムとホタルという二つの存在に分離した。

その結果、成り行きとはいえホタルはナナシビトの一員となった。仲間が増えたことは嬉しいものの、どこか複雑な気持ちが拭えなかった。

「暉長石号での出来事も衝撃的だったよね…トパーズやロビン、それに翡翠の失踪…。あの知らせを聞いたときは、本当に絶望したよ…」

その話題に触れた途端、なのかの表情が曇った。あの時は、皆に大きな迷惑をかけてしまったことを痛感している。今でも後悔の念が消えない。

 

…………そういえば、暉長石号でライモン集団とも戦ったんだったな。すっかり忘れていた。

 

「ここでデクターとの最初の決戦もあったね。」

「デクター・ユナイトとの戦いのことか。」

「あの戦いは激闘だったね。スーペリアフェニックスやカンゼンカイタクオーも大活躍だったし。」

カンゼンカイタクオーか……。あの機体に乗って敗北したことは一度もなかった。

何が理由なのかは分からないが、とにかく強かった。「カンゼン」の名は伊達ではなかったらしい。

 

 

………………………………

 

 

「……次は色んな星に行ったね。ベロブルグ、羅浮、ピノコニー、地球……色々な場所を巡ったよ。ウチは惑星ハルファにも行ったんだ!」

「楽しかったか?」

「うん!でも、途中ですごく強い敵に出くわして、巻き込まれちゃった……」

「ドンマイ……」

 

本当に色々あったな。レギオロイドと料理対決をしたり、海を泳いだり、御影がお腹を壊したり……野球をしたりもした。思い返せば、どれも忘れられない思い出だ。

「……でも、あの時は本当に辛かった……」

「……………」

俺たちがディウェンゴやディペクトによって、人工律者だと明かされた日。

あの日は、俺たちにとって耐えがたいほど苦しく、心が引き裂かれるような瞬間だった。

「翡翠が泣いている姿を初めて見たよ。」

「俺だって、あんなに泣いたのは久しぶりだった。」

「でも、その後……告白してくれたよね。あの時、すごく嬉しかった。」

「ああ、そうだったな。」

あの夜、俺はなのかに自分の気持ちを伝え、そして付き合うことになった。

お互いにとって初々しい関係だった。みんなからは面白がられて、からかわれたけど……。

あの時のアクセルと御影は、今思い返してもぶん殴りたくなるくらいムカついたな。

 

 

………………………………

 

 

「あれから……いろいろなことがあったね。」

なのかはそっと靴を脱ぎ、波打ち際に足を浸す。

「辛いことも楽しいことも、たくさんあったね。」

「うん。俺も、この列車に乗ってよかった。」

俺は、静かになのかを抱きしめる。

「ウチ、これからも翡翠と一緒にいたい。」

「俺も、なのかとずっと一緒がいい。」

お互いの心が通じ合い、自然と特別な雰囲気に包まれる。

 

「翡翠……好き……」

 

「なの……愛してる……」

 

やがて二人は砂浜へと移動し、静かに寄り添いながら、お互いの温もりを確かめ合った。

 

夜の海は静かで、波の音だけが俺達を包み込む。星々が瞬く夜空の下、俺らの想いは確かに一つになった。

 

——その夜——

 

「ねえ、翡翠。」

 

「……ん?」

 

「ウチら、これが初めての経験だったね。」

 

俺は少しだけ照れくさくに笑い、なのかの手をそっと握る。

 

「御影やアクセルとは、ずいぶんと違うな。アイツら、ずいぶん前に済ませてたらしい。」

 

俺たちは星空を見上げながら、ゆったりと会話を交わす。時間がゆっくりと流れる中、互いの存在の尊さを噛みしめる。

「これからもずっと一緒だよね?」

「もちろん。どんな未来が待っていようと、俺はなのかのそばにいる。」

夜風が優しく吹き、二人の心をより強く結びつけていくのだった。





最終章、完結。
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