episode.79:長き旅の終わり
〜翡翠視点.
「……」
ホタルはナイフを手に取り、自分の髪を切り落とした。
「……いいのか?せっかく伸ばしてたのに。」
「うん。」
ホタルはグラモスの戦い以来、髪を伸ばしていた。
最終決戦から半年後、彼女は新たな決意とともに髪を切ることを選んだ。
「これまでの私は、グラモス鉄騎で星核ハンター…いろいろな経験をして、人間として生きて…そして今は律者になった。」
「だから、新しい人生を歩み始めようと思うの。これはその決意の証みたいなものかな。」
「そうか…ホタルが決めたことなら、止める理由はないな。」
ホタルは切った髪を風に乗せる。それはまるで消えていくように、ゆっくりと空へと舞い上がっていった。
「これからは、自分の夢を見つけることが夢なんだ。」
「哲学的だな。」
「違うよー。」
俺とホタルは顔を見合わせ、微笑み合う。こんなふうに心から笑い合うのは久しぶりだった。
「ねーねー翡翠ー、ホタルー!お味噌がないよー!」
今日の料理当番であるなのかの大声が響く。屋外にいても聞こえるくらいの勢いだ。
「…お味噌?」
「そういえば、買い置きがなかったな…」
俺は頭を掻きながらため息をつく。最近こういう凡ミスが増えてきた気がする。
「よし、じゃあ買ってくるわ。」
そう言って、俺は翼を広げ、空へと飛び立った。
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〜御影視点.
「……」
星は墓石を静かに見つめていた。
戦いが終わった後、俺は星とともに穹や他の仲間たちの墓を作ると約束した。そして、その話を聞いた符玄やトパーズ、カンパニーの仲間たちが援助してくれたおかげで、新たな星……まだ名前がないから「新地球」とでも呼ぼうか。その見晴らしの良い場所に、彼らの墓を建てることができた。
「…花の数、すごいね。」
「カンパニーやほかのみんなも供えてくれたらしい。」
カンパニーの社員の中には、戦争で家族を失った者も多かった。その気持ちが重なって、彼らも供えてくれたのかもしれない。真偽はわからないが。
「…さて、これからどうするかな…」
長年の目標を達成し、これからは自由な人生が待っている。
「星、お前はこれからどうする?」
「うーん…」
星はしばらく考え込んだ。
「……でも、大丈夫。きっと新しい目標が見つかると思うよ。」
「…かもな。」
「よし、それならまずはこの星を探検しようぜ。星、ついてくるか?」
「うん!」
星は勢いよく走り出す。それを見て、俺も後を追いかけた。
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〜アクセル視点.
「…………」
「アクセル、起きなさい。」
「…なんだよ…」
ゼーレの声で目を覚ます。
「もう11時よ。」
「もうそんな時間か…昼飯は?」
「三月特製のマーボーカレーよ。よかったわね。」
「そっか。」
俺は私服に着替え、大きなあくびをしながら外に出た。
そういえば、私服を着るのは久しぶりだ。これまではずっと律者の服ばかりだったから、少し違和感がある。でも、まあ気にするほどのことでもないか。
「…ゼーレ。」
「なによ?」
「…太った?」
言った瞬間、腹パンが飛んできた。いつもの5倍は痛い…
「バカ!何言い出すのよ!」
「ご、ごめん…最近お腹が出てきた気がして…」
またしても強烈な腹パンが炸裂。痛い……
「…はあ…アクセル、なんだか子供の頃のあんたに戻ったみたいね。」
「…そ、そうか?俺は昔からこんな性格だったけど…」
「列車での生活で、少し丸くなったんじゃない?」
「そうかもな……」
未だに殴られたところが痛む。
「ふーん。まあいいわ。さっきのお腹の件は不問にしてあげる。
「な、なんだよ…お前も前より性格変わったんじゃないか?
「列車での生活で、棘が抜けたんじゃない?
いたずらっぽく笑うゼーレ。こいつも変わったんだな。
「…まあいいや。腹減った。」
俺はそう言いながら、ラウンジへ向かった。
後日談は短めです。