【本編完結】開拓者のとある物語   作:サツキタロオ

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本編とはあまり関係無いショートストーリーです。


番外編:ショートストーリー
story.1:翡翠と三月なのか


「もー!遅い!」

 

とある遊園地の入り口前、少し怒っている一人の少女がスマホを持って立っていた。

彼女は三月なのか。世界を旅する星穹列車の開拓者の一人。どうやら誰かと待ち合わせをしていたようだった。

 

すると、素早い一陣の風と共に翡翠色の髪をした少年、翡翠。なのかは腰に手を当てて、嬉しそうな怒り顔をして翡翠をジッと睨みつけた。

 

「1時間も遅刻してるじゃん!酷いよ翡翠ー。」

「俺はちゃんと11時に来たぜ。誰かさんが1時間早く来て、ずっとここで待ってたんじゃないのか?」

「……うん。まあ許したげる。さ、翡翠!早く行こ!」

 

なのかは、翡翠の手を握り、遊園地の入場口へと駆け足で進む。

この新しくできた遊園地は『イカしたカップル 全額無料!』というなんとも言えないキャッチコピーの遊園地で、なのかは翡翠を誘ってここにやってきていた。

 

「はあ…『楽しそうだ』って言ったの間違いだったかなぁ…」

「……何か言った?」

「いーや、何も。」

「そう?なら早く行こ!」

 

なのかが、翡翠の手を握りながら遊園地の中へと入っていく。

遊園地には色んなアトラクションがあった。メリーゴーランド、コーヒーカップ、ジェットコースター。そのどれもがなのかにとっては『楽しそうな』ものだったが……

 

「うーん…」

「ほら、水。」

「ありがと…」

 

翡翠は自販機から買った水をなのかに手渡し、翡翠は自分で買ったコーラを飲む。

なのかは翡翠と一緒でご機嫌で全てのアトラクションを制覇しようと張り切っていたが、あまり絶叫系が得意なわけではないのか、4つアトラクションを乗った時点でダウンしてしまっていた。

 

「大丈夫か?ちょっと疲れてるように見えるけど?」

「ウチは大丈夫だよ。ただ、ちょっと喉が渇いてるだけだから。」

「そうか?凄く疲れてるように見えるけど…」

「ううん。大丈夫!次行こ!」

 

なのかは翡翠を引きずってこの遊園地でも一際目立つ巨大なジェットコースターに向かった。

 

「このジェットコースターには噂があってね、それを確かめたくて今日は来たんだ。」

「へー、その噂って?」

「えっとね…」

 

このジェットコースターには『七色に輝く宝石を見つけたカップルは必ず幸せになる』という噂があり、ジェットコースターの猛スピードの中、その宝石を探す為に何度も挑戦するカップルが後を立たないという。

 

「なるほどな、つまりは宝石を見つければいいんだろ?」

「そういうこと!さ、行こ!」

 

なのかと翡翠はジェットコースターへと走り出して行った。……それから早数時間後。

『七色に輝く宝石』は今だに見つけられなかった。なのかは何度も乗ったせいで目を回して倒れてしまった。

 

「大丈夫か?本日二回目だぞ。」

「ううっ…ごめん翡翠。」

「気にすんなって。」

「…そんなに宝石を見つけたかったのか?」

「当たり前だよ!絶対幸せになるって言うんだから…見つけたいに決まってるよ…」

 

なのかは少し視線を逸らしてそう呟いた。

翡翠なひとつ溜息を吐いて言った。

 

「…実は目星があるんだ。行くか?」

「へ…行く?」

 

翡翠はなのかを下から抱きかかえて、コースターに乗車せずに、レールに乗ってグラインドするコースターのレールに飛び降りた。

「え、ちょっと!翡翠!?」

「いいから、俺に掴まってろ!」

なのかは翡翠に抱きつき、ジェットコースターのレールをグラインドしながら縦横無尽に走っていく。

 

「よし、この辺りだな。」

「…こ、ここに宝石があるの?」

二人がやってきたのは、コースターが最初に行く地下洞窟のレールの下だった。

翡翠が指差したのはコースターのレールの下だった。そこには七色に光る宝石があった。

 

「あ!本当にあった!」

 

なのかは翡翠から降りて、宝石を拾う。しかし、その宝石は美しい色をしていたが、虹色には輝いていなかった。

「あれ…?これじゃないのかな?」

「いや、多分だけど…」

 

翡翠が何かを言いかけた時、コースターがやってきてレールを走り抜けた。洞窟の出口を出て行くその瞬間に宝石は七色に輝き出した。

「あ!もしかして。」

「やっぱりな。外の光が反射して七色に光ってたんだな。」

 

翡翠は自分が考えていた予想通りで静かにガッツポーズを取った。

すると、なのかは宝石を元あった場所に再び置いた。

 

「…置いてくのか?」

「うん。他の人の恋路を壊しく無いし、今日は色々疲れちゃったから…」

 

どうにも腑に落ちない翡翠だったが、なのかが満足そうだったので、それ以上は何も言わなかった。

 

「…あー!楽しかった!」

「なら良かった。」

 

二人は遊園地の入り口に戻ってきた。

既に辺りは夜になっており、他の客も帰っているのが見えていた。

 

「今日はありがとうね、翡翠。」

「いや、俺も何やかんやで楽しかったからいいよ。」

 

「へへ、ありがと!」

二人はそのまま遊園地から出て行く。

 

「さて、それじゃあ戻るか。」

「うん!……あ!」

なのかは何かを思い出したように手を叩いた。

「……どうした?」

「翡翠、ちょっと動かないでね。」

「え?なんで……」

 

次の瞬間、翡翠の唇になのかの唇が重なっていた。それは一瞬だったが、二人は少しの間動かなかった。そして……

 

「きょ、今日はありがと!それじゃあ先戻ってるね!」

 

なのかはそう言って足早にその場から消えてしまった。

翡翠は暫くフリーズしたままだったが、少し経ってからなのかを追いかけ始めた。

 

「あ、ちょっと待てなのか!」

 

そうして翡翠はなのかを追いかけていくのだった……

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