「翡翠達のお陰で過去と向き合うことが出来た。」
「デクターの事は気になるけど…今はベロブルグの危機だから頑張らないと…」
「もう誰も死なせない。今度こそ私が護るんだから。」
「第十六話。始まるよ。」
☆☆☆☆☆
「なんか…これまでの残影と違う?」
俺たちが進んだ先にはカカリアの残影が立っていた。
「…ん?」
「……侵入者……」
「え?今もしかして喋った?」
「近づけては…ならない……」
「不味い…退け!三月!」
アクセルがなのかを退かして構えた。
「…星核ッ!」
カカリアの残影が武器を持ってこちらに襲いかかってきた。
翡翠はなのかの服を掴んで共に避け、ゼーレはアクセルの裏に隠れて防御した。
俺と星はバックステップで回避した。
「こいつ…本当に本体じゃないの!?」
「見た目は似てても裂界が生み出した偽物だ!倒すぞ!」
俺はそう言って、剣を握る。その刃をカカリアに向けて振り下ろし続ける。
「御影!」
星がバットで後ろから叩く。
「星!避けろ!」
「うん!」
星は距離を取ると同時に、俺は右手に虚数エネルギーを纏った拳で殴りかかった。
それを受けたカカリアの残影が吹き飛ばされ、その背後から翡翠とアクセルと攻撃が振り下ろされた。
その攻撃を受けた残影はそのまま消え去った。
「消えちゃった…」
「あの階段…進める道はあれだけよ。」
ゼーレはそう言って、階段の奥を見つめた。
「おそらく、この先に星核があるんだよな?」
「うん。多分、あそこが旅の終点なんだろうね…。」
なのかは悲しそうに言う。
「上層部と下層部の運命を俺達が握ってるって事だよな?」
アクセルは俺にそう質問してきた。
俺は黙って頷く。
「…変だな。緊張とか恐怖とか感じると思ったけど…全然感じないな…むしろ俺達が絶対勝つ!…って自信が溢れてくるみたいで…」
アクセルが悲壮感を漂わせながらそう呟くと、翡翠は肩をポンと叩いた。
「そんな事思うのは簡単さ。俺達は仲間だ。この星を救う為に立ち上がった仲間だからだよ。」
「俺さ、思うんだよな。俺達が力を合わせれば、負ける気がしないって。」
「俺はみんなと一緒に戦えるのが嬉しく思う。お、俺が言えた柄じゃないけど…」
それを聞いた俺達は笑いが込み上げてきた。
「な、なんだよ…!笑うこと無いだろ!?」
「いや…悪い。翡翠の言うとおりだよ。」
「…ふっ、翡翠。まとめ役はお前が適任かもな…」
俺は翡翠の肩を叩いた。
「ふふっ、しんみりするような事を言おうと思ったけど、辞めたわ。アンタ達との冒険なら、どんな困難も平気だって思えるのよね。」
「そうだよ!楽しい冒険に、制約なんてものはないんだから!」
ゼーレとなのかは戯れ合い、俺たち六人は前を向いた。
「行くぞぉぉ!」
翡翠の激励と共に俺達は走り出して行った。
○○○○○
そして翡翠達がベロブルグを抜け、雪山に飛び出していくと、その奥の開けた空間に出た。
その中央にブローニャとカカリア…そしてその奥に星核があった。
「いや…やめて…」
ブローニャが頭を抑えて震えていた。
「抵抗するならブローニャ。共通の意志を受け入れるのだ。」
「ちがう…これは…私が望んだものじゃない…!」
「彼らが約束してくれた未来を見ろブローニャ!貧困、寒さ、苦しみのない世界。囚人のように生きる事のない世界。私たちが永遠に守り続ける世界。」
「700年間、私たちが絶えず挑み、絶えず抗った。人間性という光が、私達を復興に導くと考えていた。だが、その結果はどうだ?私達は大敗を喫した。…何故私たちは圧倒的な力を前にした時、抵抗し、耳を塞ぐことを選ぶのか?」
「…………」
「それこそが人間性の奥底に潜む消せない愚かさ、そして臆病さなのだ。それらを放棄し、貴様を縛る鎖を解いてやろう!星核は人類を進化させ…かの方は…」
「そこまでだッ!」
二人の中心から剣が飛んでくる。
それと同時に翡翠達が息を切らして走ってきた。
「ブローニャ!」
「…翡翠?どうして…」
「誰かを助けるのに…理由はいるかい?」
「そうそう!ウチらはもう友達なんだからね!」
翡翠となのか達が並ぶ。
「……やはり来たか。あの凄まじい吹雪で貴様らを葬れたと思ったが…」
「へっ!あいにく鍛えてるんでな!あれぐらいの吹雪!屁でも無いぜ!」
そして翡翠はブローニャの肩に手を置いた。
「ブローニャ…お前のカカリアの間に何があったかは知らない。今説明されても、多分分かんないと思う。でも…はっきりしてることが二つある。」
「俺達が、星核をなんとかする為にここにいる事。二つ目は、俺が…困ってる人がいたら…絶対に助けられずには居られないって事だ!」
「だから…お前がカカリアに洗脳されても、俺達はお前を倒してでも絶対に連れて帰って事だ!」
「あたし達にはアンタが必要なの!ブローニャ!」
ゼーレもそれに納得した。
「翡翠…それにみんな…」
「もう良いか?貴様らには十分な時間を与えた。別れの時間をな。」
今まで雰囲気を消し去るかのようにカカリアが止めに入った。
「貴様をここに連れてきたのはもう一つ理由がある。それを教える時だ。ブローニャ。」
「………」
「私は全てを貴様に告げた。星核との取引も、私たちの願いについても…もはや私たちの間に秘密は無い。」
「何年も前、私も歴代の守護者のように、目を閉じ耳を塞いだ。あの時の私と今の貴様は同じだ。苦しみながらも建創者の言う『存護』を守っていた…」
「私の信念は揺るぎないものだった。しかしある日、突然現れた変数によって全ては崩れ去った。私には古い秩序を壊し、新たな世界を迎える事。」
「それは朧げな『存護』よりも現実的なものだった。」
カカリアの話を聞きながら、ブローニャは黙る。
翡翠達はいつでも戦闘に入れるように武器に手を置いていた。
「私はずっと貴様にどうやって伝えるか悩んでいた。約束の日はいずれ訪れる。貴様が私のそばで共に新世界を見守れないのなら…」
「私は苦痛に苛まれるだろう。…ブローニャ!決して消えない苦痛にな!」
「貴様らには感謝すべきだな余所者。貴様らのおかげで、自分の最後の弱点に向き合えた。」
「ブローニャ。お前には常に選択肢がある。これは今も昔も変わらない。選べがいい。娘よ。」
「……」
「カカリア様。私を育てた事、、そして選択の余地を与えてくれた事は感謝しています。でも、ごめんなさい。お母様。私は、あなたの隣に立つ事は…できません。」
「人間は確かに愚かかもしれません。絶望的な状況は人間の心を反映している…それはあなたの言うとおりかもしれない。しかし、そんな状況でも懸命に戦っている人達を私は下層部で見た。しかし、あなたはそれを見ようとしなかった。下層部で…あなたが見ようとしなかった隅っこで…。」
「私たちの祖先は、この街を築き、吹雪の中で文明を守る為に戦ってきたのです。例え世界が崩壊する定めだとしても、その道は人によって切り拓かれるものなのです。」
「運命は…この災いの為に…委ねるものじゃない!」
『……』
星核の声は怒りで震えているようだった。
翡翠達はそれを感じ取っていた。
「私たちは普通の人間です。お母様!守護者の職務は、人々が築き上げた世界を『存護』すること!私達は神でもなければ審判者でもない…この銀河に生きるちっぽけな人間の一人です!」
「あなたは人間性を踏み躙り…同時に審判者と神を演じようとしている…こんな事…私は決して許さない!」
「そうか…それが貴様の選択か…ブローニャ…非常に残念だ。」
次の瞬間。カカリアの声のトーンが低くなり、辺りが重苦しい雰囲気になった。
「貴様は思想の呪縛を解く事はできなかったのだな。貴様は本来新世界の『母』になるべきだったのだ。」
それと同時に地面が揺れ始めた。
「地面が揺れてる…何が起こってるの!?」
「みんな!警戒しろ!」
「ベロブルグの運命は既に定まっている。それは私たちの手で展開されるのだ。」
「そして貴様らは…新世界の…贄となるがいいッ!!」
カカリアは手を翳し、その手には氷の槍が握られていた。
「『古いものを壊さずして、新しいものは創れない……』第守護者として起動を命ずる!」
「『造物エンジン』!」
カカリアの声と共に、背後から巨大な腕が現れた。
「巨大ロボット…みんな気をつけて!」
翡翠達は迫ってくるロボットの腕を回避する。
「クソッ!みんな!行くぞ!」
翡翠達はカイタクギアを構えた。
「開拓合体!」
翡翠の呼びかけと共に、五機の機体が合体していき、カイタクオーが見参した。
「アクセル!ゴウリュウジンで!」
「分かった!」
アクセルは右腕にゴウリュウギアを出現させ、側面のボタンを強く叩いた。
「開拓変形!」
アクセルの呼びかけと共にゴウリュウジンが出現し、アクセルがコックピットに乗ると、ゴウリュウジンはバトルフォームに変形した。
「ブローニャ…狭くないか?」
「ううん。平気。」
翡翠の腰の上にブローニャが乗っかっていた。
「無理するなよ。」
「うん。」
…
ゴウリュウジンがドリルを展開して歩き始めた。
それに続いてカイタクオーも走っていく。
「おらっ!」
「でやっ!」
二体のメガゾードと存護ロボと激突していた。
「チッ!硬い!」
「しかし!機械には必ず!弱いところがあるッ!」
ゴウリュウジンが左腕の関節にドリルを突き刺した。
存護ロボは左腕の機能が停止して倒れ伏した。
「よっしゃ!これならカカリアのところに行けるぜ!」
「カイタクオーとゴウリュウジンはあたし達に任せて!早く行きなさい!」
「頼むぜ!ゼーレ、アクセル!」
☆☆☆☆☆
「頼むぞ!」
カイタクオーの事をゼーレ達に任せて、私達はカカリアの元に全速力で走って行った。
「うわっ!」
翡翠となのが妨害を受けた。
「…星!行けッ!」
御影に言われ、私は頷いた後、そのまま腕を駆け上がる。
防衛ユニットが攻撃をしてくる。しかし、後ろから砲撃が飛んできた。
「援護は任せて!」
「ありがとうブローニャ!」
感謝を述べつつ再び腕を駆け上がる。しかし、機能が回復したのか、ロボの腕から振り落とされてしまった。
しかし、寸前で翡翠が腕を駆け上がって私の腕を掴んだ。
「行けぇ!」
そのまま上まで投げ飛ばされて再び走り出す。
横を見ると、右腕で私を振り落とそうとしてくるが、メガゾード二機がパンチをして食い止めてくれた。
「うぅ!」
「たくっ、世話が焼ける!」
そのセリフと共に御影がダガーを刺してくれて、私はそれを足場にして高く飛び上がった。
「はあ…はあ…」
なんとかカカリアの元に辿り着いた。
私と会敵したカカリアは氷を全身に纏わせた。
「これが…神の力だ!」
私は冷静にバットを握りしめる。
「神なんて…居ないのよ!」
氷を振り払い、カカリアが出てくるが、その姿は前とは違い、氷と闇が実体化したような不気味な見た目をしていた。
「わかるか?力が湧き立っている…歌っているのだ。星核が約束した未来こそが、この世界の唯一の希望。この力で貴様らを抹消する!」
肌で感じる寒気、そして隠しきれていない殺気が私の体を刺激する。
しかし、負ける訳には行かない。もうこれ以上、大切な人を失わない為に。
「…ルールは破る為にある!」
バットに力を溜めて殴りかかる。しかし、大したダメージを与えられない。
「分からぬか?これが力の差というのだ。」
「そんなものッ!」
一旦バットを手放し、私は飛んでくる氷柱を回避する。
そして再びバットに握り、脳天に叩きつけた。
ゴツンという音が鳴り響く。
でも、カカリアには傷一つ付いていなかった。
「だ、駄目なの…?」
「軟弱で愚かな人間どもめ…どうやら身の程を知らないらしいな。」
「私が…絶望を教えてやろう!」
カカリアがそう言った途端。胸元に何かが刺さった感触がした。
氷の槍が、私の胸元に突き刺さっていた。
痛い。苦しい。目の前がよく見えない。
バランスもうまく取れない。痛い。喋るのも苦しい。
私はカカリアから受けた攻撃でそのままロボから落下してしまった。
「星ィィィィィィィィ!!!!!!!」
…………………………………
「…………?」
私が目を開けると、そこは知らない場所だった。
ここは…宇宙?
私、カカリアの槍で死んだんじゃ…
「ううん…今は…ここが何処か確かめないと…」
私はこの宇宙を歩く事にした。
………
隕石が辺りに渦巻いている。
本当に不思議な空間だ。
しかし、それよりも…
「え…」
目の前に、見知った顔がいる。
私と同じ髪色、似たような服を着た長身の男性。
「お兄…ちゃん…?」
「……星。」
間違いない。見間違えるはずが無い。
彼は穹…かつて私を助ける為に死んだ…私のお兄ちゃんだった…
「お兄ちゃんッ…!」
私は一目散にお兄ちゃんに抱きついた。
「…どうして…ここに?」
「あの後…俺は星核と同化したんだ…」
「星核と同化…」
「星核は…凄まじい力を与えると共に、その体を毒していく危険な代物だ。年月を掛けた星核ほど…その力は増していく。」
「お前の仲間…特に…翡翠となのかっていう仲間の星核…気をつけた方がいいぞ。」
「え…」
翡翠となのかの星核が…
「…お兄ちゃん…私…」
「うん。お前の言いたい事は分かってるよ。助けたいんだろ?御影達を…」
「うん…私…助けたい!大好きな御影を…みんなを…護りたいの…」
「分かってる。この先にあるあの槍。あれを使えば、元の空間に戻れる。」
お兄ちゃんの奥にうっすらと燃えている槍を見つけた。
「いってらっしゃい。」
「いってきます。」
お兄ちゃんに別れを告げ、私は炎の槍の元に向かう。
槍は持ち主を失った今でも仄かに火花が出ている。
私はその槍を掴む。
「ぐっ…ぐぅぅう!!」
燃える槍を掴み、そのまま抜き去った。
星核が赤く燃え、私は目を開けた。
「星ィィィィィィ!」
「御影!」
私は御影の手を握る。
「その武器は…」
「お兄ちゃんが…力を貸してくれたんだ!」
御影に抱き抱えられる私。御影から降りて、カカリアに武器を向けた。
「さあ、これからが反撃だよ!」
炎の槍
存護の力に目覚めた星が新たに使用する武器。
槍の穂はとても熱く、切り裂かれただけでもかなりの威力を誇る。
槍としての使用の他、剣としても使える。
穹
原作の男主人公。本作は星の兄として登場。