「うーん…ウチ覚えてないなぁ…翡翠は?」
「特に何も…」
「うーん…一体なんだったんだろ?」
「ま、気にしても仕方ないさ。23話始まるぞー。」
☆☆☆☆☆
ある日だった。俺は符玄となのかと遭遇した。
「あ、翡翠…」
俺を見るなり、なのかは顔を少し赤くした。
「ん?なんかあった?」
「別に…何でもないわ…」
二人の反応を見て、俺は困惑した。
「…まあなんも無いならいいけど。」
俺はそう言ってジュースを飲んだ。
すると、突然ホログラムのモニターが現れ、そこにはデクター達が映り込んでいた。
『やぁやぁ皆さん、御機嫌よう。私の名はデクター…以後、お見知り置きを。』
『早速ですが、私の計画を聞いてください。』
「………」
『私はこれから星核の力で、この舟を全て破壊します。しかし、失った命を再び蘇らせてあげましょう。』
『もちろん、参加するもしないもあなた次第です。皆さんの参加を待っていますよ?』
「失った命が蘇る?」
「また会えるのか?姉さんに…!」
「父さん母さん…!」
「みんな!向こうだ!行こうぜ!」
多くの兵士や民間人が、デクターの元に向かっていく。
「どうしよう!ウチらじゃこの人数を止められないよ!」
「クソっ…あの星核ハンターは誘導が上手いみたいね。翡翠、一旦みんなを集めて作戦会議よ!」
「分かってるよ。」
俺は二人を連れて、御影達の元に向かった。
…………
ホテルの一室を借りて、俺たちは作戦会議を始めた。
「…どうする?」
「そんなの、直接叩けばいい話でしょ?」
「うん。私もゼーレと同意見。」
星とゼーレは計画を遂行される前に一気に叩く作戦を思いついた。
「いや、奴がその対策をしているに違いない。」
「なんか強い伏兵が居て、ボコされるのが目に見えるよ。」
なのと御影が珍しくいい事を言った。
すると、奥から秋作達がやってきた。
「ん?そっちの子は?」
俺が秋作の隣にいた見知らぬ少女がいた。
「この人は素裳。俺の同期なんだ。」
「アタシは素裳!で、秋作。なんでアタシ達ここに居るの?」
「え?なんでだっけ…?」
「将軍に呼ばれたんでしょ?」
符玄がそうジト目で言うと、素裳と秋作は思い出したようで、ちょっと微笑を浮かべて頭を掻いた。
すると、符玄が俺の服の裾を掴んで呼びかけてきた。
「…翡翠、ちょっといいかしら?」
「……?」
俺は符玄に呼ばれて、ベランダに出た。
「なんだよ符玄。」
「…あの星核ハンターの横にいた雲騎軍の男…居たわよね。」
「ああ。居たな。朱雀っつたっけ。」
「アイツ…なんだかとんでもないもの抱えてそうなの…」
符玄はそう言って、肌に触る。
「…星核ハンターの戯言に乗せられてる可能性だってあるの。この先戦うことになったら…」
符玄は口を噤む。そして体を震わせた。
「怖いのか…?」
「……怖くない…と言ったら嘘になるわね…」
「そうか……俺も怖いよ。」
「え……?」
符玄が意外そうな顔でこっちを見る。
「戦いは怖くないけど、死ぬのは怖い。それはみんな一緒だと思うんだ。」
「……」
「だから、俺は死なないようにする。そして、みんなも死なせない。」
「……そう……」
符玄はそう言って、ベランダから出ていく前に、こちらを振り向いた。
「死なないでよ…」
「うん。」
俺はそう静かに言った。
○○○○○
その頃、デクターは秘密裏に作られた基地で、集まった同士達を眺めていた。
「フフフ…これだけ居れば…行けますかね…」
考え事をしていると、朱雀が向かってきた。
「…同士がこんなに…おい、これで本当に大丈夫なんだよな?」
「おや?疑っているのですか?」
「いや…」
その顔を見たデクターはニヤリとしながら、朱雀の肩を叩いた。
「しかし…我々の作戦にとって邪魔な存在が居ます。」
「邪魔な存在…?」
朱雀がそう言うと、デクターは何処からか注射器を刺した。
朱雀は突然の痛みに驚くが、すぐに自分の体を確認した。
「いったい何を…?」
「ちょっとしたサプライズです。」
朱雀はパッとしない顔をし、デクターは資料を手渡した。
「…翡翠という男…この者が我々の計画にとって邪魔なのです。」
「こやつを始末しなさい。さすれば…」
それを聞いた朱雀は戸惑いつつ、頷いた。
……………
そして、翡翠達は、海岸沿いに立ち、警戒態勢を取った。
「…ウチらは…戦争がしたい訳じゃないんだよ…なんで人同士で争わないといけないの…」
なのかは悲しい顔でそう言った。
「……人は生きてる限り…争いを繰り返す…」
星は静かにそう呟く。
すると、空から何やら光が見えた。
「来るよ。」
「う、うん!」
二人が武器を構えて、警戒していると、爆撃が起きた。
「くっ…」
星がレーダーで確認を開始する。すると、空から多数の敵が攻めてきた。
その敵の姿は、普通の人間の姿とはかけ離れていた。
「『魔陰の身』…星核ハンターはそんなこともできるの?」
符玄はそう言って、念力で生成した球弾を投げる。
「…くっ、行くぞ!」
翡翠は朱激龍形態になり、空を飛ぶ傀儡達を切り裂いて進む。
「チッ…こいつら意外に強い!」
「…やりずらいな…元は普通の人間だからか…」
御影はそう呟いて、敵を葬っていく。
翡翠は地面に一旦着地する。すると、空から朱雀が飛んできた。
「…お、お前は…!?」
しかし、翡翠は朱雀の様子が一味違うと感じ取っていた。
「…ぐうぅ…!」
「おやおや、面白くなってきましたねぇ…」
二人の様子を見にきたデクターがやってきた。
「デクター!こいつに何をした!」
「…おやおや、私はただ、彼にこのウイルスを打ち込んだだけですよ?」
そう言って注射器を見せてきた。
「これは『ラビッドシンドローム』。感染した者の闘争心を暴走させ…次第に凶暴化していく感染症です。」
「先程この青年にも打ち込んだので…どうなりますかねぇ?」
そう言ってデクターはニヤニヤと笑う。
「ふざけやがって!おい!お前も目を覚ませ!」
翡翠は朱雀の肩に手を置き、説得するが、闘争心に駆られた朱雀には響かず、反撃を何度も貰ってしまった。
「戦うしかないのか…!?」
翡翠は戸惑うが、朱雀はお構いなしに攻撃を仕掛けてくる。
それを見た符玄となのかが武器を構えて朱雀に走っていく。
「翡翠離れて!」
なのかはそう言って弓を構えて、矢を放つ。
殺気を感じた朱雀は振り返ってその矢を回避して、なのかに切り掛かった。
「ッ…!」
翡翠は蒼激狼になり、なのかの前に立って、その剣を防御した。
「邪魔すんなッ!」
朱雀はそう言うと、戦い方がどんどん荒々しくなっていった。
「翡翠!」
「なのか!ここは離れてろッ!」
朱雀は足蹴りで翡翠の脇腹に蹴り、大きく吹き飛ばされ、海に投げ出された。
「「翡翠!!」」
符玄となのかが翡翠を追い、朱雀は飛び出して翡翠を追った。
「クソッ!こいつ…強い!」
翡翠は剣の片方を手放してしまい、落とした片手にレッドスラッシャーを持って対抗する。
迫る朱雀の攻撃をバックステップで回避し、殺陣を繰り返していく。翡翠も連続で足蹴りを繰り返していき、剣を落とそうとする。
「遅い!」
翡翠は朱雀の放った衝撃波で再び吹き飛ばされてしまった。
そして異空間から巨大な刀剣を取り出して、翡翠に突撃し始めた。
「ああっ!」
翡翠は防御しようとする。しかし、対応は間に合わなかった。
翡翠の腹に刀剣は突き刺さり、翡翠は反撃で剣を朱雀の右肩に剣を突き刺した。
…………………………
☆☆☆☆☆
翡翠の腹に剣が突き刺さった。一瞬頭の理解が追いつかない。
どうして、翡翠は死ぬの?
なんで?
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで…
「………き…」
「み…つ…き…」
「三月ッ!!」
「!」
符玄に呼ばれて、ウチは我に帰る。
「…!翡翠は!?」
ウチらは海に行くけど、翡翠の腹には依然として刀剣が突き刺さったままだった。
「ぐっ…何故…」
翡翠はそう呟いて、海に沈んでしまった…
「嘘…やだ…翡翠…翡翠ィィィィィィィ!!!!!!!」
………静寂が辺りを舞う。
ウチにはただ、泣き叫ぶことしかできなかった。
【魔陰の鎧】
デクターが同士のために魔陰の身を真似て作り出した装備。
装備者は魔陰の身に蝕まれ、デクターの忠実な奴隷と化す。
【ラビッドシンドローム】
デクターが特殊なウイルスを用いて感染させる感染症。発症すると、闘争心の異常活性化によって次第に凶暴化し、破壊の限りを尽くすようになり、やがては肉体も魔陰の身の様な異形の姿である『狂態』に変わってしまう。