「しかも以前よりも強い力で開拓者達の前に立ちはだかったのだ!」
「どうなる開拓者!どうなるデクター!」
「第62話。始まるよ。」
〜三人称視点.
「ふんっ!」
デクター・ユナイトの剣から放たれた斬撃に吹き飛ばされるアクセル達。
「チッ…前より強くなってる!」
「伊達に煽ってる訳じゃないようね。」
しかし、負けじと翡翠達はデクターに対して猛攻を仕掛ける。デクターは見切るかのように剣で捌き切る。
「くそっ!攻撃が通らない!」
「当然です。あなた達のデータは…レギオロイドを介して全てインプットしてあるのですよ!」
「じゃあ、今までの戦い方が…」
「全部知られている…」
「そう!今の私は、あなた達を遥かに凌駕する存在なのです!」
デクターは、レギオロイドのデータをインプットした事で翡翠達の戦い方がほぼ全て把握していた。今までの戦い方が通じない。それが、翡翠達の頭を冷やしていた。
さらに、デクターには攻撃が通じている様子もない。このままではジリ貧になってしまう。
「くっ…!」
「翡翠…データをインプットして、なお私と互角に戦うとは…!」
デクターは、翡翠の強さに目を見張る。データを手に入れてもなお、翡翠は自分に食らいついて来ていった。
足蹴りを加えて、翡翠達を吹き飛ばす。
さらにデクターは剣を納めて、光弾を作り出して翡翠達に打ち放つ。
光弾が直撃し、ダメージを負った翡翠達。しかし、その表情は冷静そのものだ。
デクターは、更に畳み掛けるように追撃する。その時だった。
ズガァン!!
デクターの右頬に衝撃が走る。あまりの不意打ちに反応できなかったデクターは吹き飛ばされた。そして、右頬がひび割れた。
何が起こったのかと後ろを向く。するとなのかが片方の剣を投擲していた。
「おや…三月なのか…翡翠共々、『星核』の力を更に高めている…」
デクターは、なのかに対して言い返す。
(ウチの星核が強まってる…?…確かに感じるけど…)
胸に手を当てて、自身の体内の星核を感じるなのか。
デクターは、再び剣に抜刀しながらなのかに向かって行く。
しかし、なのかは剣を地面に突き立てながらデクターを見据える。
飛んでくる刃をしゃがんで回避し、デクターの腹に峰打ちを炸裂させる。
その背後から翡翠の錐揉みキックが炸裂し、壁に吹き飛ばされた。
「がはっ……!」
「デクター!あんたなんかに!」
「未来は、渡さない!!」
今度は、翡翠となのかは剣をデクターに向けた。
「ぐっ…やりますねぇ…強化した私をここまで追いつめるとは。」
デクターは変身を解除しており、いつもの姿になっていた。
「一旦退散です。では…
「待て!」
デクターに走って行くが、寸前で転送されて逃げられてしまった。
「逃げられたか…」
「翡翠…」
翡翠がなのかに近寄ろうとするが、突然なのかが膝をついてしまった。
それを見た翡翠は、慌ててなのかを支えようとする。しかし、翡翠も胸を抑えて膝をついた。
「翡翠!」「三月!」
アクセルとゼーレが二人に急いで向かって行く。
二人は息を荒くしており、体から赤いヒビのような物が走っていた。
その様子を見たゼーレは、驚いた後、顔を曇らせた。
アクセルは翡翠を担いで、深く呼吸をした。
「とりあえず、戻ろう。話はそれからだ。」
その場での喧騒が終わり、アクセル達は列車に戻っていった。
……………
〜御影視点.
「………」
俺らは倒れた翡翠と三月をルアン・メェイのところに連れて行った。
最初、話を聞いた限り治してくれないかと思ったが、翡翠絡みで緊急治療を行うことになった。
「翡翠となの…大丈夫かなぁ…」
ガラスに張り付いて二人を心配する星とホタル。
「あの二人なら大丈夫だ。絶対なんとかなるって。」
「…御影さん…手が震えてる…」
ホタルにそう言われて図星で、冷や汗が出て来る。
確かに俺も少し怖い。急にあんな事になって、しかもそれが星核の影響と来た。俺と星の星核の影響であんな風になるかもと思うと少し怖くなってくる。ちびりそう。
そう思っていると、ルアン・メェイが治療室から出てきた。
「ルアン・メェイ…どうだった?」
「…なんとか大事には至りませんでした。」
「…………よかったぁ……」
ルアン・メェイは、少し暗い表情のままそう答えた。
その答えを聞いて、星とホタルは安堵する。俺も安心したが、ルアン・メェイのその表情を見て不安になる…。
「でも、まだ翡翠は目を覚ましてません。そして……なのかさんの方ですが……」
「……三月の方が重いのか?」
ルアン・メェイは頷くと話を続けた。
「……いえ、翡翠さんと同じで命に別状はありません。ですが……」
「なんだ?」
ルアン・メェイは、少し言い淀んだ後に口を開いた。
「……なのかさんは、『星核』の力が強まっています。」
俺とホタルは驚いた。そして同時に不安になる……もし、なのかが暴走したら……と考えてしまう。
「……その事について詳しく教えてくれないか?」
俺はルアン・メェイにそう聞いた。
「翡翠となのかさんの星核は共鳴しあっています。片方が強まればもう片方も強くなります。今回の事がそれです。」
「それってつまり……」
「ええ、暴走する可能性があります。ただし、まだ予想の段階ですので、何とも言えません……。」
「……そうか……ありがとうルアン・メェイ。」
「いえ……」
ルアン・メェイは、お辞儀をして部屋から出て行った。
「なあ、アクセル…」
「ん…」
「あいつら大丈夫かな…」
「なんだよ。いつものおちゃらけた感じはどこ行ったんだよ。」
「ピノコニーでも行ったんじゃないか?心配なのはわかるけど、お前がそんなんだと調子が狂う。」
「とか言う割には、アクセルは挙動不審だな。」
「うっせ。」
俺はアクセルをどつく。……不安なのは俺も一緒だ。それを誤魔化す為に俺はアクセルを再びどつく。いつものボケがないせいか、余計に心配になるだろ。やめてくれよ本当に。
「あいつらなら、きっと大丈夫さ。きっといつも通りピンピンして帰ってくるだろ。」
「だな…。」
そんなことを呟いて俺らはブラックコーヒーを飲み干した。
「「苦ッ!!」」
やっぱりコーラ買えば良かった。
………………
〜なのか視点.
「ん……」
ウチが目を覚ましたのは……知らない天井だった。
「……ここどこ?」
起き上がって辺りを見回す。すると、隣に翡翠が寝ていた事に気づいた。まだ眠っているようだけど、命に別状はないらしいから安心した。
すると、誰かが部屋に入って来た。
「お目覚めですか?」
あれは……ルアン・メェイ? ウチが起きると思っていなかったのか、少し驚いていた。
ルアン・メェイは、ウチに事細やかに説明してくれた。
「ウチの体って…どうなってるの?」
「何と言えばいいのか……あなた自身の星核と翡翠の星核が共鳴している状態です。」
「星核同士が共鳴?」
ルアン・メェイの話によると、ウチ自身の星核と翡翠の星核が互いに同調して強まっているらしい。このままその状態が続くと暴走する可能性もあるそうだ。ウチの心配をしていると言う事は、体に悪影響があるのかな……。
「…翡翠…まだ起きないの?」
「ええ。ですが、命に別状はありませんのでご安心ください。」
「そっか…」
「でも、安心してください。明日には退院できます。」
「そう?」明日には退院できる。それは良かったけど……ウチ、暴走しないかな?少しだけ不安になる。
「大丈夫だと思いますよ?」ルアン・メェイはウチの顔色を見てそう答えてくれた。
「なんでウチに分かるの……?」
するとルアン・メェイは優しく微笑んだ。
「なんとなくです。」
そういうものなのかなぁ……と思ってしまった。
そしてその日はお開きとなり、ウチと翡翠だけになった。すると、翡翠が大声をあげて飛び起きた。
「ひゃあああ!ひ、翡翠!」
「ん!?………ああ…なのか…か……」
「だ、大丈夫!?」
ウチが叫ぶと翡翠はポカンとしていた。そしてウチを見つめる。すると、どんどん顔が赤くなっていった。
「近い…」「あ…ごめん…」
ウチは急いで離れた。翡翠も布団に寝転ぶと顔を赤くしたままウチに話しかける。
「えっと…退院いつ?」
「明日だって!」
「そっか…体は大丈夫か?」
「うん。ルアン・メェイが言うには、ウチ自身の星核と翡翠の星核が共鳴しているらしいから……」
「そうなのか……。大丈夫なのか?」
「大丈夫だって!ルアン・メェイは、暴走しないって!」
「そっか…」
翡翠も安心したように寝転がった。
でも、まだ安心できない。明日には退院できるからいいけど……もしまた暴走したらと思うと……少し怖い。
すると、ウチの手を翡翠が優しく握ってきた。
「え!?ひ……翡翠……?」
「彼女が不安そうな時はこうしろって。」
「いや、その……」
翡翠はウチの手を優しく握り続ける。
……なんだろうこの感じ。すごく安心する……。ウチも翡翠の手を強く握った。
「あー…イチャつくのは帰ってからでいいですか?」
「「あ…」」
少し拗ねたような声で、ルアン・メェイがウチらに向かって話しかけてくる。そう言えばそうだった。ここは病室だったのを忘れていた……。
「ご、ごめん……」
「悪い……」
恥ずかしいなぁ……。ルアン・メェイはウチらを軽く叱った。
「はぁ……一応あなた方は病人なので、もっと落ち着いてくださいね。」
「はい……」「申し訳ない……」
「……まぁ、お大事になさってください。では。」
そうして翌日。ウチらは無事に退院する事になった。
………………
〜三人称視点.
「さて……遂に生み出すときが来ましたねぇ…」
デクターは不敵な笑みを浮かべ、自身の権能を使って、新たな生物を作り出そうとしていた。
「デクター。何を作ろうとする。」
「かつての時代に存在していた存在ですよ…面白いことが起こりますよ…」
そうしてデクターは胸元から鍵を取り出して、星核と岩石が浮かぶ場所に投げ込んだ。
「さあ…楽しいパーティーの始まりです。」
デクターは不敵に笑い、辺りは暗く光っていた。
次回、覚醒。