ちょいとハイスピードで行きますよ〜
「! この感じか!」
「お」
夏油がムクリと起き上がり手をぐっぱぐっぱして、確かめている。
おぉ、ついに掴んだのか。
「……これで全員か?」
承太郎と灰原以外はなんと反転術式を覚えたらしい。
とは言っても、灰原も掴みかけ、承太郎に関してはなぜか反転術式が無いのによく動けるなってくらいには成長している。
甚爾は頭をポリポリと掻きながら指を折って数える。
「…よし。じゃあ次のフェーズだな」
「……まだあるんですか」
夏油が冷や汗ダラッダラでこちらを見てくる。
「いや、もうねぇよ?」
「チッ、なんで言うんだよ…」
甚爾ェ…。
五条がバッと立ち上がって「んだよ〜」と言いたげな顔をする。
「…五条、分かったろ?」
「あぁ、ハッキリとな……」
お前は甚爾に勝て……
「勝てるなこれ!」
「あぁ?」
なんで、そういうこと言っちゃうかなこの馬鹿…。
■
私は、反転術式を覚えてから甚爾さんの授業……という名の拷問を受けることは減った。
灰原や、七海、承太郎達はまだまだやっているらしい。
私は討伐した呪霊の報告をするために廊下を歩いていた。
疲れが溜まっていたのか、クラッと視点が揺れる。
「おっと、大丈夫?」
倒れかけた私の体を支えてくれたのは、黒髪の美人であった。
そして、友人にとても似た顔で……。
「……狩人?」
「残念、その母親でした」
舌を出して、ニヤリと笑うその女性の姿を見て、私は目を丸くした。
母親……。
「しかし大丈夫?倒れかけてたけど」
「えぇ、大丈……」
すると、その人は私を椅子に座らせた。
いつの間にここに来ていたのだろう。やはり親子揃って化け物なのか?
そして、狩人の母親は私の手にジュースを持たせた。
「…ありがとうございます」
「大丈夫大丈夫〜」
そう言って私の隣にドカッと座る。
私はグビッとジュースを飲んだ後、狩人の母親の方を向く。
「えっと?」
「自己紹介が遅れたね。私は飛龍
「どうして私の名を?」
葵花さんは、ふふふっと、紙を取りだした。
「ほら、ここに君の名前が乗ってるだろう?」
「……それ私が1年の時の紙ですよね」
そこに、私の名前…そして悟、狩人の名前が書いてあった。
葵花さんはそれをしまうと椅子の背もたれに肘を乗っける。
「で、何があったんだい?」
「……任務の話ですか?」
「そそ、君ひっどい顔してるよ?なんか…この世の絶望を味わったかのような顔」
そんな酷い顔してたのか私は。
……。
私はしばらく黙り込んだ後に、口を開いた。
「任務で、ちょっとした呪霊を討伐しにとある村に行ったんです」
そこで見たものは、生贄と呼ばれる青年の死体を捧げている村人の姿。
そして、呪霊はそれを喰らい、満足したのか帰っていくのを見た。
村人達はそれを見て涙を流しながら歓喜。そして、次の生贄を探し始めたのだ。
「変ですよね。当たり前のはずが、なんだか気持ち悪く感じてしまって」
呪霊に生贄を捧げること自体は別によくある事だ。
だが、なぜ死体をあんな嬉々して出せるのか、私には理解出来なかった。
「呪霊自体は弱かった。私一人でも倒せるぐらいに」
だが、そこで見たものが引っ掛かっていて。どうしても忘れられず…。
「ふぅん。ずばり、君は疲れてる!」
「……?」
葵花さんは私に指を指して、ドヤッとした顔をしてこちらを見ていた。
「いえ、まぁ……そうですけど」
「そういうのはね、そういうものだって捨て切っちゃえばいいんだよ」
葵花さんは先程まで浮かべていた笑みを消して私にそう言った。
確かに、捨て切れるはず。だが、なぜか私の中では根強く残っている。
そして、狩人の血だらけの姿も強く印象に残ってしまっている。
呪術師と言う終わらないマラソンゲーム。その先にあるものは?
「とにかく君は休んだ方がいいね」
葵花さんがそう言って私の頭にポンッと手を置く。
私が何かを呟こうとした時。
「お、母さん」
通路の奥から狩人がやってきた。
「何してんの2人で……まさか嘘やん?」
「違う、違うんだ狩人」
何を勘違いしたのか分からないが、いや、分かるのだが分かりたくないな。
兎に角、私は弁明するために立ち上がる。
それを、葵花さんが抑える。
「やっほ〜狩人君、見てる〜?」
「ちょ」
狩人から呪力が凪いだので私はマジでやばいと思い、狩人を押さえつける。
狩人から誤解を解くのに20分ぐらい掛かることとなった。
何気に狩人の地雷は母親と嫁さん。
あれ、どっちも女性だ?おやおやおやおやおや?
コイツは……
-
特級呪術師だ
-
1級呪術師じゃない……?
-
それ以下やろ