黒い沈黙の行先   作:シロネム

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~準備~ 清掃大作戦

 

――合宿所・正門

 

 

勉強の前に大掃除を行うことに決めた補習授業部は、汚れても良い服に着替えてから、建物の前に集合することとなった。

 

 

 

「……来たか」

 

「先生、代理人、お待たせしました!」

 

"おぉ、体操着姿! 可愛いねぇ~"

 

「あはは、ありがとうございます。服装から入るのも大事ですからね。体操着の方が動きやすいですし、汚れたときに洗濯もしやすいですし」

 

「……お待たせ。……で、私は何をやれば良いの?」

 

「あっ、コハルちゃん早かったですね」

 

「お待たせ」

 

「アズサちゃんも――」

 

「……なんでお前は銃を持ってきてるんだ?」

 

「肌身離さず持っていないと、銃の意味がないからな。襲撃はいつ来るか分からないものだ」

 

「いえ、それはその、何と言いますか、その通りかもしれませんが……」

 

「………はぁ」

 

 

警戒心が高すぎるアズサにため息をついたローランは……、

 

 

――みんなに見えるように、手袋から2丁拳銃(ロジックアトリエ)を取り出した。

 

 

 

「……アズサ。……俺が警戒しといてやるから、お前は少し肩の力を抜け。……ずっと意識していたら疲れるだろ」

 

"そうそう。もし敵が襲ってきても、代理人が倒してくれるからね"

 

「……分かった」

 

 

 

ローランと先生の説得もあってか、構えていた銃を肩に担ぎ直したアズサは、……一度深呼吸をし肩の力を緩めた。

 

 

 

「お待たせしました、皆さん早かったですね?」

 

「あ、ハナコちゃ……」

 

「アウトーーーーーー!!!」

 

 

 

コハルの声が正門前の広場に響き渡る。全員体操着姿に着替えた中、一人だけ学校指定の水着姿で現れたハナコに、……全員言葉を失っていた。

 

 

 

「……なんで水着?」

 

「あら……? 何かおかしかったでしょうか?」

 

「なんで掃除するのに水着なの!? バカなの!? バカなんでしょ!? バーカ!!」

 

「ですが動きやすいですし、何かで汚されても大丈夫ですし、洗い流すのも簡単で……」

 

「そういう問題じゃないでしょ!?」

 

「誰かも何も、ここには私たち以外いませんよ……?」

 

「代理人がいるでしょ! ダメったらダメ!」

 

「いや、俺は別に気にしないが」

 

「こっちが気になるの! あんたはもう水着の着用禁止!」

 

「あら……それはそれで、まぁ……」

 

「あうぅ……」

 

 

 

その後、コハルに叱られたハナコは、きちんと体操着に着替えるのであった。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

―5分後

 

 

 

「今日は日差しも強いですし、熱中症には気を付けてくださいね」

 

「は~い♪」

 

「草を、抜く……ま、まぁ別に……」

 

「なるほど。確かに本陣の周囲で、敵が隠れられそうなポイントから取り除くのは理に適ってる」

 

「えっと……と、とにかくまず建物の周りを整えたら、その後はそれぞれ1か所ずつお掃除をしていくという順番でお願いします!」

 

"それじゃあ、私たちもやろっか"

 

「そうだな」

 

 

 

ヒフミの掛け声と共に動き出した一同は、合宿所周辺の雑草を一通り抜き取り、放置されていたガラクタなどを片付けていった。

 

 

 

"代理人"

 

「どうした?」

 

"……シャオさんみたいに、燃やせそうなE.G.Oとかって……持ってない?"

 

「うん? ……あるにはあるが、……もしかして、そのガラクタを焼却しようとしてるのか?」

 

"うん! ……お願いしていいかな? 私は生徒が近寄らないよう誘導しておくからさ"

 

「……わかった」

 

 

 

突拍子もない発想に驚いたローランだったが、先生が離れたのを確認したのち、

 

……手袋から取り出した本を開き、ページを1枚破り取った。

 

 

 

「……こんなことに使うのもあれだが、……借りるぞ、マルクト」

 

 

 

破り取られたページは光り輝き、ローランの姿を変えていく。

 

 

焼け焦げたような真っ黒な衣装に、まるで炎のような着色の施された装飾。

 

 

出現した先端が燃え盛る木の棒を握りしめたローランは、

 

 

 

――並べられたガラクタを、焼き払った

 

 

 

 

 

――4本目のマッチの火――

 

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

――居住区・廊下

 

 

 

「ここはまず箒で埃を掃いて、その後にモップがよさそうですね。……埃の溜まりやすいところですので、一度では終わらないかもしれませんが……」

 

「大丈夫、問題無い」

 

"私も手伝うから、一緒に頑張ろうね"

 

「アズサちゃんと先生にはこの廊下が終わったら、シャワー室とお手洗いの辺りをお願いしても良いですか?」

 

「うん、了解。任せて」

 

"よし、それじゃあやろうか!"

 

 

 

掃いて拭いてを何度か繰り返し、次の場所へと、また次の場所へと順番に掃除を進めていく二人。この調子であれば、1日で大掃除は終わることだろう。

 

 

 

 

――合宿所・ロビー

 

 

 

「けほっ、けほっ……! 何ここ、すごいほこり……」

 

「あ、あはは……。家具が多いからでしょうか……? ……えっと、ではここも埃を掃いて……」

 

「やっ、やり方くらい知ってる! 正義実現委員会でずっとやってるし! ……マスクを着けてほこりを払ってから、水拭きすれば良いんでしょ! バカにしないで!」

 

「ば、バカにしたつもりは無いですよ……? ……では、ここはコハルちゃんにお任せしますね!」

 

 

 

ロビーも同じように掃かれ、設置された多数の家具も綺麗に掃除されていった。

 

 

 

 

――合宿所・宿舎

 

 

 

「えっと、ここは……」

 

「ヒフミちゃん、ここは私に任せてください。これから色々とお世話になる場所ですし、きちんとお掃除しておかないとですよね。

 

古くなったマットレスは他の部屋の物と交換し、寝具類は今洗って干しておけば、恐らく午後には乾くでしょう」

 

「すごい、詳しいですね! ではお願いしますね、ハナコちゃん」

 

「うふふ、はい」

 

 

 

補習授業部の面々に担当箇所を指示したヒフミは、補習授業で使われる予定の教室へと向かい、掃除を始めるのであった。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

――合宿所・教室

 

――合宿所・体育館

 

――合宿所・簡易キッチン兼・食堂

 

 

 

数時間かけて、合宿所の殆どを掃除した一同は、合宿所の正門前へと集合した。

 

 

 

「全員終わったか?」

 

"うん、大体終わったよ。代理人の方はどう?"

 

「こっちも言われた通り、ガラクタは全て処分しておいたぞ」

 

「あ、ありがとうございます。これで一通りのお掃除は終わりましたかね?」

 

「そうね、ずいぶんキレイになった気がする」

 

「……うん、悪くない」

 

「あ、まだ1か所だけ残ってますよ?」

 

「あれ、そうでしたっけ……?」

 

「はい、屋外プールが」

 

「ぷ、プール……? あ、そういえば……」

 

「……そういえば、プールもあったな。……気になるなら見てみるか?」

 

 

 

合宿所の正門前からそう遠くない位置に存在する大きなプール。

 

元々は水泳の授業で使われていたようだが……、……長期間放置されていたということもあってか、水槽は見るに堪えない有様へと変貌していた。

 

 

 

「来たは良いが、別に試験には関係ないし、掃除しなくても良いんじゃないか?」

 

「いえいえ、代理人。よく考えてみてください」

 

「うん?」

 

「キラキラと輝く水で満たされたプール、楽しい合宿、はしゃぎ回る生徒たち……」

 

 

 

――楽しくなってきませんか?

 

 

 

「いや、別に楽しくはならないが……」

 

「あ、あはは……。……ですが確かに、こうして放置されてしまったプールを見ていると……何だか寂しい気持ちになりますね」

 

「このサイズだったし、昔はきっと使われていた時期もあったんだろう。元々は、賑やかな声が響き渡っていた場所なのかもしれない」

 

"これだけ大きかったなら、確かに使われていたかもね"

 

「……それでも、こんな風に変わってしまう」

 

 

vanitas vanitatum

 

 

「……それこそが、世界の真実」

 

「は、はい……?」

 

「古代の言葉ですね。全ては虚しいものである(vanitasvanitatum)。……確かに、そうなのかもしれません」

 

「……」

 

「……。……アズサちゃん、ヒフミちゃん、コハルちゃん!」

 

 

 

――今から遊びましょう!

 

 

 

「え、えぇっ!?」

 

「今から掃除して、プールに水を入れて、みんなで飛び込んだりしましょう!

 

明日からは頑張ってお勉強をし続けないといけませんし、……そうなると今日が最後のチャンスかもしれないじゃないですか」

 

"そうだね。……予定通りだと、遊べるのは今日までかな?"

 

「そうですよね。……そうなれば1秒も無駄にはできません!

 

さぁさぁ、早く濡れても良い格好に着替えてきてください! プール掃除を始めましょう!」

 

 

……

 

 

「……うん。……たとえ全てが虚しいことだとしても、それは今日最善を尽くさない理由にはならない。

 

……問題ない、ちゃんと水着も持ってきてる。待ってて」

 

「あ、アズサちゃん!? 早っ……!?」

 

「さぁヒフミちゃんも! コハルちゃんも早く水着を……いえ、何でも良いので濡れても良い格好に!」

 

「……あー、ハナコ? ……楽しそうなところ悪いんだが、俺は少し外させてもらう」

 

「あら? 生徒の水着姿を楽しんでいかれないのですか?」

 

「いや、元々楽しむ気はないんだが……。……少し予定があってな」

 

"もしかしてこの間の? えっと……、シスターフッドだっけ?"

 

「……あー、先生? ……あまり情報を広めないで欲しいんだが……」

 

「シスターフッド?」

 

「シスターフッドって、前にハスミ先輩が言ってた秘密主義集団の……」

 

"あ……、……ごめん代理人"

 

「……まぁ、いいか。……いつかは知られることだろうしな」

 

「シスターフッドがシャーレの代理人を……? ……サクラコさんは一体何を……」

 

「サクラコさん?」

 

「……知っているなら話が早いな。……サクラコから大聖堂に来るよう呼ばれてるんだ。

 

……夜までには戻るから、3人とも先生の護衛を頼む」

 

「……」

 

"それじゃあ、掃除はこっちでやっておくから、代理人も気を付けてね~"

 

「……面倒を掛けるな。……それじゃあ、プール掃除頑張れよ」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

――大聖堂

 

 

 

ガラクタを焼却した後、ローランにかかってきた一本の電話。

 

サクラコからかかってきたその電話は、大事な話があるから大聖堂に来て欲しいというものだった。

 

 

 

「……訓練についてか、……それとも、翼に大きな動きでもあったか……?」

 

 

 

思い当たる節があるようで、全くないローランは、4人と別れたのち大聖堂へと足を運んでいた。

 

 

 

(ガチャ)

 

 

 

「待たせたな、サクラコ。……遅くなって悪かった」

 

「いえ、突然お呼びしたのは私ですから。……むしろ、お越し頂きありがとうございます」

 

「……大事な話があるって言うから来てみたが、……他のメンバーは?」

 

「皆さんでしたら、少々席を外して戴いております。……エリュシオンに関する話でもありますので」

 

「……そうか」

 

「はい。……と言いましたが、実際に話があるのは私ではなく……」

 

 

 

――もう一人の、トリニティ地区担当なのですが

 

 

 

「そういえば、トリニティには4人の担当が居ると言っていたな」

 

「はい。そのうちの一人から、代理人へ大事な話があるみたいです」

 

「……それだったら、態々サクラコを通さずとも、電話してくれれば良かったんだが」

 

「……申し訳ありません。……詳細に関しては、私も存じ上げておらず……。

 

……と言いますか、実は私も席を外すよう言われてまして」

 

「……は?」

 

「ですので、詳しい話は本人から直接お聞きください。……それでは、代理人。

 

……また今夜、訓練の程よろしくお願い致します」

 

 

 

(ガチャ)

 

 

 

そう言うと、大聖堂の扉を開け外に出て行ってしまったサクラコ。広々とした大聖堂に一人取り残されたローランは、

 

 

 

「……い、色々と言いたいことはあるが……、……取り合えず、話のある奴が来るまで待つとするか」

 

 

 

沢山並べられた長椅子の一つに腰掛けるのであった。

 

 

 

……

 

 

……

 

 

 

大体5分から10分ぐらいだろうか? 今後の補習授業部の予定を考えながら待機していたローランは、

 

……扉から聞こえる話し声に気づき、顔を上げた。

 

 

 

「……本当によろしいのですか?」

 

「あぁ、ここまでで構わないとも。……帰りはシャーレの代理人にお願いするから、

 

 

 

 

……セリナ、君は先に戻っていてくれ」

 

「……了解しました」

 

 

 

 

(ガチャ)

 

 

 

 

「……来たか」

 

「……すまない、待たせてしまったみたいだね」

 

「いや、それは別に構わないが……、……用があるなら直接電話してくれて構わないぞ?」

 

「そうかい? それは助かるよ。……今(・)の(・)私(・)は(・)、(・)あ(・)ま(・)り(・)堂(・)々(・)と(・)表(・)を(・)歩(・)け(・)る(・)存(・)在(・)じ(・)ゃ(・)な(・)く(・)て(・)ね(・)」

 

「……? それはどういう……」

 

「……私が無事であるという事象を、他の生徒に観測されると問題があるのさ」

 

「……」

 

「……おっと、自己紹介が遅れたね。……私はエリュシオン所属、トリニティ地区担当、

 

 

ティーパーティーの百合園セイアだ。

 

……よろしく頼むよ、代理人」

 

 

 

 

 





エリュシオン所属・トリニティ地区担当

・歌住サクラコ
・百合園セイア
・?????
・????


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