黒い沈黙の行先   作:シロネム

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~終焉~ 未来視の狐

 

「百合園……セイア? ……聖園の話では確か、入院中でトリニティに居ないと聞いていたが」

 

「確かに、表向きはそのように処理されているね。……私が五体満足でトリニティにいることを知っているのは、エリュシオンと救護騎士団のメンバーだけさ」

 

「……」

 

「……私の都合で呼び出しておきながら、こう言うのも失礼な話かもしれないが……」

 

 

 

――今からする私の荒唐無稽な話を、……どうか信じて欲しい

 

 

 

「違和感や疑問については、その都度答えよう。……だからどうか、私の話を最後まで聞いて貰いたい」

 

 

……

 

 

「…………分かった。……内容次第だが、頭ごなしに否定することはしないと約束する」

 

「……そう言って貰えて何よりだとも。

 

……早速だが、私の生まれ持ってしまった異端な力。

 

……特異点と言っても過言ではないと自負する能力について、……聞いてくれたまえ」

 

「……」

 

 

 

それでは、話をさせて頂くとしよう。

 

……私の持つ能力。

 

人の身でありながら、人知を凌駕した、人ならざる異能。

 

 

 

――レム睡眠状態でのみ発現する、超限定的未来予知

 

 

 

場所や時間を指定することは出来ないが、夢という形で強制的に観測することのできる結末。

 

 

 

……私が視た夢の内容について語る前に、

 

 

……どうか、

 

 

 

……夢という形を通して、未来を予知できてしてしまうという能力を、

 

 

 

――信じて頂きたい

 

 

 

「……夢を通じた未来予知……ねぇ。……未来予知ではないが、……似たような症状に陥った生徒を知ってる以上、……そんなものは存在しないとは言い切れないだろうな」

 

「……ちょっと待ってくれ。……私と似たような症状に陥った生徒? ……それは一体……」

 

「……まぁ、個人情報だしどこまで共有して良いか分からないから詳細は伏せるが……」

 

 

 

――ゲヘナに一人、似たような症状を克服した生徒がいる

 

 

 

「……ということだけ教えておくよ」

 

「……ゲヘナに……」

 

「……取り合えず、百合園の能力については信じるから、話を続けて貰えるか?」

 

「……分かった。……あと、私のことはセイアで構わない」

 

 

 

……ごほん。

 

私が君に会いに来たのは、この夢の内容が関係していてね。

 

 

一種の過去改変と言う訳ではないが、……バタフライエフェクトの恐れがある以上、残念ながら具体的な内容を伝えることはできない……。

 

……だから、私が言えるのは断片的な情報と、忠告だけになってしまうのだが、

 

 

 

「代理人。君は、ナギサからトリニティの裏切者を探すように頼まれているね?」

 

「あぁ、頼まれたな。補習授業部に居るから探してくれ……と、そう伝えられたよ」

 

「……そうか。……彼女の推測は、合っているようで間違っている。……トリニティの裏切り者、そう呼ぶに値する存在は確かに実在しているが」

 

 

 

――それが、補習授業部だけに居るとは限らない

 

 

 

「……つまり、既に裏切り者が誰かは把握している。……しているが、伝えることが出来ないという事か」

 

「……その通りだとも」

 

「……言い方的に、裏切り者は複数居るみたいだな」

 

「……」

 

「…………悪い。……俺の考えをセイアが知ってしまうという事実も、良くはないのか」

 

「……まぁ私自身、未来が変わってしまう引き金が何か、というのは把握していないのだけどね。……ただ、少しでも可能性がある以上、迂闊な行動は避けておきたいのさ」

 

 

 

百合園セイアは大怪我を負い、入院している。

 

 

 

……トリニティの生徒に観測され、この確定している事象を覆されてしまうという危険を冒してでも、伝えなければいけない情報があるんだ。

 

 

 

「ちょっと待て、……なんでお前は、入院していることになっているんだ?」

 

「……()()()()()()()()()に、そうせざるを得なかった」

 

「……」

 

「……数日前、とある生徒に襲撃されてしまってね。

 

何とか一命は取り留めた……と言うより、()()()()()()()()()()()のだが……」

 

「……」

 

「万が一にもその事が露見してしまえば、彼女は雇い主に処分されてしまうだろうからね。

 

表向きの私は重症……、……もっと言えば、ヘイローを破壊されて死んだことになっているのさ」

 

「……ヘイローを破壊? ……それってまさか」

 

 

――T社が持っていたヘイローを破壊する銃弾か?

 

 

「いや、私が使われかけたのはヘイローを破壊する爆弾だが……。……T社はそんな物まで用意していたのかい?」

 

「……俺も盗み聞きしただけだから、正確な情報は把握していないが、……代表の言い方的に、誰かに提供されたみたいだったな」

 

「提供……。……そのような物を作れる組織について、いくつか心当たりはあるが……。……T社が持っていたというその銃弾については、エリュシオン内で共有しても構わないかい?」

 

「あぁ、勿論だ。……理屈は分からないが、ホシノのE.G.Oを一撃で解除させたんだ。……あんなものが量産されたらと考えるとな」

 

「……小鳥遊ホシノ。……アビドス地区担当であった彼女のお気に入りだったかな?

 

……そうか。……あの子はE.G.Oの発現に成功したんだね」

 

「……知り合いだったのか?」

 

「いや、私と直接接点があった訳ではないのだが……。……私の見た未来の一つに、()()()()()()()()()()()()()()()()()があってね。

 

……最も、数日前からその未来を予知することは無くなったのだが」

 

「……予知した未来の一つ……。……ゼホンが言っていた可能性の世界と、何か関係があるのか?

 

「……おっと、話が逸れてしまったね。……纏めると、今の私は誰かに姿を観測される訳にはいかないのさ」

 

「……あぁ、理由については理解できたよ。……それで? ……俺に話したかった夢の内容ってのは何なんだ?」

 

「……」

 

 

 

 

――キヴォトスの終焉

 

 

 

「……キヴォトスの終焉?」

 

「終焉を迎えて滅亡したというべきか……結果的にそこへと至ってしまうのか……それ自体は杳として知れないけれど……」

 

「……」

 

 

 

天から巨大な塔が飛来し、虚空が緋色に染められ……

 

不吉な塔が悲鳴を上げるように鳴動し……この世界を少しずつ削り取っていくような……

 

 

 

降り注いだ黒い光によって、世界が終焉へと傾いて行く

 

 

 

「……私は最初、この終焉は翼によるものだと考えていた。

 

……事象を書き換え、この世界を蹂躙した存在。……彼らの暴走によって、このキヴォトスは終焉を迎えたと」

 

 

 

……そう思っていた。

 

 

 

「……」

 

「……けれど、私が視たその光景に、翼は絡んでいなかったんだ」

 

「……それはつまり、翼とはまた別の脅威が、キヴォトスに訪れるということか?」

 

「……あくまで過程でしかない故、断言することは出来ないが……」

 

 

 

私が視た終焉が、ただの悪夢だとは到底思えなかった。

 

……この先訪れてしまうであろう終焉。

 

翼が関与しているのであれば、エリュシオンを頼ることもできたのだが……

 

 

 

――断定が出来ない以上、安易に伝える事が出来なかった。

 

 

 

「そこで白羽の矢を立てたのが、キヴォトスの外から来た第3者であり、超法規的機関シャーレ所属の……」

 

「俺だったと言うわけか。……この件については、俺よりも先生の方が適任な気もするが……」

 

「……既に、先生には伝えているとも」

 

「……何?」

 

「私は夢を通じて未来予知が出来るだけなく、夢を見ている者と接触することも出来るのさ」

 

「夢を見ている者……。……つまり、先生が寝ている間に接触したということか?」

 

「その通りだ。……本当は君に対しても、夢の中で接触しようと思っていたのだが……、

 

……最近の君はT社の拳銃に頼ってばかりで、碌に睡眠を取らないみたいじゃないか」

 

「……あー……そう言えばそうだな。……実際便利なんだよな」

 

「……そのおかげで、こうして直接接触することになってしまったのだがね。

 

……まぁでも、君とこうして有意義な時間を過ごせたのは、悪くなかったよ」

 

「……俺としても、目的を果たす前にキヴォトスが崩壊する可能性を知れて何よりだ」

 

「……目的? ……そう言えば、君はどうしてこの世界に来たんだい?」

 

「あー……、……まぁ、これは別に教えてもいいか」

 

 

 

――都市の苦痛を取り除く方法を探るためだよ

 

 

 

「……都市と関係のない世界でなら、その方法を見つけられると思っていたんだが……、……まさかここまで都市に侵食されているとはな。

 

……予想していなかったよ」

 

「……なるほど。……確かに、都市と関係のない世界に来てまで、都市の相手をさせられるというのは…………同情するよ……」

 

「……まぁ俺としても、得るものが全く無かったという訳では無いから、……それは別に良いんだが」

 

「……」

 

「……っと、もうこんな時間か。……セイア。今後もし用があるのなら、俺の端末に直接電話してくれ。……この件に関しては先生も了承しているだろうが、俺も全面的に協力するよ」

 

「……! ……助かるよ、代理人」

 

「あぁ。……じゃあまたな、セイア」

 

「あ、ちょっと待ちたまえ」

 

「……? どうした?」

 

「……早速一つ、お願いしたいことがあるのだが、構わないだろうか?」

 

「お願い? ……あー、……もしかして、病室まで送って欲しいってことか?」

 

「……察しが良いみたいで何よりだとも。……君なら、私の姿を隠しつつ病室まで送り届けることが、可能だったりしないかい……?

 

……無理そうであれば、救護騎士団を頼ることになりそうだが……」

 

「まぁ、可能かどうかでいえば出来るが……。…………分かった。送り届けてやるから、場所を教えてくれ」

 

 

 

そう言ったローランは、手袋から一冊の本を取り出し、ページを1枚破り取った。

 

 

 

「……借りるぞ、ティファレト」

 

 

光り輝く一枚のページは、ローランの姿を変質させていくのであった。

 

 

 

 

 

 

――黄金狂(ゴールドラッシュ)――

 

 

 

 

 

 






セイアちゃんの口調難しすぎないか……?


……彼女曰く、キヴォトスの終焉に、翼は絡んでいないようですが……


……。



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