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――屋外プール
教えられた座標に
予想以上に長引いたせいもあってか、既に日は沈んでおり、ローランが屋外プールについた頃には、
――綺麗な水が張られていた
「あ、あはは……。……結局、プールに入って遊ぶことはできませんでしたね……」
「そういえば、水を入れるのは結構時間がかかるものでしたね……。……ごめんなさい、失念していました」
「いや、謝ることはない。十分楽しかった」
「……綺麗」
「そうですね。真夜中のプールなんて、なかなか見られない景色で……」
「……って、そういえば代理人は……?」
「そういえば、居なかったな」
「シスターフッドの方々とのお話が、長引いているのでしょうか……?」
「……」
「あぁ、予想以上に長引いてな。……遅くなって悪かった」
「……!」
"おかえり、代理人"
「……先生、後で少し時間を貰えるか?」
"……? ……何かあったの?"
「シャーレとして、話したいことがあるんだ。……主に、夢の内容に関してな」
"……! ……分かった、後で話そっか"
「助かるよ。……それはそうと、随分と綺麗になったな。使い物にならないレベルで、汚れていた気がしたが」
「(うとうと……)」
「あら、コハルちゃんはおねむですか?」
「そ、そんなことないもん……でも、ちょっとつかれた……」
「確かに、今日は朝から大掃除でバタバタでしたもんね」
「待たせたみたいで悪いな」
「あ、いえ、私たちもついさっき終わったばかりですので。
……代理人も戻ってこられましたし、そろそろお部屋に戻って休むとしましょうか?」
「うん、そうだな」
「そうですね、では今日はこれくらいで」
補習授業部の一同と合流したローランは、普段見ることのできない真夜中のプールという夜景に満足しながら、宿舎へと足を進めるのであった。
★★★★★
――合宿所・宿舎
「それでは、お疲れさまでした」
「お疲れ様」
「はい、ではまた明日」
「……お疲れ様」
"それじゃあ、私たちはあっちの部屋にいるから、何かあったらいつでも呼んでね"
「はい、ちゃんと覚えておきますね」
「だ、ダメ……そういうハレンチなのは、正義実現委員会として……!」
「あ、あはは……。みんなお疲れのようですし、すぐ寝ましょうか」
「あー、一つだけ俺から忠告しておくぞ」
"代理人?"
「お前らもトリニティの生徒なら分かってるとは思うが……」
――間違っても、外出はするなよ?
「「「「……」」」」
「古いとはいえ建物の中だから、襲撃されることはないと思うが……、……念の為、夜間は俺が哨戒にあたる」
"そっか……、トリニティの夜だっけ?"
「……あぁ」
"本当ならこんな事辞めさせたいんだけどね……"
「まぁ、シャーレの力でどうにかできる問題でも、ないみたいだからな……」
「トリニティの夜……」
「……ですがそれだと、代理人が疲れてしまうのでは……」
「俺は大丈夫だ。……具体的な方法は教えられないが、疲労を無くす道具があるからな。……食事も睡眠も休息も必要ない」
"アレの乱用は良くないと思うんだけどなぁ……"
「そ、そんなに便利な物があるんですね」
「(うとうと……)」
「……」
「あらあら、……それじゃあ、私たちが眠ってる間はお願いしますね?」
「あぁ」
「うふふ……。もし気になるなら、寝込みを襲って頂いても……」
「襲わないから大人しく寝てろ。……そう言う訳だから、先生。……アロナが居るから大丈夫だとは思うが、何かあったらすぐに呼んでくれ」
"うん、わかった。……代理人も無理しないでね?"
「分かってる。……アイツにも睡眠不足で怒られたばかりだしな」
"……それってもしかして、セイ……んぐっ……"
「先生。……その名前は口にしたら駄目だ。……アイツはトリニティに居ないはずだからな」
"わ、分かった……"
「それじゃあ、俺は見回りをしてくる。連絡先を置いておくから、何かあったら先生を頼るか、俺の端末に連絡してくれ」
(ガチャ)
★★★★★
ローランが外の見回りに行った後、夜も遅いということもあってか、先生は割り当てられた部屋へと戻っていた。
"トリニティの夜……かぁ……"
昨日見た夢の中で、セイアちゃんが色々と教えてくれたけど……、納得できないなぁ。
学生だし、ストレスや悩みが生まれるのは判るけど、それを解決する方法がこんなに無秩序だなんて……。
……いや、私の感覚がおかしいのかな。
銃火器を常日頃から持ち歩く生徒達を基準に考えたら……。
……。
"……私にも、代理人みたいな力があればなぁ"
「先生! 先生はもう十分、生徒さんたちの為に頑張っていますよ! それはこの、スーパーアロナちゃんが保証します!」
"……あはは、ありがとうね。……アロナちゃんにそう言って貰えると、私も救われるよ"
「先生……」
――E.G.O
私にもE.G.Oがあれば、もっと生徒達の力になれるのかな。
(トンットンットンッ)
"……? どうぞ、入っていいよ"
「あ、えと、失礼します……」
"……ヒフミちゃん?"
「その、夜中にすみません……。何だか眠れないと言いますか……、あれこれ考えていたら、その……あうぅ……」
"……そっか。……それじゃあ、少しお話ししよっか"
★★★★★
「先生、今日はお疲れさまでした」
"ヒフミちゃんの方こそ、お疲れ様"
「明日から本格的な合宿なのですが……私たち、このままで大丈夫なのでしょうか……。
もし1週間後の2次試験に落ちてしまったら、3次試験……」
……万が一、それにも落ちてしまったら……
"……全員、退学だね"
「……やっぱり、先生も知っていたんですね」
"……まぁね"
「……まだ誰にも言っていませんが、そもそも言って良いことなのかどうかも分からなくて……」
"……もしかしなくても、ナギサちゃんから聞かされたんだよね?"
「……はい」
"……そっか"
ナギサから聞かされた内容。学力試験でありながら、全員一斉に評価する謎のシステム。補習授業部のためだけに用意された合宿施設。……そして、
――トリニティの裏切り者
"やっぱり、ヒフミちゃんもお願いされていたんだね"
「……先生も、ですか。……わ、私は、裏切り者だなんて、そんな話……、……どうしても、信じられません……」
"……"
「みんな、同じ学校の生徒じゃないですか……。……今日だって、みんなでお掃除をして、一緒にご飯を食べて……。
……それなのに、誰が裏切り者なのかを探れだなんて、そんな、そんなこと……」
"……無理しなくて良いよ、ヒフミちゃん。……裏切者探しは、私と代理人で行うから"
「そ、そう言う訳には……! ……先生と、代理人にだけ任せてしまうだなんて……、そんなことは……」
"……ヒフミちゃんは優しいね"
「え、えぇ……!?」
"大丈夫! こう言うのは、私たち大人に任せて!"
「……ですが……」
"ヒフミちゃんは、ヒフミちゃんに出来ることを頑張って! テスト勉強もしないといけないしね"
「私に、できること……」
……
「……はい! 分かりました! ……あ、その、私に何ができるのかは、まだ分かりませんが……ちょっと考えてみようと思います!」
"その意気だよ"
「はい! 先生、ありがとうございます! 何だか心が軽く……」
(ゴーンッ! ゴーンッ!)
先生の部屋に……トリニティ自治区全体に響き渡る鐘の音。
普通の生徒であれば、就寝中の為あまり聞きなれた音ではないが、……その鐘の音は、
――普通ではない生徒の、理性を解き放つ音であった
「この音は……まさか……」
"トリニティの夜が……始まったみたいだね……"
★★★★★
「……時間か」
(グシャッ)
火のついたタバコを踏み潰し、手袋からデュランダルを取り出したローランは、
……遠方から急接近してくる人影に向けて、剣先を構えた。
「わわわ、待つっすよ! 代理人、私ですって!」
「お前は……。……今日の担当はAチームじゃないはずだが?」
「それはそうなんですけど、補習授業部の子たちが気になったと言いますか……、身体を動かしたくなったと言いますか……」
「……はぁ。数日前に散々戦ったばかりだろうに……」
「まぁまぁ、良いじゃないっすか! Aチームのメンバーは全員休んでますし、私が勝手に来ただけですから!」
「隊長であるお前にも、ちゃんと休んで貰いたかったんだがな」
「いや~、ははは!」
「はぁ……。……まぁ、来たからには手伝って貰うぞ」
「了解!」
笑顔のまま両手に月光刀を構えたAチームの隊長は、デュランダルを構えるローランの隣に立つのであった。
――月光刀――
月光石を用いて作られた刀。
都市でも異端な素材と、工房による異端な技術で作られた特注の刀は、
斬った相手の血を流させると共に、涙をも流させる。
その斬撃は肉体に限らず、対象の心をも壊すのだとか。
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