黒い沈黙の行先   作:シロネム

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~模試~ 第1次模擬試験

 

(ピピピッ!)(ピピピッ!)(ピピピッ!)

 

 

トリニティ自治区に鳴り響くアラームの音。

 

Aチーム隊長のポケットから聞こえてきた音に反応し、ローランはデュランダルを手袋へと収納した。

 

 

 

「なんとか終わったな」

 

「そうっすね!」

 

 

 

辺りに漂う血の香り。積み重ねられた、不良生徒達。月光刀の血を払い納刀した隊長は、辺りをぐるりと見まわし、

 

 

 

「ん~、やっぱ身体を動かすと気分が良いっすね!」

 

 

 

満足げな顔で頷いた。

 

 

 

「休息もしっかりと取って貰いたいんだがな」

 

「まぁまぁ! 私は元気一杯ですし、それに代理人の拳銃で巻き戻して貰えれば……」

 

「……さてはそれが目当てで来たな?」

 

「いやいやそんな……ははは!」

 

「……はぁ。……まぁ、助かったのは事実だしな」

 

 

 

(パンッ)

 

 

 

「あざっす! いや~、やっぱ便利ですねそれ。確かT社の特異点を使ってるんでしたっけ?」

 

「ん、あぁ。その通りだが……。……待て、なんで翼について知ってるんだ?」

 

「およ? ……あー、そっか! えっとですね、Bチームの隊長もそうなんですけど、チームを預かるときにエリュシオンのことや翼のことについては、一通りの説明受けてるんですよ」

 

「……」

 

「所属してる訳じゃないんで、エリュシオンの内部施設や派閥については、全然知らないんですけどね」

 

「……そうか」

 

 

 

エリュシオンに所属してなくても、翼や都市のことについて把握している奴はいるのか……。

 

……各学園から数人って言っていたが、所属してないだけで事情を知っている生徒は意外と居るのかもしれないな。

 

 

 

「…………それじゃあ俺は宿舎に戻るから、お前もちゃんと授業受けろよ」

 

「了解っす!」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

――朝

 

 

 

ローランと隊長のおかげもあってか、平穏な夜を過ごすことができた補習授業部。銃声や怒声、悲鳴が鳴響いてはいたものの、誰一人傷を負うことはなかった。

 

 

 

「おはよう!」

 

「おはようございます、アズサちゃん。朝から元気ですね~」

 

「うん、一日の始まりだから。……さぁ、早く起きて歯磨き、シャワー、それから着替え。順番に遂行していこう」

 

「あうぅ……アズサちゃん……10分……あと10分だけ……」

 

「んん……もう朝……?」

 

「ヒフミ、コハル、起きて。そろそろ起きないとダメだ」

 

「んんぅ……」

 

「ん……起きてるってばぁ……」

 

「ヒフミちゃんの方はもう少し時間がかかりそうですね。昨日はどうやら、遅くまで起きていたみたいですし……」

 

「……補習授業部の部長だから、心理的なプレッシャーもあるかもしれない。もう少しだけ休ませておこう」

 

 

 

(トンットンッ)

 

 

 

 

「あ、はーい。空いてますよ~」

 

 

 

(ガチャッ)

 

 

 

 

"みんなおはよう~"

 

「全員起きて……はいないみたいだな」

 

"先生達は先に教室に行ってるから、準備できたら来るんだよ~?"

 

「は~い」

 

「ん……あれ、ここ……私、どうして……」

 

「おはよう、コハル。朝の支度を始めよう」

 

「……? ん、え……?」

 

「シャワールームはこっち、来て」

 

「……え、なに、なんで……?」

 

 

「……どうやら、まだまだかかりそうだな」

 

"……今日使う予定の教材の準備でも、しておこっか"

 

 

 

★★★★★

 

 

 

――合宿所・教室

 

 

 

「お、お待たせしました! それでは、そろそろ始めましょうか?」

 

「は~い」

 

「うん」

 

「うぅ……全部見られた……もうダメ……」

 

「コハルも私の裸を見たんだから、何も問題は無いはず」

 

「そういう問題じゃないわよ!」

 

「え、えっと……」

 

"ヒフミちゃん、この辺の髪の毛ちょっと跳ねちゃってるよ"

 

「あ、ありがとうございます。少し寝坊してしまいまして……。……って、そうではなく!」

 

「……?」

 

「みなさん、こちらをご注目ください!」

 

「「「……?」」」

 

「今日は補習授業部の合宿、その大切な初日です! 私たちは大変な状態で、ともすれば慌ててしまいがちな状況ではありますが……」

 

 

 

――難しく考える必要はありません!

 

 

 

「一週間後の第2次特別学力試験で合格する、それだけです!」

 

「そうだね」

 

「ですね」

 

「……」

 

「そこで……、今から模擬試験を行います!」

 

「……模擬試験?」

 

「なるほど……?」

 

「きゅ、急に試験!? なんで!?」

 

「……そんなの用意してたか?」

 

"さっき用意したプリントが試験用紙だね"

 

「闇雲に勉強しても、あまり効率が良いとは言えません。目標達成の為には、何ができて何ができないのか、今どのくらいの立ち位置なのか……まずそれを把握する必要があります!」

 

"そう言う訳でね、昨日ヒフミちゃんとこれを用意してきたよ"

 

 

 

先生はそう言うと、教卓に積まれた紙の束から数枚の用紙を手に取った。

 

 

 

「そちらは?」

 

"過去問と模範解答だね。全部は集められなかったけど……"

 

「先生の協力のおかげで、第2次特別学力試験を想定した、ちょっとした模擬試験のような形にできました!

 

試験時間は60分、100点満点中の60点以上で合格」

 

「要するに、本番と一緒ってことか?」

 

「その通りです。……さぁ、まずはこれを解いてみましょう!」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

"準備できた?"

 

「時間は計測してやるから、集中して解けよ?」

 

"それじゃあ、第1次補習授業部模試。試験開始!"

 

 

 

 

「……」

 

「あら、これは……」

 

「どこかで見たような……見てないような……」

 

「(みなさん、頑張りましょう……!)」

 

 

 

――1時間後

 

 

 

「時間だ、集めるぞ」

 

"それじゃあ、採点するからちょっと待ってね~"

 

 

 

「……そう言えば、代理人」

 

「?」

 

「昨日のトリニティの夜は、大丈夫でしたか……?」

 

「あぁ、問題ない。……狂った奴は大勢いたが、合宿所も建物だからか攻撃しようとする奴はいなかったな」

 

「それは何よりですが……、……代理人自身は大丈夫ですか?」

 

「俺か? 俺も大丈夫だぞ。我武者羅に行動してくれる分、意識的に動く奴より対処しやすかったしな」

 

「あ、あはは……。確かに、代理人なら大丈夫ですよね……」

 

「むしろ、お前らは今までどうしてたんだ? ……流石に暴れていたってことはないと思うが」

 

「わ、私はちゃんと帰ってましたよ? ……一度トリニティの夜を見たことはあったのですが、好き勝手出来るとは言えあれだけ暴れられたらとても……」

 

「そ、そのせいで私たちまで鎮圧に駆り出されたんだから!」

 

「……そう言えば、コハルと同じ制服の奴も鎮圧していたな」

 

「私も特には。……夜はやることがあったから、トリニティの夜に参加したことはない」

 

「うふふ……。……私も、望んで参加しようとは思いませんね」

 

「……お前たちがまともな奴で良かったよ。……いやまぁ規則である以上、あいつ等も違反してるわけじゃないってのは分かるが……」

 

 

 

裏路地の夜と同じ時間、建造物への攻撃禁止という同じ条件。

 

間違いなく都市の連中が関わっていると思うが……。

 

 

 

(ガチャッ)

 

 

 

"採点終わったよ~"

 

「……よし、早速確認するか」

 

「ですね! では先生、結果発表をお願いします!」

 

"それじゃあ、発表するね"

 

 

 

 

 

第1次補習授業部模試、結果――

 

ハナコ―― 4点 不合格

アズサ――33点 不合格

コハル――15点 不合格

ヒフミ――68点  合格

 

 

 

 

 

「……そうか」

 

「……え?」

 

「あらまぁ……」

 

「……」

 

「まぁ、そんなすぐに合格できるわけないよな」

 

「……これが今の私たちの現実です。このままだと、私たちの先に明るい未来はありません……」

 

"……"

 

「ここからあと一週間、みんなで60点を超えるためには、残りの時間を効率的に使っていかなければならないのです!」

 

"そうだね、無駄に出来る時間はないかな……"

 

「そうです! ……ですので、コハルちゃんとアズサちゃんの1年生用試験については、私とハナコちゃんが勉強のお手伝いをします!

 

……ハナコちゃん、最近何があったのかは知らないのですが……」

 

 

 

――1年生の時の試験では高得点だったんですよね?

 

 

 

「……そうなのか?」

 

「あら……? えっと、まぁそうですね……」

 

「実はその、1年生の時のハナコちゃんの答案を見つけてしまいまして……」

 

「……」

 

 

 

たった一年で、今まで優秀だった奴がまともな点数すら取れなくなるなんてことあるのか?

 

……もしそうだとしたら、他の生徒から不満が出そうなものだが……。

 

 

 

……

 

 

 

「……先生、後でハナコの答案を見せてくれ」

 

"……え? ……うん、分かった"

 

 

 

「どうして今の状況になってしまったのかは分かりませんが、私と先生、代理人と一緒に解決策を探しましょう!」

 

「…………」

 

「まだ途中ですが他にも試験を作成中ですので、今日から定期的に模試を行って、進歩具合も確認できればと思っています」

 

「……まぁ、それが最適だろうな」

 

"私たちも、出来るだけ手伝うからね"

 

「みなさん、頑張りましょう! きっと、頑張ればどうにか、みんなで合格できるはずです……!」

 

「ヒフミ……」

 

 

 

連帯責任である以上、足を引っ張られてるのはヒフミだと言うのに……。

 

……仕方ないとはいえ、面倒見が良いというか……。

 

 

 

「……うん、了解。指示に従う」

 

「わ、分かった……」

 

「ヒフミちゃん……すごいですね。昨晩だけでこんなに準備を……」

 

「あ、いえいえ、先生も手伝ってくださったので……」

 

「なるほど、先生が……」

 

"私は大したことはしてないよ。これは全部、ヒフミちゃんの頑張りの成果"

 

「それだけではありません、何とご褒美も用意しちゃいました!」

 

「……ご褒美?」

 

 

 

そう言うとヒフミは、リュックサックの中から複数のぬいぐるみを取り出した。

 

 

――ペンギン、猫、骨、梟、鳥

 

 

それぞれモチーフが異なる動物のぬいぐるみ。

 

 

 

「こちらです! 良い成績を出せた方には、このモモフレンズのグッズをプレゼントしちゃいます!」

 

「モモフレンズ……?」

 

「……何それ?」

 

「……っ!!」

 

「……」

 

 

 

この感性は分からんが……、キヴォトスで流行ってるという訳でもないのか……?

 

 

 

「あ、あれ……? 最近流行りの、あのモモフレンズですが……もしかして、ご存じないですか……?」

 

「初めて見ましたね……いえ、どこかでちらっと見た気も……?」

 

「ええっ!?」

 

「何これ、変なの……豚? それともカバ……?」

 

「ち、違います! ペロロ様は鳥です! 見てください、この立派な羽! そして凛々しいくちばし!」

 

「……目が怖い。それに、名前もなんか卑猥だし」

 

「えぇっ……!? た、確かにそう仰る方も一部にはいますけど……よ、よく見てください。じっくり見てると何だか可愛く――」

 

「……ねじれや幻想体って言われても納得するぞ……」

 

「あ、思い出しました。そういえばヒフミちゃんのカバンや、スマホケースがそのキャラクターでしたね」

 

 

 

モモフレンズ

 

 

あまり好評とは言えない補習授業部に対し、……たった一人だけ、違う反応を示す者が居た。

 

 

 

「か、可愛い……!!」

 

「!!?」

 

「!?」

 

「あら……?」

 

「マジか……」

 

"わ、私も可愛いと思うよ?"

 

「か、可愛すぎる……! 何だこれは、この丸くてフワフワした生物は……!!!」

 

「あ、アズサちゃん……?」

 

「さすがはアズサちゃん、ペロロ様の可愛さに気づいてくれたんですね! そうです! そういうところが可愛いんです!」

 

「うそぉ……!?」

 

「こ、こっちは? この長いのは? 何だか首に巻いたら暖かそうな……」

 

「……」

 

 

 

ま、まぁ……、感性は人それぞれだし、……これでやる気になるなら問題はないだろ。

 

 

……

 

 

報酬用にブラックマーケットで数匹買ってくるか……。

 

……あいつ等なら幻想体と触れ合ってることだし……図書館への手土産にも良さそうだな……。

 

 

 

 






キヴォトスのお土産として、モモフレンズを図書館に持ち帰るローラン……



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