黒い沈黙の行先   作:シロネム

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~料理~ 模擬試験の裏側

 

その後、お互いに支えあいながら夜まで勉強を続けた補習授業部。

 

 

「コハル、質問」

 

「うん、え? 私? 私に!?」

 

「そう、コハルに。今同じところを勉強しているはずだ。この問題なんだけど……」

 

「う、うん……。……あ、これ知ってる! これはたしかこうやって、下のところと90度になるように、線を引いて……。

 

……そうすると、この三角形とこの三角形が一緒。分かった?」

 

「……なるほど、そういうことか。助かった。……これは確かに、正義実現委員会のエリートというのも頷ける」

 

「……!? そ、そうよ! エリートだもの! ……も、もし何かまた分からなかったら、私に聞いても良いから。アズサはその、特別に……」

 

「ありがとう、助かる」

 

 

 

"……最初はどうなるかと思ったけど、切磋琢磨出来そうで何よりだね~"

 

「……だな。この調子で合格してもらいたいが……、……まぁ、あと1週間もあるし大丈夫だろ」

 

 

 

互いに教えあえる程信用できるなら、問題はなさそうだな。

 

 

 

「……っと、先生。夜食はどうする? ……朝と同じで良いなら、また弁当でも買ってくるが」

 

"うーん……ずっとエンジェル24のお弁当っていうのもなぁ~"

 

「何か問題でもあるのか?」

 

"あんまり、健康に良くないんだよね。……みんなも飽きちゃうだろうし"

 

「薬物の香りや、独特な匂いのする食材は使われてなさそうだったが」

 

"あ、いや、そう言うのじゃないんだけどね。…………そうだ!"

 

「どうした?」

 

"確か代理人って料理できるんだよね?"

 

「まぁ、人並みには出来ると思うが……」

 

"それじゃあ、何か作ってくれないかな? みんなも温かいご飯があった方が、モチベーションが上がるだろうし……ね?"

 

「……まぁ、別に構わないが」

 

"やった! それじゃあ、お願いね。代金は経費で落とすから、レシートだけ忘れないで"

 

「分かった」

 

 

 

図書館で振舞った以来だが、……まぁ、大丈夫だろ。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

――1時間後

 

 

 

一度トリニティ自治区を離れD.U.自治区まで赴いたローランは、必要な食材を買い集め、合宿所にある簡易キッチン兼、食堂へと足を運んでいた。

 

 

 

「……それにしても、食材の一つ一つまで新鮮とは、……都市とは比べ物にならないな」

 

 

 

調理台に並べられた、大量の食材。

 

醤油などの調味料から油まで、必要な材料を手袋から取り出したローランは、調理へと取り掛かるのであった。

 

 

 

「……おっと。……折角だし、ネツァクから頂いてきたマッコリも準備しておくか」

 

 

 

 

 

 

――調理開始から1時間が経過

 

 

 

(ガチャ)

 

 

 

"来たよ~代理人。どう? 完成してる?"

 

 

 

食堂のテーブルに並べられた、大量の料理。

 

出来立てということもあってか、大皿に並べられたパジョンやチャプチェなどが、食欲を刺激するいい匂いを放っていた。

 

 

 

「ん、あぁ。丁度完成したところだぞ。……悪いが取り皿を配るの手伝ってくれ」

 

"了解~。おぉ、美味しそうだねぇ"

 

「……! す、すごく良い香りが」

 

「へ、へぇ……、悪くなさそうじゃない……」

 

「あらあら♪ 期待できそうですね~」

 

「なるほど、悪くなさそうだ」

 

「……よし、それじゃあ冷めないうちに食べてくれ。俺も久しぶりに作ったが、味は悪くないはずだ」

 

"これって、チヂミ?"

 

「ちぢみ? ……こっちの世界だとそう呼ぶのか?」

 

"あれ、違った……?"

 

「いや、俺の居た所だとパジョンって呼んでいたんだが……。……まぁいいか。

 

他にも色々作ってあるから、好きなだけ食べてくれ」

 

 

"……! ……それじゃあ、みんな"

 

 

「「「「いただきます!」」」」

 

 

 

「……? おう、食べてくれ。……先生、パジョンと合わせるのに良い酒があるんだが、飲むか?」

 

"……! の、飲みたい……けど……生徒の前だし。……きょ、今日はいいかな"

 

「そうか。……まぁ、また今度作った時にでも飲んでくれ」

 

"……うん"

 

「だ、代理人! これ、すっごく美味しいです!」

 

「美味しい……!」

 

「あら、ほんとに美味しいですね。……まさか、これ程の料理の腕をお持ちとは」

 

「そんなに言って貰うほどじゃないと思うが……、まぁ、気に入って貰えて良かったよ」

 

「……美味しい。……前の学校で食べさせられた料理程では無いが……。

 

…………あぁ、美味しいな」

 

 

 

ローランが振舞った料理に舌鼓を打ち、久しぶりの温かい料理ということもあってか、大層楽しんだ補習授業部一同。トリニティ自治区では見られることのない珍しい料理に最初は驚いたものの、皆その味に満足するのであった。

 

 

 

「それじゃあ、俺はまた辺りを見回ってくるから、……お前らも遅くならないうちに部屋に戻るんだぞ」

 

「あ、はい!」

 

 

 

(ガチャ)

 

 

 

「……行っちゃいましたね」

 

「……美味しい……」

 

「あらあら。コハルちゃん、慌てなくても誰も取らないですよ」

 

「わ、分かってるわよ!」

 

「……これが、本当の料理か」

 

「……先生、あの」

 

"……うん?"

 

「少しお話したいことがありまして……また今夜、お部屋に伺ってもよろしいでしょうか……?」

 

"……分かった。お部屋で待ってるね"

 

 

 

★★★★★

 

 

 

――深夜

 

 

 

皆が寝静まった頃、昨晩と同じようにヒフミは先生の部屋を訪れていた。

 

 

 

「先生……、話したいこととはハナコちゃんのこと、なのですが……」

 

"ハナコちゃんのこと?"

 

「……先生がコハルちゃんと正義実現委員会の部室に向かわれたので、私の方で過去問を作ろうと模範解答を集めていたのですが……」

 

"……"

 

「……どういう訳か、昨年の試験の解答用紙がまとまって保管されていたんです。1年生から3年生までの全ての試験が……。……珍しいことだから保管されていたのか、理由までは分かりませんが……」

 

"珍しいこと?"

 

「はい……。……1年生から3年生までの全ての試験が保管されていたと言ったのですが、……実はその全てを回答した方がいたようでして……」

 

"……もしかして、それが"

 

「……はい、ハナコちゃんでした。昨日見つけた1年生の時の成績に引き続き、盗み見る形になってしまったのですが……」

 

 

 

そう言うとヒフミは、カバンから数枚の解答用紙を取り出した。

 

 

 

「これがその、ハナコちゃんの解答用紙なのですが……」

 

"これは……"

 

 

 

そこに記された100点の文字。1年生から3年生の秀才クラスですら難しいとされる問題を含め、全ての試験で100点を出している完璧な解答用紙。

 

 

 

「ハナコちゃんは去年の1年生の段階で、これをやっているんです……。……私は、ハナコちゃんはきっと今年になって急に成績が落ちてしまったんだと思っていました。

 

でも、この結果を見る限りそうではなく……」

 

"去年の段階で、どんな問題でも解けてるはず……ということだね……"

 

「……はい。ハナコちゃんは今……わざと試験に落ちているとしか思えません……」

 

"……そっか。……ヒフミちゃんも、そう思うんだね"

 

「私も……?」

 

"……実はね、同じようなことを代理人も言ってたんだ"

 

「代理人も……ですか?」

 

"うん……。ほんとについさっき、買い出しに行く前なんだけどね……"

 

 

 

 

 

 

「先生、ハナコについてなんだが」

 

"ハナコちゃんがどうかしたの……?"

 

「……いや、解答用紙を見た訳じゃないから、断言はできないんだが……」

 

 

――アイツは、わざと試験に落ちている可能性がある

 

 

"どういうこと……?"

 

「ヒフミの話では、去年まで優秀だったんだろ? ……そんな奴がたった1年で解けなくなる程、試験の難易度が上がったって言うなら……他の生徒から苦言の一つや二つあってもおかしくないはずだ」

 

"それは……。……確かに、変な点数だとは思ったけど……"

 

「……明日、解答用紙を見て判断してみるが……アイツは裏切り者の可能性があるから、警戒しておいてくれ」

 

 

 

 

 

 

"……って言われちゃってね"

 

「……た、確かに。……そんなに難易度が上がっているのなら、元々成績が良くなかった方は、2年生の試験を解くことなんて出来なくなっちゃいますね……」

 

"それでも半信半疑だったけど……。……ヒフミちゃんが見つけてくれた解答用紙のおかげで、確信が持てたよ"

 

「ハナコちゃん……どうして……」

 

"理由は分からないけど……取り合えず、それとなくハナコちゃんに聞いてみるよ"

 

「……お願いします、先生」

 

"……うん、任せて"

 

 

 

(ゴーンッ! ゴーンッ!)

 

 

 

「……あ、トリニティの夜が……」

 

"始まったね……"

 

「代理人は大丈夫でしょうか……」

 

"……心配なら、少し様子でも見てみる?"

 

「……え?」

 

 

 

(ガサゴソ……)

 

 

 

"じゃーん! 試作型アテナちゃん4号"

 

「わわ!? な、なんですかそれ……?」

 

 

 

先生が取り出した、四つの球体。ミレニアムのロゴが烙印された浮遊ドローン。

 

 

 

"ミレニアムに行ったときに貰ったんだぁ。試作型だからAIは搭載されてないんだけど、カメラにEMP、電気ショックやホログラム……色んな機能がついてるんだって"

 

「そ、そうなんですか……? ……さ、さすがミレニアム……ですね」

 

"すごい技術だよね~。……それじゃあ、アテナちゃん4号越しになっちゃうけど……"

 

 

 

――覗き見、してみよっか

 

 

 






――試作型アテナちゃん4号――

小鈎ハレが作った、アテナ3号の姉妹機。
自立型AI調整中の為、AI機能未搭載であるものの、
アテナ3号に搭載されている既存の機能を概ね搭載した試作機


ミレニアムを訪れた際、使用データ収集の為、先生に提供されていた。





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