黒い沈黙の行先   作:シロネム

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~実験~ E.G.Oページ

 

――午前2時30分

 

 

 

合宿所の玄関前で待機していたローランは、近づいてくる足音に気が付いた

 

 

 

「来たか……」

 

「お待たせしました!」

 

「……急に呼び出して悪かったな」

 

「いえいえ! どうせ今日も身体を動かそうと思っていたので、丁度良かったです!」

 

「……呼び出した俺が言うのもなんだが、ちゃんと休んでるよな? ……歌住も休息の為に対応人数を減らしたはずなんだが」

 

「勿論休んでますとも! ……それはそうと、急にどうしたんすか?

 

試したいことがあるから付き合って欲しい……って言ってましたが」

 

「……あぁ。……俺も確証があるわけじゃないし、お前にも危険が及ぶかもしれないが……」

 

 

 

そう言うとローランは、手袋から一冊の本を取り出した。

 

 

 

「……それって、この間使ってたE.G.Oですよね?

 

……代理人って幻想体だったんすか?」

 

 

……

 

 

「……は? ……いや、幻想体じゃないが……。

 

……そういえば、お前らが使ってるE.G.Oは幻想体から抽出したものだったか」

 

「そうっすね。原理はよく分かんないんですけど、L社の保管室に幻想体から抽出したE.G.Oが並べられていたので……てっきり代理人も幻想体なのかと」

 

「あー、……E.G.Oは別に幻想体じゃなくても発現するぞ。

 

実際、キヴォトスの生徒の中に、自身だけのE.G.Oを発現した奴も居るしな」

 

「そうなんすか!? ほぇー、E.G.Oって自分で作れるんすね……」

 

「あれを作ると言っていいのか分らんが……、

 

……取り合えず話を戻すぞ。試してもらいたいのは、この本に関することなんだ」

 

「本に関すること?」

 

「……その前に、隊長。……お前は図書館について、どこまで知っている?」

 

「図書館? 古書館なら知ってますけど……」

 

「……そうか。……まだ時間はありそうだな」

 

「……? そうっすね、トリニティの夜まではまだ時間がありますが」

 

「隊長。……今からする話は、他言無用だ。L社にも関わる話だからな」

 

「……! ……了解っす」

 

 

 

トリニティの夜開始まで、あと20分。

 

その間にローランは、Aチームの隊長に、図書館と本について話すのであった。

 

 

 

L社と図書館の関係

 

本に閉じ込められている幻想体

 

幻想体の力を借りられること

 

 

 

「……なるほど。代理人の居た図書館とL社にそんな関係があったんすね」

 

「……あぁ。……それで試したいことなんだが」

 

 

 

――隊長、お前に図書館の力を使ってもらいたい

 

 

 

「図書館の力? それってまさか……」

 

「……正確には、図書館にいる幻想体の力だ。……この本に図書館と同じ力が作用しているのなら、俺じゃなくても扱えるはず」

 

「……つまり、この間の代理人みたく……その本を破って使えってことっすね!」

 

「……話が早くて助かる。……万が一様子に異常があったらすぐに巻き戻すから、使ってみてくれ」

 

「……了解っす! それじゃあ、どのページにしようかな~」

 

 

 

 

(パラパラパラッ)

 

 

 

 

「……L社の記録が残されていたみたいだし……見覚えのある幻想体も居るかもしれないな」

 

「そうっすね、何体か知ってる奴が居るっす。……まぁ、観測データだけで実物を見たことはないんですけど」

 

 

 

代理人の持つ本に書かれた情報。

 

ページに閉じ込められている幻想体と、それによって扱うことのできる力の詳細。

 

 

 

「それじゃあ、私はこれにするっす! ()()()()()、すぐに慣れると思うんで!」

 

「……まぁ、この本に関しては、使用した時点で使い方を瞬時に理解できるけどな」

 

「マジっすか? まんまうちにあるE.G.Oと同じっすね」

 

「そうなのか?」

 

「ですです! ……おっと? 代理人、この追加効果とは一体……」

 

「そいつはE.G.O装着時に使える特殊効果みたいなものだ。装着したE.G.Oによってやれることは変わるんだが、幻想体の力だけあって強力だぞ。

 

……まぁその分、精神に負荷が掛かるんだが」

 

「ふむ……?」

 

「L社のE.G.Oがどうかは知らないが、図書館の力は使えば使うだけ精神に負担がかかるんだ。……使いすぎると、ねじれることになるし……」

 

 

 

――最悪の場合、幻想体になる……らしい

 

 

 

「そうなった奴は見たことないから、あくまで聞いた話になるんだけどな」

 

「幻想体に……。確かに、うちのE.G.Oにも似たような効果と言いますか……、肉体や精神が軟弱だとE.G.Oに拒否されるんですよね」

 

「E.G.Oに拒否される?」

 

「あ、えっとですね、拒否されるというか……装備することは出来るんですけど、最大限の力を引き出せないって感じっすね。

 

……まぁ! Aチームのみんなは鍛えてるので、大体どのE.G.Oでも装備できますが!」

 

「……」

 

 

 

確かに、アンジェラも似たようなことを言っていたような……。

 

 

 

「……まぁつまり、使う場合は心を強く持てってことっすね!」

 

「……そうだな。この間の動きや覚悟を見た限り、ある程度使用し続けても問題はなさそうだけど……」

 

「マジっすか! それじゃあ、今夜はこのページを使い続けてみますね!」

 

「……」

 

 

 

……今夜のうちに、試せるだけのことは試しておくか。

 

 

 

(ゴーンッ! ゴーンッ!)

 

 

 

「おっと、もう時間っすか」

 

 

 

鐘が鳴り響くと同時に、遠方から合宿所へと向かってくる数十人の生徒達。

 

 

 

「……なんかやけに多くないか?」

 

「そう……っすね。……私たちにやられすぎて、一夜限りの協力関係でも結んだんですかね?」

 

「面倒だな……。……理性的な分、昨日より苦戦しそうだが……」

 

 

 

――やれそうか?

 

 

 

「勿論! ……それじゃあ、さっそく使わせて貰うっすね!」

 

 

 

(ビリッ)

 

 

 

そう言うとAチームの隊長は、ローランから預かった本からページを1枚破り取った。

 

 

光り輝くページの断片

 

 

その光はローランではなく、Aチームの隊長を包み込み……

 

 

 

――その姿を変化させた

 

 

 

ピンク色のテンガロンハットに、多数の花弁で装飾されたピンク色のコート

 

月桂冠を模した黄緑色の首飾り

 

 

 

どこからともなく吹き荒れた花吹雪が、隊長の両手へと集まり……、

 

 

 

二振りの長剣へと姿を変える

 

 

 

 

―― 残香(アルリウネ) ――

 

 

 

 

「おー!! 武器だけだと思ってましたが、まさか防具までセットだとは!

 

……若干、頭の中に声が聞こえてきますが、問題なさそうっす!」

 

「……無事装着できたか。違和感はないか? 自分が自分でなくなるような感じとかは……」

 

「全然ないっすね! この程度の声に魅入られる程、軟な鍛え方はしてませんよ!」

 

「それならなによりだ。……それじゃあ、俺も……」

 

 

 

(ピピッ ピッ ピピピッ)

 

 

 

本のページを破ろうとした瞬間、頭上から気配を感じたローラン。

 

咄嗟に目線を頭上へと向けると、そこには……

 

 

 

――ミレニアムのロゴが刻印された4体の球体が浮遊していた。

 

 

 

「うん? ……こいつは、小鈎が持ってた……。

 

……ってことは、先生か?」

 

"……さ、流石だね。……おかしいなぁ、消音機能とステルス機能が搭載されているはずなんだけど……"

 

「気配で分かるし、近づきすぎだ。……どうした? 何かあったか?」

 

"いやー、こっちは大丈夫!"

 

「おや? これって、ミレニアムのドローンですかね?」

 

「……あー、隊長。先生が所有してるドローンだから気にしないでくれ」

 

「先生って……シャーレのっすか? 初めましてっす!」

 

"お~元気だね~! ……って、な、なんか凄い姿してるけど……、これって代理人の本?"

 

「あぁ、ちょっと試したいことがあって協力して貰ってるんだ」

 

"そうなんだ~"

 

「先生はどうしたんだ? こんな時間だし、睡眠中だと思ったが……」

 

"……ちょっと寝付けなくてね。……代理人の様子も気になるし、ちょっと覗いてみようかなぁ~と"

 

「まぁ、別に構わないが……見ていて楽しい光景じゃないぞ? ……アビドスで話した裏路地の夜と変わりないぐらい、凄惨な光景になるけど大丈夫か?」

 

"た、多分? 大丈夫……だと思う。代理人にだけ辛い思いをさせる訳にはいかないし、私も代理人の頑張りぐらいは見届けるよ"

 

「……そうか」

 

"それに、ヒフミちゃんもいるしね!"

 

「……は? ……こんな時間まで起きてるのか?"

 

 

「あ、あはは……。……すみません、ちょっと寝付けなくて……」

 

 

「……まぁ無理に寝ろとは言わないが……、……眠くなったらすぐに休めよ?」

 

 

「わ、分かりました。……代理人も、お気をつけて」

 

 

「……あぁ、ありがとうな」

 

 

 

(ビリッ)

 

 

 

視線を前方に戻したローランは、隊長と同じように1枚ページを破り取った。

 

 

 

「……どうやら、E.G.Oの複数使用は可能みたいだな」

 

 

 





特殊能力(幻想体ページ)は装着したE.G.Oのページのみ利用することが可能。
使用時にはE.G.O装着以上の精神的な負荷を受けることとなる。

使用者の精神力が続く限り、E.G.Oは装備として利用することができ、
E.G.Oページ使用時は、E.G.O装着時や特殊能力(幻想体ページ)使用時よりも、


多大な精神的な負荷を受けることとなる。



と言った解釈で進めさせていただきます!

……要約すると、装着したE.G.Oの幻想体ページのみ使用可能な代わりに、
エモーションが必要ないといったイメージです。



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