誤字報告、及び評価、感想ありがとうございます
※今回の話はオリジナル設定を多量に含みます……が、今更ですよね!
「借りるぞ、マルクト」
破り取られたページが光り輝き、ローランの姿を変化させていく。
緑色の枝が絡みついた、くすんだ赤色のゴシックドレス。
普段装備するような武器とはかけ離れた、特大のリンゴを右手に装備したローランは、
目の前の地面へと、緑色の枝を伸ばし始めた。
「おー! 代理人、ドレス似合うっすね!」
「……マジか……似合ってるのか……」
「私は良いと思うっすよ! ……それじゃあ、行ってくるっす!」
「……あぁ。……隊長、地面の枝を踏むなよ」
「およ? ……了解っす!」
ローランの忠告を聞き入れた隊長は、地面に張り巡らされた緑色の枝を避ける様に走り……
――前方から迫ってくる30人程度の不良生徒へと襲い掛かるのであった。
★★★★★
"……これが、トリニティの夜なんだ……"
試作型アテナちゃん4号のカメラを通して、ローランの様子を確認していた先生とヒフミ。
「噂では聞いてましたが、ここまで荒れてしまうんですね……」
"……やっぱり、ストレスとか溜まっちゃうのかな"
「と言いますか、代理人のあの姿は一体……。……それに……隊長って、もしかしてシスターフッドの……」
"ヒフミちゃんの知ってる子?"
「あ、いえ、直接面識がある訳じゃないのですが……。……先ほどハナコちゃんが、1年生の段階で3年生の秀才クラスですら難しいとされる問題で100点を出したって言いましたよね」
"……? うん、言ってたね"
「……それと同じことをした方が、シスターフッドアーティストチーム……通称Aチームの隊長と呼ばれる方です。
……あの人は、1年生の段階で卒業単位まで取得しており、普段はシスターフッドの活動拠点である大聖堂で絵を描いている……らしいです。あくまで噂ですけど……」
"そんなに凄い子だったんだ……"
「次期ティーパーティーの候補にも選ばれていたみたいなのですが、本人直々に断られたとナギサ様が仰ってまして……」
"……"
★★★★★
(ダダダダッ!!!)(ダダダダッ!!!)(ダダダダッ!!!)
「……ッ……数が多い!」
「隊長、無理はするなよ」
「……了解っす!」
(ダダダダッ!!!)(ダダダダッ!!!)(ダダダダッ!!!)
前方からばら撒かれる銃弾の嵐。
躱し、斬裂き、高速で接近していた隊長だったが……
「……いや、避けない方がいいのか? ……代理人!」
――距離を取って欲しいっす!
「……分かった」
隊長の言葉を聞いてか、地面へと枝を張り巡らしていたローランは、咄嗟に後方へと距離を取った。
「……ありがとうございます! ……それじゃあ、試してみようか!」
ローランが離れたことを確認した隊長は、自身の持っていた二振りの剣を地面へと突き刺す。
「"全ての息あるものと共に、土へ還ろう"」
隊長の詠唱に共鳴したのか、地面へと突き刺した剣から花弁が吹き荒れる。
姿を覆い隠すほどの花吹雪が晴れると、その場所には……
――3枚の花弁を背中から生やした隊長が立っていた
(ダダダダッ!!!)(ダダダダッ!!!)(ダダダダッ!!!)
銃弾の雨に晒されながらも、一切避けようとしない隊長。身体中に多数の銃痕が刻まれ、大量の血を流す……
……そう、思われた。
「全然痛くないどころか、撃たれるたびに傷が癒えていくのは変な感じっすね」
銃痕が刻まれる度に、血液の代わりに花弁が体内から飛び散り、
――周囲の敵を斬り刻んでいく
「……体勢が崩れた。……代理人!」
「了解。……良くやった、隊長」
銃弾を撃ち込むたびに襲ってくるピンク色の花弁に翻弄され、
その隙を逃すほど、二人は甘くなかった。
(ザシュッ)(ザシュッ)(ザシュッ)
計30人の不良生徒達の手足を貫き、磔にする緑色の枝。
体勢を立て直そうと、飛び散る花弁を必死に狙っていた不良生徒達は……足元に張り巡らされた緑色の枝に気づけなかった。
「……よし。後は数時間放っておくか」
「うわぁ……。……いやぁ~、えぐいっすね代理人」
「そうか? ……これなら死ぬことはないだろうし、効率的に無力化できたと思うんだが……」
「そういうことじゃないっす……」
「……?」
「取り合えず、お疲れ様っした! ……それにしても、この追加効果っての滅茶滅茶便利っすね!」
「傷は大丈夫そうだが……気分はどうだ? 」
「これぐらいならまだ大丈夫っす! ……まぁ、傷が増えるたびに痛みが無くなっていく感覚は、気持ち悪かったっすけど」
「それならいいが……」
★★★★★
「なるほど……。……あれがシャーレの代理人ですか」
(コポコポコポ)
(カチャ)
蠟燭の灯りだけが揺らめくテラス。周囲を暗闇が包むテラスにて、優雅に紅茶を嗜む二人の少女が座っていた。
「……まさか、あれ程の戦闘技術を持っているとは」
紅茶を飲み、クッキーを食べ、双眼鏡を覗き込む。
「……まぁ、チャールズ事務所の隊長なら、この程度造作もないことでしょうね」
「……チャールズ事務所?」
「……失礼、忘れて下さい。……それにしても、彼までこの世界に来ていたとは」
「……もしかして、お知り合いでしたか?」
「えぇまぁ……古くからの友人です」
「……」
「……失礼、話が逸れましたね。……それで、依頼の内容をお聞きしても?」
「……シャーレの代理人について、素性を探って頂こうと思っていたのですが……、……貴方のお知り合いという事は、都市から来られた方という事ですよね」
「そうですね。私と同じく、彼も都市の出身ですよ。……もしかして、エデン条約締結前の不穏分子として疑ってましたか?」
「……はい」
「それなら安心して下さい。彼がエデン条約締結の障害になることは……」
――絶対に無いですから
「……どうしてそう言い切れるのですか?」
「……彼のことはよく知ってますから。シャーレの先生に味方してる限りは、裏切られることも無いでしょう。
……あの容姿の先生から、離れられる筈……無いですから……」
「……」
「……それにしても、まさかシャーレの先生があのような姿をしているとは……。……貴女から聞いた時は驚きましたよ」
「……? そんなにおかしな容姿だったでしょうか?」
「いえ、おかしいと言う訳では。……ただ、友人の姿と瓜二つだった。……それだけです」
「……そうなんですね」
「……あ、言い忘れていたのですが……。……ナギサさん、彼とは敵対しない方が良いですよ。
……あの様子を見るに、遺跡の遺物か特異点でも手に入れたのでしょうが……」
――私が全力を出したとしても、敵う相手では無いので
「……貴女でも、ですか」
「……私の事を評価して頂けるのは大変喜ばしいですが、些か過剰ですよ」
「ご謙遜を……。貴女の能力については、最初の依頼時に嫌という程見させて頂きましたから。……未だに信じられない、夢のような出来事ばかりですが」
「……すみません。私自身、他に伝えようがなかったので……」
「……違う世界で死んでしまい、気が付いたら子供の……生徒の肉体を得ていた。……何度聞いても不思議な話ですね」
「理由が分かるのであれば、私も知りたいです。……まぁ、都市には戻りたくないですが。
……この世界に来て、右も左も分からなかった私を……拾って頂いた恩は忘れません」
「……」
「……まぁ元大人としては、色々と言いたいこともありますが……、……感謝していますよ、ナギサ」
「……シロさん。私はそんな、恩を売ったつもりは……」
「……では、私が勝手に恩を感じておきます。……それはそれとして……」
「……?」
「……彼に少し、ご挨拶だけしてきますね。……私の存在を知れば、少なくとも敵対しようとは思わない筈ですから」
……そう言うと、シロと呼ばれた少女は、
――右手にヘイローの付いた巨大なレーザー砲を構え、テラスを飛び降りるのでった。
★★★★★
「……おや? ……代理人、もう一人こっちに向かって来てるっす!」
「まだ居たのか……」
「……あれ? あの人……。……噓でしょ……なんでトリニティの夜なんかに出歩いてるんすか……」
「……知り合いか?」
「み、見間違いでなければ……。あの人は、フィリウス分派の……」
「夜遅く……いえ、朝早くに失礼します」
「……ど、どうもっす。……シロさん」
「……初めましてだな。俺はシャーレの……」
「いえ、初めましてではないですよ。……お久しぶりですね、ローラン」
「……は?」
なんで俺の名前を知ってるんだ……? ……まさか、イオリの時と同じ……
「お前も都市の…………いや待て、その武器はまさか……」
「……思い出していただけましたか?
最後にお会いしたのは確か、アンジェリカに結婚祝いとして遺物をプレゼントした時……だったでしょうか?」
「……そんな事もあったな。……お前が持ち込んだ遺物のせいで、家が半壊しかけたんだぞ……」
「……? 使い方は説明したはずですが……」
「代理人! 何の話をしてるっすか? 私にも分かるように説明してほしいっす!」
「あー、えっとだな……。……まぁ、昔からの友人だ。なんでそんな姿をしてるのかは知らんが……」
「……それは私も知りたいんですよね。……依頼を受けてL社を襲撃した結果、気が付けばこの場所に居ましたので」
「……え、L社を……襲撃……?」
「……お前もL社を襲撃したのか。……赤の便利屋も同じことを言っていたぞ」
「それはまぁ、彼の後始末として私が派遣されたので……。……というか、彼もこの世界に来ていたのですね」
「……あぁ。……まぁ、少し前に殺したが」
「そうですか……」
「……もしかして、知り合いだったか?」
「いえ、別に? 私も、彼を見つけたら殺していたでしょうから」
「そうか……。……取り合えず、お前が無事でよかったよ」
「……一度死んでいるので、無事とは言えないと思いますが……。……でもまぁ、この世界に来れたのは嬉しい限りですね。
……都市に比べたら、まるで楽園ですね此処は」
「……本当にな。……でもまぁ、お前と会えて嬉しいよ」
――白の便利屋
「えぇ、私も嬉しいですよ」
フィリウス分派所属1年、桐藤シロ
固有名称は存在しますが、
基本的には白の便利屋(シロ)と呼称します。
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