黒い沈黙の行先   作:シロネム

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~遍在~ 白の便利屋

 

 

白の便利屋から事情を聞いたローランと隊長。

 

 

死後、生徒の肉体でこの世界に生まれ落ちた事、

 

桐藤ナギサに拾われたこと、

 

今はフィリウス分派所属の一年生、桐藤ナギサの妹として生活している事など、

 

 

 

……キヴォトスに来てからの事情を聞いていた。

 

 

 

「し、死んだ後に、生まれ変わった……? ……り、理解が追い付かないっす」

 

「……いや、ほんと滅茶苦茶だな……。……そういえば、その武器はどうしたんだ? この世界で用意できるとも思えないんだが……」

 

「あ、これですか? これは都市から送りました。私の本体でもありますので

 

「……は? ……言ってる意味が分からないんだが」

 

「……? 前に説明しませんでしたか?」

 

「……? いや、されていないが……。その武器がお前の本体って言うのは、どういう意味だ?」

 

「えっと、言葉通りの意味です。私の本体……というか、魂? ……まぁ、本体というのが分かりやすいと思いますが……」

 

 

 

――簡単に言いますと、私はこの遺物そのものなのです

 

 

 

数年前、とある遺跡の最深部で見つけた、この遺物。

 

……当時の私は年甲斐もなく、遺跡の最深部で見つけた貴重な遺物に魅かれたのですが……。

 

この遺物を手にした瞬間、私の精神……自意識がこの遺物に取り込まれたのです。

 

 

 

「な、なんか呪いの武器みたいな感じっすね」

 

「……言い得て妙ですね。……まぁ、貴重な遺物に間違いはないのですが……」

 

 

 

今ここにいる私は、あくまで入れ物です。

 

……そうですね。ローラン、貴方にも分かるように言うのであれば、R社のクローンのようなものと考えてください。

 

私の本体はこの遺物であり、生まれ落ちた肉体に遺物を持たせることで自在に操ることができるのです。

 

 

 

――空っぽの人形、と言ったほうが分かりやすいですかね?

 

 

 

「ローラン。貴方やアンジェリカと知り合った私は……何百体目の私だったかは忘れましたが、無限に等しい程存在する私のうちの一体、なのですよ」

 

 

 

遺跡を探索する私

 

L社を襲撃する私

 

外郭を放浪する私

 

翼に所属する私

 

フィクサーとして活動する私

 

 

 

――そして、キヴォトスに訪れた私

 

 

 

 

 

 

白の便利屋は遍在する

 

 

 

 

 

 

「……こんな噂を、都市で聞いたことがありませんか?」

 

「……ある。……俺がまだフィクサーとして活動していた頃、チャールズからそんな噂を聞いたよ」

 

「……まぁそうは言っても、同時に操れるのは一人だけなのですが。

 

……この遺物は空間や時間を問わず移す事ができるので、そのような噂が広まってしまったようでして……」

 

「……だからか。アンジェリカが9区でお前を見たと言った数分後に、23区で精肉店を吹き飛ばす白の便利屋が居たって聞いた時には耳を疑ったが……そう言う理屈だったのか」

 

「……あれは加工される寸前だったので……。……と言うか、あまり驚いていませんね」

 

「……まぁ、イオリみたいな例外も存在するしな」

 

「……ちなみに、アンジェリカは私の本体について知っていましたよ」

 

「……仲が良いとは思っていたが、アンジェリカは知っていたのか……」

 

「てっきり貴方にも伝えていたと思っていたのですが……。

 

……ローラン、貴方がピアニストを殲滅した事や、……その後についても、ある程度把握しています」

 

「……そうか」

 

「……正式ではないとは言え、貴方に黒を継いで貰えて、あの子も幸せだと思いますよ」

 

「……だと良いんだがな」

 

「私はてっきり、裏路地の何処かで殺されていると思っていましたが……」

 

 

 

――また会えて良かったです。

 

 

 

「……俺もだよ」

 

「……? ……?? ……???」

 

「……っと、悪いな隊長。……あー、どこから説明すれば良いんだこれ……」

 

「貴方が連れているってことは、都市についても把握しているんですよね?

 

……あ、すみません。先輩でしたね……」

 

「い、いえ大丈夫っす! 都市については、少しだけしか知りませんが……」

 

「白の便利屋。……この世界に翼が存在するのは知っているか?」

 

 

……

 

 

「……はい? ……すみません、まだ聴覚の同調にズレがあるみたいで……。

 

……もう一度言っていただけますか?」

 

「……お前の耳は間違いなく正常だよ。……キヴォトスに翼が侵略してきてるんだ」

 

 

 

――それも、数年前からな

 

 

 

「…………( ゚д゚)」

 

 

 

認識の上書き

 

 

翼の浸食

 

 

キヴォトス外から来た白の便利屋なら、把握していると思っていたローランだったが……、

 

 

この世界に来てからトリニティ自治区以外に行ったことのない白の便利屋が、そんな情報を知る由もなかった……。

 

 

 

「つ、翼が……この楽園に? ナギサさんからはそんな話、一度も……」

 

「……恐らく認識が書き換えられているからだろうな。……あくまで支社だが、少なくともT社の存在は確認している」

 

 

……

 

 

「 ……ローラン、今すぐにでも滅ぼしに行きましょう。……あのような腐った企業が、この楽園にも存在するという事実だけで気が狂いそうです」

 

「待て待て待て! 翼を落としたい気持ちは分かるが、流石に俺とお前だけじゃ無理だ」

 

「……」

 

「……それに、T社ならもう落とした。……この世界の生徒と、都市の奴らの力を借りてな」

 

「おや、もう落としていたのですか。流石は黒い沈黙ですね。……工房武器は翼にも通用しましたか」

 

「……翼を……落とす……? ……あの、代理人。……旧L社は」

 

「L社? L社もこの楽園に来ているのですか?」

 

「……あー、一旦落ち着け。……全部説明するから!」

 

 

 

エリュシオンという、翼に対抗するための作られた組織。L社を買い取った連邦生徒会長。その管理を引き継いだシスターフッド。

 

知りえたばかりの情報も含め、翼に関する情報を全て共有したローラン。

 

 

 

「俺が知っているのはこんな所だ。……ちなみにだが、ピアニストを殺した後、俺はL社の後身組織である図書館に行ってたよ」

 

「……なるほど。……うん? ……都市の星に認定されていた図書館とは、L社の後身だったのですか?」

 

「あぁ。……俺は今、そこで働いているんだが……」

 

「……ローラン。……貴方もついに、羽に堕ちましたか」

 

「……それ、都市で言ったら殺されるぞお前。……というか、お前も翼で働いてたって言ってたよな?」

 

「それはあくまで前の私であって、今の私じゃないですから」

 

「……それはズルくないか?」

 

「……ごほん。……そんな事はどうでもいいのです。……それで、この世界に来たL社の後釜がシスターフッドですか……。

 

……ナギサさんが把握していないのをみるに、ティーパーティーは翼について把握していないのですね……」

 

「セイアだけは把握しているけどな。あいつはエリュシオンのメンバーらしいから」

 

「……そうだったんっすか!? 初耳なんすけど!? ……というか、代理人ってローランって名前だったんっすか!」

 

「……」

 

「……ローラン。

 

……もしかして、言わないほうが良かったですか? 貴方が行動を共にしているから、信頼できる相手なのかと思っていましたが……」

 

「……いや、信頼はしている。……しているが、翼や残響楽団がこの世界に来ている以上、情報はできるだけ隠匿したくてだな……」

 

「……はぁ。……残響楽団も来ているのですか」

 

「……お前もあいつ等について知っていたか」

 

「……えぇ、まぁ。あのシスコンに勧誘されましたので。……勿論断りましたが、断った瞬間殺されたんですよね……」

 

「……マジか。……うん? ……ということは、この世界に来てからも、都市に本体を飛ばしてるってことか?」

 

「察しが良いですね。……私の肉体は、私の意志と関係なく世界のどこかに生み落とされるので……

 

 

 

――確認も兼ねて、一度本体を飛ばすんですよ

 

 

 

「……そうだったのか。……この世界を知ってから、よく都市に戻ろうと思えたな」

 

「戻りたくないですよ??? ……戻りたくないですけど、この世界で私が死んだ時、次に飛ばされる肉体の確認をしておかないと、不安で仕方ないんです……」

 

「……死んだら、次の肉体に飛ばされるのか」

 

「ストック……と言いますか、予備の肉体は何体か保管しているのですが、……私の知らないところで、私の身体を弄られるのも困るので」

 

「……場合によっては最悪な場所に生まれることもあるのか」

 

「……ご想像通り……一番酷かったのは、調律者の前に生み落とされた時ですね。

 

……認識した瞬間、自害することで事なきを得ましたが、……今でも思い出すだけで吐きそうです」

 

「……想像するだけで地獄だな。……良く解剖されなかったというか、あいつ等ならお前の事情も把握していそうだが……」

 

「……恐らく、把握されているでしょうね……」

 

 

「「……はぁ」」

 

 

「残響楽団? 調律者? ふ、二人が何を言ってるのかサッパリっす!

 

……というか、これ私が聞いて良い内容なんすか? セイア様のこととか、知らなかったんですけど……」

 

「……大丈夫だろ。……多分」

 

「多分!? ちょ、代理人! サクラコ様に怒られたらどうするんすか!? 事情を知ったから退学! とかなったら嫌なんですけど!」

 

「……それなら大丈夫ですよ。ナギサさんには、シスターフッドの子を退学にしないよう伝えておきますので」

 

「……まぁ、都市について把握している貴重な人材だからな。シャーレとしても、お前のことは守ってやる」

 

「……うぐっ、……知れて良かったというか、知りたくなかったというか……」

 

 

 

(ピピッ ピッ ピピピッ)

 

 

 

「……そう言えば、先生とヒフミも聞いてるんだったな」

 

「ヒフミさん? それって、ナギサさんの言ってた2年生の子ですか」

 

「た、助かった。共犯者……じゃなかった、……情報の被害者は私だけじゃないんすね!」

 

 

"……それ、私が聞いても良い話だったのかなぁ? ……あ、ヒフミちゃんはもう寝ちゃってるから、安心して"

 

 

「助かってなかったっす!」

 

「シャーレの先生、ですね。……初めまして、トリニティ総合学園所属の桐藤シロです。……あなたの噂については、ナギサさんから伺っておりますよ」

 

 

"よろしくね。……わ、悪い噂じゃないと良いんだけど……"

 

 

「私が聞いているのは良い噂ですので、大丈夫ですよ。補習授業部の方々に、手を貸してくださっている……とか」

 

 

 

(ピピピッ!)(ピピピッ!)(ピピピッ!)

 

 

 

昨日と同じように鳴り響くアラーム音。

 

 

 

「トリニティの夜もこれで終わりっすね!」

 

「……それじゃあ、解除するか」

 

 

 

辺りに漂う血の香り。磔にされた30人の不良生徒。彼女達を貫いていた緑色の枝を解除したローランは、

 

……手袋から取り出したT社のロゴが刻まれた拳銃で、彼女たちを撃ち抜いた。

 

 

 

「……それは、T社の……」

 

「作ったのはミレニアムの生徒だけどな。……T社から依頼されたみたいだから、俺が買い取ったんだ」

 

「……対象の時間を進めて…………いや……戻しているのですか。……相変わらず異端な物を作りますね」

 

「……まぁ、都市の産物なんて、この世界を基準に考えたら異端でしかないだろうな」

 

「……あの、代理人。私も……」

 

「……今回は俺が付き合わせたしな。……ちゃんと巻き戻してやる」

 

「あざっす!」

 

 

 

(パンッ)

 

 

 

「……私はそろそろ、ナギサさんの元に戻らないといけませんので。

 

……ローラン、連絡先を交換してください。何かあったら貴方を頼りにしますので」

 

「……分かった。俺の方も、手が足りなくなったら頼らせてもらう」

 

「分かりました。……ローラン。……翼を襲撃する機会があれば、是非私を呼んでください」

 

 

 

……一人残らず塵に還しますので

 

 

 

「……あぁ。その時は頼りにさせてもらうよ」

 

「代理人! 私たちも呼んで貰えれば手を貸すっすよ! Aチーム全員、鍛えて頂いた恩がありますので!」

 

「……それだけが理由じゃないだろ?」

 

「……翼と戦えるとか最高っすね! めっちゃ楽しそうです!!」

 

「……はぁ」

 

「……げ、元気な方ですね。……先輩。

 

……トリニティにいる間は、あくまで桐藤ナギサの妹である桐藤シロとして接してください。

 

……翼があると分かった以上、都市の住人だと気づかれても面倒ですので」

 

「わ、分かったっす。……と言っても、私は基本大聖堂から出ないっすけどね。

 

L社の管理もあるので……」

 

「……そう、でしたね。……ナギサさんには、シスターフッドの子たちに融通を図るよう、それとなく伝えておきます」

 

「あざっす! あいつ等も喜ぶと思うっす!」

 

「……そうだな。成績が落ちた結果、補習授業部に来られても困るからな」

 

「い、いかないっすよ! ……まぁ、副隊長はちょっと頭がアレなんで、心配っすけど……」

 

「……まぁ、補習授業部があいつ等の代で終わるのを願ってるよ」

 

 

 

(パンッ)

 

 

 

最後の一人を巻き戻したローランは、白の便利屋と連絡先を交換した後、宿舎へと帰還するのであった。

 

 

 






以上! 当作品における、白の便利屋の設定でした!

……これで、赤と白の便利屋が登場しましたね。

……

……あと2色……




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