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――翌朝
校舎に戻り、先生の時間を巻き戻したローランは、先生と共に清掃したばかりのプールへと赴いていた。
「待ち合わせ場所はここでいいのか?」
"うん。多分もうすぐ……"
「やっほー☆ いやぁ、二人とも早いねー!」
「……聖園か」
"おはよう~ミカちゃん"
「もしかして、待たせちゃったみたい? ごめんね~二人とも~」
「いや、今来たばかりだから気にしなくていいぞ」
"うんうん。……ところで、ここに呼び出した要件を聞いてもいいかな?"
「……えへへ。……二人は上手くやってるかな、って思って」
"……それだけ?"
「いやいや、大事なことだよ? 合宿の方はどうかな~って。食事とか大丈夫? あ、これ差し入れのロールケーキ! ナギちゃんから貰ってきたんだぁ」
「ん、あぁ。ありがとうな、聖園」
"……"
「……あはっ、そんなに警戒しないでよ~。私、こう見えても繊細で傷つきやすいんだよ?」
「……」
「……あ、ちなみに私がここにいることについて、ナギちゃんは知らないから安心して! そのロールケーキも、勝手に貰ってきただけだから~」
「いや、それはそれで大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫! 少しぐらい無くなっても気づかないよ~。
…………さて、前置きはこれぐらいにして、本題に入ろっか」
「……」
「……二人とも、ナギちゃんから取引とか提案されなかった?」
"取引?"
「例えば、そうだなぁ……」
――トリニティの裏切り者を探してほしい、とか
"…………"
「……あぁ、されたぞ」
ミカから告げられる補習授業部の情報。なぜあの4人が補習授業部に参加しているのか、その理由や目的。
連邦捜査部シャーレとしての立場の再確認
一体誰の味方で、誰の敵なのか……。
……そして、
「ねぇ、先生、代理人。ナギちゃんとは別に、私も二人と取引をしたいんだけど……どうかな?」
「取引……?」
"……内容にもよるかな"
「……補習授業部の中にいる裏切り者が誰なのか、教えてあげる」
"……え?"
「……待て、お前は誰が裏切り者なのか知っているのか?」
「もちろん。ナギちゃんの言うトリニティの裏切り者、……今必死に探して退学にさせようとしているその相手」
「……」
「……実際のところ、もう少し複雑で大きい問題もあるんだけど……、今このまま、二人がナギちゃんに振り回される姿をただただ見てる……なんていうのは、ちょっと申し訳ないなって」
「……別に振り回されているつもりはないぞ? 俺たちは俺たちで、理由があるからな」
"そうだね。……生徒の成績が振るわないのは、先生として見過ごせないかなぁ"
「……そっか。……優しいんだね、二人は」
"ミカちゃん……"
「……まぁ、私の方も第3者であるシャーレの力が必要だから、この取引を受けてくれると嬉しいんだけど……」
「……先生の言った通り、受けるかどうかは内容次第だ」
「……おっけー。取り合えず、先に裏切り者が誰なのか教えてあげるね☆」
"……"
「補習授業部にいるトリニティの裏切り者、それは……」
――白洲アズサ
"アズサちゃんが……?"
「うん。知ってるかもしれないけどあの子、実はトリニティに最初からいたわけじゃないんだ」
「……そういえば、転校生だって言ってたな」
「そう、あの子は随分前にトリニティから分かれた、所謂分派……アリウス分校出身の生徒なの」
「アリウス分校……」
「うーん、生徒って呼んで良いのかは分からないんだけどね。……何かを学ぶということがない生徒のことを、生徒って呼べるのかな?」
"……ミカちゃんは、それを私達に伝えてどうするの? 取引って言うなら、先に情報を出す意味ないよね……?"
「……ふふっ。……二人を相手にあれこれ誤魔化しても仕方なさそうだし……うん、端的に言おっか」
――あの子を、守ってほしいの
★★★★★
――トリニティの夜
外出しないよう言いつけられていた補習授業部だったが、……その約束を破った生徒がいた。
「遅かったな」
「……」
「首尾は?」
「……今のところ、計画通り。サオリの方は……」
「……私の方も問題ない。……ヒヨリは何度か壊れかけたが、……鮫の食事もあってか、今は落ち着いている」
「そうか……。サオリ、あの
「……今は訓練場だ。計画の成功例は、お前を最後に産まれていない」
「……」
「……時間だ。お前は校舎に戻れ。…………アズサ、忘れるな」
――鴉はいつも、お前を見ている
「……変な気は起こすなよ」
「……分かった」
★★★★★
「……守って欲しい?」
「うーん、私ってあんまり頭が良い訳じゃないから説明するのが難しいんだけど……」
"ミカちゃん、お願い。……今のままじゃ、よくわからないよ"
「そ、そうだよね! ……えっと、それじゃあ長くなると思うけど……説明するね?」
そうして、ミカから告げられるトリニティ総合学園の歴史。
パテル、フィリウス、サンクトゥス
この三つの分派が中心となって統治することになったトリニティ総合学園。
その発端となった、第1回公会議
"第1回公会議……? それって、この間ナギサちゃんが言ってた……"
「私たちはもう戦わなくて良い、一つの学園になろう。……そんな話をしたのが、第1回公会議だよ」
今でも分派だった頃の余波が無いと言えば嘘だけど……、今はもうそんなの全然気にしてないって子の方が多いかな。
……でもね、その会議は、円満に話し合いが終わったわけじゃなくて……最後まで反対していた学園があったの。
「……それが、アリウス分校か?」
「……うん。元々は私たちとあんまり変わらなかったはずの、一つの分派」
経典に関するちょっとした解釈の違いがあったくらいで、色んな所が似てたんだけど……。
そのアリウスは連合を作ることに猛烈に反対して……最終的には、争いに繋がっちゃったの。
当時、絶対的な力を所有していたユスティナ聖徒会。
彼女たちを先導とし、恐るべき破壊の力でアリウスを徹底的に弾圧し始めた。
あまりにも大きな力を持ちすぎると、その強さを確認したがる……なんていうのはよくあるお話で。
つまるところ、アリウスは悲しいことにちょうど良いターゲットだったって言えるのかもしれない。
――そうして、アリウスは潰された
トリニティ自治区から追放されて、今は……詳細は分からないけど、キヴォトスのどこかに隠れているみたい。
……ほとんどの生徒は、そんな学園あったっけ? って感じなんだけど……それぐらい長い間表舞台に姿を現さず、影すらも薄くなってしまった存在。
――それが、アリウス分校だよ
"……アズサちゃんがその、アリウス分校の出身?"
「……うん。……それで、ナギちゃんが推進してるエデン条約、あれはさっき話してた第1回公会議の再現なの」
――エデン条約
大きな二つの学園が、これからは仲良くしようねって約束。
……何だか、良いお話に聞こえるよね? でも本当のところはどうだろ。
だってその核心は、ゲヘナとトリニティの武力を合わせたエデン条約機構、
通称、ETOと呼ばれる全く新しい武力集団を作ることなのに。
トリニティとゲヘナの戦力を合わせた、一つの巨大な武力集団。
そんな、圧倒的な力を持つ集団が誕生するの。……連邦生徒会長が行方不明っていう、こんな混迷の時期に。
――その大きな力を使って、ナギちゃんは果たして何をしようとしてるのかな?
「……具体的な目標は分からないけど、そんなに大きな力を手に入れたら……」
――きっと、自分が気に入らないものを排除する
「昔、トリニティがアリウスにしたみたいにね。……あるいは、セイアちゃんみたいに……」
"セイアちゃん……?"
「……あ、ごめんね。今のは失言だったかな」
"ねぇ、ミカちゃん。セイアちゃんは……"
「先生。……分かってるよな?」
"……大丈夫。……ミカちゃん。……セイアちゃんは、今どこにいるの?"
「うーん……。……まぁ、シャーレの二人は信用しても良いかな」
「……」
「……セイアちゃんは入院中なんかじゃない」
――ヘイローを、壊されたの
"……代理人"
「……あぁ」
「先生……?」
"……ごほん。……ヘイローを壊されたって言うのは……"
「……セイアちゃんは、何者かの手によって襲撃されて……対外的には入院中ってことになってるけど……」
「聖園……」
「私たちティーパーティーしか知らない、秘匿事項。……もしかしたら、シスターフッドとかは把握しているのかもしれないけど……」
"……。……その犯人は、まだ……?"
「……うん、分かってない。捜査中っていうか、何もわかってないっていうか……もともとセイアちゃんは、秘密の多い子だったこともあってね」
「……」
「それで、話を戻すんだけど……。……白洲アズサ。あの子をこの学園に転校させたのは、私なの」
「……は?」
"ミカちゃんが……?"
「うん、ナギちゃんには内緒でね。生徒名簿とかそういう書類を全部捏造して、あの子を入学させた」
「……理由は?」
「……そんな大層な理由があるわけじゃないよ。私はただ……」
――アリウス分校と、和解したかったの
「私はあの子、……白洲アズサという存在に、和解の象徴になってほしかった」
アズサちゃんがトリニティでもちゃんと暮らしていけて、幸せになれるんだって……みんなに証明したかった。
そうすれば、アリウスと和解できるんじゃないかって。
……でも、そんな中でナギちゃんがトリニティに裏切り者がいるって言い始めて……。
「……つまり、アズサが退学にならないよう働きかけて欲しいってことか?」
「端的に言っちゃえば、そうだね。ナギちゃんの言う裏切り者……それは経歴を偽って入学したあの子。
……まぁそういう意味では、ナギちゃんにとっての裏切り者は、私でもあるんだけどね」
"……"
「……私が言いたいのはそれだけ。もちろん、最終的には二人が決めて。
白洲アズサを守るのか、裏切り者を見つけるのか……ナギちゃんを信じるのか。……それとも、私を信じるのか」
"……ミカちゃんは、それだけで大丈夫?
「……え、私? ……あはっ、本当に優しいね。うーん、何だか勘違いしちゃいそう!」
「……ティーパーティーって立場も考えると、お前が一番苦労してそうだけどな」
「私は大丈夫だよ! こう見えても私、結構強いんだから♪」
「……そうか」
……後で先生と話さないとな。様子を見るに、恐らくミカはセイアのことを把握してないんだろう……。
「じゃあ、今日はこんなところかな。二人とこうしてお話しできて、楽しかったよ」
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