黒い沈黙の行先   作:シロネム

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~密会~ 浦和ハナコ

 

――深夜

 

 

皆が寝静まった頃、ヒフミから相談があると言われた先生は、……割り当てられた部屋で待機しつつ、昨晩と同じように試作型アテナちゃん4号を飛ばしていた。

 

 

 

(コンッコンッコンッ)

 

 

 

"どうぞ~"

 

 

「こんばんは、先生」

 

"え……。……!? は、ハナコちゃん!? "

 

「ふふっ、こんなに簡単に入れちゃうなんて不用心ですねぇ」

 

"ど、どうしてハナコちゃんがここに……!? ……というか、なんで水着?"

 

「あぁ、これについてはお気になさらず。パジャマなので」

 

"えぇ……?"

 

「うふふっ。……それより先生、ちょっと相談したいことがありまして……」

 

"そ、相談したいこと?

 

「はい。……アズサちゃんのことなのですが」

 

"アズサちゃん……?"

 

 

 

(ガチャッ)

 

 

「し、失礼します……先生、いらっしゃいますか……?」

 

 

 

約束をしていたということもあってか、様子を確認せず、扉を開けたヒフミだったが……、

 

 

 

「昨日より遅い時間になってしまってごめんなさい、実は……」

 

「あら、ヒフミちゃん?」

 

"……いらっしゃい、ヒフミちゃん"

 

 

 

……水着姿のハナコが先生に迫っているという予想外の光景に、言葉を失ってしまった。

 

 

 

「……本当に失礼しましたぁ!? ご、ごめんなさい! 私、二人がそんな関係とか全然知らなかったんです本当です!? え、一体いつから!? というか、先生はそういう趣味だったのですか!?」

 

"違う違う違う! まって、ほんとに違うから!?"

 

「……ヒフミちゃん、昨日より遅い時間って言いました? 言いましたよね!? つまり昨晩も来たということですよね!? そうなんですよね!?」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!? また後で、はダメですよね!? どうすれば良いですか、今晩はやめた方が良いですか!? というか、空気壊してごめんなさいっ……!?」

 

「待ってくださいヒフミちゃん、詳しく教えてください! 昨晩はお二人で何をしていたんですか、今晩は何をする予定だったのですか!? ぜひ説明を、いえ、いっそ今から私の前で実際に再現を……」

 

"お、お願いだから二人とも落ち着いて……!"

 

 

 

★★★★★

 

 

 

その後、ジャージ姿に着替えて来たハナコは、先生とヒフミから昨夜の事情を聞くのであった。

 

 

 

「……なるほど。先生と一緒に、これからについてのご相談を……」

 

「は、ハナコちゃんも先生に相談したいことがあって来られたのですか……? ……って、どうして水着で来るんですか!? パジャマが水着ってどういうことですか……!?」

 

「心が落ち着くんですよね。ですので私は、礼拝堂での授業にも水着で参加しましたよ?」

 

「あうぅ……」

 

"そ、それはどうかと思うけど……、……ハナコちゃん、さっきの話は今じゃない方が良い?"

 

「……アズサちゃんの件ですよね」

 

「……」

 

「……いえ、大丈夫です。ヒフミちゃんも一緒に聞いていただければと思います。……実は」

 

"あ、ちょっと待ってね"

 

「……先生?」

 

"……折角なら、代理人にも聞いてもらおうか"

 

 

 

(ピピッ ピッ ピピピッ)

 

 

 

「先生、その機械は……」

 

「えっと、試作型アテナちゃん4号、でしたっけ?」

 

"さっき飛ばしてたんだよね"

 

 

 

(ピピッ ピッ ピピピッ)

 

 

 

試作型アテナちゃん4号。その内の1体が飛び上がると、機体の前にホログラムが展開された。

 

 

 

"これで向こうの機体が撮影してる情報を、リアルタイムで見ることができるんだ。……代理人、聞こえる?"

 

 

 

「……あぁ。……聞こえるし、そっちの様子も見えてるぞ」

 

 

 

ホログラムに映し出された、宿舎前の光景。そこには、煙草を加えたローランと、一冊の本を捲るAチーム隊長の姿があった。

 

 

 

"おー、それなら良かった"

 

「本当に便利だな、これ」

 

"これでも試作型らしいけどね"

 

「んー? おー、凄いっすねこれ! 通話だけじゃなかったんすね!」

 

"あ、隊長。こんばんは、今日も居るんだね?"

 

「こんばんはっす先生! 勿論、今日も身体を動かしに来ました! ……ところで、そちらにいるお二人は」

 

「あ、あはは……。……こんばんは、代理人。……えっと、隊長ってもしかしてアーティストチームの……?」

 

「お、よく知ってたっすね! 私がAチームの隊長です」

 

「あ、えっと、1年の阿慈谷ヒフミです」

 

「……お久しぶりですね、隊長さん」

 

「んー? ……あー、ハナコさんっすか! お久しぶりっすね」

 

「知り合いだったのか?」

 

「えっと……アレに関する話なんですけど……言っても良いっすかね?」

 

「……あぁ、この二人なら翼について話しても大丈夫だ。……まぁ、その言い方的に、ハナコはL社の事を把握しているのか」

 

「……そう言う事っす。まぁ、内部までは知らないはずっすけど、……サクラコ様がシスターフッドに勧誘してたんで、知識としては知っているかと」

 

「え、ハナコちゃんをシスターフッドに?」

 

「そうっすよ? それで、その時に偶々知り合ったって感じっすね!」

 

「……」

 

「……まぁ、この話はまたの機会にするか。この時間に先生の部屋にいるってことは、何かしらの用があるんだろ?」

 

"ハナコちゃんから相談があるみたいでね、……折角なら代理人にも聞いてもらおうと思ったんだ"

 

「……実は、アズサちゃんについてなのですが」

 

 

 

ハナコの口から語られる、白洲アズサの不可解な行動。……毎晩、裏口からどこかへ出かけては夜明けまで戻って来なく、……それどころか、夜しっかりと眠っているところをほとんど見たことがないらしい。

 

 

 

「……トリニティの夜に乗じて何処かに出かけていたのか」

 

「……どんな事情なのかは分かりませんが、このままですといつか倒れてしまいます」

 

「アズサちゃん……」

 

"……そうだね。明日、アズサちゃんには私たちの方から事情を聞いてみるよ"

 

「そうだな。……そのせいで試験結果が悪くなられても困るしな」

 

「……と言いますか、皆さんもしっかり寝ないとダメですよ? 確かに試験も大切ですが、ただ落第というだけです。体の健康と比べられるようなものではないと思いませんか?」

 

"それは……"

 

「……普通だったら、そうかもしれません。でも……」

 

「ヒフミちゃん……?」

 

「……ハナコ。今回の試験は落第で済む話じゃない」

 

「……? ……それって、一体どう言う……」

 

「あと2回、……どちらの試験も不合格だったら……」

 

 

 

――退学なんです! 私たちは、トリニティを去らないといけないんです……!!

 

 

 

「……マジっすか? 代理人」

 

「……あぁ、マジだよ」

 

「退学……? そ、そんなこと、校則的に成り立ちません。退学は色々な手続きと理由が必要で、そんな簡単には……」

 

"……違うんだ、ハナコちゃん"

 

「……先生?」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

ナギサから聞かされた、補習授業部の真実。先生の口から語られる、エデン条約締結前のゴミ掃除。

 

トリニティの何処かに存在する、裏切り者。……その疑いのある生徒を集めて作られた部活動。

 

シャーレの権限を組み込んで作られた、強制的な退学処置。

 

 

 

"……それが、補習授業部だよ"

 

「……」

 

「……」

 

「そんなことになってたんすか……」

 

「……なるほど、そうだったのですね。全て不合格であれば、全員退学……。この仕組み自体そもそもおかしいですが……なるほど、シャーレの超法規的権限が……」

 

「ハナコちゃん……。……あ、そ、そういえばハナコちゃん、本当は成績良いんですよね? 1年生の時に、3年生の難しい試験まで全部満点でしたよね……!?」

 

「……」

 

「そういえばそうでしたね! 私と同じことをしたってサクラコ様も言ってたっす!」

 

「……いや、凄いな。ハナコもだが、お前もそんなに成績良かったのか」

 

「んー、私の場合はちょっと違うと言いますか……」

 

 

 

――目にしたモノを、風景として記憶することができるんすよ

 

 

 

「……瞬間記憶みたいな感じって言えば伝わるっすかね?」

 

"す、凄いね隊長ちゃん。……もしかして、ハナコちゃんも?"

 

「……いえ、私は……」

 

「……あの、ごめんなさい。……模試のために昔のテスト用紙を探す途中に、見つけてしまって……」

 

「……」

 

「……ど、どうして今は、あんな点数を……? わざと、ですよね……?」

 

 

……

 

 

「……ごめんなさい、知らなかったんです。失敗したら、まさか全員が退学だなんて……」

 

「……」

 

「……いえ、知らなかったからと言って、許されるものではありませんね。……シャーレのお二人にも、ヒフミちゃんにも……アズサちゃんとコハルちゃんにも、申し訳ないことをしました」

 

 

 

――ごめんなさい

 

 

 

「い、いえ、その……」

 

「……ヒフミちゃんの言った通り、私のあの点数はわざとです」

 

「や、やっぱり……!?」

 

"……理由を聞かせてもらえるかな?"

 

「……ごめんなさい、先生。……理由は、言えません」

 

「……!?」

 

"……そっか"

 

「私の、すごく個人的な理由なので……ですが、それで皆さんが被害を受けてしまうのは望むところではありません。……ですので、明日からは最低限……皆さんが退学にはならないよう、今後の試験は頑張りますので」

 

"……ありがとうね、ハナコちゃん"

 

「い、いえ……!? 先生にそこまで、感謝していただくようなことでは……。むしろ、私が謝罪するべきことです。……裸で手をつくだけで足りますでしょうか……?」

 

「いえそれは逆にやめていただけますと……!? ……今後頑張ってくださると聞けただけで、私は安心しました」

 

"そうだね、その言葉が聞けただけで充分かな"

 

「……あぁ、そうだな。……残る問題は、あの二人か」

 

「あ、あはは……。い、一応、二人とも点数を取れるようになってきてますから」

 

"それに、裏切り者の問題もあるしね……"

 

「そういえば、そんなことを仰ってましたね。……トリニティの裏切り者。私とアズサちゃんは分かりますが、コハルちゃんは……」

 

「……恐らくだが、正義実現委員会への牽制じゃないか? 戦闘能力も優れてるみたいだし、好き勝手動かれたくないんだろうな」

 

「あー、確かにあの人たちの動きはすごかったすね。……正直、うちのチームに欲しいぐらいっすよ」

 

「……なるほど牽制……、人質ということですか。……あら、そう考えると、ヒフミちゃんはどうして容疑者になっているんです? ナギサさんと親しかったはずでは?」

 

「えっ!? わ、私もやっぱり容疑者なんですか……!? た、確かに親しくさせていただいていたような感じですが……ど、どうして私なのでしょう……?」

 

"……"

 

「……ヒフミ。……お前、俺たちと初めて会った場所を忘れたのか?」

 

「場所……? ……!」

 

"ブラックマーケットに、出入りしてたもんね……"

 

「そ、それは……確かにそうですが……、し、仕方ないじゃないですか……。……だって、コラボグッズのペロロ様が、ブラックマーケットでしか手に入らなかったんですよ!?」

 

「ひ、ヒフミちゃん……?」

 

「え、そんな理由でブラックマーケットに行ってたんすか?」

 

「そんな理由……!? それ以上の理由なんてありますか!?!?」

 

「……ひぇ……な、ないっすね……」

 

「いやあるだろ。……まぁ、過ぎたことはしょうがないが、そのことが噂になってたみたいだぞ」

 

"そうだね。ナギサちゃんも、ヒフミちゃんがブラックマーケットに立ち入っていたという噂を耳にした……って言ってたもんね"

 

「そ、そんなぁ……」

 

 

 

……まぁ、その噂も何処から聞いたのか知らないが。

 

 

 

(ゴーンッ! ゴーンッ!)

 

 

 

「……っと、時間だな」

 

「そうっすね。……それじゃあ、今日も暴れるっすよ!」

 

 

 





試作型アテナちゃん4号便利ですね……。

そのままシャーレに置いといてほしいなぁ。



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