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――翌朝
トリニティの夜を終え、Aチームの隊長と別れたローランは、雨に濡れ重くなった髪に顔を顰めながら、宿舎へと戻るのであった。
「あうぅ……結構降ってますね……」
「そうですねぇ」
「……お前ら、まだ起きてたのか」
"あれを見た後だと、寝るに寝れないよ……"
図書館の力を使い、暴徒と化したトリニティの生徒を鎮圧したローランと隊長。
効率的で無駄のない……残酷な攻撃の数々によって作り上げらた血塗れの惨状を目にした3人は、脳裏に焼き付いた光景によって眠気を失っていた。
「……はぁ。……取り合えず、巻き戻してやる」
(パンッ)(パンッ)(パンッ)
手袋から黄金銃を取り出し、3人を撃ち抜いたローラン。
「あぅ……。す、凄いですね、それ」
「……もしかして、翼の技術ですか?」
「あぁ、そうだ。……ハナコは翼について何処まで知っているんだ?」
「私は……。……そうですね、翼という企業があることぐらいでしょうか」
"……じゃあ、組織については知らないんだね"
「組織?」
「翼に対抗しようとしている組織だ。……まぁ、知らないなら知らない方がいい。面倒ごとに巻き込まれるだけだからな」
「……」
「んぅ……」
「あら、おはようございますコハルちゃん」
「おはようございます。アズサちゃんは……まだちょっと起きられなさそうですね」
「それじゃあ先生。朝食でも買ってくるから、こいつらの面倒を頼む」
"分かった。大雨みたいだし、気を付けてね?"
「あぁ」
(ガチャ)
★★★★★
――1時間後
エンジェル24で朝食を調達して来たローラン。……雷が落ち、大雨が降る中、数日分の食事や嗜好品を購入したローランが宿舎に帰還すると、
「……教室か?」
部屋には誰もいなかった。
教室や食堂を覗いて見るも、そこに5人の姿はなく、……違和感を覚えつつも、気配を感じた体育館へと足を運ぶのであった。
「戻ったぞ。お前ら、なんで体育館にいる……」
「さぁでは記念すべき第1回、補習授業部の水着パーティーを始めます」
「……は?」
「あうぅ……」
「……」
「なんで、どうしてこんなことに……」
(ゴロゴロ、ドカーン!)
"い、色々とすごい状況だなぁ……。……あ、お帰り代理人"
「あ、あぁ……。……なんでお前ら水着に着替えてるんだ?」
「うふふっ、仕方ないじゃないですか」
「あ、あはは……。ま、まさか洗濯物が干しっぱなしだったとは、思いませんでした……」
「体操着はどうしたんだ?」
「それは……」
「洗濯物を取り込む際にびしょ濡れになった。勿論、予備の服もない」
「いや、あれだけの荷物を持ち込んでるなら、替えの着替えぐらい用意しておけただろ」
「無論、体温の確保に必要な下着や靴下は多めに用意してある」
"急いで洗濯しなおそうとしたんだけど、停電が起きちゃって……"
「……結果こうなったと?」
"……うん。……まぁ、仕方ないよね"
「そうですよ。こうとなっては、水着パーティーくらいしかすることはありません」
「あうぅ……な、何か他にもありそうな気はしますが……」
「……取り合えず、朝食を買ってきたから適当に食べてくれ」
そう言ってローランは、手袋の中からサンドイッチやおにぎりが詰められた袋を取り出した。
「……そういえば、代理人の服は濡れてませんね」
「ん、あぁ。俺の来てる服は防水加工が施してあるからな」
"そういえば、色んな機能が搭載されてるんだっけ?"
「あぁ、その機能のうちの一つだな。かなり値は張ったが、その分重宝してるよ」
――少女食事中
「それにしても、……こんな状態では、授業もやりにくいな。……この程度の落雷で全部の建物が機能不全だなんて、酷いセキュリティだ」
「ま、まぁ、古い建物ですし……」
「っていうか待って! 危うく流されそうになったけれど、水着パーティーって何なの! 卑猥!!」
"それは確かにそう。……水着パーティーってなに?
「授業もできないし着る服も無いところまでは同意だけど、だったらおとなしく部屋で休めばいいでしょ! 普通に考えて!」
「いや、というか……。……俺が巻き戻せば良いんじゃないか?」
「代理人。それはダメです。それじゃあ、折角の醍醐味が台無しじゃないですか」
「だ、醍醐味?」
「はい。みんなで寄り添って、お互いの深い部分を曝け出し合う……雨も降っている上に停電で何も見えませんし、雰囲気は最高です!」
"は、ハナコちゃん……?"
「うふふふ……。せっかくの休み時間なんですし、有意義に過ごしませんか?」
「まぁ、お前らがそれで良いなら構わないが……」
「あ、あはは……た、確かに合宿の定番という感じはしますね」
「なるほど、それがこの水着パーティーと」
「いやいやいや納得するか! 水着と掛け合わせる意味は!? ……ていうか、巻き戻すって何! よく分かんないけど、この状況をどうにかできるなら何とかしてよ!」
「そう言われてもだな……」
「あうぅ、確かに……」
「まぁまぁ、せっかくなんですし楽しむとしましょう。……とは言ってもただのおしゃべりですし、話題も何でもアリということで」
「話題か……」
「ふふっ、私こういうこと、すっごくしてみたかったんですよね。なので、ちょっとテンションが上がっていると言いますか……」
"ハナコちゃん、本当に楽しそうだね……"
「……気持ちは分かる。私も何なら、補習授業部に入って以来ずっとそういう気持ちだ」
「あら、そうなんですか?」
「……うん。……何かを学ぶということも、みんなでちゃんとしたご飯を食べることも、洗濯も掃除も、その一つ一つが楽しい」
「あら……」
「前の場所では知ることのできなかったモノ……。
……この場所は、眩しいな」
"アズサちゃん……"
「いや、前の場所はどれだけ酷かったんだ……?」
アリウス分校。……学校である以上、まともな生活を送れるような環境だと思うんだが……。
「アズサちゃん……最初はあまり表情の変化も読み取れなくて心配でしたが……良かったですっ」
「表情……? ……そうか。……私は今……笑えているのか」
「……」
「もしそうなら……ヒフミのおかげだろうな。……本当にいつも世話になってる、ありがとう」
「あ、アズサちゃんっ!! うわーん!!」
(ぎゅっ)
「ひ、ヒフミ、少し息苦しい」
"……代理人。……もしかして、アリウス分校は翼に……"
「……いや、まだそうと決まった訳じゃない。……ゼホンの例もあるから、翼と断定は出来ないが……」
"……"
「……恐らく、都市の連中に侵略されているだろうな」
"都市……。……また、悪い大人の仕業なのかな……"
「……先生。トリニティの件が片付いたら、アリウス分校について調べてみるか」
"……そうだね。……現状を調査してみようか"
「そういえば今トリニティのアクアリウムで、ゴールドマグロという希少なお魚が展示されているらしいですね」
「あ、私もそれパンフレットで見ました! 幻の魚と呼ばれているんですよね?」
「はい、どうやら近くの海で発見されたとか。見に行きたいのですが、入場料も安くないので……」
「海、か……そういえば一度も行ったことないな」
「そ、そうなんですか!? 一回も……!?」
「実習も兼ねて湖なら行ったことあるが……海は名前しか聞いたことがない」
「それで、とっくに潰れたアミューズメントパークなのにも関わらず、夜になると何やら騒がしい音が聞こえてきて……」
「そ、そんなわけないじゃん! 聞き間違えよ!」
「まぁ、私もそういう噂として聞いただけですが……」
「いやだっ! 絶対嘘! 全部誰かの悪ふざけ!」
「あ、あはは……」
「……気になるなら、そのアミューズメントパークに行ってみるか? ……まぁ、全部終わったらだが」
「行くわけないでしょ!!」
「水着で街や学園の中を歩くのは別に、そこまで変なことじゃないですよ?」
「そんなわけないでしょ!? 勝手に常識改変しないでっ!」
「ですが、これは私がシスターたちから聞いた話ですが……どうやらキヴォトスのどこかにある無法地帯では、水着姿で覆面を被っている犯罪集団があるらしいですよ?」
「み、水着に覆面……!? ド変態じゃん!? なにそれ!?」
"ふ、覆面水着団……"
「……言われてるぞ、リーダー」
「はい!? ち、違いますリーダーじゃないです、というか勝手にリーダーにしないでください!」
「……ヒフミ、どうかしたのか?」
「あ、いえ、な、何でもないです……あはは……」
「アズサちゃんはもっと、夜はきちんと眠った方が良いと思いますよ?」
「……うん。今朝は寝坊して迷惑をかけてしまった。……完全に意識を落とすことなんて、これまで無かったのに……」
「……」
「……この場所は、私にとって……安心して眠れる場所なんだな……」
「……とにかく、もっとしっかり寝た方が良いです。深夜の見張りは減らしていただいて」
「見張り……? なにそれ?」
「あぁ、毎晩夜中にちょっと見張りを……」
"ハナコちゃん、アズサちゃんのことすごく心配してたよ"
「それに、夜中の警備だったら俺がやってるから気にするな。トリニティの夜も、さほど苦労してないしな」
「……そうか。……心配かけて、ごめん。……実は、見張りは言い訳で……ブービートラップとかを設置していたんだ」
「ブービートラップ?」
「……?」
「どうしてそんなことを……?」
「心配しないで、ここに悪意を持って侵入しようとするルートにだけ設置してるから。普通の生活をする上では、安全面に問題はない」
「あ、あはは……」
「なるほど……ですが、それならそれで教えてくれると嬉しいです。どうしても、心配しちゃいますから」
「……そうか。……うん、これからは気を付ける。……私のせいで、みんなが被害を受けるのは望むところじゃないから」
"……アズサちゃんは優しいね"
「なっ……こ、子ども扱いしないで、先生。私は別に……そんな真っ当な人間じゃない。
……だってこの世界は、全てが無意味で、虚しいものなんだから。だから、もしかしたら……」
――私はいつか裏切ってしまうかもしれない……みんなのことを、その信頼を、その心を。
「……」
「アズサちゃん……?」
「……?」
"……"
(バチッ)
「あ、電気が……」
「……停電が直ったみたいだな」
「あ、雨もいつの間にか止んでる……!」
「そうですね。では、もう一度あらためて洗濯しましょうか」
「うん。じゃあ、第1回水着パーティーはここで閉幕か。2回目も楽しみにしてる」
「二回戦とか無いから! こんなの最初で最後だからっ!」
その後、洗濯を終わらせて、今日の残り時間は休息をとることにした補習授業部。
……偶の贅沢ということで、出前で食事を済ませ、宿舎へと戻った一同は……
「いいえ、まだです! このまま眠って一日が終わりだなんて、そんな勿体無いことはさせません!」
「は、はい……!?」
「な、なに!? 急に飛び上がって、びっくりした……」
「突然のことでしたが、せっかくのお休みじゃないですか。みんな裸で交わったのに、このままはいお休みなさいなんて……」
「勝手に記憶を捏造しないで! 裸じゃないから!」
「それはともかく、このまま寝てしまうのは勿体ないです。まだ火照っているといいますか、物足りないと言いますか……」
「具体的には……?」
「うふふっ、合宿といえば、やはり合宿所を抜け出すこと……それも一つの醍醐味だと思いませんか?」
「え……?」
「さぁ! 今からみんなでこっそり外に出て、お散歩しましょう」
「散歩……?」
「トリニティの商店街には、トリニティの夜でも営業している店も結構ありますし、食べ歩きとかショッピングとかもできます」
"と、トリニティの夜でも営業してるお店……?"
「マジか……? 商魂逞しいというか何と言うか……凄いな……」
いや、建造物への攻撃を禁止されているから、店の中の方が安全なのか?
「そ、そんなの校則違反じゃん! ダメっ!」
「細かい校則は知りませんが、結構皆さんこっそりやってると思いますよ?
トリニティの夜になってしまえば、何をしても自由ですし……意外とそういう方周りにいませんか、ヒフミちゃん?」
「あ、あはは……そ、そう、ですね……? ……で、ですが普段であればまだしも、今は補習授業部の合宿中ですし……良いんでしょうか……?」
"……まぁ、息抜きも大事だよね"
「……仕方ないか。……出来るだけ守ってやるが、トリニティの夜になったら、自分の身は自分で守れよ?」
「それじゃあ決定です! コハルちゃんも、行きますよね? 楽しそうだと思いませんか?」
「え、っと……きょ、興味はある、けど……」
「準備はできた。もうすぐにでも出発できる」
「アズサちゃん!? いつの間に着替えて……!」
「さぁ、みんなも準備して行きましょう! 楽しくなってきましたね、深夜に裸で散歩……!」
「さりげなくすり替えないで!! 服は着ろ!!」
そうして支度を終えた一同は、夜の街へと繰り出すのであった。
どうして本編には、食事シーンがないんですか……。
みんなもっと、美味しいもの食べて! トリニティにだって出前ぐらいあるでしょ!!
どっかの部活がスイーツ頼んでたし……!
評価、感想お待ちしております。