黒い沈黙の行先   作:シロネム

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~遭遇~ 桐藤シロ 

 

――トリニティ自治区

 

 

合宿所を抜け出した補習授業部一同。

 

彼女たちの歩みを止めるものは何一つなく、先ほどまでの大雨は嘘のように止み、綺麗な光を灯す街灯が水溜まりに光を反射させる。

 

 

 

「……良い景色だな」

 

"そうだね~"

 

「うふふ……」

 

「あはは……き、来ちゃいましたね」

 

「どうですか? もうすでに楽しくないですか? 禁じられた行為をしているというこの背徳感、そして同時にみんなで一緒にしているからこその安心感、この二つが合わさって……!」

 

「なるほど、深夜の街はこんな感じなのか……。……代理人の言う通り、活気があって良い雰囲気だな」

 

「そうなんですよ、24時間営業の店も多いですし」

 

「あれはスイーツショップ? 24時間開いているところがあるのか……あ、喫茶店も開いてる」

 

「……なるほどな」

 

"代理人……?"

 

「ある種の逃げ場になっているのか。……恐らくだが、トリニティの夜を安全に過ごす為に、店が開放されているんだろうな」

 

 

 

喫茶店やガンショップ、スイーツショップにモモフレンズショップ。

 

様々なお店の扉が開け放たれており、どの店舗にも大型の医療器具が設置されていた。

 

 

 

「建物自体もかなり頑丈そうだし……ここの住民はトリニティの夜に慣れてそうだな」

 

「あ、あはは……。……昔からある規則ですから、皆さん相応の対応を取られているのだと思います……」

 

 

 

「うぅ……結局乗っちゃったけど、こんなところ万が一ハスミ先輩に見られたりしたら、すっごい怒られそう……」

 

「あら、そうなのですか? ハスミさんは後輩たちに優しい方だと聞いていましたが……?」

 

「も、もちろん優しいわよ! 文武両道、さいしょくけんび……? で、品もあってすっごい先輩なんだから!」

 

「それなら大丈夫じゃないか?」

 

「で、でも、怒るときは本当に怖くて……」

 

「そうなのか?」

 

 

 

 

 

コハルの口から語られる、正義実現委員会で起きた騒動。ゲヘナ学園、万魔殿との会議中に起きた問題。

 

 

 

 

 

「……ダイエット?」

 

「……そう。……デカ女って言われたの相当ショックだったみたいで……」

 

「「「……」」」

 

「それで、その会議自体ダメになって……それ以来ハスミ先輩、あんまりご飯も食べないから心配で……」

 

「そんなことがあったのですね……」

 

"ハスミちゃん、大丈夫かなぁ……"

 

 

 

「あ、ここにもスイーツ屋が……」

 

 

 

「なんだか食べ物の話をしていたらお腹が減ってきましたし、ここで何か食べましょうか?」

 

「あ、ここの限定パフェすっごい美味しいんですよ! 24時間やってるとは知りませんでした」

 

「パフェか……うん、悪くない。行こう」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

スイーツ屋。

 

モダンな雰囲気で仕上げられた店内に漂う甘いスイーツの香り。

 

銃弾を撃ち込まれた程度では傷一つ付かないほど頑丈に作られた壁は、店内にいる客に対し、絶対的な安心感を与えるものとなっていた。

 

 

 

「いらっしゃいませ」

 

 

 

「あはは、真夜中にスイーツ屋さんだなんて……緊張もありますが、何だかすごくワクワクしますね」

 

「確かに」

 

 

 

「6名様でしょうか? ご注文をどうぞ」

 

「えっと……あ、限定パフェってまだありますか?」

 

「あぁ、申し訳ございません……限定パフェはちょうど先ほど、別のお客様が四つ購入されたのが最後でして……」

 

「あ、そうでしたか……」

 

"この時間に、四つも買うなんて凄いね……"

 

「一歩遅かったか……」

 

 

 

「……あら?」

 

「どうかされましたか? ハスミさ……」

 

 

 

補習授業部から少し離れたテーブル。

 

大きなサイズのパフェが4つ置かれたテーブル席に着く二人の少女が、こちらに気が付いた。

 

 

 

「せ、先生……?」

 

「……あなたがこの様な飲食店を訪れるとは珍しいですね、ローラン」

 

 

 

"ハスミちゃん……!?"

 

「は、ハスミ先輩!?」

 

「白の便利屋も一緒か。……お前こそ、こんな所に居るとはな」

 

「あら、私だって甘いものは好きですよ? 貴方とも珈琲をよく飲みに行ってたと思いますが」

 

「……そう言えば、ただでさえ甘ったるくした珈琲を角砂糖にかけて食べる奴だったな……」

 

「思い出していただけましたか? ……残念ながら、こちらの珈琲は苦くて飲めたものじゃありませんでしたが……」

 

 

 

 

 

 

「ローランって、もしかして代理人のお名前ですか?」

 

"シロちゃんも久しぶりだね。……あ、いや、直接会うのは初めてだから、初めましての方が正しいかな?"

 

 

 

 

 

 

「……はぁ」

 

「名前、この子達にも隠していたんですか? ……残響楽団には割れていることですし、今更名前を隠す必要もないと思いますが。……翼であれば、裏路地のフィクサーなんて気にもしないでしょう」

 

「それはそうだが……」

 

「……まぁ、気持ちは分かりますけどね」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

店員の好意で移動させたテーブルに着く補習授業部。

 

 

 

「先生、それに補習授業部の皆さん……」

 

「あ、あぁあぁぁぁ……!」

 

「ハスミさんにシロさん、奇遇ですね。真夜中にパフェを二つも……たしか、ダイエット中だと伺いましたが?」

 

「こ、これはですね、その……」

 

「あら? そうだったのですか、ハスミさん」

 

「い、いえ、あの……」

 

「はい、心中お察しいたします。真夜中に襲ってきた悪しき欲望に導かれて、ここまで来てしまったのですよね?」

 

「え……!? い、いえその……」

 

 

……

 

 

「……はぁ。その辺にしといてやれ、ハナコ」

 

「……はーい」

 

"夜中ってお腹が空くよね"

 

 

 

「せ、先生……ごほん。その、自分のことを棚上げするようですが、補習授業部の皆さんはそもそも、合宿中の外出が禁じられていたはずでは……?」

 

「まぁまぁハスミさん。ここはお互いに、見なかったことにしましょう? ……よろしければ皆さんもお好きなものを頼んでください。

 

……ローランがお世話になっているみたいですし、ここは私がご馳走しますよ」

 

「……お前は俺のばあちゃんか」

 

 

……

 

 

「あ、あの~、シロちゃんと代理人ってお知り合いだったのですか……? お話を聞いてる感じですと、かなり仲が良さそうと言いますか……」

 

「……あー、ヒフミ。コイツは……、……いや、そう言えば桐藤の妹で通してるんだったか?」

 

「そうですね。トリニティではそのように通しておりますが……、折角ですし私の正体についてお話ししましょうか」

 

「正体? えっと、シロさん……?」

 

「……今からするお話は、ここだけの秘密でお願いしますね。……まぁ、情報が漏れた所で始末すれば良いだけなのですが、余計な手間を掛けたくないので」

 

 

 

「「「「……」」」」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

桐藤シロ。彼女の口から語られる出来事。あの夜、ローランとAチームの隊長に話した事と同じ内容を伝えるのであった。

 

 

 

「以上が私、白の便利屋こと桐藤シロの正体です。私について知っているのは、貴方達を除けばナギサさんとAチームの隊長だけですので……どうかご内密に」

 

「う、生まれ変わった……?」

 

「人形……」

 

「……まぁ、信じ難いよな。……俺も都市の出来事がなかったら、信じられなかったしな」

 

"私も内容が内容なだけにビックリしちゃったなぁ"

 

「……でしたら、試してみましょうか?」

 

「試す……?」

 

「はい。……ついこの間、この世界に違う肉体が産み落とされましたので、連れて来ましょうか?」

 

「「「「……」」」」

 

「……それは、何と言うか良かったな。……予備って訳じゃないが、向こうに帰らなくて済みそうで」

 

「えぇ、本当に。……出来ることなら、この楽園から出たくないですからね」

 

「分かるぞ。……俺も出来ることなら向こうに帰りたくないしな」

 

「ふふ……。……それでは、すぐに連れて来ますので、それまで私の肉体をお願いしますね」

 

 

 

(ヒュンッ)

 

 

 

そう告げると、桐藤シロの手元から一瞬で消え去った遺物。まるでそれが合図になったかのように、桐藤シロの肉体が崩れ落ちた。

 

 

 

「……こういう感じになるのか。確かにこれ程無防備だと、人前では使えないな」

 

 

 

ヘイローが消え、まるで電池が切れたかのように崩れる。呼吸もしておらず、脈拍も無い。事情を知らない人が見れば、死体だと思ってしまうことだろう。

 

 

 

――10分後

 

 

 

「……お待たせしました」

 

「いや、速いな。近くに保管してたのか?」

 

「そうですね。……具体的な場所は教えられませんが、私しか知らない場所に保管してます。偶然ここから近くの場所だったというだけですよ」

 

 

 

背中に遺物を背負い、ローランから自分の肉体を受け取ったシロ。

 

 

 

「こうしてみると、本当に入れ物なんだな」

 

「同じ肉体があると色々と試せて便利なんですよ? 刺青や義体を好きなだけ試せますので」

 

「あー、確かに気に入らなければ次の肉体で使わなければいいのか」

 

 

 

「「「「…………」」」」

 

 

 

「あ、あら? 皆さん、大丈夫ですか?」

 

「……まぁ、驚きもするよな」

 

"な、なんて言えばいいか分からないんだけど…………す、凄いね? イオリちゃんの例もあるし、特殊な子が何人か居るのかなぁって思ってたけど……"

 

 

 

言葉を失う一同。……常識外の出来事を目の前で見せられて、咄嗟に反応することが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

――たった一人を除いて

 

 

 

 

 

 

(……R社のクローン技術? …………サオリに報告しないと……)

 

 

 

 





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