黒い沈黙の行先   作:シロネム

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評価、感想ありがとうございます!







~硝煙~ アリウス分校・ネズミチーム

 

 

 

――トリニティ総合学園・本館

 

 

 

戒厳令が敷かれていると言うこともあってか、人気の無い校舎……になる筈だったが、本館には無数の足音が鳴り響いていた。

 

 

 

「――ネズミ(RAT)チーム、到着。特段変わった様子は無し、警戒も予想通り」

 

「――カラス(Raven)チーム、アライグマ( Raccoon)チーム、全て準備完了とのことです」

 

「ターゲットの位置は確認済み。予定通り作戦を開始する」

 

「総員、前へ」

 

 

 

……

 

 

 

「……ふぅ」

 

 

 

(コンッコンッコンッ)

 

 

 

部屋に響くノック音。

 

 

 

 

「……紅茶でしたらもう結構です」

 

 

 

(ガチャ)

 

 

 

「……悪いな、紅茶は淹れられてた側なんだ」

 

「……っ!? ……代理人!? なぜ、あなたがここに……」

 

「お前の居場所については、白の便利屋に教えて貰ったよ。……まさか、セーフハウスを幾つも用意してるとは思わなかったな」

 

「シロさんが……」

 

「……可哀そうに、眠れないのですね」

 

「……!?」

 

「それもそうですよね。正義実現委員会がほとんど傍にいない状態……不安にもなりますよね、ナギサさん?」

 

「う、浦和ハナコさん……!? あなたがどうしてここに……!?」

 

「気持ちはわかりますよ? 護衛がいないと不安ですよね」

 

「生憎、白の便利屋にはお前の傍を離れるよう頼んでおいたからな。今日一日、席を外してるはずだ」

 

「シロさんのおかげで、合計87個のセーフハウスの場所と、使われるローテーションを把握できました」

 

「……っ」

 

「変則的な運用方法もおおよそ把握しています。例えば……今のように心から不安な時は、ここの秘密の屋根裏部屋に隠れるということも」

 

「なっ……!」

 

 

 

 

「動くな」

 

 

 

 

「……!」

 

「あぁ、勿論ここまでの間に警護の方々は全員片付けさせていただきました。だからこそ、こうやって堂々と来たわけですが」

 

「白の便利屋が敵対することだけが不安要素だったが、事情を話したら協力してくれたよ」

 

「白洲アズサさんまで……まさか……!」

 

「裏切り者はひとりではなく、ふたり……!? それに、シャーレまで協力しているなんて……」 

 

「……あらあら、察しが悪いみたいですね。私もアズサちゃんも、ただの駒に過ぎませんよ。指揮官は別にいます」

 

「……! それは、誰ですか……!」

 

「その話の前にだ。……ナギサ。俺たちシャーレの権限を使ったことも問題だが」

 

 

 

――そもそも、ここまでやる必要あったのか?

 

 

 

「……」

 

「前にも言ったよな? エデン条約の締結は、たった一人の生徒によって瓦解するほど厳しいものなのかって」

 

「……」

 

「……まぁ、ナギサさんの心労はよく分かりますよ。……ですが、こうしてシャーレまで動員して、全員を疑う必要はあったのですか?」

 

「それは……」

 

「最初から怪しかった私や、アズサちゃんは仕方ありません。ですが……ヒフミちゃんとコハルちゃんに対しては、あんまりだと思いませんか?」

 

「……」

 

「特にヒフミちゃんは……ナギサさんと、仲が良かったじゃないですか。……どうしてこんなことをしてしまったのですか? ヒフミちゃんがどれだけ傷ついてしまうのか、考えなかったのですか?」

 

「……。……そう、ですね。ヒフミさんには悪いことをしたかもしれません」

 

「……」

 

「ですが、後悔はしていません。全ては大義のため。確かに彼女との間柄だけは、守れればと思っていましたが……私は……」

 

「……ふふっ。……では、あらためて私たちの指揮官からナギサさんへ、メッセージをお伝えしますね」

 

 

 

 

「あはは……えっと、それなりに楽しかったですよ。ナギサ様とのお友達ごっこ」

 

 

 

 

「……とのことです☆」

 

「……っ!? ま、まさか、ということは……!?」

 

 

 

(ダダダダダッ!)

 

 

 

鳴り響く銃声。

 

撃ち込まれた無数の銃弾。

 

ナギサの意識を刈り取った一同は、身柄を確保しセーフハウスを後にするのであった。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

「これで身柄は確保できたか」

 

「近距離で5,56mm弾を一弾倉分当てたから、1時間くらいはこのまま気を失っているはず」

 

「ふふっ。ではアズサちゃん、ここからは敵の誘導をお願いできますか?」

 

「了解。これで、まだどこかにいる本当のトリニティの裏切り者に噓の情報が流れるはず……?」

 

「……計画としては十分だな。手際も悪くない。……ヒフミのせいにする必要があったのかは分らんが」

 

「あれはちょっとした仕返しです☆。ヒフミちゃんの頑張りの分、ちょっとくらいはショックを受けてもらおうかと」

 

「……まぁ、心には響くだろうな」

 

「ところでアズサちゃん、アリウスの兵力はどれぐらいか分かりますか? 正確に言うと、一人でどれぐらい持つかを把握したのですが」

 

「詳細は分からない。ただ……」

 

「ただ……?」

 

「……アリウスの生徒は、多くない。……翼が干渉して来た事によって、総生徒数の8割から9割が殺されているから……」

 

「なっ……」

 

「……むしろ、よく1割以上生き残れたな」

 

 

 

旧L社の力を得たユスティナ聖徒会によって、殲滅されたアリウス分派。

 

ただでさえ人口が減っていたというのに、翼によって9割が殺されたとなれば……、襲撃予定のアリウス分校の生徒数は、数えられる程度しかいないだろう。

 

 

 

「……だから安心してほしい。生徒数は多くないし、学園の周辺にトラップや塹壕を作っておいたから。ゲリラ戦で時間を稼ぐ」

 

「慢心はするなよ、アズサ。余力がある内は良いが、まだやれると思ったら直ぐに逃げろ」

 

「……分かった。……その時は、合流地点に避難する」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

――合宿所・体育館

 

 

 

出入口が一つしかない体育館を防衛地点とし、補習授業部の一同は、救援が来るまでの間待機することを選び迎撃の準備を進めていた。

 

 

 

(ピピッ ピッ ピピピッ)

 

 

 

"代理人とハナコちゃんが戻ってきたみたい"

 

「す、直ぐに扉を開けますね」

 

 

 

(ガチャ)

 

 

 

「待たせたな。準備はできてるか?」

 

"うん。こっちは一通り準備できてるよ"

 

「ナギサ様は……」

 

「身柄は計画通り、シロさんに預けてあります」

 

 

 

白の便利屋が保有する拠点。予備の身体を保管してある場所へと、ナギサを匿うよう依頼していたローラン。

 

 

 

「銃弾の予備は、バリケードの裏に設置したわ」

 

「この爆弾は壁に仕掛けて……」

 

「あとは正義実現委員会の部隊が到着するまでの間、時間を稼げれば……」

 

 

 

(ピピッ ピッ ピピピッ)

 

 

 

"アズサちゃんが戻ってきたよ!"

 

「……予定より早いな」

 

 

 

(ガチャ)

 

 

 

「ごめん。あまり時間を稼げなかった」

 

「何があった?」

 

「それが……」

 

 

 

そう言葉を続けようとした瞬間。 

 

 

 

(ドカァァァァン!)

 

 

 

盛大な音を立てながら、扉が吹き飛ばされた。

 

 

 

 

「――ネズミ(RAT)チーム、現着。総員、戦闘準備」

 

 

 

 

ガスマスクを身に着け、アリウスの校章が印字された防弾ベストを装備した集団。

 

黒地にオレンジ色の装飾が施された、ネズミの顔のような形のガスマスク。

 

その特徴的な姿をした集団が……、

 

 

 

――総勢、50匹

 

 

 

「なっ……!?」

 

「数が多すぎる。……アリウスに、ここまでの生徒は居なかった筈……」

 

「……ヘイローが無い? それに、あの装飾……まさか……」

 

「代理人?」

 

"取り合えず、迎撃するよ! みんな、行こう!"

 

 

 

★★★★★

 

 

50 VS 6

 

 

人数差で見れば圧倒的に不利な戦況だが、補習授業部が選んだ体育館という戦場が、不利な状況を覆していた。

 

 

 

「アリウスを支配していたのはR社だったのか……」

 

 

 

一つしかない出入口。

 

人数が50人いようが100人いようが、一度に入れる人数は限られており、侵入経路も一つの方角に絞られている以上、

 

 

 

――前方に攻撃を集中させるだけで良い

 

 

 

"みんな、前方に集中射撃! ……ヒフミちゃん! 投影機の準備を!"

 

「は、はい!」

 

 

 

前方に投げられた投影機が映し出す、巨大なペロロ様人形。

 

射線を遮るように投擲されたペロロ様人形が、ネズミチームの視線をくぎ付けにする。

 

 

 

「……良い指揮だ、先生」

 

 

 

その隙を逃す筈もなく、ネズミチームの銃口がペロロ様人形に向けられた瞬間、

 

 

 

(グチャッ)

 

 

 

振り下ろした大剣(ホイールズ・インダストリー)が、一匹のネズミの首を切り落とした。

 

 

 

「……ヘイローが無いと、殺しやすいな」

 

 

 

即座に手袋から取り出した円錐状の槍(アラス工房)が、2匹目のネズミの身体を貫き、地面へと縫い付ける。

 

 

 

「ひっ……」

 

「だ、代理人……血が……」

 

「……」

 

"代理人! 殺すのは……っ!"

 

「こいつらは生徒じゃない! ……R社によって生み出されたクローンだ」

 

"く、クローン……?"

 

 

 

(バンッ)

 

 

 

バリケードを飛び越え、零距離へと高速で接近したアズサの銃弾が、3匹目のネズミの頭蓋を貫いた。

 

 

 

「まだ、作られていたなんて……」

 

 

 

――私で……終わりじゃなかったのか……!

 

 

 

「……アズサ? お前で終わりって言うのは一体……」

 

「……ッ! ……ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああっ!」

 

 

 

(バンッ)

 

 

両脚に神秘を込め、身体能力を限界まで引き出し、

 

 

(バンッ)

 

 

地面を蹴って、銃弾を躱し、

 

 

(バンッ)

 

 

壁を蹴り、天井を蹴り、3次元軌道で撹乱し……、

 

銃弾を放ち、持っていたナイフで頸動脈を切り裂き、

 

 

 

1匹ずつ息の根を止めていく。

 

 

 

「アズサちゃん!」

 

「あ、アズサ……」

 

"……ッ……! アズサちゃん! 避けて!"

 

 

 

ネズミチームの集団へと突貫し、射撃を続けていたアズサだったが、

 

 

 

 

 

 

(カチッ)

 

 

 

 

「……!? しまっ……」

 

 

 

――銃弾切れ

 

 

 

体育館へと誘導する間に使った弾倉のまま、継続戦闘へと移らざるを得なかったアズサは、弾倉に込められた残りの弾数を把握しきれていなかった。

 

 

 

 

 

 

記憶 - ハナ協会

 

 ――アラス工房 + 空の槍――

 

 

 

 

 

 

アズサへと斬り払われた短剣を弾き飛ばし、その勢いのままネズミの身体を引き裂くローラン。

 

 

 

「……前に出すぎだ!」

 

 

 

(バラララララララッ)

 

 

 

アズサの身体をバリケードのある方へと蹴り飛ばし、取り出した軽機関銃を乱射する。

 

放たれた無数の弾丸がヘイローを持たないネズミ達の身体を貫き、壁を抉り、地面に穴をあけ、戦場を蹂躙する。

 

飛んできたアズサの身体を咄嗟に受け止めたハナコは、無茶な突貫によって出来た傷を治療し、予備の弾倉を手渡した。

 

 

 

――ネズミチーム第1陣 総数20匹、殲滅

 

 

 

軽機関銃を撃ち続けながら、バリケードまで後退したローラン。

 

 

 

"みんな! 手榴弾を入り口に!"

 

「は、はい!」「分かった!」

 

 

 

(ドカアアァァン!)

 

 

 

★★★★★

 

 

 

戦場に漂う噎せ返るような血の香り。辺り一面に散らばる死体の山。

 

非日常的な光景を目の前で見てしまった補習授業部の一同は、吐き気を堪えるのに精一杯だった。

 

 

 

「……数が多いな」

 

「……あぁ。……だが、向こうも無能と言う訳ではないらしい」

 

 

 

血の海と化した戦場を見て、何も対策を錬らなければ唯の愚者であったが、

 

……目の前の光景を見て、残ったネズミチームメンバーは、体育館へと立ち入るのを踏み止まっていた。

 

 

 

「おかしいです……」

 

「……ハナコ?」

 

「正義実現委員会が……来ない……?」

 

「……えっ……え?」

 

「それに、どうしてこれだけたくさんの方が、トリニティの敷地内に……」

 

 

 

戦闘開始から1時間。

 

それだけの時間が経過していながら、一向に来る気配のない正義実現委員会。

 

 

 

 

 

 

「どうしてって、私が許可したからだよ?」

 

 

 

 

 

 

「……!」

 

「あ、あなたは……」

 

「……やっぱり、お前だったか」

 

"……ミカちゃん"

 

 

 

「私があらためて待機命令を出したからね」

 

「……」

 

「今日は学園が静かだったよね。正義実現委員会以外にも、邪魔になりそうなものは事前に全部片づけておいたんだ☆」

 

「……聖園」

 

「それにしても……、まさかここまでやるとは思わなかったなぁ。……20人も居て、たった6人を仕留められないってどういうこと?」

 

「……」

 

「まぁ、良いんだけどさ」

 

「聖園。……やっぱりお前が裏切り者だったか」

 

「わぁお。代理人ってば気づいてたんだ?」

 

「……」

 

「早速で悪いんだけど、ナギちゃんをどこに隠したのか教えてくれる? 私も時間が無くってさ」

 

「……」

 

「まぁここにいる全員を消し飛ばしてから、ゆっくり探しても良いんだけど、それは面倒でしょ?」

 

"……代理人"

 

「……分かってる」

 

 

 

この惨状を目にしておきながら、今の発言を出来る者は、

 

唯の馬鹿か、それだけの自信がある者だけだ。

 

 

 

聖園ミカがどちらに当てはまるのか、……それは考えるまでもない。

 

 

 

「代理人が凄く強いってのは分かったけど、この人数を相手に他のみんなを守りながら戦えるかな☆」

 

「……」

 

"ミカちゃん……どうして……"

 

「んー? 理由? そんなの単純だよ☆」

 

 

 

――私は、ゲヘナが大嫌い

 

 

 

「本当に心の底から。ゲヘナが嫌いなの」

 

「……だから、エデン条約を取り消そうと? そのためにナギサさんを……?」

 

「えっと……誰だっけ? ごめんね、私あんまり顔を覚えるの得意じゃなくってさ」

 

「……」

 

「……あぁ、思い出した。浦和ハナコじゃん。礼拝堂の授業に水着で参加して追い出された、あの。あははっ、懐かしいねぇ」

 

「……」

 

「まぁ、理由は今言ったとおりだよ。ゲヘナなんかと平和条約だなんて、冗談にも程があると思わない? 絶対裏切られるに決まってるじゃんね? 背中を見せたらすぐに刺されるよ?」

 

「背中を刺される……? お前が……?」

 

「あはは、私は刺されないよ☆ でもさ、力のある敵よりも無能な味方の方が邪魔だって、代理人なら分かるでしょ?」

 

「……まぁ、一理あるな」

 

「ナギちゃんは優しすぎるんだよ。現実はもっとドロドロした世界で、都合の良い話なんて存在するわけがないのにね」

 

"ミカちゃん……"

 

「……そう言う訳だから、ナギちゃんを返してくれる? 大丈夫、痛いことはしないよ。まぁ、残りの学園生活は全部檻の中かもしれないけど」

 

"じゃあ、エデン条約は、やっぱりれっきとした平和条約……"

 

「そうだよ? いやぁ、騙してごめんね先生。おバカなナギちゃんにエデン条約を武力同盟として活用するなんてこと、できっこないじゃん☆」

 

 

 

「ネズミチーム第2陣、現着。総員、戦闘準備」

 

 

 

吹き飛ばされた扉から体育館へと押し入る、総勢50名のアリウス生徒たち。

 

殺した傍から補填されていく人員に、流石のローランも苦虫を嚙み潰した。

 

 

 

「あはっ☆ 増員も来てくれたし、やっぱり実力行使と行こうかな☆」

 

 

 

「……お前ら、先生を頼む」

 

「代理人……?」

 

「ちょ、ちょっと何を」

 

 

 

軽機関銃を手袋に収納し、一冊の本を取り出したローランは、

 

 

 

ページを一枚破り取り、前線へと足を進めた。

 

 

 

 






神秘の応用


これに関してですが、私の解釈としては某漫画の念能力に似たものと思っています。


銃弾に込めることによって殺傷力を向上させ、
肉体の一部に込めることにより、身体能力を飛躍的に向上させる。


ツルギがやっていた治癒力の上昇も、膨大な神秘で出来るモノなのかなぁーと



神秘がオーラ

未来予知のような特殊な能力が念能力



某漫画をご存じの方は、この解釈でお読み頂ければ幸いです。

この作品は、この解釈で進行いたしますので。



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