黒い沈黙の行先   作:シロネム

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評価、感想ありがとうございます!

今回から本編第3章スタートです!




~懐柔~ ポストモーテム

 

全てが上手く進んだわけではないが、一先ずの結果は得ることが出来た。シャーレで休息をとったローランと先生は、再びトリニティ総合学園を訪れ、これまでに起きた出来事を纏めていた。

 

 

 

「なるほどな。それではお前はセイアに説得されたのか」

 

「……私一人で考えるより、知識に長けたものを利用した方が、アリウスの問題を解決できると思ったんだ」

 

 

 

 

――シスターフッド・会議室

 

 

この場所に集まったサクラコにアズサ、ハナコ達と共に、事のあらましと今後について話し合うこととなった。

 

 

 

 

「アリウスはティーパーティーのヘイローを破壊して、キヴォトスを本物の戦場に変えようとしていた。……それを止めたいかどうか……そう聞かれたんだ」

 

「……そして、セイアさんの部屋を爆破させたと?」

 

「セイアが死んだと偽装するためには必要なことだった。アリウススクワッドを騙し、翼の監視から逃れる手段は限られていたから……」

 

"その後は、シスターフッドが助けてあげたの?"

 

「いえ、私たちは助けていません。……セイアさんを助けたのは、組織の仲間ですね」

 

「……? ……組織?」

 

「そう言えば、サクラコさん。……あの時言っていたエリュシオンとは一体?」

 

「……」

 

「……話すと長くなるのですが……、……そうですね。お二人にだったら話しても良いでしょう」

 

「……いいのか?」

 

「お二人とも、翼と無関係という訳ではありませんから。……ただし、今からするお話は他言無用でお願いします。……最悪の場合、お二人の記憶を消すことになりますので」

 

「「……」」

 

"き、記憶を消す……?"

 

「……まぁ、口封じは大事だよな」

 

 

 

サクラコの口から語られる、エリュシオンという組織の内情。連邦生徒会長が翼に対抗する為に設立した、裏連邦生徒会と言っても過言ではない組織。各学園から数人ずつ協力者を集い、結成された……

 

 

 

――最後の希望――

 

 

 

「私とセイアさんを含め、トリニティからは4人の生徒が参加しています」

 

「ゲヘナからの参加者は、この間遭遇した美食研究会の愛清がそうだな」

 

"い、一応、美食研究会じゃなくて給食部だからね……?"

 

「……そういえば、あの車に給食って書かれていたか」

 

「……翼に対抗する組織。……そんな組織があったなんて……」

 

「以前ハナコさんには説明しましたが、エリュシオンには下部組織が幾つか存在します。シスターフッドもその内の一つです。……最も、詳細な内情まで把握している方は殆どいませんが」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

その後、エリュシオンについて軽く説明したサクラコは、アズサの転入書類を正式なものとして処理することを約束した。

 

 

 

「アリウス分校のことなど、解決できていないことは沢山ありますが……お疲れさまでした」

 

「……ありがとう」

 

"ありがとうね、サクラコちゃん"

 

「……それでは、私は他に用事があるのでお先に失礼します」

 

 

(ガチャ)

 

 

「……それじゃあ、私も用事があるから」

 

「用事……?」

 

"もしかして、アリウスの……」

 

「いや、今日はヒフミとモモフレンズカフェに行く予定があるんだ」

 

 

 

そう言って会議室を後にしたサクラコとアズサ。今回の事件で誰の犠牲もなく、今日まで来ることができたのは、間違いなくシスターフッドの援護があったからだろう。

 

 

"も、モモフレンズカフェ……"

 

「アレが人気っていうのが、未だに信じられないな……」

 

「こ、好みは人それぞれですから……。……あ、そういえばこの前、ナギサさんがヒフミちゃんと会ったそうですよ」

 

"ナギサちゃんが……?"

 

「私もヒフミちゃんから聞いただけですが……」

 

 

……

 

 

誰の犠牲もなく……とは言ったが、トラウマを抱えてしまった者は居たみたいだ。

 

 

 

「重症だな……」

 

"えぇ……? な、ナギサちゃん……"

 

「うーん、誤解はもう解いたのですが……少しやり過ぎてしまったみたいですね……」

 

「……」

 

「……ナギサさんは私を含め、補習授業部の皆さんに謝罪して回っているみたいですよ。先生、ナギサさんは……」

 

"……そうだね。……私に出来ることをやってみるよ。それに……"

 

「あぁ。聖園の動機も気になるしな」

 

 

 

翼についてどこまで知っているのか、そもそも何故、ティーパーティーのホストになろうとしたのか。……本当に、心の底からゲヘナを嫌っているのか。

 

気になる点や不自然な点は沢山ある。そして何より、

 

 

 

「翼に洗脳されてる可能性がある以上、一概に聖園だけの責任とは言い切れないからな。……まぁ、利用されるアイツも悪いとは思うが」

 

「そう……ですね。……この間、ミカさんの様子を伺いにトリニティの地下牢を訪れたのですが……」

 

 

――そこには、先客が居たんです

 

 

 

★★★★★

 

 

 

聖園ミカと桐藤ナギサ。アリウスの接触のきっかけから。アリウススクワッドのメンバー構成員。関与している翼の情報と、支社の本拠地の場所。尋問の結果得られた情報。

 

それ以上に何か、重大な情報を持っているのではないかと危惧したシスターフッドは、自白剤を投与し記憶処理を行おうとしていたが、

 

 

 

「その行動は、ティーパーティーのホストであるナギサさんに止められていました」

 

"……それって、拷問なんじゃ"

 

「まぁ、可哀想だとは思うが自業自得だろう。翼がキヴォトスに来た理由や原因、特異点やそれに準ずる何かの情報が得られるなら、俺だってそうするよ」

 

"代理人……。……そのやり方は"

 

「分かってる。この世界では、良くないやり方だって言いたいんだろ? ……そういう意味では、エリュシオンの連中は都市に近い思考をしているのかもな」

 

"サクラコちゃん……"

 

「……ごほん。……話を続けますね?」

 

 

 

地下牢で盗み聞きした情報。アリウスで量産されていた兵士や兵器は途絶えつつあり、残りの戦力は多くないということ。アリウス自治区の存在は知っているけど、その入り方はスクワッドのリーダーであるサオリしか知らないということ。

 

そして……

 

 

 

「アリウス分校はエデン条約の締結において、大した危険要素にはなりえないだろう……と、そう話していました」

 

"それは良かった……のかな"

 

「いや、いくら何でもそれは早計過ぎる。翼が……ましてや戦闘に特化したR社がこの程度で終わるはずがない。今回の事件でシスターフッドが保有するE.G.Oや図書館の力についても露呈してしまったんだ」

 

 

――恐らく、エデン条約はこの間以上の戦場になるだろう

 

 

 

"……"

 

「当日は俺も先生も会場に向かう予定だが……、頼れそうな奴には護衛として声をかけておくつもりだ」

 

 

 

最後まで黒幕が誰なのか、その情報を聞き出すことはできなかった。聖園ミカが桐藤ナギサに語った真実。セイアちゃんをやっつけて、ナギちゃんもやっつけようとした。どうしてもゲヘナと仲良くできなかったから、アリウスと手を組んだ。

 

結局はただの人殺し。いくら仲が良くても……どこまで行っても……赤の他人。

 

 

他人同士分かり合うことなんて、絶対にできるはずがないんだよ。

 

 

 

「それが真相で、それ以上のことは何もないと……仰っていました。……ですが、」

 

「ハナコはそうは思わないと」

 

「……ミカさんは、計算して動くことができるタイプだとは思えません。どちらかといえば、感情を優先する方だと」

 

"まぁ、確かにそうかも……?"

 

「い、意外とすぐ納得されますね、先生」

 

"ミカちゃんは、本当は……アリウスと仲直りしたかったんじゃないかな"

 

「アリウスと?」

 

"うん。その過程が複雑で、こんな結末になっちゃったけど……、本当の目的はそうだったんじゃないかなって"

 

「仲直りすることが真の目的で、その意図を利用された……?」

 

「確かに利用しやすそうだな」

 

"……"

 

「……先生が仰りたいのは……私たちにはミカさんの本心を察することなどできない……そういうことですか?」

 

"楽園に辿り着きし者の真実を、証明することはできるのか"

 

「何だそれ?」

 

「それは五つ目の……。……楽園に辿り着いた者は、楽園の外で観測されることが無い。存在することを観測できない……楽園の存在証明に関するパラドックス」

 

"……証明できないものを、どう証明するのか"

 

「……もし他社の本心なんてものに辿り着いたら……それはもう、他人ではありません。辿り着けないなら、やはり本心など分かっていないということで……。……楽園も、誰かの本心も一緒……そういうお話ですか?」

 

"うん"

 

「それは確かに、証明するのは無理だろうな」

 

 

感情を殺し、本心を隠し……図書館へと潜入したローランにとって、この証明の難しさは誰よりもよく分かることだろう。

 

 

"……そう。それはきっと、不可能な証明。……だとしたらもう、信じるしかないよね! そこにはきっと楽園があるって"

 

「……」

 

"ミカちゃんの本心は、ただアリウスと仲直りしたかっただけ。私はそう信じることにするよ"

 

「先生……」

 

「……そう、ですね。……考えてみれば、先生は最初からそうでしたね。疑惑と疑念で満ち溢れたお話の、初めからずっと……」

 

「……」

 

「ミカさんやナギサさんを含め、先生は生徒たちを疑わない……そういうことですか? ……たとえその結果として、誰かに裏切られても?」

 

"その時はきっと、何か事情があるに違いないからね"

 

「本当にお人好しだな、先生は」

 

「どうして……先生はどうして、そんなに……」

 

"先生が生徒を信じないと、何も始まらないよ。ナギサちゃんとミカちゃんが、いつかまた、お互いに本音を打ち明けられるように……そんな日が来るように"

 

「……」

 

"いつか、きっとね。……その為に私も……エデン条約が終わったら、会いに行ってあげないとね!"

 

「……そうだな。その時は、代理人として俺も手伝うよ」

 

 

 

――聖園ミカはアリウスと翼の被害者

 

 

 

「……俺もそう思い込むことにする」

 

"代理人……。……ありがとうね"

 

 

 





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