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空を突き抜ける轟音
放たれた一発の巡航ミサイル
誰もがそのロケットに気が付いた時には、
――全てが終わっていた
古聖堂に着弾した巡航ミサイルは爆炎を撒き散らし、辺り一面を火の海へと変えていく。
「きゃああああああ」
「こっち、こっちに怪我人が……!」
肉の焼ける臭いと悲鳴が周囲を包み込む。嘆きの声と救いを求める声が入り混じった会場は、瞬く間に戦場へと変化した。
「緊急事態です! 古聖堂が、正体不明の爆発によって炎に包まれ……! これは一体……せっ、尖塔が崩れています!」
アナウンサーの声が響き渡る。血と炎に包まれた戦場は地獄と形容する他無いだろう。
「きゃあああああああああ」
「な、なによこれ!?」
「た、助け……」
(パンッ、パンッ)
「……ッ」
(考えろ……考えろ……)
(何が起きたかはどうでもいい。今はとにかく次の事を……、動くべきは……私が、助けるべきは……)
「先生……ッ!」
全身から夥しいほどの血を流しながらも意識を保っていた風紀委員長、空崎ヒナ。愛銃を構えなおし、周囲を見渡し、何よりも……誰よりも早く古聖堂があった場所へと走り出した彼女。
――だが、そんな彼女の前に立ちふさがる15人の生徒達。
「ひ、ヒナさん、まだ立ってますねぇ……。ど、どうしましょう……あれを受けてまだ立っているなんて、すごいですねぇ、強いですねぇ、羨ましいですねぇ……まだまだ戦うなんて、どうして……痛いはずなのに、苦しいはずなのに……」
(ピピッ)
「ヒヨリ、ヒナだけは逃がすな。何としてでも息の根を止めろ」
「は、はいっ! そ、そういうことみたいですので……すみませんね、えへへっ……」
いや、正確には14匹と1人だろうか? アライグマのような仮面を付け、散弾銃を構えたヘイローを持たない14人の子供。
独特な校章の入った防弾服を身に着け、
「アリウス、分校……?」
「あ、あなただけは殺しておくように言われているので……」
「……どきなさい」
「い、嫌です。やりますよ、皆さん……」
「アライグマチーム、準備完了。敵を殲滅する」
(バラララララララッ)
(ダンッ、ダンッ)
★★★★★
――古聖堂上空・飛行船
「キキキキキッ!! 成功だ! これぞ計画通りっ! キヒャヒャヒャヒャヒャッ!!」
「マコト先輩、一体何を……?」
「これで邪魔者はすべて消える。ティーパーティーも、あの目障りだったヒナも!」
「……はい?」
「分かるか、イロハ。これぞ一石二鳥ってやつだよ。何を隠そうこのマコト様は、トリニティを恨んでいるアリウスと前々から結託していたのさ!」
「……」
「ティーパーティーの内紛も、クーデターも、私は最初から知っていた。全ては今日の計画のために!」
「クーデター……? いつの間にそんなことを……つまり先輩は、最初からエデン条約を結ぶ気は無かったと?」
「あぁ、そんなことこれっぽっちも興味無いね! 私の関心はずっと、邪魔者どもを片付けることだけさ!」
飛行船内部で演説するマコト。元よりエデン条約など結ぶ気はなく、この機会にトリニティの壊滅を狙っていたのだ。アリウスと手を組み、飛行船を譲り受け、傍観者の視点で鑑賞する。
「あの、マコト先輩。……そのアリウスが下手したらトリニティ以上に憎んでいるのが、私たちゲヘナなんですよ。どうして私たちと手を組むと思ったんですか?」
「……何いっ!?」
「はぁ……。……取り合えず、マコト先輩は一度痛い目に合うべきです」
懐から一丁の拳銃を取り出し、黄色い弾丸をマコトへと発砲するイロハ。ヘイローを持つ彼女たちにとって、拳銃の一発などかすり傷にもなりはしないのだが……、
「イ……ロ…ハ……、な……に…を……」
「減速弾。……これでゆっくりと頭を冷やしてください」
「ねぇねぇ、このたくさん置いてある箱って何? 取扱注意、可燃性って書いてあるけど……」
「……どうやら、冷えるのは頭ではなく心になりそうですね。……イブキ、危ないからここから離れますよ」
「え~?」
(パンッ)(パンッ)
先ほどの拳銃から赤い銃弾を一発ずつ撃ち込み、イブキを抱きかかえたまま飛行船から飛び降りるイロハ。……その数秒後、
(ドカァァァァァァァァァァァン!)
飛行船は爆破され、炎を上げながら墜落していくのであった。
「わぁ~、飛行船爆発しちゃった~」
「……さて、セリナさんにでも助けてもらいますか」
超高高度から落下していく二人。想定以上の爆発によって吹き飛ばされた二人は、当初予定していた落下地点からかなり離れた方角へと落ちていく。
「……あれ? 私のスマホは……」
「イロハ先輩の携帯? それなら、あっちに飛んでるよ~?」
「……あー」
イブキが指さす先、爆風によって粉々になった携帯電話の破片が自分達と同じように落下している。先ほどイロハが自分とイブキに撃ち込んだ弾丸によって、爆発のダメージは相殺したものの、ポケットに仕舞っていた携帯電話は爆発のダメージをもろに受けていたのだ。
「これは、シールド弾でも防げないですね……。……まぁ、イブキと一緒なら良い終わり方でしょうか」
「え~? イブキたち、死んじゃうの~?」
「あれは……イブキ殿?」
「……この世界は、空から子供が降ってくるのが常識なのか?」
「い、いえ、そんなことは! イブキ殿ー! 今助けに行きますからねー!」
「……丁度良い。教えてやった歩法を試してみろ」
「は、はい! 師匠に教わった忍法の出番ですね!」
「……忍法を教えたつもりはないんだがな。……付いて行ってやれ、テンマ」
「……分かりました。ユジン部長」
★★★★★
響き渡る銃声
鳴り止まない悲鳴
そんな地獄と化した戦場の中心で、正気を保っている者が……3人
「クソッ! ……無事か! 先生!」
"う、うん! アロナちゃんのおかげで……、…………アロナちゃん?"
崩壊した古聖堂の瓦礫の中から出てきた無傷の3人。咄嗟に大剣を取り出し、防御態勢を取っていたローランと、神秘を全身に巡らせ防御力を上げていたアルに、シッテムの箱によって守られた先生。
フィクサーとして活動していた二人はともかく、一般人である先生が無傷で済んだことに安堵した二人だったが、
――その代償は軽くなかった
「ぶ、無事で良かったわ、先生」
"シッテムの箱の充電が、切れちゃった……"
「アロナが守ってくれたのか……。指揮能力と防御能力を同時に失うとはな……」
即座に周囲を見渡し、臨戦態勢を取ったローランとアル。先生を庇う様に構えた二人だったが、彼女たちを包囲するかのように、数十匹のネズミチームが武器を構えていた。
「……やはり仕掛けてきたか。……陸八魔!」
「分かってるわ! 3秒後に飛びなさい!」
「掴まってろよ、先生」
"う、うん"
先生を脇に抱え、大剣を手袋に仕舞い拳銃を取り出したローラン。
1st 充電率035%
陸八魔アルの体から溢れ出した電気が、彼女の右脚へと集まっていく。
2nd 充電率070%
電気のような音から徐々に雷のような音へと変化していく。……無論、その隙を逃すことなく銃弾を浴びせるネズミチームだったが、
3rd 過充電150%
――対応が遅かった
「行くわよ」
神秘と電気。その両方を右脚に集中させたアルは、勢い良く地面を踏み抜いた。
地面を奔る朱色の雷。
陸八魔アルを中心に、全方位の地面へと無差別に拡げられた朱色の雷。逃げ場が無いよう、網目状に敷かれた雷は敵味方関係なく、地面に足を着けている全ての者を感電させていった。
人体に影響のあるレベルの高電圧を一瞬で流し込まれた結果、その場から動くことができないネズミチーム。
"す、凄い。これがアルちゃんの力……"
「……我慢しろよ。すぐに巻き戻してやるからな……」
空中に身を投げ、手袋から取りだした黄金銃を構えたローランは、照準を生徒たちへと合わせ、引き金を引こうとした。
……だが、
――結果として、その引き金が引かれることはなかった
「何処に行こうと言うんだ? ローラン」
「キャハハッ! まだ料理の途中じゃないか! ローラン!」
黒い骸骨に白い鮫。
アビドス砂漠で見た、人形師と同じ衣装に身を包んだ二人の怪物達が、ローランと先生の行く手を阻むように立ちふさがった。
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