黒い沈黙の行先   作:シロネム

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~同期~ 紫銀のイオリ

 

 

 

細剣を抜刀し、懐中時計を起動したイオリ。目の前に現れた4本腕の化け物を相手に超高速で接近した彼女は、手にした細剣を目にも止まらな速さで振るった。

 

 

 

 

 

――毒牙――

 

 

 

 

 

蠍のように鋭く、蛇のように自在に変化する刺突。この世界の子供であればまず間違いなく視認することすら出来ないであろう連撃は、化け物の持つ両剣によって弾かれた。

 

 

 

「……おや、まさか反応され――」

 

 

 

「#3%&*%#*()!」

 

 

 

(グチャッ)

 

 

 

両剣によってイオリの攻撃を弾いた化け物は、残る3本の腕に携えた両剣を振るい、イオリの体を斬り裂いた。

 

一撃で両脚を斬り落とし、二撃で両腕を斬り落とし、三撃目で体を真っ二つに斬り裂こうとした瞬間、

 

 

 

――化け物の目の前から、イオリの姿が掻き消えた

 

 

 

「……これは、相性が良くないかもしれないねぇ」

 

(し、死ぬかと思った……。……というか、1回殺されたのか?)

 

 

 

光の粒子となって、化け物の目の前から姿を消したイオリは、10秒前に自身が存在していた座標……つまり、化け物に斬りかかる前に居た場所へと姿を現した。

 

 

T社襲撃時に入手した「存在記憶時計」

 

 

懐中時計を起動した時間を記録し、10秒後に起動した対象の時間を記録した瞬間へと巻き戻す。対象の存在のみを巻き戻す為、対象が取った行動や生まれた結果までは巻き戻らない……が、この時計がなければ今頃イオリは細切れにされていた事だろう。

 

 

 

「私の行動に対応出来る反応速度に、ヘイローによる保護を無効にする程の斬撃……。恐らく崩壊アンプルを取り込んだ武器だろうけれど……これは困ったねぇ」

 

(……ッ、だったら私が!)

 

 

 

(バンッ)

 

 

 

即座に主人格を入れ替え、利き手に構えたライフルを発砲するイオリ。距離を取りながら放つ、高速の3連射。

 

神秘を込めた渾身の一撃を3発も撃ち込まれた化け物は、その銃弾によって身体に傷を付けられたものの、

 

 

 

――数秒後には、何も無かったかのように傷が癒えていた

 

 

 

「んなっ……、傷が……治った?」

 

(再生アンプルの効果だろうね。どんなに致命傷を与えたとしても、殺し切らなければ再生されてしまうのさ)

 

「そんな……、そんなのどうしろって……」

 

 

「#3%&*%#*()?」

 

 

 

化け物の声が戦場に響く。言語として認識することが出来ない……意味の理解できない音。

 

首を傾げ、何処かへ……誰かへと声を上げる化け物。それはまるで、誰かを探しているかのような……

 

 

 

(幸いなのは、向こうから仕掛けてくる気配がないことかね。自意識の欠如……いや、そもそも自意識が存在しない……? ……本当、退屈しないねぇ)

 

「い、イオリ! 楽しんでないで、何か対抗策を考えないと……!」

 

(とは言ってもねぇ、お嬢ちゃん。私以上の速度で動かれる以上、時計が再起動するまで私たちに出来ることは無いともさ。……今は観察の時だよ、お嬢ちゃん)

 

「……っ、アコちゃん! 今のうちにみんなの治療を! アイツには絶対に近づかないで!」

 

 

 

いつでも動けるようにライフルを構え、懐中時計の時間を確認するイオリ。ゆっくりと歩いてくる化け物から意識を外すことなく警戒しているイオリだったが、

 

 

 

「……本当に攻撃してこないな。……アイツは一体何をやってるんだ?」

 

「……#3%&*%#*()? …… ……@#%&*%#3%」

 

 

 

歩いた道に緑色の液体が滴り、地面が爛れた様に溶けていく。辺りを彷徨い歩く化け物は、時々理解不能な声を発し、周囲の瓦礫や地面を攻撃する。今一つ理解できない行動ばかりする化け物だったが、

 

 

 

「……! ……@#%&*%#3%%&*%#3%!!」

 

 

 

――突如、その行動を変化させた

 

 

 

 

 

 

「……! アコちゃん!」

 

「……っ! しまっ……」

 

 

 

(キンッ)

 

 

 

顔を上げ、視界に天雨アコの姿を収めた瞬間、全速力で走りだした化け物。

 

突如として行われた想定外の行動に、一歩遅れを取ったイオリだったが、

 

 

 

「油断は、良くないねぇ……!」

 

 

 

咄嗟に主人格を掌握したイオリ(紫の涙)の攻撃によって、化け物の行動は阻害された。

 

 

 

 

 

――弱点看破――

 

 

 

 

 

(ヒュン)

 

 

 

空間を跳躍し、化け物と天雨アコの間に割り込んだイオリは、高速の二連撃で化け物の腕を1本斬り落とし、天雨アコと共に空間を跳躍する。

 

 

 

「大丈夫かい? アコちゃん」

 

「うっ……ぉぇ……。……そ、その話し方は……、……イオリさんですか」

 

(……ごめん。……ありがと、イオリ)

 

「気にしなくて良いさね。……それより、どうやらあの化け物はアコちゃんにご執心のようだねぇ」

 

 

 

化け物の視界外、丁度死角となる離れた位置へと跳躍したイオリ達は、何かを探すかのように辺りを見渡す化け物の様子を覗っていた。

 

 

 

(腕を斬っても、再生されるのか……)

 

「な、なんで私を狙ってるんですか……」

 

「ふむ……。……アコちゃん、何か心当たりは無いかい? 目の前の化け物と遭遇したことは?」

 

「……無いです無いです! あ、あんな化け物初めて見ました。……どうして私が狙われるんですか」

 

 

 

「……ひっ……ば、ばけもの……」

 

「……@#%&*%#3%」

 

 

 

先程から間違いなく視界に入っている風紀委員達には見向きもせず、声を上げながら辺りを彷徨う化け物。

 

 

 

 

(何を言ってるのかも全然分かんないし、アコちゃんが狙われる理由も全然分かんない……)

 

「理由を探るのは後さね。……そろそろ、60秒だ。お嬢ちゃん、化け物退治を始めるよ」

 

 

 

懐中時計の針が0を指しているのを確認したイオリ。このまま此処に隠れていても、見つかるのは時間の問題だろう。

 

 

 

(化け物退治って……、……私には無理だよ。イオリの攻撃だって防がれて、私の攻撃は回復される。……あんなの、勝ち目なんてないじゃんか)

 

「……諦めるには早計さね。確かに傷は癒えてしまったが、私たちの攻撃が通じてない訳では無い」

 

(それはそうだけど……)

 

「……」

 

「お嬢ちゃん。……確かに私たちには、あの化け物を一撃で殺す手段は無い。……だけど」

 

 

 

――私たちには、それ以上の手数と技量がある

 

 

 

(手数……)

 

「再生アンプルによる回復の隙を与えず殺しきる。たったそれだけさね」

 

(それだけって……簡単に言うけど、出来るの?)

 

「私だけじゃ無理さね。私の跳躍にも必ず隙が生まれてしまう。間髪入れずの攻撃となると――」

 

「……でしたら、私たちが隙を潰します」

 

(アコちゃん……?)

 

「……信じてますよ、イオリ」

 

 

 

そう言い切ると、拳銃を片手に化け物の前へと姿を晒したアコ。

 

 

 

「……! ……@#%&*%#3%%&*%#3%!!」

 

 

 

(パンッ)(パンッ)(パンッ)(パンッ)

 

 

 

行政官の証である自動拳銃。片手に構えた愛銃を連射し続け、化け物の注意を集めていく。銃弾を斬り払い、受け流し、止まることなく近づいてくる化け物。

 

その姿を見てもなお、一歩も引くことなく拳銃を発砲し続けながら、周囲に控えている風紀委員へと指示を出した。

 

 

 

「風紀委員! 総員、攻撃開始!」

 

「行政官!? で、ですが……」

 

「あの化け物の狙いは私です! 私が注意を惹きつけますから、皆さんは攻撃を続けてください!」

 

 

 

少しでも遠く……かつ、離れすぎることなく化け物との距離を維持するアコ。銃弾に込める分の神秘を全身に廻し、息を切らすことなく走り続ける。自身の体力が尽きるその時まで……

 

 

 

――信頼する後輩が、目の前の化け物を倒してくれる時まで

 

 

 

(バララララララララッ)

 

(ダダダダダダダダダッ)

 

 

 

全方位から化け物を囲むかのように放たれる銃弾の嵐。弾道ミサイルによって負った傷の治療が済んだ者から順に、自動小銃を構え目の前の化け物へと発砲し続ける。

 

 

 

「……! ……@#%&*%#3%%&*%#3%!!」

 

 

 

いくらヘイローがあるとはいえ……いくら再生アンプルによる治療があるとはいえ、間髪入れず放たれ続ける銃弾の前に、流石の化け物も足を止めるのであった。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

(アコちゃん……、自分が狙われてるって分かってる筈なのに……)

 

「それだけの覚悟だろうさね。あそこまで私たちを信頼してくれるとは、嬉しいじゃないか」

 

(それはそうだけど……)

 

「……さて、お嬢ちゃん。覚悟は決まったかね?」

 

(……うん。……私たちが、やるしかないんだよね)

 

「そうさね。失敗すれば私たちだけでなく、もれなくアコちゃんも殺されるだろうさ」

 

 

 

目の前の繰り広げられる攻防。飛び交う銃弾の雨霰。一手でも止めてしまえば、即座に行政官が殺されてしまう……ということを、先程の行動から理解していた風紀委員達は、銃を撃つ手を止めない。……止められない。

 

身を挺してまで化け物の注意を惹き、隙を見ては私たちのサポートをしてくれる行政官。あの人を殺させまいと発砲し続ける。一発一発が致命傷になり得ず、銃弾だけが消費されていくが……

 

 

 

――稼いだ時間は、決して無駄ではなかった

 

 

 

「お嬢ちゃん。……先も言ったが、私たちにはあの化け物を殺しきるだけの切札がない」

 

(……)

 

「だけど、それを補うほどの手数と神秘がある」

 

(神秘……?)

 

「そうさね。図書館の恩恵を得ていた腹黒小僧の攻撃を、あれだけ耐えられたんだ。お嬢ちゃんの保有する神秘の総量は、並の生徒よりも多いだろうさね」

 

 

 

ローランとの戦闘時に気づいた美点。

 

銃弾によって吹き飛ばされていった風紀委員とは変わり、数発から数十発の銃弾を受けながらも動き続けられた耐久力。

 

 

 

――即ち、ヘイローによる保護、その為に消費され続けた膨大な神秘

 

 

 

「自信を持ちたまえよお嬢ちゃん。私の行動を知覚でき、私以上の身体能力を発揮できる。……君は強いさ。それこそ、あの化け物にも引けを取らないぐらいにはね」

 

(イオリ……。……そう、だよな)

 

 

 

「私は……ゲヘナ学園の次期風紀委員長になる女だ。……この程度の相手に、後れをを取る訳には行かない!」

 

(それでこそさね。……折角だ、ここで全部出し切ろうじゃないか)

 

「……あぁ。……やろう、イオリ」

 

 

 

 

 

 

――同期化――

 

 

 

 

 

 

一つの身体に二つの意識。お互いの意識を入れ替えながら戦ってきたイオリは、その意識を同期させる。

 

 

 

「分かってると思うけど……、長くは持たないさね

 

 

 

左手に細剣を備え、右手に小銃を持ち、巻き付けた尻尾で刀を構える。

 

一つの身体を二つの意識が同時に操るこの状態は、ほんの少しでも思考がズレ、意識が反発すれば解除されてしまう綱渡り。

 

一度解除されればしばらく放心状態となり、まともに行動することができなくなる程の不調を引き起こすものだが……

 

 

 

――そのデメリットを抱えてなお、余りある恩恵を得られるのであった

 

 

 

思考の多様化。……やっぱり、結構キツイ」

 

 

 

銃弾に神秘を込め、細剣と刀に神秘を纏わせる。銀色の光を放ち、鋭さを増した……ように見える武器を確認したイオリは、一度頷くと刀を下段に構えた。

 

 

 

「右半身と尻尾は任せるさね。……感覚器官が増えるというのは、イマイチ慣れなくてね。……そう? 私は何とも思わないけど……」

 

 

 

尻尾を巻き付けた刀を一度振るったイオリ。感覚の同期に問題がないことを確認した二人は、

 

 

 

 

 

――空間を跳躍した

 

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

「まだですか……イオリ……!」

 

 

 

(バララララララララッ)

 

(ダダダダダダダダダッ)

 

 

 

「攻撃を続けろーー!」

 

「行政官! このままでは銃弾が……」

 

「じゅ、銃弾が尽きました!」

 

「補給物資の確認は……」

 

「ダメです! 先の爆撃で無事な物資は一つも……」

 

「に、逃げてください! 行政官!」

 

 

 

銃弾の雨が止む。数百いや、数千、数万発の銃弾を受けてなお、無傷のまま立っていた化け物は、飛んでくる銃弾が無くなった瞬間、

 

 

 

「……@#%&*%#3%%&*%#3%!!」

 

 

 

――全速力で天雨アコへと襲い掛かった

 

 

 

「……ッ、イオリ!」

 

 

 

(ヒュン)

 

 

 

直後、化け物の背後から奇襲を仕掛けたイオリ。……空間を跳躍し、化け物の腕を斬り落とす。

 

 

「……@#%&*!」

 

止まるな、お嬢ちゃん! ……分かってる!」

 

 

 

(ダンッ)(ヒュン)

 

 

 

腕を斬り落とし、頭にライフルを発砲し、再度空間を跳躍する。――連続して行われる空間跳躍。超光速で行われる異常な回数の連続空間跳躍は、イオリの残像をその場に残すほどの速さで行われた。

 

 

刺突、斬撃、銃撃、打撃

 

 

腕に携えられた両剣を蹴り飛ばし、その勢いのまま刀を振り下ろす。反撃とばかりに薙ぎ払われた両剣を。ライフルを発砲することで相殺し空間を跳ぶ。

 

 

 

「……@#%&ぁ*!」

 

 

 

切り落とした腕を掴み、跳躍した次元へと放り捨てる。足を斬り落とし、次元の狭間へと放り捨て、手落とした両剣を拾い上げ化け物へと突き刺す。

 

 

 

「……@#や%&ぁ*!&&&ぁ@#&」

 

 

 

「今、何か喋って……考えるな、お嬢ちゃん

 

 

 

(ダンッ)(ヒュン)

 

 

 

残り2本。痛みゆえかそれ以外の理由なのか……眼球と思われる部位から緑色の液体を零す化け物は、何かを喋りながら残った2本の腕を滅多矢鱈に振り回す。

 

 

 

(カチッ)

 

 

 

「弾が……! 使え、お嬢ちゃん

 

 

 

振り下ろされた両剣を躱し、ライフル銃を投げ捨て背負っていた大剣を抜刀する。

 

 

 

「……これで、終わらせる!」

 

 

 

大剣に全身の神秘を流し込み、全力で振り抜く。背中から生えた2本の腕ごと化け物の首へと振り抜かれた大剣は、

 

 

 

 

 

――強靭な力によって、首と腕を纏めて斬り飛ばした

 

 

 

 

 

 

「…や…@#%だ&ぁぁ*!&ま…&@#%ま…&ぁ@#&ぁ……」

 

 

 

 






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