黒い沈黙の行先   作:シロネム

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評価、感想ありがとうございます!

そして、投稿が遅くなり申し訳ございません!
ここから先はオリジナルでの展開が増える為、投稿頻度が遅くなる恐れがあります……。

……と言いますか、間違いなく遅くなると思います……。


それでも楽しんで頂けたら幸いです!


~夢想~ 陸八魔アル

 

R社第4群 

 

5匹のミョで構成されたウサギチームとニコライ。

都市で定められたクローン技術に関する約束。

 

同一人物が2名以上存在することは許容されず、かつ7日以上クローンが存在することも許容されない

 

頭によって結ばれたこの約束は、R社にとってある種の枷となって居たのだが……

 

 

 

「……ッ、……頭との約束も、機能してないみたいね」

 

「……詳しいな、朱色の雷。……流石、各翼から要注意人物として危険視されているだけのことはある」

 

 

 

その枷が機能しない今、孵化場にて選別し終えた一番優秀なクローンを複数体用意できるR社は、このキヴォトスにおいて最も脅威度の高い翼と言っても過言ではないだろう。

 

 

 

「危険視……?」

 

「あんたには、特異点の情報を故意に流布した疑いがかけられてんの」

 

「そうそう。裏路地のフィクサーにしては知りすぎだよね」

 

「L社に居たと思えば、W社にも居たらしいじゃん?」

 

「L社の特異点も裏路地にばら撒いたらしいし?」

 

 

 

「そうなれば当然、殺すしかないよね!」

 

 

(ダンッ!)

 

 

その声をキッカケに、アルへと斬り掛かる4匹のミョ。R社の短剣を握り、四方から遅いかかるミョたちに対しアルは、

 

 

 

――咄嗟に、口に加えたパイプから朱色の煙を吹き出した

 

 

 

「……ッ」

 

 

 

戦場に広がる朱色の煙。陸八魔アルを中心に広がる朱色の煙が、彼女たちの姿を包み込む。朱色に染められた電導性の煙は、陸八魔アルの異名の象徴であると同時に、彼女の力を増幅させていた。

 

 

 

(バチバチバチッ)

 

 

 

 

 

 

――招雷――

 

 

 

 

 

 

(バチバチバチバチバチッ)

 

 

 

斬り掛かったミョ達を吹き飛ばすかのように放たれた雷。勢い良く放たれた雷は周囲に漂う煙を帯電させ、煙の中に居る者達を無差別に感電させていく。

 

 

――時間にして約30秒後。球体状に生成された雷の塊が、煙に干渉し周囲一帯を焦がし尽くす。放たれ続けた雷によって、並大抵の相手であれば感電死するのだが……

 

 

 

「情報通りだな。ミョ、手筈通りにやるぞ」

 

「オッケー」

 

「まぁ、知っていれば対処ぐらい余裕……って、1匹逃げ遅れてるじゃない」

 

「あはは! 全く、足手まといね!」

 

「どうせ死ぬなら、腕1本ぐらい捥ぎ取ってから死ねっての」

 

 

 

全身に超高圧の電流を流され焼き焦げたミョ。足元に転がるミョを一瞥してから、アルは次の攻撃へと移行する。

 

 

 

「あと4匹……。……節電してる場合じゃ……ないわね!」

 

 

 

パイプを懐に仕舞い、赤の便利屋のブレードを腰に収め、右掌へと雷を収束させる。……電流に神秘を流し、イメージする姿へと形成し、留め、

 

 

 

――勢い良く、ミョ達へと投げつけた

 

 

 

 

 

 

――朱雷槍――

 

 

 

 

 

自身の身長よりも巨大な槍の形へと雷を変質させ、全力で投擲する。音速とほぼ同義……いや、それ以上の速度で投げつけられた雷槍がミョ達を貫く……かのように思われた。

 

 

 

「だから、知ってれば対処できるっての!」

 

 

 

――雷槍が当たる瞬間、

 

空中へと跳び上がり、構えていた短剣で雷を受け流したミョ。朱色の雷が短剣を伝い、自身へと電流が流れるよりも速く、帯電した短剣を陸八魔アルへと投げ返す。

 

 

 

「雷返し、練習した甲斐があったわね」

 

「リクハチマ。アンタを殺す為だけに貴重な時間を割いたんだから、感謝しなさいよね」

 

「アンタの為だけに、何人もの私が死んだんだから」

 

「って、感電しててそれ所じゃない感じ?」

 

「ミョ、油断するな。散開しながら隙を狙え」

 

「「「「了解~!」」」」

 

 

 

各匹それぞれが距離を取り、陸八魔アルを囲むように配置。2匹が自動小銃を、もう2匹が短剣を主装備として構え、標的に対し最適な対応を取る。同じ思考、同じ身体能力を持つものだからこそ出来る、完全なる同調。

 

言葉を交わさずとも、自分だったらどう動くかを思考し、それに対する最適な行動を選択する。それこそが、頭に統治される以前の……全盛期と言っても過言ではない、R社本来の戦闘術

 

 

 

――今の都市では絶対に出来ない、全面複体戦闘

 

 

 

★★★★★

 

 

 

「……ッ」

 

 

 

不味いわね……。R社って聞いていたから、ウサギやトナカイと戦うことになると思っていたけれど、まさか複数のミョと戦うことになるなんて……。

 

 

……残り85%

 

 

……

 

 

私の弱点も、恐らく把握されているのでしょうね。私の技の中で最も射程距離のある雷槍に対応された以上、遠距離からの雷は通用しない。……幸い、雷槍に使った分の電力は返して貰えたけれど、それも知られた今返してはくれないでしょうね。

 

 

 

……それなら、

 

 

 

「近距離戦に持ち込んで、一匹ずつ始末する」

 

 

 

……私の充電が切れる前に、終わらせないと!

 

 

 

(バチバチバチバチバチッ)

 

 

 

全身に雷を流し、反応速度を極限まで高めていく。末梢神経に莫大な量の神秘と雷を流し、爆発的な行動速度を実現する。赤の便利屋の短剣を逆手に構え、

 

 

 

――光よりも速く駆け抜ける

 

 

 

 

 

 

――雷獣――

 

 

 

 

 

 

陸八魔アルの移動した痕跡に沿って降り注ぐ朱色の雷。駆け抜けた道を焼き尽くすように降り注ぎ続ける朱色の雷は、狙ったミョ以外の接近を許さず、アルの望んだ状況……

 

 

妨害の入ることのない、1対1の状況へと連れ込んで行く。

 

 

 

「2匹目……」

 

「は? 一体何を……」

 

 

 

(バチバチバチバチバチッ)

 

 

 

逆手に構えた赤の便利屋の短剣を持ち直し、高速で……いや、雷速でミョへと接近したアルは、

 

 

 

――夢で視た記憶を頼りに、攻撃を再現する

 

 

 

 

 

 

――経験・Warp社――

 

――再現・空間切断――

 

 

 

 

 

 

目にも止まらぬ速さで刻まれる朱色の斬撃。超高圧電流によって刻まれた焼き痕は、ミョの肉体を焦がすと同時に、その生命活動を停止させた。

 

 

 

「……っ……リク、ハチマ……ッ!」

 

「残り3匹。……50%」

 

 

 

 

――充電切れ

 

 

 

現状、アルが最も恐れている事象。神秘を介し、自身の肉体を触媒とすることで発電する彼女にとって、装備による発電が出来ない現状において、

 

充電切れは即ち、戦闘不能を意味することとなる。

 

W社の武装と違い、攻撃と同時に発電することの出来ない彼女が雷を自在に操るには、時間をかけて神秘を練り直すしかない。

 

 

 

「3匹? ……勘違いしてる所悪いが」

 

 

 

――さっさと起きろ、ミョ

 

 

 

「……ババァ。折角このあたしが死んだふりまでしてたってのに」

 

「時間の無駄だ。さっさと体制を整えろ」

 

「はいはい」

 

 

 

先刻、陸八魔アルの雷撃を受け、全身を焼き焦がしていたミョ。当然死んだと……少なくとも、数時間から数日は行動不能だろうと予想していたアルの考えを、裏切るように動き出したミョ。

 

空になった注射器の様な物を投げ捨てた彼女は、自動小銃を構え距離を取る。その捨てられた容器に見覚えがあったのか……アルは思わず苦虫を嚙み潰した。

 

 

 

「再生アンプル……っ、まさかK社も関わっているなんて……」

 

「……本当に博識だな。お前のその情報が、一体何所から来ているのか気になるよ」

 

「……私が喋るとでも?」

 

「当然、思ってなどいないさ。情報の出所に関しては、お前を殺してから探るとしよう」

 

「……この惨状を見ても、私に勝てると思っているのかしら?」

 

「無駄な虚勢はよせ。朱色の雷の情報については知っていると言っただろう。得意とする戦術から使用する装備……」

 

 

――無論、弱点もだ

 

 

「……」

 

「他の色と比べ、朱色の雷は継続戦闘能力に欠ける。N社からの情報と今の戦闘を見て確信したよ」

 

「……っ」

 

「――どうやら、私たちは相性が良くないみたいだな」

 

 

 

瞬間火力に優れ、一撃の威力だけを見るのであれば他の色をも凌駕する朱色の雷。

 

そんなアルに対し、孵化技術によって造り上げた戦闘特化クローンを使い、質に対し量を持って蹂躙するR社。唯でさえ相性が良くない状況だが、ミョのクローンという優れた量に加え、再生アンプルと言う絶対的な回復手段まで用意しているR社。

 

現状どちらが優勢かは、火を見るよりも明らかだろう。

 

 

 

――現状が維持されるのであればの話だが

 

 

 

「……そうね。確かに、私とあなたたちの相性は良くないわね」

 

「……」

 

「……一つ、私からもあなたの勘違いを訂正しておくわ」

 

「……なんだと?」

 

「確かに私の充電には限りがあるわ。……だけど」

 

 

 

――雷だけが私の力なんて、誰が言ったのかしら

 

 

 

「……ッ! ミョ! 今すぐ距離を取れ」

 

「は? 何言ってんのババァ」

 

「更年期障害?」

 

「包囲しろって言ったのはあんたでしょ」

 

「それに、見てからでも対処なんて余裕じゃん?」

 

 

 

今までの戦闘経験から、大凡の行動速度を確認したミョ達。雷速……とは言ったものの、それは決して捉えきれない速度ではない。自身の目の前で……それ以上の速度を持つものに救われた過去を持つミョにとって、雷速など子供騙しに過ぎないのだ。

 

現に音よりも速く放たれた攻撃に対し、最適解で対処したミョに取って、モーションを確認してからの対応など造作でもなく……、

 

 

 

――それ故に、油断していた

 

 

 

油断して……しまった。例え自分の何匹かが殺されたとしても、誰か一人は生き残れるだろう。……そうなれば、充電の切れたリクハチマなど相手にすらならないと慢心した。

 

 

思考の同調

 

 

自身の複体故の致命的な欠点。オリジナルの思考に基づき、即座に行動できるミョだからこそ起こってしまった欠陥。

 

 

 

1匹のミョの慢心が、病的な速度で伝染する。

 

 

 

「――もう遅いわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「社長、まさか……」

 

「カヨコちゃん?」

 

「カヨコ課長……?」

 

 

 

狙撃銃のスコープ越しに戦況を把握していたからこそ気づけた違和感。あの日、あの夜に聞いた夢の出来事。

 

 

 

――夢の自分との同期化

 

 

 

それが齎す絶対的な権能と……致命的な代償。

 

 

 

「ハルカ、ムツキ! 今すぐ社長の元に行って!」

 

「えっ……」

 

「ちょ、ちょっと、カヨコちゃん?」

 

「早く! 社長が私たちを忘れる前にッ!」

 

 

「「……!」」

 

 

 

……確証はなく、その瞬間を目にしたことがある訳でもない。……訳でもないが、もしもあの日、あの夢から覚めた日に社長が言っていた事が真実なら、本当にそんなことが出来るのなら……

 

 

――直ぐにでも止めないと、取り返しのつかないことになる

 

 

 

★★★★★

 

 

 

夢の自分との同期化。枝分かれした可能性の世界を、夢という事象を用いて経験したアルが手に入れた能力。同期化……と言ってしまえばそれまでだが、それはつまり自身の核である殻を付け替えるようなもの。人格そのものを……陸八魔アルとしての存在を一度抹消し、本来の陸八魔アルとは違う、また別の殻を身に纏う。

 

……多重人格をイメージすると分かりやすいだろうか? 殻ごとに辿って来た道筋があり、生き抜いた経験があり、物語がある。

 

それを限定的とは言え、自身に憑依させるというのは並大抵の精神力で行えることではない。……カルメンから何度も忠告された異能。……殻を入れ替えることで、今とは違う人生を歩めるかもしれないが、

 

 

 

――最悪の場合、自我の喪失を引き起こす悪魔の取引

 

 

 

そうなってしまえば最後、自身の殻を取り戻す方法は無いに等しく、死よりも残酷な抜け殻となってしまう。……可能性の一案として採用されかけたものの、定着化が難しく、尚且つそれでは根本的な解決に至らず……病の治療には使えないとして棄却された権能。

 

 

……だけどもし、その力を引き出せたのなら……、違う世界の自分から力を借りられるのなら、

 

 

 

――それはきっと、無限に等しい手札となるだろう

 

 

 

 

 

 

――経験・Warp社――

 

――経験・TimeTrack社――

 

――経験・Lobotomy社――

 

――経験・ハナ協会――

 

――経験・楔事務所――

 

――経験・チャールズ事務所――

 

 

 

 

 

 

――多元同期化(multiverse)――

 

 

 

 

 

 

 

 







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