黒い沈黙の行先   作:シロネム

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評価、感想ありがとうございます!


※作中で語られる解釈は、あくまで本作品に限ります。






~堕涙~ 世界の真実

 

「代理人! 聖徒会は私が引き受けるっす!」

 

「無茶だ! E.G.Oも無いのに……」

 

「大丈夫っす! やりようは幾らでもあるんで!」

 

 

 

月光石で鍛え上げられた二刀を抜刀し斬りかかる。どのE.G.Oがどれぐらいの強さで、どんな能力を持っているのかをある程度把握していた隊長は、各武装に対し最善手で攻めて行き、ユスティナ聖徒会の数を着実に減らしていく。

 

 

 

BLACK属性

 

 

 

かつてのロボトミー社で分類されていた攻撃属性の1つ。肉体と同時に精神へもダメージを与える月光刀は、実態を持たないユスティナ聖徒会にとって、最悪の相手と言わざるを得ないだろう。

 

 

 

「――さて、こちらもそろそろ始めましょうか」

 

 

 

間髪入れずに飛んでくる魔法。結ばれる数々の契約。プルートを囲むように現れた橙色の魔法陣から放たれた魔法が、二人へと襲い掛かる。

 

 

 

「くそっ……、先生、アロナはまだ起動しないのか!」

 

"……ダメみたい。完全に電源が落ちちゃってる"

 

 

 

デュランダルを取り出して魔法を斬り払い、その勢いのまま瞬時に次の武器を取りだし、魔法を相殺する。

 

 

 

「よそ見してるんじゃないよ!」

 

 

 

(キンッ)

 

 

 

振り下ろされるミートハンマー。食材をミンチにすることだけを考えて作られた調理器具を全力で振るい、プルートの魔法によって出来た隙を見逃さず襲い掛かる。

 

咄嗟に取り出したデュランダルで何とか弾き返すものの、入れ替わるように放たれる魔法が、

 

 

 

――ローランと先生の距離を着実に広げていく

 

 

 

「クソッ! お前ら、そこをどけ!!」

 

 

 

(ダンッ) (ダンッ)

 

 

 

ロジックアトリエを撃ち込み、ホイールズ・インダストリーを振り下ろし、先生へと手を伸ばすローランだったが、それを許す程甘い相手では無い。

 

 

 

「これはこれは……、お急ぎのようで」

 

「カッカッカッ!!! あの女を失うのが、そんなに怖いのかい!」

 

 

 

飛び交う魔法

戦場に響く甲高い剣戟の音

 

殺しても殺しても増え続けるユスティナ聖徒会の猛攻に耐えきれず、圧倒されていく隊長。持て余したユスティナがローランへと襲い掛かり、手の届かない距離へと引き伸ばす。

 

 

 

「……シャーレの先生。邪魔が入る前に始末させてもらう」

 

"……君が、アリウススクワッド?"

 

「……。……あぁ、私たちがアリウススクワッドだ」

 

"……"

 

「アズサが世話になったと聞いた。あいつには今から会いに行く予定だ」

 

 

 

(カチャ)

 

 

 

「…………やめろ」

 

 

 

銃口を向けられた無防備な姿。脳裏を過るあの日の惨状。

 

 

 

 

「やめてくれ…………」

 

 

 

 

面影を宿した後ろ姿

 

今も記憶に残り続ける幻影

 

武器を投げ捨て、咄嗟に手を伸ばしたローランの先で――

 

 

 

 

 

 

一発の銃弾が、先生の身体を撃ち抜いた

 

 

 

 

 

 

――――先 生(アンジェリカ) !!!!

 

 

 

 

(バンッ)

 

 

 

腹部を貫く一発の銃弾。流れ出す赤い血液。シッテムの箱による防護を失い、生身となった肉体で初めて味わう痛み。傷口から溢れ出す血液が先生の体温を奪い、意識をも奪っていく。

 

 

 

 

「……っぁ……ぁぁ……」

 

 

 

崩れ落ちるローラン。目の前の光景が、あの日、あの場所で見た光景と重なる。世界への復讐を誓ったローランに訪れた二度目の喪失。彼女(先生)彼女(アンジェリカ)では無いと頭では分かっているものの、

 

 

――心がそれを認めない

 

 

同一視していないとは言っていながら、その実ローランは先生をアンジェリカの代替品として……、アンジェリカ本人として意識してしまっていたのだ。

 

 

その結果、齎されることとなる絶望

 

 

 

「……どうやら、準備が整ったみたいですね」

 

 

 

どうしてこうなった

 

誰のせいでこうなった

 

もう二度と失わないと決めていたのに

 

 

 

「カッカッカッ!!! あのローランをねじれさせるとは、相変わらず趣味が悪いねぇ!」

 

 

 

警戒が足りていなかった

 

準備が足りていなかった

 

油断した

 

甘く見ていた

 

心のどこかで、この世界でならアンジェリカを守れると高を括っていた

 

 

 

「いえいえ、生徒で料理を作る貴方程ではありませんよ」

 

 

 

「「(キャ)ハハハハッ!!」」

 

 

 

その結果がこれだ

 

俺が先生を戦場に連れてきたから

 

俺が護衛を雇いきれなかったから

 

 

 

――俺が先生を、守り切れなかったから……っ

 

 

 

「正解。君のせいで彼女は死んじゃったんだよ」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

――何も見えない

 

 

――暗い暗い暗い

 

 

 

――意識が……落ちていく……

 

 

 

ここは何処だ?

 

 

 

……いや、これがアンジェラの言っていた――

 

 

 

「代理人。どうして私を守ってくれなかったの?」

 

 

……

 

 

「……取り合えず、その姿はやめろ。――お前がアンジェラの言っていたカルメンだな」

 

「……うーん。やっぱり、道を見つけてる君には通じないかぁ」

 

 

……

 

 

「初めまして、ローラン。私がカルメンだよ」

 

「お前に会ったってことは……はぁ……」

 

「人の顔を見て溜息を付くとは失礼だね」

 

「俺は先生とアンジェリカを同一視してたのか……」

 

「まぁ、しょうがないんじゃない? 先生と君の恋人に関係性が全く無いという訳でも無いんだから」

 

「……どういう意味だ」

 

「うーん、どこから話そうかなぁ。まぁ時間なら沢山あるし、順に説明してあげるよ。私も君と話してみたかったからね」

 

「俺はお前と話したくなかったんだがな」

 

 

 

白衣を纏った一人の女性、カルメン。――そう名乗る女性から語れる、この世界の成り立ち。

 

 

 

「まず大前提のお話なんだけど、この世界が未来の世界って気づいてる?」

 

「……は?」

 

「うーん、その様子だと気づいてないかぁ。このキヴォトスはね、

 

 

 

君が生きていた時代から、数億年先の都市なんだよ

 

 

 

「学園、自治区、部活動。この世界の成り立ちってさ、都市の構造に似てると思わない?」

 

 

 

学園という翼

 

自治区と言う巣

 

部活動と言う協会、ないしは事務所。

 

 

 

「付け加えるのなら、連邦生徒会長。そして君のいる連邦捜査部シャーレ。君たちの立場ってさ、

 

 

 

――調律者に似てると思わない?

 

 

 

「……」

 

「……あれ? に、似てないかな?」

 

「いや、言いたいことは分かるが……、それだけの理由で此処が都市の未来と言われてもだな」

 

「いまいち納得できてないみたいだね。そうだなぁ、じゃあ、

 

 

 

どうしてこの世界の子供たちは、E.G.Oを発現できたと思う?

 

 

 

「L社が光を打ち上げたのは、都市だけだよ。この世界の支社……まぁ正確には支社じゃないんだけど、この世界でもう一度光を打ち上げたとかはでは無いんだよね」

 

「……い、色々と聞きたいことが増えていくんだが……確かに、お前がこの世界にいるのは不自然だと思っていた」

 

「私としては、本能のまま自分自身の殻を曝け出して欲しいんだけどね。どうにもキヴォトスの子供は、殻が固い子が多くてさ~」

 

「お前の進んでいる道については、アンジェラから聞いてるから何も言うつもりは無いが……俺がお前と対話できてるってことは」

 

 

 

――俺もねじれになるって事か?

 

 

 

「いや、それが無理そうなんだよね。だって君、もう既に殻を無くしてるみたいだし」

 

 

……

 

 

「……殻を、無くしている?」

 

「うん。ピアニストの前で復讐を誓った時、かな? 君は自分自身を殺して、底辺フィクサーを名乗って図書館に侵入してたみたいだけど、

 

 

 

――本当は9級フィクサーになれて、嬉しかったんでしょ?

 

 

 

「危険な任務を与えられることも無く、極々平凡な人生を……あの裏路地の小さな家で、恋人と2人で平和に過ごしたかったんでしょ?」

 

「……」

 

「それでも、あの時の君はまだ不完全だった。落ちこぼれの底辺フィクサーになれた安心感と、溢れ出す復讐心の狭間で彷徨っていた。……殻を完全に無くしたのは、図書館でアンジェラを許した時かな?」

 

「……」

 

「幻想体という殻を持つ者たちに影響され、利用し、感情を増幅させ……本当なら復讐に囚われていてもおかしくなかったのに、君はアンジェラを許した。光の中から彼女を連れ出して……恐らくその時に、

 

 

 

――君はローランという殻を無くした(エンディングに辿り着いた)んだろうね

 

 

 

「あー、ちょっと待てカルメン」

 

「何かな?」

 

「いや……お前が何を言ってるのか全然理解出来ないんだが……」

 

「??? ……えっと、難しかったかな?」

 

「もっと簡潔に話してくれ。……取り敢えず、俺はねじれにならない……なれないって事でいいのか?」

 

「そういう事だね。付け加えるなら、E.G.Oも発現出来ないよ。まぁ、幻想体のE.G.Oを好き勝って使ってるんだし、いらないよね」

 

「自分だけの装備に興味が無い訳じゃないが……むしろ気にはなるが……」

 

「えぇ……? あれだけ色んな武器を使ってるのに、他にもまだ欲しいの?」

 

「……」

 

「マニアだねぇ。そういう事なら、幻想体達にお願いしてみたら? 君はどうにも彼等に好かれているみたいだから」

 

「好かれてる……? 幻想体に?」

 

「うん。さっき、ねじれにはなれずE.G.Oも発現出来ないって言ったけど……君の本質はもう、半分ぐらい幻想体だよ?」

 

「……は?」

 

「まぁ、あれだけ好き勝手幻想体のE.G.Oを使ってたんだから、侵食されてない訳ないよね。 それでも君がまだ人の形を保てているのは、幻想体に好かれているからだよ? ……みんな、君のような愚かな管理人が好きなんだってさ」

 

「……喜べばいいのか? これ」

 

「素直に喜んでいいと思うよ? いやぁ、本当に君は面白いね」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

「さて、話を戻そうか。この世界は、未来の都市って言ったけれど、厳密には君の居た都市とは違う世界なんだ。パラレルワールドって知ってる?」

 

「あぁ、前にイオリがそれっぽい事を言っていたな。確か……並行して存在する別世界だったか?」

 

「その認識であってるかな。遥か未来の都市。無数に起きたであろう戦争。結果としてこの世界の翼は1つ残らず崩壊したんだけど……」

 

「誰かが過去の翼を招いた……」

 

「お~、察しがいいね。この世界に招かれた翼は、君の居た都市の、君が居た時間軸の翼なんだよね。正確には、図書館から光が放たれた後の都市だけど」

 

「……詳しいな。なんでそんなに、この世界の情報を持ってるんだ?」

 

「ん~、連邦生徒会長から聞いたから、かな。あの子とお話してるうちに、この世界の成り立ちについて凡そ理解出来たんだよね。……まぁ、あくまで私たちの自論だけど」

 

 

 

並行世界の都市。それも数億年先の、未来の都市。

 

数え切れない程の戦争と利権争いによって、1つ残らず崩壊した翼。何処かの特異点か……或いは遺跡の遺物によって、神秘という概念を付与された住民。

 

何処で手に入れたのか、一体いつから持って居たのかは不明だが……持ち前の能力と特異点を利用し、かつての調律者の様な立場で世界を纏め、創り上げた箱庭。

 

 

 

 

 

――ネバーランド――

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

――それこそが、キヴォトスである――

 

 

 

()()()()キヴォトスとは、よく言ったものだよね。本質は兎も角、未熟な子供たちだけで形成された都市。いやぁ、聞かされた時はびっくりしたよね。まさかこんな解決法があるとは思わなかったからさ」

 

「解決法?」

 

「うん! 悪意に染まりきっていない子供……病を患っていない生徒たちに、世界を運営させる。特異点という技術を完璧に管理し、都市から悪意に染まった大人という存在を一人残らず消し去れば――」

 

 

 

都市は正常に機能する

 

 

 

「まぁ、消し去るは言い過ぎかもしれないけど……大人と子供のパワーバランスを逆転させるのは一つの手だと思うんだよね」

 

 






――学園都市キヴォトス


ローランが居た都市とはまた別の、並行世界の都市が辿った未来の一つ。数億年の時を得て、翼は消滅し、特異点も消滅し、



大人と生徒の力関係が逆転した世界



数億年経っても、残された傷痕は消えないが……、
世界が患っている病は、寛解したと言っても過言ではないだろう


だがしかし、


植え付けられた光の種を、取り除く事は出来ない。


たとえそれが、調律者のような立場である連邦生徒会長だとしても――




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