黒い沈黙の行先   作:シロネム

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~明鏡~ 世界に隠された秘密

 

「さて、このキヴォトスの成り立ちはこんな所かな」

 

「あぁ……いまいち理解出来なかった上に、なんで急に世界の話をしだしたのかも分からなかったが……」

 

「まぁ、暇つぶしだとでも思ってよ。こうして私と話せる相手なんて滅多に居ないんだからさ」

 

「……っ、俺は、先生を助けに行かないと……」

 

「あ、それなら大丈夫だよ。ここでの時間は、現実時間では数秒しか経過してないから」

 

「……そうなのか?」

 

「うん。私が意識に干渉する際に色々と……ね。……考えても見てよ。私が頑張って頑張って頑張っ~て本能を解き放とうとしてるのに、その間に現実の身体が殺されちゃったら意味無いでしょ?」

 

「いや、そんなことを頑張られてもだな……」

 

「まぁまぁ、私が満足したら帰してあげるからさ、もう少し雑談に付き合ってよ。並行世界の元先生達や、

 

 

 

――アンジェリカ先生についても、教えてあげるよ?

 

 

 

★★★★★

 

 

 

失われた神々の再現を目標に活動していた研究組織

 

ゲマトリア

 

 

 

まぁ、これはあくまで前身組織であって、今の彼らはゲマトリアの名を使ってるに過ぎないんだけど、

 

 

 

「その前に、ゲマトリアって知ってる?」

 

「ゲマト…………あぁ、格ゲー大会に出てたアイツらか」

 

「……え、何それ。格ゲー大会に出てたの? あの人達が?」

 

「出てたぞ? 確か、黒服にマエストロ、ゴルゴンダにデカルコマニーだったか?」

 

「えぇ……? いや、え? 何で?」

 

「なんか金欠……じゃなかった、青輝石が欲しかったみたいだぞ。そういえば、アレも特異点とか言ってたような……」

 

「あ~、なるほど。うーん、そこまでしてガチャが引きたいのかなぁ」

 

「ガチャ?」

 

「あ、ごめん。向こうの世界の話だから気にしないで」

 

「お、おう……?」

 

「……ごほん、話を戻そっか。そのゲマトリアなんだけど、あの人たちは殻を破っているんだよね」

 

「……要するに、ねじれになっているってことか?」

 

「正解。私がちょちょいと声をかけてあげたら、すぐに殻を破ってくれたよ。……まぁ、そのせいで変に固執されちゃってるんだけど」

 

「……そのゲマトリアがどうかしたのか?」

 

「さっき、並行世界の話をしたでしょ? 彼らはみんなキヴォトスの外部から来た存在で――」

 

 

 

――並行世界の先生だった人たちなんだよね

 

 

 

「このキヴォトスとはまた別の、時間も歴史も全く異なるキヴォトスで、一人の先生として生徒たちを導いていた存在。それがゲマトリアなんだ」

 

「あいつら一人一人が先生……」

 

「今はもうただの研究者だけどね。自分たちの世界を滅ぼした存在に対抗する手段を模索してるところかな」

 

「……ちょっと待て。世界が滅ぼされてるのに、今更対抗手段を練った所で……。……まさか、」

 

 

 

――この世界も、ソレに滅ぼされる可能性があるってことか?

 

 

 

「そういう事。そして、連邦生徒会長が用意した、ゲマトリアとは異なるこの世界の正当な先生が」

 

「アンジェリカ……先生ってことか。さっき言ってた、先生とアンジェリカが無関係じゃないってのはどういう意味だ?」

 

「うーん、むしろ逆に聞きたいんだけど。名前も見た目も全く一緒なのに、何も関係がないと思ったの? ただの偶然、偶々姿形が似通ったと?」

 

「……」

 

「そんな訳ないよね。まぁ、結論から言っちゃうと」

 

 

 

――アンジェリカ先生は、アンジェリカのクローンなんだよ

 

 

 

「とある研究所で生み出された、アンジェリカのコピー。翼の名残り、頭の監視外での実験。技術としてはR社に近いけど、実情は全く違う。記憶を引き継いでなければ戦闘能力も引き継いでいない、劣化品」

 

「それが先生だと?」

 

「うん。本人はそのことを覚えてないみたいだけどね。連邦生徒会長が拾ってきた迷い子。コールドスリープから目覚めた実験体。一から造り上げた救世主。身の丈以上の解釈と特異点を身体に埋め込まれた人工の神。運命のレールから外れ、自分自身でレールを引くことができる唯一の人」

 

 

 

――それこそが、先生の正体だよ

 

 

 

「全く、連邦生徒会長も過保護なんだから」

 

「……そこまでして、連邦生徒会長は何がしたいんだ? ……というか、特異点を埋め込むって……なんでそんなに特異点を所有してるんだ?」

 

「さぁ……? 分かりやすいから特異点って言ってるけど、翼が所有していたものとは全く異なるものだしねぇ。大方並行世界の自分から掻き集めたのか、遺跡から発掘でもしたんじゃないかな」

 

「……言葉通りじゃなくて、特殊な力がある……ぐらいに考えておいた方がいいか?」

 

「それぐらいの方が、精神衛生的に良いかもね」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

体感数時間程度だろうか? この世界のこと、ゲマトリアのこと、先生のこと……そして、幻想体のこと。

 

カルメンから一方的に与えられる情報の暴力に耐え、蒼白の書……、図書館の幻想体が封じ込められた一冊の本の本当の使い方を教え込まれたローラン。

 

 

 

「アンジェラから与えられたあの本。そうだなぁ、蒼白の書とでも呼ぼうか。図書館と同じで、君の持つ蒼白の書も、恐らくアンジェラのE.G.Oだろうね」

 

「呼び方は好きにしてくれ……って、E.G.O? この本が?」

 

「多分ね。君は幻想体の力を借りる時、1度に1体の力しか借りていないみたいだけど、同時に2体以上の力は借りないの? 恐らく……今の君なら、5体ぐらいまでなら人間としての原型を保っていられると思うよ?」

 

「……そう、なのか?」

 

「幻想体に好かれてる君なら大丈夫だよ。……さて、君に伝えなければならない事はこれぐらいかな? いやぁ、こうして人と話すのは久しぶりだから、とても楽しかったよ」

 

「……左様で。俺からしたら余計な情報と頼み事を纏めてぶつけられた感覚なんだが」

 

「まぁ、そう言わないでよ。色彩の脅威は確実に迫ってるし、君にとっても悪い話じゃないでしょ?」

 

「色彩ねぇ……」

 

「おや、あまり危機感を抱いてないみたいだね?」

 

「いや、危険だとは思うが……、今のこの状況に似てると言うか……」

 

「私に? ……確かに似てるかもしれないけど、私が干渉できるのは殻にヒビが入った者だけだよ」

 

「それはアンジェラから聞いたが……」

 

「対して色彩の接触対象に制限はない。あくまで私の推測だけどね」

 

「……」

 

「うーん、いまいち実感が沸いてないみたいだね。それじゃあ、もしも……」

 

 

 

――世界そのものがねじれたら…………反転したらどうかな?

 

 

 

「……は? 世界そのものって…………キヴォトスがねじれるってことか?」

 

「その可能性もあると私は考えるよ。ねぇ、ローラン」

 

 

 

 

 

 

――この世界の空には何がある?

 

 

 

 

 

 

「……空? いや、何があるって言われて……も……」

 

「……」

 

「まさか……、いやでも、そんなことってあり得るのか?」

 

「ローラン。私と君が居た都市に無くて、この世界にあるものって何かな。この世界に住む、特別な力を持った子供達全員が持っていて、力を失った大人が持っていないもの」

 

「……」

 

 

 

――ヘイロー(神秘)

 

 

 

この世界にのみ存在するもの。

 

都市(キヴォトス)にあって都市に無かったもの。

 

生徒全員が持つ、特殊な力。そして……

 

 

 

青空を埋め尽くすように広げられた、巨大なヘイロー(天使の輪)

 

 

 

それはつまり、世界に神秘が満ちていることを示すと同時に、

 

 

 

――この世界が生きていることを示していた

 

 

 

「座標を見るに心臓……殻は恐らくサンクトゥムタワーかな? 勿論、これはあくまで私の推測だから、ただの与太話だと思って流して貰っても構わないよ」

 

「そんな話聞かされて、流せるわけないだろ」

 

「どうして? 君はあくまでアンジェラに命じられてこの世界に来てるだけだよね? 別にこの世界がどうなっても、君が気にすることはないんじゃない?」

 

「それは……」

 

「もしかして、この世界に愛着でも沸いたのかな? まぁ、都市と比べたら間違いなく楽園だし、気持ちは分かるけどね」

 

「……別に、そう言うわけじゃない。都市の苦痛を取り除く方法。それを見つける前に世界が崩壊したら困るってだけだ」

 

「……なるほどね。……そう言うことにしといてあげるよ」

 

 

 

 

 

全く、素直じゃないんだから。

 

 

 

 

 

 





ゲマトリアが参加した格ゲー大会については、

【幕間】 Κιβωτός Championshipをご一読下さい。

時系列としてはパヴァーヌとエデン条約編の間となっている為、今後の内容に関わるネタバレはございません。


あくまで箸休めのギャグテイストな内容ですので。





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