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鳴り止まない爆発音。フロアごと吹き飛ばさんと、仕掛けられた無数の爆弾が連鎖的に起爆し、アリウススクワッドへと襲い掛かる。
「……っ、いつの間に、ブービートラップまで」
「わわっ、こっちにも……!」
「(スッ……)」
「全員動くな! 姫の安全を最優先に、爆発に対しては各自で対処しろ! 私はアイツを追う!」
降り注ぐ瓦礫を蹴り飛ばし、気配と足音を頼りに最速で駆け抜ける。孵化場で鍛え上げた身体能力を全力で発揮したサオリは、爆風の勢いを利用したまま走り続け、確実に仕留められる距離まで追い詰めていく。
「はぁっ、はぁっ……角を曲がって、次へ……」
「行かせるかッ!」
(ダダダダダダダダダッ)
ばら撒かれる銃弾。相手の動きを一定方向へと誘導するべき放たれた銃弾は、アズサの逃げ道を塞ぎ、
――サオリとの距離を0にした
放たれた銃弾を躱し、構えられたアサルトライフルを弾き飛ばし、銃口をアズサの額に押し付け、
「チェックメイトだ、アズサ」
「……くっ」
「……お前にしては良くやった。それでも無駄だ。お前の考え方、思考、それらは最初から全てお見通し……」
「……」
「最初から、無駄な抵抗だったんだよ」
「いつから……?」
「?」
「いつからアリウスは、翼の奴隷に成り下がったんだ……」
「……」
「実験は、私で最後じゃなかったのか……!」
「黙れ」
「いつの間に、あんな不思議な力を操れるようになったんだ……?」
「……。……アズサ、どうしてお前が勝てないのか分かるか?」
「……」
「……」
――弱いからだ
「孵化場での生存競争を忘れたのか? ……今のお前からは、殺意を感じない」
「……」
「翼の奴隷? 不思議な力? ……それがどうした。私たちが手段や道具にこだわるとでも? ――私たちの恨みを証明できればそれでいい。……それ以上でも、それ以下でも無いのさ」
「サオリ……もう一度聞く、いつからだ?」
「……?」
「その恨みを、私はあの時ただあそこで習っただけだ。そうあるべきだと教え込まれ……」
「――虚しい」
(ダンッ)
「弱いな、白洲アズサ。その弱さはお前を縛り付けているんだ。……そう、こんな状況でも離そうとしないその人形のように」
「……!!」
「初めてお友達がくれたプレゼントか? ――虚しいな」
(ダダダダダダダダダッ)
★★★★★
「……以上が、彼女たちが辿る末路だ」
"……"
「この後、アズサは人形に仕込んだ爆弾を起爆し、サオリとアツコを殺しかけるだろう」
"アズサちゃん……"
「認識による縛りのせいで、人前に立つことすらできない私が言うのも烏滸がましいとは思うが…………先生」
"……"
「これが物語の結末だ。何もかもが虚しく、全てが破局へと至るエンディング。ここから先を見たところで、無意味な苦痛が連なっていくだけだ」
"……"
「私は君に事件の解決を頼みたい訳じゃない。セリナを連れ、今すぐこのトリニティから去って貰いたい。我々の統括意見としては、トリニティ総合学園よりも君の命の方が価値が高い」
"価値って……"
「これは私一人の意見ではなく、トリニティ総合学園担当官4名全員の意見だ。幸い、大聖堂の地下にある旧L社に関しては、サクラコ達がゲヘナへと移送を進めている。R社及びK社の戦力を減らし、残響楽団2名の所在も判明した」
――学園一つの対価としては、申し分ない成果だ
「この後は、我々の手の者が翼の本拠地を割り出す手筈となっている。犠牲となるであろう両学園、数百名の生徒には申し訳ないが……」
"まだだよ、セイアちゃん"
「……まだ?」
"まだ、諦めるには早いよ"
「……先生。……もう、終わったのだよ。この不快で、不愉快で、忌まわしく、眉を顰めたくなるお話は。悲しくて、苦しくて、憂鬱になるような。それでいて、ただただ後味だけが苦いお話は……しかし紛れもなく、真実の物語でもある」
"そんなことないよ"
「先生。……君は以前、五つ目の古則に対してこう言っていたね。ただ楽園があると信じるしかないと」
"うん……言ったよ"
「然して、信じた結果がこれだ。元より不可能なことだったのだよ。我々のような共通の敵が居る訳でもないのに、お互い憎しみ合うのはやめようだなんて。都合の良すぎる約束だったのさ」
"……"
「その上、条約の名前にエデンと来た。ここで楽園の名前だなんて、相変わらず連邦生徒会長も人が悪い。これは私でなくとも、悪意すら感じてしまうことだろう」
"……よく分かったよ、セイアちゃん"
「……? 先生?」
"セイアちゃんは、この後のお話を確認するのが……怖かったんだね"
「何を、言って……」
"だからこうして、夢の中で私とお話してるんだよね"
「いや、わ、私は……」
"ごめんね、セイアちゃん。私はまだ、やらなきゃいけないことがあるから、戻らないと"
「戻る……? ま、待ちたまえ先生。私の話を聞いていなかったのかい? 君には今すぐトリニティを離れて貰わないと困る。代理人のような力も持たない先生が何かしたところで、結末は変わらない。これは私の未来予知で判明している」
"力……かぁ。確かに、私には代理人みたいな力もなければE.G.Oもないよ"
「そもそも、七つの古則でこうなることは決まっていた。それが世界の真実であり、この物語の……」
"うーん……。七つの古則かぁ。私はそれ、あんまり興味ないんだよね。単なる言葉遊びって言うか……"
「きょ、興味? 言葉遊び? ……先生、君は七つの古則を否定するつもりかい? 楽園の存否は、全ての人たちにとっての宿題だろう? それの存在を証明できなければ、何も……」
"それはそれで、これはこれ…………かな? 証明というよりも……楽園があると信じ続ければ、それは存在することと同義だと思うよ"
「……どうしてそう言い切れる。ただ信じたところで、何も変わりはしない。信じたところで、そこには何の意味も無いだろう……!?」
"……水着じゃなくて下着だと思えば、それは下着だから"
「……は?」
"これはハナコちゃんが言ってたことなんだけどね、私も確かにって思ったよ"
「……え、下着? い、一体何を……水着、下着……? それが古則と何の関係が……」
"ふふっ……。待っててね、セイアちゃん。私が"
――物語の結末を変えてくるから
「いやだから、君にはすぐにでもこの場を……」
「……」
「……はぁ。……行ってしまったか。……全く、一体誰に似たんだか」
★★★★★
「聖母の力が弱まった? ……これは、生命に異変が……? 実験に支障が……提供された赤子の予備ももう無いというのに……」
「6t3xy……!」「3#…Z…$Z…##」「#$…Z…$…Z#?」
「無名の胎児、静かなオーケストラ、歌う機械、ラ・ルナ……」
「……」
「……彼の者の芸術品の模倣とは言え、ロイヤルブラッドを素材にするのは早計だっただろうか……」
「……」
「……統制が歪み始めた……保険があるとはいえ、心理的負荷までは軽減できないというのに……」
「……」
「……まぁよい。教義の完成を優先するとしよう。模倣品のおかげで私のインスピレーションも刺激されている。今ならオリジナルの聖歌隊を……」
――私だけの崇高を、創り上げられるだろう
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