黒い沈黙の行先   作:シロネム

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~法則~ エデン条約

 

 

「包囲、されてしまいましたねぇ……」

 

 

 

補習授業部、廃校対策委員会、正義実現委員会、風紀委員会

 

 

 

各学校、各派閥の代表とも言える者たちが参戦し、アリウススクワッドを取り囲むように銃を構える。戦力として数えていたネズミチームとは連絡が取れず、使役していたユスティナ聖徒会は全員殺され、再出現までおよそ10分。

 

 

 

「……それで勝ったつもりか」

 

「これはちょっと厳しいんじゃない、リーダー?」

 

「知ったことか。あと数分もすればユスティナ聖徒会は復活する。私たちはそれまで時間を稼げば良いだけだ」

 

「(……スッ)」

 

「……あぁ。……ごめん、姫。……赤子を使わせて貰う」

 

「(ススッ)」

 

 

 

(パチン)

 

 

 

作戦決行前に決めていた合図。フィンガースナップの音を合図とし、その座標をへと空間を切断し現れた2体の怪物。4本の腕を持ち、それぞれに両剣を構えた巨大な怪物は、

 

 

 

「#3%&*%#*()!」「#3%&*%#*()!」

 

 

 

アリウススクワッドを守るかのように立ちふさがった。

 

 

 

「な、なんなのよこれ!?」

 

「ん、不気味……」

 

「みんな下がって! ここはおじさん達が何とかするから」

 

 

 

一触即発。両剣を構え、周囲の存在へと手当たり次第に襲い掛かろうと振り上げた怪物達。

 

咄嗟に距離を取ったアビドスの生徒は、散弾銃を構えたホシノのみが距離を詰め、続くように正義実現委員会のツルギも両手に散弾銃を構えて突撃しようとした瞬間――

 

 

 

――遠方から飛んできた高出力の極光に、二匹の怪物は飲み込まれた

 

 

 

 

 

 

「今です! ローラン!」

 

 

 

 

 

(チンッ)

 

 

左手にナイフを構え、右手に赤い手斧を構えたローランが目の前の怪物を切裂いていく。

 

目にも止まらぬ速さで刻み続けられる傷跡からは大量の血が流れ、雨のように降り注ぐ。

 

 

 

 

 

 

――多重同化――

 

――グラインダーMk5-2(何でもお手伝いします)――

+

――血色の欲望(赤い靴)――

 

 

 

 

 

 

再生アンプルによる即時回復があることに気が付いていないローランだったが、回復されるよりも早く繰り返される斬撃によって最後の一滴まで血が流れ落ち……

 

 

 

 

――滴り落ちる血液を全て、吸い上げた

 

 

 

 

 

 

――渇き(ノスフェラトゥ)――

 

 

 

 

 

「……待たせたな、お前ら」

 

「皆さん、大丈夫ですか!」

 

 

 

体内の血液……と言っても、ほとんど再生アンプルに置き換わってはいたが……傷口から体内の血液を全て吸い上げられた怪物は干からびるように朽ちた。

 

 

 

「代理人! シロさん!」

 

「代理人……」

 

 

 

 

 

 

「嘘……」

 

「い、一瞬でやられちゃいましたね……」

 

「(スッ……)」

 

「――シャーレの……代理人ッ!」

 

 

 

情報としては知っていた。残響楽団の二人から、その危険性については聞かされていた。

 

だからこそ、手札を知っている二人を割り当てた。抑えられると思ったから。手筈通りに処理できると思っていたから……。

 

 

 

「うへ~、やっぱり代理人は強いねぇ」

 

「お前らも来てくれたのか」

 

「ん、当然」

 

「ホシノ先輩だけ戦わせる訳にはいきません」

 

「あ、この人が代理人さん? 初めまして~」

 

 

……

 

 

「お前は……ホシノのE.G.O、だよな……?」

 

「うへ~、それについてはまた今度話すよ」

 

 

 

(ガチャ)

 

 

 

2丁の散弾銃を構え、アリウススクワッドへと向き直るホシノ。並び立つように赤い斧を構えるローランと聖遺物を構える白の便利屋。

 

 

戦況を覆す一手となりえるE.G.O所有者が3人。

 

 

 

――アリウススクワッドへと獲物を構えた

 

 

 

 

 

 

(ヒュン)

 

 

 

 

 

 

"お待たせ、代理人"

 

 

 

背後から聞こえた空間跳躍特有の独特な音。懐かしい声。

 

 

 

「……先生? どうやってここに……、というか傷は大丈夫なのか?」

 

"まだ痛いけど、大丈夫。……この場所には、セリナちゃんに連れてきて貰ったよ"

 

「……セリナ? ……イオリじゃなくてか?」

 

"うん、セリナちゃんだよ"

 

 

 

「先生!」

 

「無事だったんですね、先生!」

 

「先生……」

 

 

 

 

 

 

「……リーダー」

 

「も、もうこれ以上は……」

 

「……まだだ。まだ何も終わっていない」

 

「(……)」

 

「むしろ、好都合だ。……この場にいる全員に、この世界の真実を教えてやる。殺意と憎しみに満ちたこの世界で、あらゆる努力は無駄なのだと」

 

 

 

――私が、証明してやる

 

 

 

 

 

 

「……っ、なんですか、それ……」

 

「……ヒフミ?」

 

「殺意や憎しみが世界の真実……? あらゆる努力は無駄……?」

 

 

 

――そんなの、間違ってます!

 

 

 

「友情で苦難を乗り越え、努力がきちんと報われる。辛いことはお友達と慰めあって、苦しいことがあっても……誰もが最後は、笑顔になれるような!」

 

 

 

――そんなハッピーエンドが私は好きなんです!!

 

 

 

「誰が何と言おうとも、何度だって言い続けて見せます! 私たちが描くお話は、私たちが決めるんです!」

 

 

 

「……ヒフミ」

 

"ヒフミちゃん……"

 

 

 

「終わりになんてさせません、まだまだ続けていくんです! 私たちの物語……」

 

 

 

 

 

 

――私たちの、青春の物語(Blue Archive)を!

 

 

 

 

 

 

ヒフミの宣言を皮切りに、空が晴れていく。

 

 

 

「あ、雨雲が……」

 

「気象の操作……? いや、これは……」

 

「き、奇跡、ですか……?」

 

「っ、奇跡なんて無い! 何これ……!」

 

「(スッ……)」

 

「姫? ……まさか、戒律が……」

 

 

 

 

 

 

"……条件は、揃ったかな"

 

 

 

 

 

 

連邦捜査部シャーレ。その代表である先生。そして、ゲヘナの風紀委員、正義実現員会。

 

条約に必要不可欠な条件は今、成立した。

 

 

 

「先生?」

 

"……代理人、宣言を! 今なら新しい条約を創れるはずだから!"

 

「……! ……あぁ、そう言う事か」

 

 

 

――条約を創る

 

 

 

その言葉を聞いて、思い当たる節があった。

 

この世界のルール。

 

解釈の捏造及び流布による影響。先日、ゲーム開発部と共に行った格ゲー大会で使われた解釈の影響力はまだ記憶に新しい。

 

それに加え、カルメンが言っていた真実。

 

並行世界の先生(ゲマトリア)に出来て、アンジェリカ先生が出来ない筈もなく……。

 

 

 

"ここに宣言する"

 

 

 

 

 

「「俺たち(私たち)が、新しいエデン条約機構(ETO)」」

 

 

 

今ここに、法則を上書きした新たなエデン条約が締結した。

 

 

 

 

 

 

「……リーダー、ユスティナの統制がおかしくなってる」

 

「!!」

 

「こ、混乱してますね……エデン条約機構を助けるというのが戒律、しかし今はETOが二つあって……」

 

「知ったことか!!! ハッピーエンドだと!? ふざけるな! そんな言葉で、世界が変わるとでも!?」

 

「(スッ……)」

 

「それだけでこの憎しみが、不信の世界が変わるとでも言うつもりか!? 何を夢のような話を……!」

 

 

 

"確かに、夢のような話かもしれないね"

 

 

 

「……っ」

 

"それでも、生徒たちの夢を……その実現を助けるのは、大人の義務だから"

 

「……」

 

「リーダー……」

 

「サオリさん……」

 

「もうユスティナ聖徒会はまともに動作してない。ETOが二つになった時点で、戒律は意味を無くしつつある……」

 

「残った聖徒会とアンプロジウスだけでは、もう……この戦力差は……」

 

「手札が尽きたね……」

 

 

 

「サオリ……もう諦めて」

 

 

 

「ふざけるなっ! アズサ! どうして、どうしてお前だけ……!」

 

「……」

 

「私たちは一緒に苦しんだ、絶望した! この灰色の、救いなんてない世界に! だというのに……全てが虚しいこの世界で、お前だけが意味を持つのか!」

 

「……」

 

「全て否定してやる! お前がトリニティで学んだこと、経験したこと、気づいたこと! 全て、その全てを!!」

 

「サオリ……」

 

「全ては虚しいのだから!」

 

 

 

「いえ、そんなことはできません」

 

「私たちが合格したのも、そこまで頑張ったのも、なかったことにはならない!」

 

「……たとえ虚しくても、私はそこからまた足搔いてみせる」

 

 

 

「なぜだ……。なんで、お前は……」

 

 

 

この世界は虚しいものだと。子供に救いなどなく、終わることのない地獄の中で藻掻き続けてきた。そんな中でたった一度、たった一度だけ与えられたチャンスだったのに……。

 

この任務さえ達成できれば、私たちは自由になれるはずだったのに――

 

ミサキやヒヨリがもう、孵化作業で苦しまなくていいようにと――

 

アツコが母体になる必要も無くなるはずだった。

 

 

 

――そう、全ては手筈通り上手くいく筈だったんだ

 

 

 

「――私が間違えていたのか?」

 

「リーダー……?」

 

「えっ……?」

 

 

 

 

 

 

「――今更気づいたのか? 最初から、救いなんてあるはずないのに」

 

「いいや、違う。私たちは救われる筈だったんだ」

 

 

 

「(スッ……)」

 

 

 

「――筈だった? この状況でまだ救いがあると? 大人が私たちとの約束を守るとでも?」

 

「それは……」

 

「――一度でも約束を守られたことがあるか? 救いの手が差し伸べられたことはあったか?」

 

「いや、一度もない」

 

 

 

「……リーダー、誰と話してるの?」

 

「り、リーダーがおかしくなっちゃいましたぁ」

 

「(スッ……)」

 

 

 

 

「――計画が瓦解したのは誰のせいだ? 手筈違いは誰によって齎された?」

 

「――アズサだ」

 

「――分かっているならやることは一つだ。今すぐ、目の前のアイツを――」

 

 

 

 

 

 

「「――す。る」」

 

 

 

 

 

 






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