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―――ガタン、ゴトン
ガタン、ゴトン――
「ここは一体……? 私は……」
列車へと乗り込み、辺りを見回した隊長。窓から指す光が美しく照らす車内。さっきまで自分は……
"うーん、なんて言えばいいんだろう"
「そうですね。夢の中……と表現するのが1番近いでしょうか?」
"……あ、うん。私もよく分からないけど、そうみたい"
「そうみたいって言われてもっすね…………って、連邦生徒会長?」
「はい。連邦生徒会長です」
……
「れ、連邦生徒会長っすか!?」
「はい。連邦生徒会長です」
姿は知っていた。幻想体管理室での作業中に、何度か出会ったこともある。
ただ……クロノスの報道や連邦生徒会からの表明によって、失踪したと聞いていたが……
「な、なんでこんな所に……というか、ここどこっすか? 夢の中とか言われても、全然分かんないっすよ!?」
「……先生」
"……うん。……隊長。じゃなくて、アマノちゃんの方がいいかな?"
「あっ……そういえば、名乗ってませんでしたね。一色アマノっす。まぁ、先生は私の名前を知ってたみたいですけど」
"これでも先生だからね。一通りの生徒名簿は記憶してるよ"
「マジっすか」
"うん。……さて、アマノちゃん"
――君は、どこまで覚えてる?
★★★★★
揺れる列車。響く走行音。
沈黙が支配する列車の中で――確かに聞こえる震え声。
……自分が一体何をしたのか。その代償として何を失ったのか。あの時の記憶や痛み、後悔が蘇る。
「わ、私は……」
"うん"
「大聖堂の地下に……旧L社に向かったっす」
サクラコ様からの指示で、E.G.Oの使用許可が降りたので……代理人とシロさんに戦場を任せて、幻想体管理室に向かったっす。
"そうだね。さっき、―――ちゃんに見せてもらったよ"
「―――ちゃん?」
「私です。アマノさんも―――ちゃんと呼んで頂いて構いませんよ」
「い、いや、恐れ多いっす……」
――連邦生徒会長
エリュシオンの創設者にして、キヴォトスの前支配者。都市より招かれた悪意ある大人に対抗する為の組織を作りあげ、翼の支配から生徒達を守り続けた守護者。
一色アマノとして、直接の接点は無いものの、Aチーム隊長の立場として見れば社長や代表にあたる存在である。
「あの、先生。見せて貰ったというのは……?」
"それは……"
「それは秘密です。そうですね、私が持っている特別な力……特異点やE.G.Oのようなものとお考え下さい」
「わ、わかりました」
……
……それから私は、副隊長と共に幻想体管理室にあるE.G.Oを取りに行ったっす。
「E.G.O使用時のルールについては、アマノさんも知っていますよね?」
「……はい。……知ってるっす」
現シスターフッドのリーダーである歌住サクラコの管理下の元、必要に応じてクラス4までのE.G.Oの使用を許可する。
その際、処理チームは指定されたE.G.Oを用いること。また、各処理チームのリーダーは人的被害を最小限に抑える為……
「状況に応じて、任意のE.G.Oを3つまで使用することを許可する」
「……これはあくまで、クラス4までのE.G.Oに関してだったのですが」
「……」
「それに……黄昏の金槌に関しては、一切の使用を禁止していた筈です」
――どうして、使ってしまったのですか?
「……」
"―――ちゃん"
「っ……ごめんなさい。アマノさんを責めるつもりは無いんです。元はと言えば、手の届いてしまう場所に放置していた私の責任ですから」
「そ、そんなことはないっす! 今回のこれは、私が独断で禁止令を無視して使った結果だから……」
L社を買い取った後、引き継がれた管理資料を元手に危険性を検証し、取り返しのつかない代物に関しては厳重に管理していた。
その危険性を流布し、絶対に使用しないようにと警告もしていた。
「……私のミスでした。L社を買い取った際に、あんな物は破棄するべきだったんです」
「……」
"―――ちゃん……"
「ごめんなさい、アマノさん。……謝って済む話では無いのは承知ですが、それでも……」
「――いいんすよ、連邦生徒会長」
"アマノちゃん……?"
「結局、こうなる覚悟で使ったのは私っす。私一人の犠牲で皆が救われたのなら……本望です」
"……"
「まぁ、心残りや未練が全くないって訳じゃないっすけど……それでも」
――みんなが無事で本当に良かったっす
★★★★★
「とまぁ、こんな会話をして――」
「今に至ると?」
連邦捜査部シャーレ。
あの後、気絶した先生をシャーレに運び込んだローランは、2日後に目を覚ました先生と……何故かシッテムの箱に写っている隊長から話を聞き出していた。
エデン条約の締結に基づき、霧散したユスティナ聖徒会。無数にいたR社の被検体も1匹残らず隊長に殺されており……後処理に関しては比較的にスムーズに進行できたのだとか。
エリュシオンの協力の元、クロノススクールに報道規制を掛け、今回の調停式は無事に完了したことを報道させ、
――キヴォトス全土で、エデン条約締結の知らせが響き渡った
「はははっ。いやぁ、まさか私もこんな事になるとは思わなかったっすけどね」
"ごめんね……。こんな形にしか出来なくて"
「いやいやいや! なんで謝るんすか! 先生と会長のおかげで、今もこうして生きてるんすから笑ってくださいよ!」
「……はぁ。なんでそうなってるのかとか、どうやったらそうなるのかも全然分からんが…………まぁとにかく」
――無事で良かったよ
「そうっすね! その説はどうも、ご心配をおかけしたっす」
「ほんとにな。……全部片付いて落ち着いたら、副隊長に謝りに行くぞ」
「……やっぱり行かないとダメっすよね」
「当たり前だ。お前、どれだけ心配かけたと思ってるんだ」
「いやぁ、分かってはいるんすけど…………怒られるっすよね?」
「間違いなく、怒られるだろうな」
「うげっ……」
"だ、大丈夫だよ! ……多分"
「副隊長、怒るとめっちゃ怖いんすよねぇ……」
「謝らなかったら、私が怒りますよ! アマノちゃん!」
「勘弁して下さいよ、アロナ先輩ぃ」
「アロナお姉ちゃんですよ、アマノちゃん!」
「いやいやいや、その呼び方はちょっと、無理っすよ!」
(ピピッ)
シッテムの箱から鳴り響く電子音。あの日、あの列車の中で結んだ契約。
――先生の時間を対価に、連邦生徒会長が作り上げたシステム。
「……っと。いやぁ、シャバの空気は美味いっすね!」
シッテムの箱から飛び出し、生前の姿で現れたアマノ。
「あーーーーー! ズルいですよ! アマノちゃん!」
「隊長はアロナと違ってこっちに来れるのか」
「これも先生と会長のおかげっすね。確か、殻に残っていた情報を元に、仮初の姿を――なんでしたっけ?」
"仮初の姿を世界に誤認させ、存在を上書きする……だったかな?"
自身の肉体を対価に黄昏の金槌を使用した隊長。彼女の肉体はあの瞬間に生贄となり、この世界から消失した。消失し、二度と元には戻らないと思われたが、生前の彼女の人格を元にAIという殻を与え、自我を確立させた連邦生徒会長。
具体的な方法に関しては彼女にしか分からないものの、AIとしての肉体を取得し、シッテムの箱に常駐することとなった隊長は……
「そうそう、それっす! いやぁ、何を言ってるのか全く分かんなかったっすけどね」
限られた時間であれば、こうして現世に顕現することも可能となっていた。
「……なるほどな。恐らくだが、キヴォトスの認知を歪めたんだろうな」
"そうなの?"
「ほぇ~、そうなんすか?」
……
「……多分だけどな。イオリの例から見てもそうだと思うぞ。それに……」
――翼も似たようなことをやらかしたんだろ?
「――! それは……」
"……そういえば、セイアちゃんが言ってたね。翼が認識を上書きしたって"
「テクストなんて言う存在そのものを誤認させる技術もあるんだ」
――隊長はキヴォトスで生きている
「連邦生徒会長なら、そう誤認させることも出来るんじゃないか?」
……
「……ヤバいっす。代理人が何を言ってるのか、全然分かんないっす」
"な、なんとなく言いたいことは分かったけど……"
「マジっすか!?」
「……まぁ、詳しいことは本人にしか分からない訳だし、理屈はどうでもいいとして……これからよろしくな、隊長」
"よろしくね、アマノちゃん"
「――はいっす! ……あ、そうそう! 代理人には自己紹介がまだでしたね」
「……そういえば、ずっと隊長って呼んでたな」
「そうっすね! それじゃあ改めて……一色アマノっす! もう隊長じゃないんで、アマノでいいっすよ!」
「そうか? ……それじゃあよろしくな、アマノ」
「こちらこそ、よろしくっす!」
シスターフッド所属、元Aチーム隊長の2年生。
現在はシッテムの箱の中で生活しており、メインOSであるアロナからは妹(後輩)として可愛がられている。
彼女の生存に関しては、シャーレにいる二人しか把握しておらず……シスターフッドでは一色アマノの葬儀が執り行われていた。
肉体は砂となった為、形だけの葬儀ではあるものの……シスターフッド全員が参列し……
――その様子を、困り顔で見つめる2人の大人と1人の生徒が居た。
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