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都市の浄化
自分以外の大人という存在を殺し尽くし、子供という管理しやすい存在だけを都市に移住させる。
複数の特異点を掌握し、管理し、利用し……誰1人反抗することの出来ない力を……反抗しようという意志を根底から叩き折る程の絶対的な力を付け――
楽園を作り上げる
ベアトリーチェの語る思想……思考回路は、光の中で聴いたカルメンの思考と似通っており……
……皮肉にも、その成功例が目の前にあるのだ。
「……キヴォトスのように作り替えるつもりか?」
連邦生徒会長が実現させた……させてしまった成功例。子供に神秘を付与し、大人から力を奪い取った楽園。
子供達の為の世界
「キヴォトス? ……こんな不完全なものに興味はありません。私が行うのは絶対的な統治。大人を殺し尽くし、子供に力など持たせない、完全なる支配。……この浄化の結末として――」
――都市の苦痛は取り除かれるでしょう
「……絵空事だな。頭の統治を揺るがし、目の監視から逃れ、爪の裁きに対処できると、本気で思っているのか?」
都市が抱える闇を嫌という程見てきた。煙戦争で知ってしまった根源。図書館で相手にした調律者と爪の驚異的な戦闘能力。
長期に渡る連戦故、疲弊していたというのもあるが……E.G.Oと言う力を存分に使い、赤い霧と劣化した元調律者の力を持ってしても――
――都市には、勝てなかったのだ
「対処? 対処など、必要ありませんよ」
「なんだと?」
「まだ理解出来ていないみたいですね。黒服やゴルゴンダ、デカルコマニーと接点のある貴方なら、テクストが持つ効力とその有効性――」
概念に干渉する力について、把握していると思っていたのですが……
「どうやら、過大評価だったみたいですね……。翼が都市に存在したという歴史は、私の楽園には存在しません」
「……」
「――気が変わりました。取引と言いましたが、力づくで頂くとしましょう」
(((((カチャ))))))
360度全方位からローラン達へと銃を構えるユスティナ聖徒会。人数差を考えれば、ローラン達が不利な状況だと言えるだろう。
――だが、
「聖徒会だけで俺達に勝てると、本気で思っているのか?」
(((カチャ)))
狙撃銃を構えるヒヨリに、ハンドガンとアサルトライフルを両手に構えるサオリ。2人の様子を視界に収め、対空ミサイルを担ぎながらナイフを構えるミサキ。
確かに、人数差だけを見れば戦力差は一目瞭然だろう。だがそれは、練度が同程度の相手だった場合の話しだ。
――戦いは、数だけでは決まらない
デュランダルを構えるローランと、シッテムの箱を構える先生。孵化を終えたR社の精鋭3人に、元1級フィクサー。連邦生徒会長の恩寵を受け、シッテムの箱という、充電さえあればあらゆる攻撃を無効化出来るオーパーツを持つ先生。
優位なのは間違いなく自分達だと確信を持つローランだったが……
「……罠か?」
"……代理人?"
「……いや、なんでもない」
――奇妙な違和感が、頭から離れなかった。
・何故、蒼白の書を要求した?
幻想体のE.G.Oの力については、恐らく知られているだろう。散々使ってきたからこそ、戦力として有用なのは分かる。
だけど――それが、都市の浄化とどう繋がる?
・何故、ここで仕掛けてきた
これだけの数を用意出来るなら、屋内の様な限られた場所で襲うべきだ。それも声なんて掛けず、不意打ちで襲い掛かる方が良いに決まってる。
・何故、戦おうとする
あと2時間でアツコは生贄になる……そう聞いていたからこそ理解できない。無駄に数を減らすぐらいなら、壁役として俺達の道を塞ぐ方が理にかなっている筈。
――何か、この場所で戦わなければならない理由でも……
「アハハハハハハハハハハハ!!!! 戦力差? ユスティナ聖生会だけ?
……どうやら勘違いをしているみたいですね。それも、とても致命的な勘違いを」
「何?」
「あぁいえ、貴方は後から合流したのでしたね。であれば、知らなくても仕方ないでしょう。……えぇ、これは仕方の無いことなのです」
不気味な笑顔を浮かべ、憐れむかのような視線を向けるベアトリーチェ。
「……先生。俺が合流するまでの間に、アニマルチーム以外の奴に襲われたか?」
"え? ……えっと、襲ってきたのはアリウス分校の生徒たち…………に……"
「先生? ……大丈夫か?」
血の気が引くとはまさにこの事を言うのだろう。病的なまでに青ざめ、震え出す先生の様子に、より一層警戒心を高めるローラン。
"まさか……"
「あぁ、あぁ…………なんて可哀想なお姫様。先生、貴女にはお礼をしないといけませんね。貴女が見捨てて下さったおかげで、面白い実験が出来ました」
「先生が見捨てた……? 一体どう言う……」
"あぁ……っ……そんなっ…………ぁ……"
「おかげで私はまた1つ、彼女に近づく手立てを知れました。色彩が齎す普遍的なモノ。――心から感謝しますよ、先生」
ユスティナ聖徒会の最奥。ローラン達の視線の先から漂う、夥しい程の死の気配。血の香りなどでは無い、本能的に忌避したくなるような……
――濃密な、死
「色彩と接触した生徒の成れの果て。曝露した結末。救世主に見捨てられ、失意の底に沈んだ天使は魔女となる、ですか。……黒服の計画を引き継ぎ、18番目の浮浪者の力を使うことになったのは少々遺憾ですが、結果だけは認めます」
純黒の衣装を身に纏い、漆黒の翼を傍目かせた天使。欠けたヘイローから溢れ出す闇を漂わせ、瞳からハイライトを無くし……ただ茫然と、先生を見つめる魔女。
「未完故に、完全な反転とまではいきませんでしたが――貴方達を相手取る上で不足はないでしょう」
"ミカちゃん……!"
「ねじれ……とは違うみたいだが――」
「アレは本当に、聖園ミカ……なのか?」
「な、なんですかあれ……」
「雰囲気はマダムに似ているような……」
「セイアちゃん……私は……」
"――ベアトリーチェ!!!"
「私に怒りの矛先を向けるのはお門違いですよ。そもそも、聖園ミカの手を取らず、見捨てたのは先生――貴女ではありませんか」
「先生……先生……先生……先生……」
空間を支配する濃密な死の気配。彼女を称えるかのように跪き、道を開けるユスティナ聖徒会達。
「……カルメンが言っていた色彩ってのは、この事だったのか」
"色彩……?"
「接触した相手の性質を反転され、強制的にねじれさせるようなもの……らしい」
「……今、なんて言いました?」
「……お前の言ってる彼女ってのは、カルメンのことだろ? なぁ、そうだよな?」
――ベアトリーチェ先生
"代理人? い、今なんて……"
「その名前で私を呼ぶなぁ!!!!! 私を、先生と呼んでいいのはあの人だけです」
「カルメンにねじれられた被害者。……今までだったら多少の同情はしたが、お前はやりすぎだ」
「黙りなさい!! ……もう、いいです。……聖園ミカ、汝の敵を倒しなさい」
その言葉を最後に、掻き消える液晶。その場に残されたユスティナ聖徒会とミカ*テラーは先生達へと銃口を向け、戦闘態勢へと移行する。
「私は……なんで……なんで……魔女……私は……魔女……」
「……先生。恐らく、聖園を元に戻せるのは先生だけだ」
"私の……? 元に……ミカちゃんを元に、戻せるの……?"
「光の中で、カルメンは色彩による反転をねじれと表現したんだ。似通った原理による変質だとすれば、本人の殻……本質に根源となる声を掛け続ければ正気に戻せるはずだ」
"根源となる声……"
「確証はないが……少なくとも、ホシノは一度その方法で正気に戻っている。……聖園を助けたいなら、試す価値はあると思うぞ」
(パンッ)
「やっぱり、これじゃダメか」
取り出した黄金銃で聖園ミカを撃ち抜き、時間を戻そうとしたローランだったが、反転により神秘が変質した影響なのか……彼女の時間は巻き戻らなかった。
「隙と時間は俺たちが作るから、先生は聖園を――」
「――いや、代理人は先に行ってくれ」
……
「……どういうつもりだ?」
「ミサキとヒヨリを連れて、姫の元に向かってくれ。アイツの相手は、私がやる」
「……お前一人で、どうにかできると思ってるのか?」
「……さっき、ミカはねじれたと言ったな?」
「似てるだけで、厳密には違うかもしれないがな」
「いや……どうやら、その推測は間違っていないみたいだ」
「何を言っ――」
サオリへと声をかけようとしたローランだったが――――その言葉は、サオリの握る二本の大鎌に奪われた。
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