黒い沈黙の行先   作:シロネム

145 / 181

誤字報告、及び評価、感想ありがとうございます!




~堕天~ 反転した一等星

 

都市の浄化

 

自分以外の大人という存在を殺し尽くし、子供という管理しやすい存在だけを都市に移住させる。

 

複数の特異点を掌握し、管理し、利用し……誰1人反抗することの出来ない力を……反抗しようという意志を根底から叩き折る程の絶対的な力を付け――

 

 

楽園を作り上げる

 

 

ベアトリーチェの語る思想……思考回路は、光の中で聴いたカルメンの思考と似通っており……

 

……皮肉にも、その成功例が目の前にあるのだ。

 

 

 

「……キヴォトスのように作り替えるつもりか?」

 

 

 

連邦生徒会長が実現させた……させてしまった成功例。子供に神秘を付与し、大人から力を奪い取った楽園。

 

 

子供達の為の世界

 

 

 

「キヴォトス? ……こんな不完全なものに興味はありません。私が行うのは絶対的な統治。大人を殺し尽くし、子供に力など持たせない、完全なる支配。……この浄化の結末として――」

 

 

 

――都市の苦痛は取り除かれるでしょう

 

 

 

「……絵空事だな。頭の統治を揺るがし、目の監視から逃れ、爪の裁きに対処できると、本気で思っているのか?」

 

 

 

都市が抱える闇を嫌という程見てきた。煙戦争で知ってしまった根源。図書館で相手にした調律者と爪の驚異的な戦闘能力。

 

長期に渡る連戦故、疲弊していたというのもあるが……E.G.Oと言う力を存分に使い、赤い霧と劣化した元調律者の力を持ってしても――

 

 

 

――都市には、勝てなかったのだ

 

 

 

「対処? 対処など、必要ありませんよ」

 

「なんだと?」

 

「まだ理解出来ていないみたいですね。黒服やゴルゴンダ、デカルコマニーと接点のある貴方なら、テクストが持つ効力とその有効性――」

 

 

 

概念に干渉する力について、把握していると思っていたのですが……

 

 

 

「どうやら、過大評価だったみたいですね……。翼が都市に存在したという歴史は、私の楽園には存在しません」

 

「……」

 

「――気が変わりました。取引と言いましたが、力づくで頂くとしましょう」

 

 

 

(((((カチャ))))))

 

 

360度全方位からローラン達へと銃を構えるユスティナ聖徒会。人数差を考えれば、ローラン達が不利な状況だと言えるだろう。

 

 

 

――だが、

 

 

 

「聖徒会だけで俺達に勝てると、本気で思っているのか?」

 

 

 

(((カチャ)))

 

狙撃銃を構えるヒヨリに、ハンドガンとアサルトライフルを両手に構えるサオリ。2人の様子を視界に収め、対空ミサイルを担ぎながらナイフを構えるミサキ。

 

確かに、人数差だけを見れば戦力差は一目瞭然だろう。だがそれは、練度が同程度の相手だった場合の話しだ。

 

 

 

――戦いは、数だけでは決まらない

 

 

 

デュランダルを構えるローランと、シッテムの箱を構える先生。孵化を終えたR社の精鋭3人に、元1級フィクサー。連邦生徒会長の恩寵を受け、シッテムの箱という、充電さえあればあらゆる攻撃を無効化出来るオーパーツを持つ先生。

 

優位なのは間違いなく自分達だと確信を持つローランだったが……

 

 

 

「……罠か?」

 

"……代理人?"

 

「……いや、なんでもない」

 

 

 

――奇妙な違和感が、頭から離れなかった。

 

 

 

・何故、蒼白の書を要求した?

 

幻想体のE.G.Oの力については、恐らく知られているだろう。散々使ってきたからこそ、戦力として有用なのは分かる。

 

だけど――それが、都市の浄化とどう繋がる?

 

 

・何故、ここで仕掛けてきた

 

これだけの数を用意出来るなら、屋内の様な限られた場所で襲うべきだ。それも声なんて掛けず、不意打ちで襲い掛かる方が良いに決まってる。

 

 

・何故、戦おうとする

 

あと2時間でアツコは生贄になる……そう聞いていたからこそ理解できない。無駄に数を減らすぐらいなら、壁役として俺達の道を塞ぐ方が理にかなっている筈。

 

 

 

――何か、この場所で戦わなければならない理由でも……

 

 

 

「アハハハハハハハハハハハ!!!! 戦力差? ユスティナ聖生会だけ?

 

……どうやら勘違いをしているみたいですね。それも、とても致命的な勘違いを」

 

「何?」

 

「あぁいえ、貴方は後から合流したのでしたね。であれば、知らなくても仕方ないでしょう。……えぇ、これは仕方の無いことなのです」

 

 

 

不気味な笑顔を浮かべ、憐れむかのような視線を向けるベアトリーチェ。

 

 

 

 

 

 

――接敵まで、あと……

 

 

 

 

 

 

「……先生。俺が合流するまでの間に、アニマルチーム以外の奴に襲われたか?」

 

"え? ……えっと、襲ってきたのはアリウス分校の生徒たち…………に……"

 

「先生? ……大丈夫か?」

 

 

 

血の気が引くとはまさにこの事を言うのだろう。病的なまでに青ざめ、震え出す先生の様子に、より一層警戒心を高めるローラン。

 

 

 

"まさか……"

 

 

 

「あぁ、あぁ…………なんて可哀想なお姫様。先生、貴女にはお礼をしないといけませんね。貴女が見捨てて下さったおかげで、面白い実験が出来ました」

 

「先生が見捨てた……? 一体どう言う……」

 

"あぁ……っ……そんなっ…………ぁ……"

 

「おかげで私はまた1つ、彼女に近づく手立てを知れました。色彩が齎す普遍的なモノ。――心から感謝しますよ、先生」

 

 

 

 

 

 

 死 

 

 

 

 

 

 

ユスティナ聖徒会の最奥。ローラン達の視線の先から漂う、夥しい程の死の気配。血の香りなどでは無い、本能的に忌避したくなるような……

 

 

 

――濃密な、死

 

 

 

「色彩と接触した生徒の成れの果て。曝露した結末。救世主に見捨てられ、失意の底に沈んだ天使は魔女となる、ですか。……黒服の計画を引き継ぎ、18番目の浮浪者の力を使うことになったのは少々遺憾ですが、結果だけは認めます」

 

 

 

純黒の衣装を身に纏い、漆黒の翼を傍目かせた天使。欠けたヘイローから溢れ出す闇を漂わせ、瞳からハイライトを無くし……ただ茫然と、先生を見つめる魔女。

 

 

 

「未完故に、完全な反転とまではいきませんでしたが――貴方達を相手取る上で不足はないでしょう」

 

 

 

 

 

 

――Gott ist tot(ミカ*テラー)――

 

 

 

 

 

 

"ミカちゃん……!"

 

「ねじれ……とは違うみたいだが――」

 

「アレは本当に、聖園ミカ……なのか?」

 

「な、なんですかあれ……」

 

「雰囲気はマダムに似ているような……」

 

 

 

 

 

 

「セイアちゃん……私は……」

 

 

 

 

 

 

"――ベアトリーチェ!!!"

 

「私に怒りの矛先を向けるのはお門違いですよ。そもそも、聖園ミカの手を取らず、見捨てたのは先生――貴女ではありませんか」

 

 

 

 

 

 

「先生……先生……先生……先生……」

 

 

 

 

 

 

空間を支配する濃密な死の気配。彼女を称えるかのように跪き、道を開けるユスティナ聖徒会達。先生(キリエ)に見限られ、憐れまれる(エレイソン)ことすら無くなった魔女。

 

 

 

「……カルメンが言っていた色彩ってのは、この事だったのか」

 

"色彩……?"

 

「接触した相手の性質を反転され、強制的にねじれさせるようなもの……らしい」

 

 

 

「……今、なんて言いました?」

 

 

 

「……お前の言ってる彼女ってのは、カルメンのことだろ? なぁ、そうだよな?」

 

 

 

――ベアトリーチェ先生

 

 

 

 

"代理人? い、今なんて……"

 

「その名前で私を呼ぶなぁ!!!!! 私を、先生と呼んでいいのはあの人だけです」

 

「カルメンにねじれられた被害者。……今までだったら多少の同情はしたが、お前はやりすぎだ」

 

「黙りなさい!! ……もう、いいです。……聖園ミカ、汝の敵を倒しなさい」

 

 

 

その言葉を最後に、掻き消える液晶。その場に残されたユスティナ聖徒会とミカ*テラーは先生達へと銃口を向け、戦闘態勢へと移行する。

 

 

 

 

 

 

「私は……なんで……なんで……魔女……私は……魔女……」

 

 

 

 

 

 

「……先生。恐らく、聖園を元に戻せるのは先生だけだ」

 

"私の……? 元に……ミカちゃんを元に、戻せるの……?"

 

「光の中で、カルメンは色彩による反転をねじれと表現したんだ。似通った原理による変質だとすれば、本人の殻……本質に根源となる声を掛け続ければ正気に戻せるはずだ」

 

"根源となる声……"

 

「確証はないが……少なくとも、ホシノは一度その方法で正気に戻っている。……聖園を助けたいなら、試す価値はあると思うぞ」

 

 

 

(パンッ)

 

 

 

「やっぱり、これじゃダメか」

 

 

 

取り出した黄金銃で聖園ミカを撃ち抜き、時間を戻そうとしたローランだったが、反転により神秘が変質した影響なのか……彼女の時間は巻き戻らなかった。

 

 

 

「隙と時間は俺たちが作るから、先生は聖園を――」

 

「――いや、代理人は先に行ってくれ」

 

 

……

 

 

「……どういうつもりだ?」

 

「ミサキとヒヨリを連れて、姫の元に向かってくれ。アイツの相手は、私がやる」

 

「……お前一人で、どうにかできると思ってるのか?」

 

「……さっき、ミカはねじれたと言ったな?」

 

「似てるだけで、厳密には違うかもしれないがな」

 

「いや……どうやら、その推測は間違っていないみたいだ」

 

「何を言っ――」

 

 

 

サオリへと声をかけようとしたローランだったが――――その言葉は、サオリの握る二本の大鎌に奪われた。

 

 





評価、感想お待ちしております


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。