黒い沈黙の行先   作:シロネム

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~憐憫~ ミカエル VS サリエル

 

身の丈以上の大きさを持つ、二振りの大鎌。ねじれになり掛けたサオリが自身の殻を物質化した物。

 

彼女だけの、固有武器。

 

 

 

「美しい声は聞こえないが……代わりに、嫌になるほど憂鬱なアイツの声が聞こえる」

 

「り、リーダー?」

 

「こんなつもりではなかった。どうしてこうなった。殺すつもりなんてなかったのに。…………少しは、聞かされる身にもなってもらいたいものだな」

 

「……大丈夫なの?」

 

「あぁ。理屈も原理もよく分からないが……」

 

 

 

(キンッ)

 

 

 

ミカ*テラーから溢れ出す恐怖を吸い取るかのように吸収する大鎌。神秘の断片。色彩の過干渉。

 

恐らく、カルメンもこの状況は想定していなかっただろう。色彩に影響を受けた者は、付近にある罅割れた殻に干渉できるなど、誰が予想出来ただろうか。

 

 

 

――色彩との感応現象

 

 

 

「ねじれた訳でもE.G.Oを発現した訳でもない……のか?」

 

「私にもよく分からない……が、」

 

 

 

――この武器は、手に馴染む

 

 

 

「代理人。……私を信じてくれとは言わない。……だけど、2人を連れて姫の元に辿り着くには、私よりも代理人の方が向いているだろう」

 

「……」

 

「だから、頼む……。……姫を、助けてくれ」

 

 

 

(キンッ)

 

 

 

付近に居るユスティナ聖徒会へと大鎌を振るい、深い蒼色の斬撃を飛ばす。放たれた斬撃はユスティナ聖徒会の首を斬り飛ばし、背後にある廃墟となった建物事斬り裂いていく。

 

蒼く煌めく斬撃

 

目を惹かれる程綺麗な攻撃は、辺りに警戒心を高めさせると共に――

 

 

 

――ミカ*テラーの注意を集めていた

 

 

 

「……確かに、戦闘技術に問題はないみたいだな」

 

"代理人。……サオリちゃんの言う通り、ここは二人で対処するから……代理人はアツコちゃんを助けに行ってあげて"

 

「……」

 

"私にはアロナちゃんやアマノちゃんも居るから、大丈夫だよ"

 

「…………分かった。……代わりって訳じゃ無いが、コイツを預けておく」

 

 

 

ローランの手袋から取り出される一冊の本。図書館との繋がりであり、幻想体の力を閉じ込めた、最後の切札。……おもむろに取りだした蒼白の書をローランは、

 

 

 

――先生へと、手渡した

 

 

 

「使い方は分かるだろ? ……まぁ、分からなかったらアマノに聞いてくれ」

 

"これって……代理人が使ってた幻想体の……"

 

「……そうならない事を願っているが、必要になったら躊躇わずに使え。先生の助けになるはずだ」

 

"……うん。……ありがとう、代理人"

 

「……お前ら行くぞ。……また後でな、先生」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

色彩との感応。殻に干渉するという点においては、カルメンと近いのかもしれない。だが、特定個人に限らず周囲一帯に影響を齎す事を加味すると、色彩の方がよりタチが悪いと言えるだろう。

 

殻が罅割れ、自身の本質を発露仕掛けたサオリだったが……色彩に罹患したミカ*テラーとの接触によって、

 

 

 

――今一度、その本質を流出させていた

 

 

 

「……今更、気にする事でも無いかもしれない。私達がこんなことを思うことすら罪かもしれない」

 

"……"

 

「……それでも、私は」

 

 

 

――私達は、人間だ

 

 

 

"……サオリちゃん。私がミカちゃんを説得するまで、ユスティナ聖徒会を近づけさせないで"

 

「あぁ。……先生には指1本触れさせないと、約束する」

 

"頼りにしてるよ、サオリちゃん"

 

「任せてくれ。"――全員、その場を動くな!"

 

 

 

 

 

 

――八方睨み――

 

 

 

 

 

 

紫の眼光、神秘の応用。一種のプレッシャーだろうか。色彩の干渉により忘れられた神々としての本質を流出させられた結果、その一端として振るわれた力。

 

 

――サリエルの魔眼

 

 

神秘を眼光に秘め、睨み、威圧する。

対象に恐怖を与え、数秒の間行動不能にする超高密度のプレッシャー。

 

例えそれがユスティナ聖徒会の複製であろうとも……アニマルチームのクローンであろうとも、意識ある者はサオリの放つプレッシャーを無視出来ない。

 

……無視してはならないと、本能が――殻が反応してしまう。……そして、その数秒のタイムラグは、

 

 

 

――戦場では致命的なものとなる

 

 

 

「――散華しろ、ユスティナ聖徒会。お前達の敵は、目の前にいる私だ」

 

 

 

孵化場での地獄を経験したサオリが、数秒の隙を逃す筈もなく、周囲を取り囲んでいたユスティナ聖徒会、計数十体を斬り裂き、その全てを塵に変えていた。

 

両手に握った二振りの大鎌によって首を刈り取るサオリ。右手に握り締めた大鎌を振り抜き、ユスティナ聖徒会の首を跳ねる。その勢いのまま右足を軸に体を回転させ、左手に握り締めた大鎌を投擲。

 

蒼い閃光となって放たれた大鎌が、前方にいた複数のユスティナ聖徒会の首を跳ね飛ばす。

 

 

 

――その姿、正しく暴風

 

 

 

嵐のように戦場を駆け巡り、目の前の敵が動き出す前に刈り殺す。元々高速戦闘を得意とするサオリにとって、鋭利かつ軽量な二振りの大鎌との相性は抜群であった。

 

蒼色の煌めきが戦場を支配し、ミカ*テラー以外の障害を取り除く。

 

 

 

"す、凄いね……サオリちゃん"

 

「……あぁ」

 

"サオリちゃん? ……どうかしたの?"

 

「いや……、確かに強力ではあるんだが……」

 

 

 

――この武器では、聖園ミカには勝てない

 

 

 

「数が多いだけの雑兵には有効だが……行動後の隙が大きすぎる。一振ならまだしも……どうして二振りも現れたんだ……?」

 

"えっ……と、サオリちゃんが選んだ……選んだでいいのかな? 望んだ武器じゃないの?"

 

「いや……、確かに便利だと思ったが……」

 

 

 

(キンッ)

 

 

 

E.G.Oは自身の殻の形であり、本人の意思が具現化したものである。当然、人それぞれ形状は異なり……

 

 

 

――そのどれもが、本人の望んだ姿となる

 

 

 

「――そういう事か。……なるほど、道理で姫が隠したがる訳だ」

 

 

 

二振りの大鎌はその姿を変質させていき、サオリの手に収まった。

 

収縮した蒼色の手鎌。刃の煌めきは衰えず、サオリの望んだサイズへと変質した二振りの元大鎌。

 

数を相手にするのであれば大鎌でも良かったが――個を相手にするのであれば、手鎌が最適だ。

 

 

 

「先生、前言を撤回する。……これなら、聖園ミカとも渡り合える」

 

"ミカちゃんを、お願い"

 

「任せてくれ。……聖園ミカ。私がお前を――」

 

 

 

 

 

 

――救ってやる(殺してやる)

 

 

 

 

 

 

「錠前……サオリ……錠前サオリっ! …………全部、全部全部全部全部全部……あなたの……あなたのせいだっ……!」

 

 

 

(パキンッ)

 

 

 

何かが割れる音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

"ミカちゃん!"

 

 

 

 

 

 

音の発生源、その中心にいた少女のヘイローが割れる。欠け落ちたヘイローの破片が地面へと散らばり、灰となって消えてゆく。その音が合図となったのか、

 

 

 

――世界から、光が消えた

 

 

 

「んなっ……」

 

 

 

否、世界の光が消えた訳ではない。光源を埋め尽くすほどの巨大な影が戦場に広がり……その遥か頭上に、無数の黒い隕石が出現していたのだ。

 

どこからともなく現れた隕石は黒い焔をまとい、無差別に戦場へと降り注ぐ。

 

 

 

「自分ごと……死ぬつもりか……ッ!」

 

 

 

付近に落下する隕石を斬り払い、片手に握った手鎌を大鎌へと変質させ、上空へと投げつける。無機物故に意識が存在しない隕石相手には、魔眼の権能も思うように発揮できず……手鎌の刃渡りを臨機応変に伸縮しながら隕石を斬り払うことしかできなかった。

 

 

 

"サオリちゃん!"

 

「私は大丈夫だ! 先生にも傷一つ負わせない! だから……だから先生は、聖園ミカを説得してくれ!」

 

 

 

隕石を斬り飛ばし続け、その対処速度を徐々に加速させていくサオリ。神秘を具現化させた大鎌を即座に上空へと投げつけ、手が空いた瞬間には新しい大鎌を形成し、上空へと投擲する。

 

既に10本は投げつけただろうか。遥か上空で回転し続ける複数の大鎌が隕石を斬り払い、一瞬の余裕を見逃さず、ミカ*テラーへと手鎌を投げつける。

 

蒼い閃光となって放たれた手鎌は、ミカ*テラーの持つ軽機関銃に撃ち落され、拳で吹き飛ばされ、恐怖へと変換された神秘が払いのける。……手鎌が決定打となる事はないものの――

 

 

 

――これはあくまで、時間稼ぎ

 

 

 

先生がミカ*テラーを説得し、元に戻すまでの持久戦だ。

 

 

 

"――っ、ミカちゃん! 私の……先生の声が聴こえる!? 聴こえたら返事をして!"

 

 

 

「…………先生?」

 

 

 

"今ならまだ間に合うから! 先生と一緒に話そう? ね?"

 

 

「……ごめん、なさい……私が……私が、魔女だから……だから先生は……先生は私を――」

 

 

 

"ミカちゃんは魔女なんかじゃない! 誰よりも優しくて、人一倍悩んで、その責任を全部自分で抱え込もうとする悪い子だけど!"

 

 

 

「…………ぐすっ……っ……ぅあ……」

 

 

 

"それでも! 魔女なんかじゃない! トリニティ総合学園所属の聖園ミカは――"

 

 

 

――私の、生徒だよ!

 

 

 

「………せっ……せんせい……」

 

 

 

"一緒に帰ろう? トリニティのみんなが、ミカちゃんの事を待ってるよ"

 

 

 

「……でも、私は……っ……ぐすっ……セイアちゃんが…………セイアちゃんは、死んじゃったよ……」

 

 

 

"……えっ?"

 

 

 

「……私のせいで……私が、悪い魔女だから……! だから、セイアちゃんは……っ!」

 

 

 

(パキンッ)

 

 

 

何かが割れる音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

「っ……まだ、増えるのか!」

 

 

 

 

 

 

大鎌で何とか凌いでいたサオリだったが、無数に降り注ぎ続ける隕石はその数を増やし、欠け落ちたヘイローから一撃では斬り裂けない程の神秘を吸収し……

 

 

 

「クソッ……先生、説得はまだか……ッ」

 

 

 

刃渡りを極限まで伸ばした大鎌を一振り用意し、自身と先生の頭上をカバーするように高速で廻す。ミカ*テラーへと意識を避けない今、万が一にでも攻撃されれば――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待機中の各員に通達です! 先生の座標、特定しました!」

 

 

 

 

 

 

(ヒュンッ)

 

 

 

 

 

 

聞き覚えのある声。空間を跳躍した際の独特な音。背後から聴こえたその声に、先生が反応するよりも速く――

 

 

 

 

 

 

(ヒュンッ)

 

 

 

 

 

 

2回、空間を跳躍する音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

(ヒュンッ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――人を勝手に殺さないでくれたまえ。……思い込みが強いのは君の悪い癖だよ、ミカ。……まぁ、夢に囚われ現実を見ようともしなかった私が、言えた義理ではないとは思うけれど――」

 

 

 

 

 

 

――馬鹿な君を助けに来たよ、ミカ

 

 

 





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