黒い沈黙の行先   作:シロネム

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~乱戦~ 類稀なる確率変動者

 

自律的に振動する大鎌を振るい、目の前に居るアニマルチームの首を跳ね飛ばす。超振動による高周波を発する大鎌は、R社の装備を紙切れのように切り裂き、敵の数を減らしていく。

 

 

青い軌跡を描く斬撃

 

勾玉による身体能力へのバックアップ

 

 

大鎌を振るう速度に緩急をつけ、戦場に鳴り響く音を調整する。

 

 

速く(Allegro)速く(Allegro)――

 

 

音よりも速く大鎌を振るったかと思えば、

 

 

遅く(largo)、正確に――

 

 

一振りに重さを込めて、アニマルチームの胴体を真っ二つに切り裂く。

 

 

 

原理としては、フウカの使っていた収束共鳴器に近いだろうか? ローラン自身は、アルガリアの遺品であるこの大鎌の由来を知らないが――U社の特異点、その一部が用いられてるのかもしれない。

 

――と、そう思ったローランだったが、アンジェリカの遺品も何処で作られたのか……はたまた手に入れたのか定かでは無く、便利であることに違いは無いため、この大鎌の出処についても深くは考えない事にした。

 

 

 

「10匹。……よし、大分慣れてきたな」

 

 

 

降り注ぐ血の雨を大鎌に集め、高速で振動させ、刃のように撃ち放つ。音よりも速く振り抜かれた血液は、鋭利さを保ったままアニマルチームの身体に突き刺さり、新たな血を流出させる。

 

 

 

 

 

 

「何なのだ……この身体能力は……」

 

「調子に乗るのも――――大概にするんだね!!!」

 

 

 

 

 

 

(ガンッ)

 

 

 

 

 

 

無数の口による捕食。鮫のように鋭い牙がローランへと迫り、その肉体を引き裂き、嚙み砕く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――タックルマウント――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「調子に乗るな……? ……それは、俺のセリフだ」

 

 

 

左手に持ち替えた大鎌を手放し――手袋から新たな武器を二つ取り出す。

 

 

 

左手に収まる小さな銃と、右腕で抱えた大きな銃。

 

 

 

 

 

 

(パンッ)

 

 

 

 

 

 

「――魔力充電、100%」

 

 

 

 

 

 

グレタに嚙み付かれる寸前……取り出した小さな黄金銃で、右腕に抱えた大きな銃を撃ち抜いたローランは、眼前に迫った鮫の口へと――

 

 

 

 

 

 

――レールガンの銃口を捻じ込む

 

 

 

 

 

 

「ん゛が……ッ!」

 

「流石のお前でも、()()()()()()()は食べたことがないだろ?」

 

 

 

 

 

黄金銃に撃ち抜かれ、事前に用意されていた状態へと巻き戻されたスーパーノヴァは――――水色の輝きを放ちながらエネルギーを収束させた。

 

 

 

 

 

 

「――光よ!!!」

 

 

 

 

 

 

ドカアアァァァン!!

 

 

 

 

 

 

スーパーノヴァから撃ち出された高出力のビーム砲。ローランがミレニアムに立ち寄ったのは、なにもエンジニア部から緑の腕輪を借りる為だけではない。

 

――ほぼ同じ重量、同じ扱い方ができる最高の武器を……キヴォトス随一の破壊力を持つ光の剣を、大剣と引き換えに、ゲーム開発部から借りていたのだ。

 

 

 

「これで20匹。……もう少し、巻き込めると思ったんだがな」

 

 

 

放たれたビーム砲は、直線状に立っていたアニマルチームを巻き込み、消失させる。砲撃の威力のおかげか、眼前からグレタが消えた隙を逃さず、

 

 

 

 

 

――スーパーノヴァへと黄金銃を連射した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――魔力充電、100%

――魔力充電、100%

――魔力充電、100%

――魔力充電、100%

――魔力充電、100%

――魔力充電、100%

――魔力充電、100%

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカアアァァァァァァァァァァァァン!!

 

 

 

 

 

 

間髪入れず、薙ぎ払うように放たれるビーム砲が周囲一帯を焼き払い、付近のアニマルチーム達を殺していく。本来であれば数分間のエネルギー充電が必要であり、こんな無茶苦茶な扱いをすれば、スーパーノヴァは充電したエネルギーに耐え切れず自壊していただろう。

 

ローランは、何も充電の為だけに時間を巻き戻していた訳ではない。最大まで充電され、一発も撃っていない状態のスーパーノヴァへと巻き戻すことで、充電切れとオーバーヒート、二つの問題を強引に解決し……エンジニア部ですら想定出来なかった扱いを無理やり行う。

 

 

 

無論、その様子をただ黙ってみているほど、残響楽団は甘くない。――甘くはないが、数分間における連続砲撃は、付近にいるアニマルチームの数を驚異的な速度で減らしていた。

 

 

 

――――120匹。……随分と、静かな戦場になったな」

 

 

 

どちらが優勢かと聞かれれば、誰もがローランだと答えるだろう。圧倒的な数の不利を、絶対的な暴力で巻き返したローランだったが……

 

 

 

 

 

 

――大いなる力には、大いなる代償が付きまとう

 

 

 

 

 

 

「ごふっ……っ…………」

 

 

 

装着者の周囲から余剰エネルギーを奪い、稼働エネルギーに変換する二つの勾玉。身体能力、及び精神強度を飛躍的に向上させる勾玉は、本来であれば装着者の運動エネルギーのみを対価とする。

 

……だが、幾度となく繰り返される巻き戻しと、それによって生じる尋常ではない電力を感知した勾玉は――

 

 

 

――スーパーノヴァを撃ち続けている状態こそが健常であると誤認し、ローランのエネルギーを奪い取っていく

 

 

 

「商品に……問題はないんじゃなかったのか……!」

 

 

 

慌てて勾玉を取り外し、スーパーノヴァと共に手袋へと収納したローランは、急ぎ自分へと黄金銃を構えるが……

 

 

 

「おっと。それは使わせませんよ」

 

 

 

虚空から現れた契約書が黄金銃に纏わりつき、その能力を封印する。

 

 

 

「カッカッカ! やってくれたねぇ、ローラン!」

 

 

 

エネルギーの奔流が放たれる寸前で、プルートによって回収されたグレタは、スーパーノヴァの射線上から逃れていた。

 

 

 

「おやおや。どうやら、力を使いすぎたみたいですね」

 

「キャハハッ! 随分と健闘したみたいだが、その様子を見るに、私達の相手は出来そうにないねぇ!!」

 

 

 

一瞬のうちに奪い尽くされた体力。身体能力の向上、そのおかげもあってか……大鎌でアニマルチームを屠り、スーパーノヴァの反動を抑えながら扱い、殲滅できたのだ。支払った対価に比べれば、十分な結果と言えるだろう。

 

 

 

「……まだ、だ。まだ終わってない……!」

 

 

 

震える体に鞭を打ち、取り出したデュランダルを地面へ突き刺し、体を支える。想定以上の代償に、エンジニア部へと文句の一つや二つ言いたくなったローランだったが、勾玉が無ければ120匹のアニマルチームを相手にすることすらできなかっただろう。

 

 

 

「――最後まで往生際が悪いですね。今の貴方に何ができると?」

 

「……お前らを、殺す事は出来る」

 

「雑兵を120程度殺せただけで、十分なのでは?」

 

「……っ」

 

「キャハハッ! ローラン! 仲間も連れず、一人で来たのが失敗だったねぇ!」

 

「…………勘違いしているみたいだが」

 

 

 

 

 

 

――俺が一人だなんて、いつ言ったんだ?

 

 

 

 

 

 

「なに……?」

 

 

 

なにも攻撃の為だけにスーパーノヴァをばら撒いた訳ではない。光の届かない地下回廊では、スーパーノヴァから放たれる水色の光線はかなり目立つ。

 

水色の光は周囲一帯を照らすと同時に……ローランの位置を知らせていたのだ。

 

 

 

 

 

 

「みぃ~つっけたー! ――今日の私は、JOKERの気分です!」

 

 

 

 

 

 

(ヒュンッッッッッ)

 

 

 

 

 

 

突如、残響楽団の頭上……その彼方先、何も無い虚空から降り注いだ――51枚のトランプ。

 

戦場に響く、少女の笑い声

 

 

 

「避けようとしても無駄ですよーー! ハッチャー!」

 

 

 

咄嗟に回避しようと動いたプルートとグレタだったが、E.G.Oによって生み出されたトランプは――

 

 

 

――まるで、回避先を予見していたかのように降り注ぎ、二人の右腕を斬り飛ばし、地面へと縫い付ける

 

 

 

「にはははは! 無駄ですよー! 今日の私は絶好調! トランプが当たる確率は、100%です!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――確率変動――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

確変と言ってはいるが、その実態はもっと恐ろしいものである。確率を上昇させることに変わりはないが、その確率は彼女の運勢によって決められた値へと強制的に変更される。

 

 

――絶好調

 

 

こと、彼女が絶好調と語る日においては、物事の確立は全て彼女に良い結果を齎し……算出される確率は全て、100%へと置き換わる。

 

ルーレットでは必ず指定した数字に入り、ポーカーでは初手でロイヤルストレートフラッシュが完成し、スロットでは1回転目からジャックポットを引き当て――

 

 

 

――彼女の攻撃の命中率は、100%へと置き換わる

 

 

 

たとえ相手が、どれだけ回避行動を取ろうとも……どれだけ距離を放そうとも、その回避率は0%に収束し、彼女の攻撃は必中となる。

 

 

無論、変動する確率は彼女の運勢によって左右され、逆に彼女の運勢が絶不調であれば――

 

 

 

――全ての確率は、0%へと置き換わる

 

 

 

「にはははは! ノア先輩からの指示で、助太刀に来ましたよ! 保証人!」

 

「……まだその呼び方なのか、黒崎」

 

 

 

左手に軽機関銃を持ち、右手にトランプを握る少女。白いタキシードに♠♥️♦️︎♣︎の刻まれたネクタイを身につけ、全身にタトゥーを刻み、賽子の髪飾りを着けた……ミレニアムの特記戦力。

 

 

 

 

 

 

――黒崎コユキ(トリックスター)

 

 

 

 

 

 

「光に接触した子供……ですか」

 

「美味そうな子供が、出しゃばるんじゃないよ!!!」

 

 

 

残された左腕で注射器を取りだし、自身へと突き刺す二人。シリンジ内の黄緑色の薬品を取り込んだ二人の肉体から、切り落とされた右腕が生えてくる。……地面に転がる2つの腕を持ち上げ、捕食したグレタと、表情を変えることなくその様子見つめるプルート。

 

 

 

「私の腕も案外悪くないわね! カッカッカッ! プルート! あんたの腕は不味いけどね!」

 

「私に言われても困ります」

 

 

 

2本の腕を噛み砕き、咀嚼し、飲み込むグレタ。

 

 

 

「ひぃ! な、なんですか……あのお化け……っ」

 

「……まぁ、化け物に違いは無いが」

 

「さ、さっさと倒しちゃいましょう保証人! うぅ……見てるだけで運勢が下がりそうです」

 

 

 

トランプから賽子へと持ち替え、戦場に放り投げるコユキ。地面を転がる3つの賽の目が6である事を確認したローランは、地面に突き刺した大鎌を構え直し――

 

 

 

――音よりも速い速度で、残響楽団へと襲いかかった

 

 

 

残された体力を総動員し、全力で大鎌を振るう。勾玉を付けていた頃と比べ、明らかに遅く大振りな攻撃を見たプルートは、余裕な笑みをうかべ、攻撃を躱す。

 

 

弱ったローランと光に接触した子供。

 

 

どちらの方が危険かは言うまでもなく、視線をコユキへと向けたプルートだったが……

 

 

 

「かかったな」

 

「なに……?」

 

 

 

躱した筈の大鎌が、物理法則を無視した軌道を描きプルートへと迫る。戦場を転がった賽子はコユキの発言が嘘で無いことの証明であり、本当に絶好調である事を把握したローランは――

 

 

 

――わざと、避けやすい様に大鎌を振るったのだ

 

 

 

 

 

 

「ぐぬぬぬぬ……! 保証人ー! そのおっきい鎌、重すぎ……るん、ですけどー!」

 

 

 

 

 

 

コユキのE.G.O……その力の一端である確率変動は、自身のみに作用するものでは無い。あくまでも、自身に対して良い結果を齎すものであり、彼女にとっての良い結果とは、目の前のお化けが倒されることである。

 

コユキの運勢を確認し、求めている結果を確認したローランは……残響楽団への攻撃は絶対に命中すると読んでいた。

 

 

 

「――っ! やって、くれましたね……っ!」

 

「予想通り、だな」

 

 

 

ゆっくりと(largo)、避けやすいように――

 

大鎌を振り抜く。どれだけ見当違いな方向を狙ったとしても、コユキの力によって、ローランの攻撃は必中となる。

 

 

 

……無論、その分の対価はコユキが支払うのだが――

 

 

 

「ちょっ、保証人ー! 当てられる攻撃はちゃんと当ててくださいよ! 私だって、いっぱいいっぱいなんですからー!」

 

 

 

左手に構えた軽機関銃(マリ・ガン)をグレタへと乱射し、右手をローランへと向け叫ぶコユキ。彼女にとって良い結果を齎すとは言ったものの……それはつまり、発生した結果が彼女にとって良い結果かどうかを、彼女自身で認識する必要があるという事だ。

 

その為には事象を観測しなければならず……コユキが観測していることを前提に動き、敢えて滅茶苦茶な行動を取るローランは、

 

 

 

――コユキにとって、負担でしか無かった

 

 

 

「キャハハハ! 余所見するんじゃないよ!!」

 

「ぴぃ!?」

 

 

 

高速で振り下ろされる調理器具。襲い掛かる調理器具を捌き、噛み付きを躱し、保証人の行動を視界に入れ続ける。……同時に複数の結果を算出するというのは、コユキの脳にかなりの負荷を強いるものであった。

 

 

 

「ほ、保証人! は、はやく倒しちゃってください!! 私の方も限界なんですけどーーーー!」

 

 

 

軽機関銃(マリ・ガン)を乱射し、日頃から持ち歩いている爆弾を投げつけ、トランプを投擲する事でグレタの行動を阻害し、着実に肉体へと傷をつけていく。

 

 

 

「言われなくても――」

 

 

 

予想外の一撃によって体勢を崩したプルートと、投げつけられたトランプによって行動を阻害されたグレタを視認したローランは……全速力でプルートへと接近し、大鎌を振り抜く。振り抜いた体勢のまま、身体を半回転させ、グレタへと急接近。勢いのまま大鎌を振るい、胴体を切り裂く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

記憶 - 青い残響

――クレッシェンド――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦場に五線譜を描き、プルートとグレタを青い軌跡で結びつける。その状態を維持し、ありったけの力を大鎌に込め……両断。

 

 

 

描かれた五線譜は共鳴し、震え、残響楽団を中心に収束した後……

 

 

 

 

 

 

「――これで終わりだ」

 

 

 

 

 

 

――地下回廊ごと、残響楽団を消し飛ばした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

記憶 - 青い残響

 

――大団円――

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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