黒い沈黙の行先   作:シロネム

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~物語~ 観測者の視界

 

 

ゲーム開発部とのゲーム作りは、順調とは言えなかった。市場に出たことの無い新規ジャンルの開拓と言うのは、口にするのは簡単だが、実現させるにはとてつもない苦労が伴うものなのだ。

 

 

 

"さてと、何処から行こうか?"

 

「まずはゲームセンターからです!」

 

 

 

息抜きも兼ねて、アリスと共にミレニアム自治区を巡る先生。アリスからの要望で、ミレニアム地区を見て回りたいとの事だった為、2人でミレニアムを見て回ることにした。

 

 

 

ゲームセンターで美甘ネルと共にアーケードゲームを遊び、トレーニング部で身体を動かし、エンジニア部で試作機のテストに付き合い……アリスのクエストと称した冒険は続いていく。

 

新素材開発部で耐久テストを行い、海洋生物研究部のお遣いを受け、右に左とミレニアムを奔走するアリスの様子を見て――

 

 

 

"……この様子なら、心配はいらなかったかな"

 

 

 

――安心感を覚えた

 

 

廃墟から連れ帰って以来、アリスがちゃんとミレニアムの生徒として馴染めているのかを危惧していたが、様子を見るに無用な心配だったようだ。

 

 

 

"アリスちゃん。今日の冒険は楽しかった?"

 

「はい! 色々な人とエンカウントしてクエストを達成して……アリスのウィークリークエストはこれで完了です!」

 

"しゅ、週間クエストなんだ……"

 

 

 

楽しそうに話すアリスを前にすれば、ミレニアム自治区を歩き回ったことによる疲労感など感じない。

 

 

…………わけもなく、既に夕暮れ時ということもあってか、アリスと別れた先生はそのままシャーレへと帰るのであった。

 

 

 

 

 

 

――翌日

 

 

再びミレニアムサイエンススクールへと訪れた先生。今日はゲーム開発部からの呼び出しではなく、ヴェリタスからの要請で駆け付けたのだ。

 

両手が塞がるほどの荷物を持ったまま入館証を貰い、ヴェリタスの部室へと足を運ぶ最中――

 

 

 

「――あれ? 先生?」

 

「あーーー! 先生じゃん!」

 

 

 

――ゲーム開発部の面々とエンカウントした!

 

 

 

"やっほー、みんな。……って、あれ? みんなもヴェリタスに用事?"

 

「うん! 気分転換も兼ねて、マキの所に遊びに行くつもり!」

 

「良いアイデアが思い浮かぶかもって、お姉ちゃんが……」

 

「ちょ、ちょうど行き詰まっていたので」

 

「冒険の続きです!」

 

 

 

 

 

 

★★★★★★

 

 

 

 

 

 

「……なるほどな。覗く方法は招待状と殆ど同じか」

 

 

 

招待状を通じてゲストの人生を観測していたように、本を通じてキヴォトスを観測していたローラン。

 

特殊な素材で作られているのか、図書館へと持ち帰った携帯電話に先生からのモモトークが届いているのに気が付きはしたものの……

 

 

特に、返信をするようなことはなかった。

 

 

 

「そうね。観測できるという点では同じかしら。……最も、この本はあの大人を中心に観測しているようだけれど」

 

「……まぁ、なんとなくそんな気はしていたよ。その本も、恐らく連邦生徒会長って奴が作ったんだろうな」

 

「あの人と取引をしたという者か」

 

「カルメンは、先生のことを()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って言っていたが……」

 

「……少なくとも、ただの人間ではないみたいね。……人工の神――」

 

「……あの人も、そのような事をしていたな」

 

 

……

 

 

「そのような……って、アインって奴も神を作ろうとしていたのか?」

 

「正確には、神を作るのではなく都市に引きずり落そうとしていたのだけれど……」

 

「神を引きずり落とし、自分自身を神の座に押し上げ、世界に救済という果実をばら撒く。……あの人が作り出した疑似人格によって、計画された終末だ」

 

「……少なくとも、この本の世界はそうならなかったみたいね」

 

 

 

二人の口から聞かされた事実。アインが……アダムが行おうとしていた、病を治療する為に全人類を幻想体へと変貌させるという狂気の所業。

 

 

 

「…………で? 俺はいつまでこれを見てればいいんだ?」

 

「……」

 

「……もう少し待ちなさい。あの大人を観測するこの本が、天童アリスと接触する光景を見せることに、何か意味があるはずよ」

 

「少しって……もう五日はここに居る気がするんだが?」

 

「……」

 

「……最初に観測したのはアビドスという学び舎で借金を返済すると言った趣旨の内容だった」

 

「……? それがどうかしたのか?」

 

「次に観測したのは、ミレニアムという学び舎でゲームを作る子供たちの内容だ」

 

「……」

 

「その次は、トリニティという学び舎で、落伍者達の面倒を見るという内容だ」

 

「……いやだから、それがなんだって――」

 

「ここまで聞いて、何か気づかないかしら?」

 

「……いや、何かって言われても――」

 

「招待状ではなく、この観測装置は本の形をしている。……もしもこれが、本という媒体で紡がれる物語だとしたら」

 

 

 

 

 

 

「次の物語は、ゲーム開発部…………天童アリスに関連した内容の可能性が高いのよ」

 

 

 

 

 

 

★★★★★★

 

 

 

「そう言えば、何で先生はヴェリタスの部室に向かってるの?」

 

"えーっとね、マキちゃんからキヴォトス史に残るような歴史的な発見をしたから見に来て欲しいって、呼ばれちゃったんだよね"

 

「歴史的、発見?」

 

"先生も詳しくは聞いてないんだけど、本当に凄い発見だからお祝いにピザを買ってきてって言われちゃって……"

 

「なるほど。……って、先生パシられてるじゃん!」

 

「そ、それでそんな沢山のピザを運んでたんですね」

 

"まぁ、先生も久しぶりに食べたかったから、ちょうど良かったんだけどね。折角なら、みんなも一緒に食べよ? ちょっと多めに頼んじゃってさ"

 

 

 

などと話しつつ、一行はヴェリタスの部室へと足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

「やっほー! お邪魔します!」

 

 

 

大声で扉を開け、部室へと突入するモモイ。彼女に続くように部室へと踏み入れた先生は、部室の隅に置かれた異質な機械の塊に視線を奪われた。

 

紫色に染まった躯体、球体部分から伸びる数本の触手。まるで二足で立っているかのように直立する姿は、確かに今まで一度も見たことがなかった。

 

 

 

「先生先生! うわぁ、本当に買ってきてくれたんだ!」

 

"やっほー、マキちゃん。頼まれてたからね、ちゃんと買ってきたよ"

 

「わぁーい! 今日はパーティーだね、先生!」

 

「ありがとうございます、先生」

 

「やっほ、先生」

 

 

 

一先ずテーブルへと荷物を下ろした先生は、改めて異質な機械へと向き直る。

 

 

 

"それで、えっと……これが言ってた歴史的発見?"

 

「そうです。ミレニアム学区の外で見つけてきました」

 

「凄いでしょ? でも、これで全部じゃなくて、少なくともまだあと20体はあったんだぁ」

 

"そ、そんなに沢山あったの? ……にしてもこれ、外見が――"

 

「なんか、深海魚みたいな見た目してるよね!」

 

「まぁ、ロボットっぽくはあるけど……」

 

 

 

言われてみれば確かに深海魚……に見えなくもないが、それよりも気になったのは、この機械がミレニアム学区の外で見つかったということだ。

 

 

 

"ミレニアム学区の外って……もしかして、アリスちゃんを見つけたあの場所なんじゃ……"

 

 

 

「な、なんかアレだね! ホラー映画に出てきそうな見た目って感じ!」

 

「これって、本当にミレニアムで作られたロボット……なのかな?」

 

「ハレ先輩、これって、頑張れば起動させることって出来たり……」

 

「…………」

 

「うーん……私たちの方でも一通り調べてみたんだけど」

 

「結構綺麗だったから起動できないかなーって思ったんだけど、……何をやっても反応しなかったんだよね」

 

「電源ボタンどころか接続ポートすら見つかりませんでした」

 

「そもそも開けることができないから、起動しない理由がハードなのかソフトなのかも分からなくて……」

 

「…………」

 

"なるほどね。……って、アリスちゃん?"

 

 

 

ヴェリタスのみんなと話してる中、一切反応を示さずに謎の機械へと近づくアリス。先ほどまでの元気な様子は無く、ただ無意識に機械へと近づく様子に――

 

 

 

――どうしてか、危機感を覚えた

 

 

 

「アリス…………見たことあります」

 

"……え?"

 

「アリスちゃん……?」

 

「この、機械は……アリスの……」

 

 

 

一歩、また一歩機械へと近づき、アリスの手が機械へと触れた瞬間…………

 

 

 

 

 

 

――謎の機械に光が宿った

 

 

 

 

 

 

 





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